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第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
第503話 久しぶりに日課のパトロール
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一度寝直し、二時間ほど経った後目が覚めると、玄関前でじっとしているウィンダルシアの魔力を再び感知。
「……二時間前と全く同じ場所にいる……同じ場所から微動だにせんな……ホントにずっと護衛するつもりなのかしら?」
歯を磨き、朝食を食べ、更に二時間後に家を出る。
久しぶりに役所へ登庁する。ついでに日課のパトロールもしていくか。
「じゃあカイベル、ちょっと役所へ行ってくるね」
ガチャ
「お? おはようございますアルトラ殿!」
「あ、ああ……おはよう。ごえ……」
『護衛ご苦労様』と言いかけてやめた。
これ言ったら、『護衛を求めている』、もしくは『護衛が役立っている』と取られかねないと考えたため。
「本日はどこへ行かれるのですか?」
「昨日役所に来てくれって言うから登庁するんだけど……」
「では私も同行しましょう」
どうやら付いて来る気マンマンだ……
「あ、アルトラ様~、おはようございますッス!」
「ああ、おはようナナトス」
「相変わらずフラフラしてるのね」
「ム、別にフラフラしてるんじゃないッスよ。亜人観察ッス」
それをフラフラしてると言うのでは?
「何でそんなことしてるの?」
「最近この町を訪れる亜人の種類が増えたッスから、見てて観察してるんスよ。種族ごとに特徴が違ってて面白いッスよ」
「へぇ~、あなたから見て驚いた特徴ってなに?」
「え~、例えばケンタウロス族とかッスかね。下半身が馬になってるヒトなんて初めて見たんで驚いたッスよ!」
「ああ、確かに。あれは私も初めて見た時はビックリしたよ」
でも実はもうこの町に住んでるんだけどな……下半身馬のヒト。
水の国の大使のアーノルドさんなんだけど。 (第373話参照)
ナナトスは多分会ったことないだろうからな。
「ところで、そっちのヒトは誰ッスか?」
「風の国から派遣されて来たウィンダルシアよ」
「お初にお目にかかります、ウィンダルシア・ライトウィングです」
「何でアルトラ様と一緒にいるんスか?」
「ああ……何か、私の護衛らしいよ……要らないって言ってるんだけどね……」
「護衛? ウィンダルシアさん、この町で護衛が必要なことなんて起こらないっすよ? アルトラ様が怪我してるところ見たことないッスから。別のことしてた方が有意義ッス」
「は、はあ……」
横目でウィンダルシアの顔を見たところ、『女帝蟻と戦って大怪我したと聞いてるんだが……』とでも言いたいようなちょっと複雑な表情をしていた。
「じゃ、これから役所に顔出さないといけないから、またね」
ナナトスと別れた。
◇
役所を訪れるとウィンダルシアが、とある生物に気付く。
「ヒーリングディアーですか。なぜこれがここに? 生息地から大分離れてますが……」
「お、あなたはこの鹿を知ってるのね?」
「風の国にも生息してますので」
「以前この辺りの野生生物の一斉捕獲をした時に、アルトラルサンズに迷い込んできたみたい。後々調べたところによると樹の国原産らしいね。この癒し効果が有用ってことで捕獲した時にこの町の役所で飼うことになったのよ」
そう、以前アルトレリアの第二壁の建設時に捕獲し、殺処分を免れた白い鹿だ。役所付近で放し飼いになっているが、役所で餌をやっているため、どこに居ても朝昼晩のご飯時には帰って来る。 (第299話参照)
この鹿が居る場所を中心に周囲を軽度に癒してくれるため、この辺りに居ると傷の治りが早くなったり、リラックスしたり、メンタルヘルスケアができる。疲れも薄っすらだが取れる。これが割と好評で、みんなに可愛がられている。
この通りを行き来する大勢のヒトが撫でて行くため、自身で毛づくろいしないにも関わらず頭や背中がツヤツヤで毛並みが良くなってすらいる。
私も少しの間癒され、ひと撫でして役所に入る。
「おはようリーヴァント」
「あ、アルトラ様、お帰りなさい。風の国への出張お疲れ様でした。そちらの方は?」
「ああ、このヒトは――」
と紹介しようとした瞬間にウィンダルシアが自己紹介を始めた。
「この度アルトラ殿の護衛に就きました、風の国の外交官、ウィンダルシア・ライトウィングと申します」
「護衛?」
「いやいやいや、護衛は間違い。一方的にこのヒトが言ってるだけだから」
「……他国へ行ってまた誑し込んで来たんですか?」
含み笑いを浮かべながらそう話すリーヴァント。
「誑し込んで来たって何だよ! 人聞き悪いわ……」
「ハハハ、まあ冗談ですが、頼もしい仲間が増えるのは良いことですよ。わたくしこの町のリーダーをしております、リーヴァントと申します」
仲間って言っても、まだ他国のヒトなんだけど……ここは元々他国と諍いみたいなことがある土地ではなかったから、そういう辺りは気にしないのかなリーヴァント。悪いヒトに騙されないかちょっと心配だ。
地球出身の私は、急に他国の人物が護衛に就くなんて話を聞くとちょっと警戒してしまうよ……
「リーダー? 町長ではないのですか?」
「この町、まだ町長選とかやったことないからね。町が出来てからリーヴァントがリーダーだから、そのままずっと続いてる感じ」
「なるほど、そういった部分はまだまだ発展途上というわけですね」
リーヴァントに向き直る。
「それで、私に言伝というのは?」
「主なのは三ヶ所から来ています。まずは一つ目の言伝です。図書館が完成したそうです」
「お~! 遂にこの町でも自由に本が読めるようになるのね!」
やっと【亜空間収納ポケット】に入れてある大量の荷を下せるか。
「二つ目、小学校が完成したそうです」
「図書館に続いて小学校も!?」
じゃあ図書館を学習に上手い具合に利用できそうだな。
風の国から教師を派遣してくれるって話だったから、学校完成を報告がてら派遣の方もお願いしておかないとな。 (第292話、第420話参照)
そうだ! 今この場に居るじゃないか風の国の外交官!
「ウィンダルシア、風の国に教師の派遣をお願いしておいてもらえるかしら? 話は通ってるはずだから」
「了解しました」
「三つ目は発電施設が完成したそうです」
「遂にキタ! やっと電気が使えるようになるわけか!」
「どの施設も、私にはまだまだ何のことやら分かりませんが、各所からアルトラ様に伝えておいてほしいとのことです」
「分かった、じゃあ後日訪ねてみるよ」
役所を後にする。
「次はどこへ行かれるのですか?」
「今日はもう特に行くところはないかな。町中をパロトールして、家帰ってクタクタする」
「は、はぁ……」
何だか不満気な顔だな。何に引っ掛かったんだろう?
「まあとりあえずパトロールを続けましょうか」
◇
通貨制度開始後から急速な発展を遂げた商店街に来た。
何も無かった村をは思えないくらい店が充実してきている。
そんな中、魚屋に目が留まった。
魚やエビ、カニなどの甲殻類は以前から売られていたが、最近ではそれに加えて貝類まで並ぶようになった。
これは多分レイアが火の国で貝類の存在に気付いたからだろう。 (第407話参照)
それ以前は食べ物だと思っておらず、岩に張り付いている石か何かだと思ってたらしいし。
「お、アルトラ様、二週間振りだね~」
「ああ、ちょっと他国へ出張してたもんで」
「そうかそうか、どうだいエビなんて」
でっかいエビを勧められた。地球のブラックタイガーより大きいかも。
「良いね~、今夜は天丼にでもしてもらおうかな」
「まいどあり」
エビを三尾購入。
すぐに【亜空間収納ポケット】にしまう。
その他、八百屋、肉屋などと見て回る。八百屋や肉屋も品数が充実してきた。
特に我が町の肉事情は、 (鳥肉や豚肉は多少あれど)ガルムの狼肉ほぼ一択だったものが、行商人が来るようになったためか品数が増えた。
この世界では氷魔法が存在しているため、肉を傷めずに行商で運搬することが可能。そのため比較的新鮮な状態で手に入るようだ。入って来る数はまだまだ少ないものの、牛や豚の肉が定期的に買えるようになった。
そして、飲食店も増えてきた。
「お昼時だし、喫茶店にでも入りましょうか」
ウィンダルシアを伴って入店。
「あ、アルトラ様いらっしゃい! 初めて来てくれましたね!」
「そうなんだよ。中々ご飯時にこの辺りを歩くこと無くてね」
「何にしますか?」
「じゃあ卵とハムのサンドイッチとコーヒーを。ウィンダルシアは?」
「う~ん……虫を使った料理ってありますか?」
「む、虫? な、何で虫?」
突然の嗜好性の違いに度肝を抜かれしまった。
「お、おかしいですか? 我々鳥人種はサンドウォームやヘルムワームなどの虫を好んで食べるのですが……」
ヘルムワームって聞き慣れないな……名前からするとカブトムシの幼虫……みたいな?
「そ、それって生で食べるの?」
ウゾウゾ動いてるのを食べるんだろうか……?
「生で食べる者もいますが、風の国首都では行儀が悪いので大抵はカラッと油で揚げて食べられることが多いですね」
「なるほど。ごめん、この町にはまだ鳥人種居なかったからそこまでは気付けなかった」
「も、申し訳ありません。虫の食材はまだここにはありませんので……」
「そ、そうですか……それは残念……じゃあアルトラ殿と同じもので」
「了解しました」
な、なるほど……鳥人種だから人型とは言え、鳥の特徴も色濃く残ってるわけか。
う~ん……まさか虫の食材のことを聞かされるとは……今後国際色も徐々に豊かになっていくだろうし、そういうところも対応していく必要があるのかもな……
行商人で、虫売ってる隊商っているのかしら……?
簡単に軽食を済ませ、喫茶店を後にした。
◇
町の西の端まで歩き、そのまま突き進み川を渡る。
「ん?」
「どうかした、ウィンダルシア?」
「ここから先は別の町ですか? 身体の色が赤い亜人が多くなりましたが……」
「いや、同じアルトレリアだよ。こっちは第二区画」
こちらも商店街が出来てきて、多少賑わいつつある。
「分けてるのですか?」
「いや、こっちの区画に居るのは主にレッドトロル族。グリーンが先住民で、レッドは後からここに移住したから綺麗に町が分割されたみたいになってるんだよね」
「仲が悪かったりするのですか?」
「いや、そんなことは無いと思うよ。集団で言い争ってる場面を見たりもしないし。私としてはもうちょっと混じり合ってくれるのが理想なんだけど、ちょっと難しいみたいでね。ある程度の人数の行き来はあるみたいなんだけど、まだまだ理想には遠いって感じかな」
移住した当初に比べればレッドトロルがグリーントロルへ、グリーントロルがレッドトロルへと交流や行き来が出来てきてはいるが今一つというところ。
人数がグリーンに比べて少ないってのもあるとは思うが。
あと、メインの行政機関がグリーントロルが多く住む場所にあるってのも影響があるのかもしれない。レッドのヒトたちにはちょっと不便かもしれないが、かと言ってこちらに第二の役所を作ると、それこそ分割が濃くなりそうだし、当面は現状維持というところ。
そんなことを考えながら歩いていたところ突然の雨に降られた。結構強めの雨だ。
「雨宿りしましょうか」
入ったのはまたも喫茶店。
「何か食べる?」
「えっ!? つい今しがた食べたばかりですが……」
「席に着いた以上は食べないのはマナー違反でしょ。それに軽食だったから食べたうちに入らない」
「ご注文お決まりですか?」
「あれ? ニックエディーくんじゃない! 働いてるとこ初めて見たわ!」
この子は健康診断の結果報告の時に知り合ったレッドトロルの少年。 (第430話から第432話参照)
町中でナナトスらとつるんでるのはたまに見ていたが。
「ここうちの実家なんですよ。こうしてたまに手伝いしてるんです」
「へぇ~、偉いわ。じゃあミックス丼一つ。ウィンダルシアは?」
「ミックス丼とは何でしょう?」
「ニックエディーくん、何入ってるの?」
「え~と……ガルムの肉、豚肉、ウサギ肉ですね。牛はまだ手に入りにくいので、他三つが多めですけどご勘弁ください」
これを聞いてもまだウィンダルシアに困惑が見られる。
「申し訳ありません、『丼』が何のことか説明いただけますか?」
そっか、日本文化だからこれも説明しなきゃ分からないのか。
砂漠の時と同じか。 (第391話参照)
「『どんぶり』という器にご飯をよそって、その上に何か乗っけると『〇〇丼』って名前になるの」
「なるほど、では私もそれで」
昼食をしっかり食べて喫茶店を後にした。
次への道すがらウィンダルシアがこんなことを口にする。
「ミックス丼美味しかったですね。これはサンドウォーム丼もいけるかも」
「そ、そう……? 美味しいと思ったらやってみたら良いよ……」
私は今のところ虫のどんぶりは食べたいとは思えないが……
「……二時間前と全く同じ場所にいる……同じ場所から微動だにせんな……ホントにずっと護衛するつもりなのかしら?」
歯を磨き、朝食を食べ、更に二時間後に家を出る。
久しぶりに役所へ登庁する。ついでに日課のパトロールもしていくか。
「じゃあカイベル、ちょっと役所へ行ってくるね」
ガチャ
「お? おはようございますアルトラ殿!」
「あ、ああ……おはよう。ごえ……」
『護衛ご苦労様』と言いかけてやめた。
これ言ったら、『護衛を求めている』、もしくは『護衛が役立っている』と取られかねないと考えたため。
「本日はどこへ行かれるのですか?」
「昨日役所に来てくれって言うから登庁するんだけど……」
「では私も同行しましょう」
どうやら付いて来る気マンマンだ……
「あ、アルトラ様~、おはようございますッス!」
「ああ、おはようナナトス」
「相変わらずフラフラしてるのね」
「ム、別にフラフラしてるんじゃないッスよ。亜人観察ッス」
それをフラフラしてると言うのでは?
「何でそんなことしてるの?」
「最近この町を訪れる亜人の種類が増えたッスから、見てて観察してるんスよ。種族ごとに特徴が違ってて面白いッスよ」
「へぇ~、あなたから見て驚いた特徴ってなに?」
「え~、例えばケンタウロス族とかッスかね。下半身が馬になってるヒトなんて初めて見たんで驚いたッスよ!」
「ああ、確かに。あれは私も初めて見た時はビックリしたよ」
でも実はもうこの町に住んでるんだけどな……下半身馬のヒト。
水の国の大使のアーノルドさんなんだけど。 (第373話参照)
ナナトスは多分会ったことないだろうからな。
「ところで、そっちのヒトは誰ッスか?」
「風の国から派遣されて来たウィンダルシアよ」
「お初にお目にかかります、ウィンダルシア・ライトウィングです」
「何でアルトラ様と一緒にいるんスか?」
「ああ……何か、私の護衛らしいよ……要らないって言ってるんだけどね……」
「護衛? ウィンダルシアさん、この町で護衛が必要なことなんて起こらないっすよ? アルトラ様が怪我してるところ見たことないッスから。別のことしてた方が有意義ッス」
「は、はあ……」
横目でウィンダルシアの顔を見たところ、『女帝蟻と戦って大怪我したと聞いてるんだが……』とでも言いたいようなちょっと複雑な表情をしていた。
「じゃ、これから役所に顔出さないといけないから、またね」
ナナトスと別れた。
◇
役所を訪れるとウィンダルシアが、とある生物に気付く。
「ヒーリングディアーですか。なぜこれがここに? 生息地から大分離れてますが……」
「お、あなたはこの鹿を知ってるのね?」
「風の国にも生息してますので」
「以前この辺りの野生生物の一斉捕獲をした時に、アルトラルサンズに迷い込んできたみたい。後々調べたところによると樹の国原産らしいね。この癒し効果が有用ってことで捕獲した時にこの町の役所で飼うことになったのよ」
そう、以前アルトレリアの第二壁の建設時に捕獲し、殺処分を免れた白い鹿だ。役所付近で放し飼いになっているが、役所で餌をやっているため、どこに居ても朝昼晩のご飯時には帰って来る。 (第299話参照)
この鹿が居る場所を中心に周囲を軽度に癒してくれるため、この辺りに居ると傷の治りが早くなったり、リラックスしたり、メンタルヘルスケアができる。疲れも薄っすらだが取れる。これが割と好評で、みんなに可愛がられている。
この通りを行き来する大勢のヒトが撫でて行くため、自身で毛づくろいしないにも関わらず頭や背中がツヤツヤで毛並みが良くなってすらいる。
私も少しの間癒され、ひと撫でして役所に入る。
「おはようリーヴァント」
「あ、アルトラ様、お帰りなさい。風の国への出張お疲れ様でした。そちらの方は?」
「ああ、このヒトは――」
と紹介しようとした瞬間にウィンダルシアが自己紹介を始めた。
「この度アルトラ殿の護衛に就きました、風の国の外交官、ウィンダルシア・ライトウィングと申します」
「護衛?」
「いやいやいや、護衛は間違い。一方的にこのヒトが言ってるだけだから」
「……他国へ行ってまた誑し込んで来たんですか?」
含み笑いを浮かべながらそう話すリーヴァント。
「誑し込んで来たって何だよ! 人聞き悪いわ……」
「ハハハ、まあ冗談ですが、頼もしい仲間が増えるのは良いことですよ。わたくしこの町のリーダーをしております、リーヴァントと申します」
仲間って言っても、まだ他国のヒトなんだけど……ここは元々他国と諍いみたいなことがある土地ではなかったから、そういう辺りは気にしないのかなリーヴァント。悪いヒトに騙されないかちょっと心配だ。
地球出身の私は、急に他国の人物が護衛に就くなんて話を聞くとちょっと警戒してしまうよ……
「リーダー? 町長ではないのですか?」
「この町、まだ町長選とかやったことないからね。町が出来てからリーヴァントがリーダーだから、そのままずっと続いてる感じ」
「なるほど、そういった部分はまだまだ発展途上というわけですね」
リーヴァントに向き直る。
「それで、私に言伝というのは?」
「主なのは三ヶ所から来ています。まずは一つ目の言伝です。図書館が完成したそうです」
「お~! 遂にこの町でも自由に本が読めるようになるのね!」
やっと【亜空間収納ポケット】に入れてある大量の荷を下せるか。
「二つ目、小学校が完成したそうです」
「図書館に続いて小学校も!?」
じゃあ図書館を学習に上手い具合に利用できそうだな。
風の国から教師を派遣してくれるって話だったから、学校完成を報告がてら派遣の方もお願いしておかないとな。 (第292話、第420話参照)
そうだ! 今この場に居るじゃないか風の国の外交官!
「ウィンダルシア、風の国に教師の派遣をお願いしておいてもらえるかしら? 話は通ってるはずだから」
「了解しました」
「三つ目は発電施設が完成したそうです」
「遂にキタ! やっと電気が使えるようになるわけか!」
「どの施設も、私にはまだまだ何のことやら分かりませんが、各所からアルトラ様に伝えておいてほしいとのことです」
「分かった、じゃあ後日訪ねてみるよ」
役所を後にする。
「次はどこへ行かれるのですか?」
「今日はもう特に行くところはないかな。町中をパロトールして、家帰ってクタクタする」
「は、はぁ……」
何だか不満気な顔だな。何に引っ掛かったんだろう?
「まあとりあえずパトロールを続けましょうか」
◇
通貨制度開始後から急速な発展を遂げた商店街に来た。
何も無かった村をは思えないくらい店が充実してきている。
そんな中、魚屋に目が留まった。
魚やエビ、カニなどの甲殻類は以前から売られていたが、最近ではそれに加えて貝類まで並ぶようになった。
これは多分レイアが火の国で貝類の存在に気付いたからだろう。 (第407話参照)
それ以前は食べ物だと思っておらず、岩に張り付いている石か何かだと思ってたらしいし。
「お、アルトラ様、二週間振りだね~」
「ああ、ちょっと他国へ出張してたもんで」
「そうかそうか、どうだいエビなんて」
でっかいエビを勧められた。地球のブラックタイガーより大きいかも。
「良いね~、今夜は天丼にでもしてもらおうかな」
「まいどあり」
エビを三尾購入。
すぐに【亜空間収納ポケット】にしまう。
その他、八百屋、肉屋などと見て回る。八百屋や肉屋も品数が充実してきた。
特に我が町の肉事情は、 (鳥肉や豚肉は多少あれど)ガルムの狼肉ほぼ一択だったものが、行商人が来るようになったためか品数が増えた。
この世界では氷魔法が存在しているため、肉を傷めずに行商で運搬することが可能。そのため比較的新鮮な状態で手に入るようだ。入って来る数はまだまだ少ないものの、牛や豚の肉が定期的に買えるようになった。
そして、飲食店も増えてきた。
「お昼時だし、喫茶店にでも入りましょうか」
ウィンダルシアを伴って入店。
「あ、アルトラ様いらっしゃい! 初めて来てくれましたね!」
「そうなんだよ。中々ご飯時にこの辺りを歩くこと無くてね」
「何にしますか?」
「じゃあ卵とハムのサンドイッチとコーヒーを。ウィンダルシアは?」
「う~ん……虫を使った料理ってありますか?」
「む、虫? な、何で虫?」
突然の嗜好性の違いに度肝を抜かれしまった。
「お、おかしいですか? 我々鳥人種はサンドウォームやヘルムワームなどの虫を好んで食べるのですが……」
ヘルムワームって聞き慣れないな……名前からするとカブトムシの幼虫……みたいな?
「そ、それって生で食べるの?」
ウゾウゾ動いてるのを食べるんだろうか……?
「生で食べる者もいますが、風の国首都では行儀が悪いので大抵はカラッと油で揚げて食べられることが多いですね」
「なるほど。ごめん、この町にはまだ鳥人種居なかったからそこまでは気付けなかった」
「も、申し訳ありません。虫の食材はまだここにはありませんので……」
「そ、そうですか……それは残念……じゃあアルトラ殿と同じもので」
「了解しました」
な、なるほど……鳥人種だから人型とは言え、鳥の特徴も色濃く残ってるわけか。
う~ん……まさか虫の食材のことを聞かされるとは……今後国際色も徐々に豊かになっていくだろうし、そういうところも対応していく必要があるのかもな……
行商人で、虫売ってる隊商っているのかしら……?
簡単に軽食を済ませ、喫茶店を後にした。
◇
町の西の端まで歩き、そのまま突き進み川を渡る。
「ん?」
「どうかした、ウィンダルシア?」
「ここから先は別の町ですか? 身体の色が赤い亜人が多くなりましたが……」
「いや、同じアルトレリアだよ。こっちは第二区画」
こちらも商店街が出来てきて、多少賑わいつつある。
「分けてるのですか?」
「いや、こっちの区画に居るのは主にレッドトロル族。グリーンが先住民で、レッドは後からここに移住したから綺麗に町が分割されたみたいになってるんだよね」
「仲が悪かったりするのですか?」
「いや、そんなことは無いと思うよ。集団で言い争ってる場面を見たりもしないし。私としてはもうちょっと混じり合ってくれるのが理想なんだけど、ちょっと難しいみたいでね。ある程度の人数の行き来はあるみたいなんだけど、まだまだ理想には遠いって感じかな」
移住した当初に比べればレッドトロルがグリーントロルへ、グリーントロルがレッドトロルへと交流や行き来が出来てきてはいるが今一つというところ。
人数がグリーンに比べて少ないってのもあるとは思うが。
あと、メインの行政機関がグリーントロルが多く住む場所にあるってのも影響があるのかもしれない。レッドのヒトたちにはちょっと不便かもしれないが、かと言ってこちらに第二の役所を作ると、それこそ分割が濃くなりそうだし、当面は現状維持というところ。
そんなことを考えながら歩いていたところ突然の雨に降られた。結構強めの雨だ。
「雨宿りしましょうか」
入ったのはまたも喫茶店。
「何か食べる?」
「えっ!? つい今しがた食べたばかりですが……」
「席に着いた以上は食べないのはマナー違反でしょ。それに軽食だったから食べたうちに入らない」
「ご注文お決まりですか?」
「あれ? ニックエディーくんじゃない! 働いてるとこ初めて見たわ!」
この子は健康診断の結果報告の時に知り合ったレッドトロルの少年。 (第430話から第432話参照)
町中でナナトスらとつるんでるのはたまに見ていたが。
「ここうちの実家なんですよ。こうしてたまに手伝いしてるんです」
「へぇ~、偉いわ。じゃあミックス丼一つ。ウィンダルシアは?」
「ミックス丼とは何でしょう?」
「ニックエディーくん、何入ってるの?」
「え~と……ガルムの肉、豚肉、ウサギ肉ですね。牛はまだ手に入りにくいので、他三つが多めですけどご勘弁ください」
これを聞いてもまだウィンダルシアに困惑が見られる。
「申し訳ありません、『丼』が何のことか説明いただけますか?」
そっか、日本文化だからこれも説明しなきゃ分からないのか。
砂漠の時と同じか。 (第391話参照)
「『どんぶり』という器にご飯をよそって、その上に何か乗っけると『〇〇丼』って名前になるの」
「なるほど、では私もそれで」
昼食をしっかり食べて喫茶店を後にした。
次への道すがらウィンダルシアがこんなことを口にする。
「ミックス丼美味しかったですね。これはサンドウォーム丼もいけるかも」
「そ、そう……? 美味しいと思ったらやってみたら良いよ……」
私は今のところ虫のどんぶりは食べたいとは思えないが……
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白い空間に白い衣装を着た女性。
重たい体をベッドに横たえていた私は、彼女を医者だと思った。
会話するうち医者ではなく女神様で。
女神様のお気に入りの魂を持つ私は、特別な転生をさせて貰えるようだ。
神様だというのに、ちょっと思考が過激な女神様。
「ヒロインがヒロインの扱いを受けなかったらどうなるのかしら?」
妙な実験を私の転生先でしないで欲しいんですけど……
私を愛し子と呼ぶ女神様は、加護の他に色んな能力を授けてくれるらしい。
護衛は聖獣様。
白いモフモフ一体の予定が、いつの間にか二体授けてくれることになる。
転生先ではモフモフパラダイスかしら!?
前世でペットが飼いたくても飼えなかった私は、その事だけでも大満足だ。
魂をゆっくり休めなさいと女神様の言葉に目を閉じると―――
七歳になったその当日に、やっと記憶が蘇る。
どんな能力が私に授けられたんでしょう? 怖いもの見たさでステータスを調べると・・・?
「女神様、これはやり過ぎです!」
女神様に思わず強めに注意してしまった。
女神様は「愛しい子が学園に行くのが今から楽しみなの。ヒロインは学園で出会う事になるわ。」
傍観者の立場にすると仰った言葉に二言はありませんよね?
女神様までがヤバイという性格のヒロインは、私に関わり合いにならないようお願いします。
悪役令嬢らしいけど、一切悪役令嬢しない私の物語。
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恋愛モードには年齢的にすぐ始まら無さそうです。
なので、ファンタジー色強めの恋愛小説として読んで頂ければ(*- -)(*_ _)ペコリ
幼い時期がかなり長くなっています、恋愛になるまで果てしない…
カクヨム様、なろう様にも連載しています。
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