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第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
第510話 vs三大凶虫アバドン
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ゼロ距離ドアを通って麦畑に着いた。
「よし! まだここへは来てないみたいね」
と思ったらカイベルから通信。
『早速アバドンの進路が変わりました。どうやらアルトラ様が現れたのを察知して進路を変えたようですね』
周囲を見回してみるもののアバドンの姿は見えず。
ならばと魔力感知範囲を十キロほどに広げてみるも、感知には引っかからない。
「ど、どんだけ遠くで察知してるの!?」
これは中々捕まらないのも納得だ……これに食糧食い荒らす大群の部下がいるんだから、三大凶虫って言われるだけあるわ。
カイベルが居なければ見つけるのにかなり苦労しそうだ……しかも強者に遭遇しないように遭遇しないように避けて動かれるとなると……
と言うか、私の姿を目にしてすらいないのに進路を変えるほど危機感を感じたってことは、アイツは隠匿しているはずの私の中に大罪の存在を感じているってことかしら?
気を取り直してカイベルにアバドンの位置を訊ねる。
「今どこら辺に居る?」
『現在アルトラ様が居る場所から十キロほど北東です。向きを変えて北西の別の畑へ向かいました』
十キロ? おかしいな。それらしい魔力は感じられなかったけど……
あ! これが魔力を隠蔽するとかいう能力か。小虫と大して変わらないからどれがアバドンか、私では判断付けられないんだ!
私が麦畑に突然出現したから南方面に脅威を感じて北へ戻って行ったってところか。
「よし、じゃあ十キロ北東へ【ゲート】で転移して……」
『早々に捕捉してしまおう』などと考え、額に指を当ててその付近に何があったか想像する。が――
「ダメだ、特別な畑と麦畑の間には目印になるものがまだ無いから場所の想像が付かない。転移するのは難しいな、ここから普通に飛んで追いかけるか……」
でも、私がここに出現したことによって進行方向を変えたというのなら、その危機察知能力を逆手に取って、ちょっと混乱させてやろう。
スキル【分身体】を発動。
「分身体は北西の畑へ【ゲート】で移動後、そこから南東へ向かって飛んで。私はここから北東へ飛ぶ。私“たち”を最も危険視してるみたいだから二方向から追い詰めてカイベルのところへ誘導しましょう」
「分かった」
「そういうわけだからカイベル、私と分身体で二方向からあなたのところまで追い込むから、アバドンの動きに合わせてあなたがそれを迎え撃って」
『了解しました』
「じゃあ、よろしくね分身体」
「あ、ちょっと待って! 私の方には通信の魔道具が無いけど……」
通信の魔道具シールは私の身体の一部ではないため、分身体に付属させることができなかったようだ。
「あ、そっか。じゃあ私たちの間は通信魔法で繋げてやり取りしましょう。そっちからカイベルに話しかけることはできないけど、カイベルからの声はノイズが酷くなければ聞こえると思う」 (通信魔法の詳細については第297話参照)
「分かった」
通信魔法を繋げたまま分身体が北東の畑へ【ゲート】で移動した。
「さて、じゃあ私も北東へ飛びますか」
カイベルの口振りからすれば、魔王の力を得た私ならアバドンの移動速度に迫れるくらいのスピードは出せそうだ。
風魔法でブーストをかけ、北東の方角へ向けて超スピードで飛ぶ。
すると程なくして、再びカイベルから通信。
『またアバドンの進路が変わりました。北北東へ進路を変えたので私がかち合うと予想されるポイントへ向かいます。アルトラ様と分身体様はそのまま追い込みを続けてください』
「了解」
突然分身体が北西の畑に出現したから、北西の畑に行くのを諦めて北北東に進路変更したってことだな。
じゃあ、私も少し東へ進路を調整すれば良いわけか。
スポードを維持しつつ進行方向を修正。
◇
四分ほど経った後、左方向から分身体が飛んでくるのが見えた。
双方同時に気付いて声を上げる。
「「あっ!」」
思わぬところで合流してしまった。あっちから来たのも自分自身のはずなのに、なぜかちょっと気恥ずかしくてニヤケてしまったが、程なくしてアバドンが逃走している姿が前方に確認できるくらいまで迫る。
更にその先にはカイベルが仁王立ちして、迎え撃とうとしている姿が見えた。
三方向から追い込まれたため、アバドンは急停止。
後ろから追いかけていた私と分身体の二人も停止して一旦膠着状態に
「さあ年貢の納め時よ」
アバドンは私と分身体をそれぞれ一瞥 (※)し、カイベルの方に再び目を向けると、カイベルの方へ高速ジャンプしよう体勢を整えた。
(※一瞥:チラッと見ること)
どうやら、私たち二人の方をすり抜けるより、まだカイベル相手の方が逃げられると直感で判断したようだ。
そして再び『バシューーーーッ!!』という噴射音を立てながらカイベルの横をすり抜けようと跳躍。
が――
カイベルが動きを予測して、自身の横を通り過ぎる瞬間にアバドンの横っ腹を強かに蹴りつけた!
「ギャギイィィィ!!」
アバドン自身の跳躍の勢いとカイベルの蹴りの勢いが合わさって、その先の地面に向かって斜めに蹴り飛ばされ、叫び声か何かを上げながら激しくゴロゴロと転げ回る。
しかし、全身土だらけになりながら、それでもなお起き上がって逃走しようとしたため、カイベルが追い打ちのかかと落としを頭部に炸裂させる。更に身体を捻って二発目のかかと落とし。そこから地面に這いつくばったアバドンを蹴り上げ、回し蹴りの連続攻撃を見舞った後、最後に足の甲に後頭部を引っ掛けて再び地面に顔面を叩きつけた。
「おぉ……カイベルの足技、初めて見たわ……」
華麗な足技に見惚れていると、アバドンからうめき声のようなものが聞こえた。
「ギ……ギギ……」
……あんなにボコボコにされて……ちょっと気の毒になってくるな……
カイベルの流れるような足技により、もはや虫の息だったが更に追い打ちをかける。
ぐったりしているアバドンを風魔法で空中へ巻き上げ、
「トドメです」
の一言と共に手に巨大な火球を作り出し、それを空中のアバドンへ向けて放った。
火球はアバドンにジャストミートし、『ドオオォォォォン!!』という爆発音を立てながら空中で爆散・焼失。
「「よ……容赦ねぇ~~……」」
同じ思考をしているからか、思わず分身体と二人で同時に呟いていた。
私だったらちょっと躊躇するような連続攻撃を無感情に淡々とこなしていく……
「あ、アルトラ様と分身体様、地面に影響が出ないように空中で爆散させましたが、身体の一部が降ってくるかもしれませんのでご注意ください」
その宣言通り、私たちの近くに跳躍するために使っていた後ろ脚らしきものがボテッと落ちて来た。
それを見て心の中でこう思ってしまった……
『きたねぇ花火だ』
と……
「カイベル、お疲れ様」
「はい。これでアルトレリアを襲っているイナゴの集団も数日で解散していくでしょう」
「無事蝗害の元凶も駆除できたし、じゃあ帰りましょうか」
分身体を還元し、【ゲート】で特別な畑へ移動。
◇
メイフィー他、農業従事者を集めて駆除報告。
「じゃあこれで農作物も食べられなくて済むんですね!」
「うん、まあ虫の集団の片づけが大変だと思うけど、それは頑張って掃除をお願いね」
「「「はい!」」」
ここから数日間、畑だけに留まらず、町中で虫を掃除する光景がみられるようになる。
◇
アバドン駆除後のアルトラ邸――
リディアが外から帰って来るなり、何かを見せに来た。
「アルトラ! 見てくれコレ!」
虫カゴ?
「今日みんなで捕まえたんダ! 大量だったゾ!」
「うげ……」
虫カゴいっぱいにイナゴやらバッタやらが詰め込まれていた。
ウゾウゾと蠢いている……
「そ、それどうするの?」
「しばらく飼って観察しようかな、っテ」
「か、観察は良いけど、一匹だけにしない? そんなに大量なのは絶対面倒だよ?」
目測だが、虫カゴの中に二、三十匹くらい詰め込まれているように見える。
リディアと私のやり取りを聞いていたネッココが参戦する。
『そうよそうよ! ソイツ私の葉っぱ食べちゃうんだから今すぐ捨てて来てよ!』
「虫カゴ開けなければ良いだロ?」
「でもエサはどうするの? 蓋開けないとあげられないでしょ?」
「そんなの簡単だロ?」
と言いながら、テーブルの上に置いてあったキャベツの葉っぱを毟り、
「こうやっテ――」
ま、まさか開けた瞬間に放り込もうとしてる……?
それはパンパンの虫カゴでやるには自殺行為だ!!
「――サッと放り込めバ……」
「リディア待っ……」
私の制止の声も間に合わず、虫カゴは開け放たれてしまった……
バサバサバサ!
部屋中にイナゴとバッタの大群が跳び乱れる!
『ギャアァァァ!! こっち来たっっ!! 早く誰か捕まえてっっ!! 退治してぇっっ!!』
ネッココパニック!
イナゴたちから逃げ回る!
「あわわわわ……」
私もどうすれば良いか狼狽えていると、カイベルがリディアから虫カゴを取り上げ、颯爽と激しく跳び乱れるイナゴとバッタを空中で手掴みし、次々と虫カゴに放り込んでいく。
短時間で場を治めてくれた。
「ナ、ナイス、カイベル……」
「食べますか? 佃煮などにすれば美味しいと思いますが」
「い、いや、要らないけど……」
「では逃がしておきましょう」
「ま、待ってくレ~、一匹だけでも残しておいてェ……」
リディアの懇願は認められ、一匹だけ虫カゴに残され、残りは全部アルトレリアに放たれた。多分今なら誰かが掃除してくれるだろうという思惑から。
余談だが、この『屋内イナゴショック』は、リディアと一緒に遊びに行っていた他の四軒のお友達のお宅でも起こっていたらしい……
部屋中に散らばったイナゴやバッタを捕まえるのに大わらわだったとか……各家庭でイナゴ捕獲禁止令が出たとか何とか。
「よし! まだここへは来てないみたいね」
と思ったらカイベルから通信。
『早速アバドンの進路が変わりました。どうやらアルトラ様が現れたのを察知して進路を変えたようですね』
周囲を見回してみるもののアバドンの姿は見えず。
ならばと魔力感知範囲を十キロほどに広げてみるも、感知には引っかからない。
「ど、どんだけ遠くで察知してるの!?」
これは中々捕まらないのも納得だ……これに食糧食い荒らす大群の部下がいるんだから、三大凶虫って言われるだけあるわ。
カイベルが居なければ見つけるのにかなり苦労しそうだ……しかも強者に遭遇しないように遭遇しないように避けて動かれるとなると……
と言うか、私の姿を目にしてすらいないのに進路を変えるほど危機感を感じたってことは、アイツは隠匿しているはずの私の中に大罪の存在を感じているってことかしら?
気を取り直してカイベルにアバドンの位置を訊ねる。
「今どこら辺に居る?」
『現在アルトラ様が居る場所から十キロほど北東です。向きを変えて北西の別の畑へ向かいました』
十キロ? おかしいな。それらしい魔力は感じられなかったけど……
あ! これが魔力を隠蔽するとかいう能力か。小虫と大して変わらないからどれがアバドンか、私では判断付けられないんだ!
私が麦畑に突然出現したから南方面に脅威を感じて北へ戻って行ったってところか。
「よし、じゃあ十キロ北東へ【ゲート】で転移して……」
『早々に捕捉してしまおう』などと考え、額に指を当ててその付近に何があったか想像する。が――
「ダメだ、特別な畑と麦畑の間には目印になるものがまだ無いから場所の想像が付かない。転移するのは難しいな、ここから普通に飛んで追いかけるか……」
でも、私がここに出現したことによって進行方向を変えたというのなら、その危機察知能力を逆手に取って、ちょっと混乱させてやろう。
スキル【分身体】を発動。
「分身体は北西の畑へ【ゲート】で移動後、そこから南東へ向かって飛んで。私はここから北東へ飛ぶ。私“たち”を最も危険視してるみたいだから二方向から追い詰めてカイベルのところへ誘導しましょう」
「分かった」
「そういうわけだからカイベル、私と分身体で二方向からあなたのところまで追い込むから、アバドンの動きに合わせてあなたがそれを迎え撃って」
『了解しました』
「じゃあ、よろしくね分身体」
「あ、ちょっと待って! 私の方には通信の魔道具が無いけど……」
通信の魔道具シールは私の身体の一部ではないため、分身体に付属させることができなかったようだ。
「あ、そっか。じゃあ私たちの間は通信魔法で繋げてやり取りしましょう。そっちからカイベルに話しかけることはできないけど、カイベルからの声はノイズが酷くなければ聞こえると思う」 (通信魔法の詳細については第297話参照)
「分かった」
通信魔法を繋げたまま分身体が北東の畑へ【ゲート】で移動した。
「さて、じゃあ私も北東へ飛びますか」
カイベルの口振りからすれば、魔王の力を得た私ならアバドンの移動速度に迫れるくらいのスピードは出せそうだ。
風魔法でブーストをかけ、北東の方角へ向けて超スピードで飛ぶ。
すると程なくして、再びカイベルから通信。
『またアバドンの進路が変わりました。北北東へ進路を変えたので私がかち合うと予想されるポイントへ向かいます。アルトラ様と分身体様はそのまま追い込みを続けてください』
「了解」
突然分身体が北西の畑に出現したから、北西の畑に行くのを諦めて北北東に進路変更したってことだな。
じゃあ、私も少し東へ進路を調整すれば良いわけか。
スポードを維持しつつ進行方向を修正。
◇
四分ほど経った後、左方向から分身体が飛んでくるのが見えた。
双方同時に気付いて声を上げる。
「「あっ!」」
思わぬところで合流してしまった。あっちから来たのも自分自身のはずなのに、なぜかちょっと気恥ずかしくてニヤケてしまったが、程なくしてアバドンが逃走している姿が前方に確認できるくらいまで迫る。
更にその先にはカイベルが仁王立ちして、迎え撃とうとしている姿が見えた。
三方向から追い込まれたため、アバドンは急停止。
後ろから追いかけていた私と分身体の二人も停止して一旦膠着状態に
「さあ年貢の納め時よ」
アバドンは私と分身体をそれぞれ一瞥 (※)し、カイベルの方に再び目を向けると、カイベルの方へ高速ジャンプしよう体勢を整えた。
(※一瞥:チラッと見ること)
どうやら、私たち二人の方をすり抜けるより、まだカイベル相手の方が逃げられると直感で判断したようだ。
そして再び『バシューーーーッ!!』という噴射音を立てながらカイベルの横をすり抜けようと跳躍。
が――
カイベルが動きを予測して、自身の横を通り過ぎる瞬間にアバドンの横っ腹を強かに蹴りつけた!
「ギャギイィィィ!!」
アバドン自身の跳躍の勢いとカイベルの蹴りの勢いが合わさって、その先の地面に向かって斜めに蹴り飛ばされ、叫び声か何かを上げながら激しくゴロゴロと転げ回る。
しかし、全身土だらけになりながら、それでもなお起き上がって逃走しようとしたため、カイベルが追い打ちのかかと落としを頭部に炸裂させる。更に身体を捻って二発目のかかと落とし。そこから地面に這いつくばったアバドンを蹴り上げ、回し蹴りの連続攻撃を見舞った後、最後に足の甲に後頭部を引っ掛けて再び地面に顔面を叩きつけた。
「おぉ……カイベルの足技、初めて見たわ……」
華麗な足技に見惚れていると、アバドンからうめき声のようなものが聞こえた。
「ギ……ギギ……」
……あんなにボコボコにされて……ちょっと気の毒になってくるな……
カイベルの流れるような足技により、もはや虫の息だったが更に追い打ちをかける。
ぐったりしているアバドンを風魔法で空中へ巻き上げ、
「トドメです」
の一言と共に手に巨大な火球を作り出し、それを空中のアバドンへ向けて放った。
火球はアバドンにジャストミートし、『ドオオォォォォン!!』という爆発音を立てながら空中で爆散・焼失。
「「よ……容赦ねぇ~~……」」
同じ思考をしているからか、思わず分身体と二人で同時に呟いていた。
私だったらちょっと躊躇するような連続攻撃を無感情に淡々とこなしていく……
「あ、アルトラ様と分身体様、地面に影響が出ないように空中で爆散させましたが、身体の一部が降ってくるかもしれませんのでご注意ください」
その宣言通り、私たちの近くに跳躍するために使っていた後ろ脚らしきものがボテッと落ちて来た。
それを見て心の中でこう思ってしまった……
『きたねぇ花火だ』
と……
「カイベル、お疲れ様」
「はい。これでアルトレリアを襲っているイナゴの集団も数日で解散していくでしょう」
「無事蝗害の元凶も駆除できたし、じゃあ帰りましょうか」
分身体を還元し、【ゲート】で特別な畑へ移動。
◇
メイフィー他、農業従事者を集めて駆除報告。
「じゃあこれで農作物も食べられなくて済むんですね!」
「うん、まあ虫の集団の片づけが大変だと思うけど、それは頑張って掃除をお願いね」
「「「はい!」」」
ここから数日間、畑だけに留まらず、町中で虫を掃除する光景がみられるようになる。
◇
アバドン駆除後のアルトラ邸――
リディアが外から帰って来るなり、何かを見せに来た。
「アルトラ! 見てくれコレ!」
虫カゴ?
「今日みんなで捕まえたんダ! 大量だったゾ!」
「うげ……」
虫カゴいっぱいにイナゴやらバッタやらが詰め込まれていた。
ウゾウゾと蠢いている……
「そ、それどうするの?」
「しばらく飼って観察しようかな、っテ」
「か、観察は良いけど、一匹だけにしない? そんなに大量なのは絶対面倒だよ?」
目測だが、虫カゴの中に二、三十匹くらい詰め込まれているように見える。
リディアと私のやり取りを聞いていたネッココが参戦する。
『そうよそうよ! ソイツ私の葉っぱ食べちゃうんだから今すぐ捨てて来てよ!』
「虫カゴ開けなければ良いだロ?」
「でもエサはどうするの? 蓋開けないとあげられないでしょ?」
「そんなの簡単だロ?」
と言いながら、テーブルの上に置いてあったキャベツの葉っぱを毟り、
「こうやっテ――」
ま、まさか開けた瞬間に放り込もうとしてる……?
それはパンパンの虫カゴでやるには自殺行為だ!!
「――サッと放り込めバ……」
「リディア待っ……」
私の制止の声も間に合わず、虫カゴは開け放たれてしまった……
バサバサバサ!
部屋中にイナゴとバッタの大群が跳び乱れる!
『ギャアァァァ!! こっち来たっっ!! 早く誰か捕まえてっっ!! 退治してぇっっ!!』
ネッココパニック!
イナゴたちから逃げ回る!
「あわわわわ……」
私もどうすれば良いか狼狽えていると、カイベルがリディアから虫カゴを取り上げ、颯爽と激しく跳び乱れるイナゴとバッタを空中で手掴みし、次々と虫カゴに放り込んでいく。
短時間で場を治めてくれた。
「ナ、ナイス、カイベル……」
「食べますか? 佃煮などにすれば美味しいと思いますが」
「い、いや、要らないけど……」
「では逃がしておきましょう」
「ま、待ってくレ~、一匹だけでも残しておいてェ……」
リディアの懇願は認められ、一匹だけ虫カゴに残され、残りは全部アルトレリアに放たれた。多分今なら誰かが掃除してくれるだろうという思惑から。
余談だが、この『屋内イナゴショック』は、リディアと一緒に遊びに行っていた他の四軒のお友達のお宅でも起こっていたらしい……
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