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第17章 風の国ストムバアル『暴食』の大罪騒乱編
第470話 vs赤アリ その2
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赤アリはフレアハルトを溶岩の海へ叩き落した後、続けざまにフレイムハルトを攻撃。
フレイムハルトは攻撃を迎え撃つべく空中で身構えるも、その攻撃速度の早さに対応し切れず、一撃目に腹部を強打され、二撃目、三撃目と顔や体を連打され――
「ぐぁっ、がはっ!」
――最終的にはフレアハルト同様、溶岩の海へと叩き落された。
「ぐあぁぁぁ!!」
バシャーンという炎のしぶきを上げ、溶岩の海へ沈むも、その火耐性の高さから溶けることなくすぐに浮上。
「ぷはっ!」
不意打ちだったフレアハルトとは違い、ダメージはそれほどでもなかった。
先に落ちたフレアハルトが少し遅れて溶岩の海から顔を出す。
「ご無事でしたか!」
「痛つつ……お主は大丈夫か?」
「こ、こちらのセリフですよ、頭は大丈夫ですか?」
「その聞き方だと頭悪いと言われてるように聞こえるのだが……」
「冗談を言ってる場合ではありません!」
「まあ大丈夫だ。竜人形態でなければ恐らく即死だったがな。溶岩の中で火の魔力を吸って少し回復してきた。腫れも無いだろう。それより見ろ、ヤツのあの腹辺りから出ている副脚を」
フレイムハルトが上空を見上げると、赤アリの副脚に炎が灯っているのが見て取れた。
「あの副脚が出す炎の推進力を使って、我々の後ろに現れたということですか?」
「そうらしいな。あの八つある副脚からバーナーのように炎を出すことで空を飛んでるらしい。放出を強めることで飛ぶ速度を早く、弱めることで遅く、八つのうちどこから炎を出すかで急激な方向転換をしているようだ。あっという間に我らの頭上に現れたのは放出する炎を強め、超速度で接近したためであろう」
「なるほど」
レッドドラゴンの生活に『バーナー』という単語は無い。これはアルトレリアで何でも屋を経営していて、建設や板金に携わるうちに覚えた言葉だった。
ちなみにフレアハルトの話に一応頷きはしたものの、フレイムハルトは『バーナー』が何のことなのかもちろん分かっていない。
更に余談だが、現代の地球人であれば炎で加速する場合『ロケットエンジンのように』などと例えに使うところだが、フレアハルトの周りにはそんなもの存在しないため、放出の仕方がよく似ている『バーナー』で例えられた。
「四つある主脚は使わないのですね」
「あれは専ら歩く用だろうな。アメンボのように溶岩の上を歩く時にも使っておったようだし」
「あの……聞き返すのもと思って黙っていましたが、『バーナー』とか『アメンボ』って何ですか?」
「…………この戦いが終わってから教えてやる。族長になる前にお主も一度赤龍峰の外に出て見分を広めた方が良さそうだな。それにしても、随分戦いづらい戦場に変えてくれたものだ……」
見渡す限り溶岩の海。
足場になりそうなところは一割ほどしかない。
「空中戦が主になりそうですね」
「いや、足場があるところまで誘い出すか。我らの追跡を諦め、魔力充填を再開しても妨害されるのは分かっているだろうから、安全に充填するために是が非でも我らを殺そうとするだろう。副脚で飛ぶのにも魔力を使っておるようだから、今の所有魔力で風の国の兵士たちを全滅させることは出来ないとヤツも理解しているだろうからな」
「確かに……炎に強く、ヤツの魔力充填を妨害できるのは我らくらいですからね。生きているのは邪魔と考えるでしょうね」
「さて、少し作戦会議だ。我がヤツの――」
「!! 兄上! ヤツが攻撃してきます!」
フレアハルトが話を終える前に赤アリが上空から急接近、右腕を大きく振りかぶって抉り取らんばかりに攻撃してきた!
回避のため、慌てて溶岩の海から飛び出る二人。それぞれ別の方向へ飛ぶ。離れる前にフレアハルトが叫んだ。
「一旦ここから離れる! 地面のあるところまで飛ぶぞ!」
ここへ来た時同様、ブースト飛行を使い超スピードで溶岩地帯から離れる二人。
それを赤アリはやはり超スピードで追いかける。その速度は二人の倍以上の速度だった。
「うおぉぉ……は、早い! 何だあの速度は!?」
「あ、あの速度で我々の頭上に現れたのですね……」
八脚から瞬間的に強い炎を噴出し、短距離間を点々と移動する移動方法。長距離にも応用され、二人を追いかける。
が――
「ん? 何だ? 徐々に遅くなっておらんか?」
「貯蔵していた魔力が切れたのかもしれませんね。さっきまで煌々と輝いていた体の光ももう微かに光ってる程度ですし」
「チャンスだ! さっきと比べるとかなり弱体化しているようだ!」
赤アリの急激な弱体化から、追いつかれることなく無事に地面のあるところに着くことができた。
「よし、仕切り直しだ!」
「まずは私が行きましょう!」
広げていた翼を収納し、地上戦に適した形態へと姿を変える。
フレアハルトたちと少し遅れて着地した赤アリに近付き、様子見の肉弾戦。
双方でパンチの応酬が行われる。少しの間は双方ともに決定打となる攻撃は繰り出せなかった。
しばらくの応酬後、フレイムハルトのパンチが赤アリの胴体にクリーンヒット! 赤アリは腹を抑えてうずくまった。のだが……
「痛っったぁ!! あ、兄上ダメです! 硬すぎて素手で戦うと、こちらの拳も無事では済みません!」
「硬さは我らのウロコ以上か……」
赤アリの外骨格は、ヴァントウで別動隊が戦った銀色のアリほど常軌を逸した硬度はないものの、それでも生物の身体としては頂点に位置するほどの硬さを誇っていた。
「おい! これを使え!」
フレアハルトが竜燐の槍を投げて渡した。
「さっき投げませんでしたっけ?」
「お主らが肉弾戦をやっておる間にもう一本作った。これなら痛みなど気にせずに戦えよう」
「助かります! うおぉぉ!!」
槍を手にし、赤アリを一突きにしようと走り出した直後、フレアハルトが赤アリの異変に気付いた。
「待て! 副脚が地面に刺さっている! 体の光が戻りつつある! 魔力を回復してるぞ!」
「えっ!?」
フレイムハルトとのパンチの応酬の間、副脚を地面に突き刺し、そこから魔力の充填を図っていた。
魔力が回復した赤アリはフレイムハルトとの距離を瞬時に縮め、炎を纏った拳で殴りつける。
驚いたフレイムハルトは咄嗟に左腕でガードするも――
「熱っっ!」
滅多に負うことのない火傷を受けてその場にうずくまってしまった。
見かねたフレアハルトが横やりを入れる。
「うおおぉぉ!!」
赤アリを思いっきり蹴り飛ばす。竜人形態のレッドドラゴン蹴りを受け、土煙を上げ、地面を転がり回りながら削りながら遠く離れた場所まで吹っ飛んだ。
「危なかったな。気付くのが一瞬遅れたらやられていたかもしれぬぞ。…………腕を押さえてどうかしたか?」
「この炎……我々をも焼く炎のようですよ……」
小さい範囲ではあるものの、左腕のウロコが一部剥がれ、皮膚がケロイド状態に変質していた。
溶岩の海に沈んだ時ですら火傷することがなかった二人のレッドドラゴンは、拳に纏わせただけのほんの小さな炎で火傷をした事実に戸惑う。
「な!? どういうことだ!? たかが拳を覆っていた程度の弱い炎だろ? それほど温度が高かったとは思えんぞ!?」
「わ、我々にもダメージを与えうる魔力が込められているということでしょう。恐らく我々レッドドラゴンの王族と同質の『火に強い者にもダメージを与え得る能力』が」
「そういえばアルトラが我の使う攻撃の話をする時に、訳の分からん単語を口にしておったな。確か……『火属性のれべるじゅういち』がどうのこうのという……」
「『れべるじゅういち』? 聞き慣れませんね。それが何だというのですか?」
「普段炎が効かんアルトラにも、『れべるじゅういちの炎』は効くとかなんとか……『聖炎耐火の儀』の時に五人で五方向から炎を吐いたにしてはアルトラの火傷は極端に少なかったと思わんか?」 (第102話から第103話参照)
「確かに……両手くらいしか火傷していませんでしたね。たった一分から二分とは言え、普通の亜人なら消し炭でもおかしくなかった火力のはずですが……」
「参加した五人の中で『れべるじゅういちの炎』を使っていたのはお主だけだそうだ。もう少し突っ込んで聞いたが、その『れべるじゅういちの炎』には『まほうしょうへき』とか言う魔力の壁を一部無効化する能力があるそうだ。これは、強い魔力を持つ特定の種族に備わった防御魔法のようなもので自動的に自身の周囲を覆っているらしい」
「では我々の身体にもその『まほうしょうへき』が備わっているから溶岩ですら耐えられるということですか?」
「恐らく……」
「つまり炎に強い者を焼ける炎? では、あの赤アリが使ってるのがその『れべるじゅういちの炎』というわけですか?」
「た、多分な。よく分からん単語だらけだったから話半分に聞いていたが。『じゅういち』は恐らく10の次なんだろうが、『れべる』が何のことを指しているのか分からなかったから確証は無い」
『属性Lv11』という単語は、アルトラとカイベルの間だけでの共通認識のため、魔界に住む生物には全く共有・認識されていない。
そのため『Lv11』と言葉に吐いたところで、理解できる者はほぼいない。フリアマギア辺りは前後の文脈を汲み取って理解するかもしれないが……
「アルトラ殿の話を信じるなら、ヤツの炎は我々を消し炭にできる可能性があるということですね?」
「そうなるな。さっき溶岩の海を広げた爆発の時は直感で上空へ逃げたが、もし喰らってたら我らはここには居らんかったかもな。だがアルトラによれば我らの炎も『れべるじゅういちの炎』だ。裏を返せば我らの炎もヤツを焼けるということだ。さあ、ヤツが帰って来たぞ」
砂煙が収まり、とぼとぼとフレアハルトたちへ向かって歩いてくる赤アリ。
「さて、さっき中断された作戦会議だ。我がヤツの動きを止めるから、止めたら二人同時に【インフェルノ・ブレス】だ」
「ど、どうやって止めるつもりですか!?」
「考えがある! やはり溶岩は我らの主戦場だ!」
槍を手に走り出すフレアハルト。
フレイムハルトは攻撃を迎え撃つべく空中で身構えるも、その攻撃速度の早さに対応し切れず、一撃目に腹部を強打され、二撃目、三撃目と顔や体を連打され――
「ぐぁっ、がはっ!」
――最終的にはフレアハルト同様、溶岩の海へと叩き落された。
「ぐあぁぁぁ!!」
バシャーンという炎のしぶきを上げ、溶岩の海へ沈むも、その火耐性の高さから溶けることなくすぐに浮上。
「ぷはっ!」
不意打ちだったフレアハルトとは違い、ダメージはそれほどでもなかった。
先に落ちたフレアハルトが少し遅れて溶岩の海から顔を出す。
「ご無事でしたか!」
「痛つつ……お主は大丈夫か?」
「こ、こちらのセリフですよ、頭は大丈夫ですか?」
「その聞き方だと頭悪いと言われてるように聞こえるのだが……」
「冗談を言ってる場合ではありません!」
「まあ大丈夫だ。竜人形態でなければ恐らく即死だったがな。溶岩の中で火の魔力を吸って少し回復してきた。腫れも無いだろう。それより見ろ、ヤツのあの腹辺りから出ている副脚を」
フレイムハルトが上空を見上げると、赤アリの副脚に炎が灯っているのが見て取れた。
「あの副脚が出す炎の推進力を使って、我々の後ろに現れたということですか?」
「そうらしいな。あの八つある副脚からバーナーのように炎を出すことで空を飛んでるらしい。放出を強めることで飛ぶ速度を早く、弱めることで遅く、八つのうちどこから炎を出すかで急激な方向転換をしているようだ。あっという間に我らの頭上に現れたのは放出する炎を強め、超速度で接近したためであろう」
「なるほど」
レッドドラゴンの生活に『バーナー』という単語は無い。これはアルトレリアで何でも屋を経営していて、建設や板金に携わるうちに覚えた言葉だった。
ちなみにフレアハルトの話に一応頷きはしたものの、フレイムハルトは『バーナー』が何のことなのかもちろん分かっていない。
更に余談だが、現代の地球人であれば炎で加速する場合『ロケットエンジンのように』などと例えに使うところだが、フレアハルトの周りにはそんなもの存在しないため、放出の仕方がよく似ている『バーナー』で例えられた。
「四つある主脚は使わないのですね」
「あれは専ら歩く用だろうな。アメンボのように溶岩の上を歩く時にも使っておったようだし」
「あの……聞き返すのもと思って黙っていましたが、『バーナー』とか『アメンボ』って何ですか?」
「…………この戦いが終わってから教えてやる。族長になる前にお主も一度赤龍峰の外に出て見分を広めた方が良さそうだな。それにしても、随分戦いづらい戦場に変えてくれたものだ……」
見渡す限り溶岩の海。
足場になりそうなところは一割ほどしかない。
「空中戦が主になりそうですね」
「いや、足場があるところまで誘い出すか。我らの追跡を諦め、魔力充填を再開しても妨害されるのは分かっているだろうから、安全に充填するために是が非でも我らを殺そうとするだろう。副脚で飛ぶのにも魔力を使っておるようだから、今の所有魔力で風の国の兵士たちを全滅させることは出来ないとヤツも理解しているだろうからな」
「確かに……炎に強く、ヤツの魔力充填を妨害できるのは我らくらいですからね。生きているのは邪魔と考えるでしょうね」
「さて、少し作戦会議だ。我がヤツの――」
「!! 兄上! ヤツが攻撃してきます!」
フレアハルトが話を終える前に赤アリが上空から急接近、右腕を大きく振りかぶって抉り取らんばかりに攻撃してきた!
回避のため、慌てて溶岩の海から飛び出る二人。それぞれ別の方向へ飛ぶ。離れる前にフレアハルトが叫んだ。
「一旦ここから離れる! 地面のあるところまで飛ぶぞ!」
ここへ来た時同様、ブースト飛行を使い超スピードで溶岩地帯から離れる二人。
それを赤アリはやはり超スピードで追いかける。その速度は二人の倍以上の速度だった。
「うおぉぉ……は、早い! 何だあの速度は!?」
「あ、あの速度で我々の頭上に現れたのですね……」
八脚から瞬間的に強い炎を噴出し、短距離間を点々と移動する移動方法。長距離にも応用され、二人を追いかける。
が――
「ん? 何だ? 徐々に遅くなっておらんか?」
「貯蔵していた魔力が切れたのかもしれませんね。さっきまで煌々と輝いていた体の光ももう微かに光ってる程度ですし」
「チャンスだ! さっきと比べるとかなり弱体化しているようだ!」
赤アリの急激な弱体化から、追いつかれることなく無事に地面のあるところに着くことができた。
「よし、仕切り直しだ!」
「まずは私が行きましょう!」
広げていた翼を収納し、地上戦に適した形態へと姿を変える。
フレアハルトたちと少し遅れて着地した赤アリに近付き、様子見の肉弾戦。
双方でパンチの応酬が行われる。少しの間は双方ともに決定打となる攻撃は繰り出せなかった。
しばらくの応酬後、フレイムハルトのパンチが赤アリの胴体にクリーンヒット! 赤アリは腹を抑えてうずくまった。のだが……
「痛っったぁ!! あ、兄上ダメです! 硬すぎて素手で戦うと、こちらの拳も無事では済みません!」
「硬さは我らのウロコ以上か……」
赤アリの外骨格は、ヴァントウで別動隊が戦った銀色のアリほど常軌を逸した硬度はないものの、それでも生物の身体としては頂点に位置するほどの硬さを誇っていた。
「おい! これを使え!」
フレアハルトが竜燐の槍を投げて渡した。
「さっき投げませんでしたっけ?」
「お主らが肉弾戦をやっておる間にもう一本作った。これなら痛みなど気にせずに戦えよう」
「助かります! うおぉぉ!!」
槍を手にし、赤アリを一突きにしようと走り出した直後、フレアハルトが赤アリの異変に気付いた。
「待て! 副脚が地面に刺さっている! 体の光が戻りつつある! 魔力を回復してるぞ!」
「えっ!?」
フレイムハルトとのパンチの応酬の間、副脚を地面に突き刺し、そこから魔力の充填を図っていた。
魔力が回復した赤アリはフレイムハルトとの距離を瞬時に縮め、炎を纏った拳で殴りつける。
驚いたフレイムハルトは咄嗟に左腕でガードするも――
「熱っっ!」
滅多に負うことのない火傷を受けてその場にうずくまってしまった。
見かねたフレアハルトが横やりを入れる。
「うおおぉぉ!!」
赤アリを思いっきり蹴り飛ばす。竜人形態のレッドドラゴン蹴りを受け、土煙を上げ、地面を転がり回りながら削りながら遠く離れた場所まで吹っ飛んだ。
「危なかったな。気付くのが一瞬遅れたらやられていたかもしれぬぞ。…………腕を押さえてどうかしたか?」
「この炎……我々をも焼く炎のようですよ……」
小さい範囲ではあるものの、左腕のウロコが一部剥がれ、皮膚がケロイド状態に変質していた。
溶岩の海に沈んだ時ですら火傷することがなかった二人のレッドドラゴンは、拳に纏わせただけのほんの小さな炎で火傷をした事実に戸惑う。
「な!? どういうことだ!? たかが拳を覆っていた程度の弱い炎だろ? それほど温度が高かったとは思えんぞ!?」
「わ、我々にもダメージを与えうる魔力が込められているということでしょう。恐らく我々レッドドラゴンの王族と同質の『火に強い者にもダメージを与え得る能力』が」
「そういえばアルトラが我の使う攻撃の話をする時に、訳の分からん単語を口にしておったな。確か……『火属性のれべるじゅういち』がどうのこうのという……」
「『れべるじゅういち』? 聞き慣れませんね。それが何だというのですか?」
「普段炎が効かんアルトラにも、『れべるじゅういちの炎』は効くとかなんとか……『聖炎耐火の儀』の時に五人で五方向から炎を吐いたにしてはアルトラの火傷は極端に少なかったと思わんか?」 (第102話から第103話参照)
「確かに……両手くらいしか火傷していませんでしたね。たった一分から二分とは言え、普通の亜人なら消し炭でもおかしくなかった火力のはずですが……」
「参加した五人の中で『れべるじゅういちの炎』を使っていたのはお主だけだそうだ。もう少し突っ込んで聞いたが、その『れべるじゅういちの炎』には『まほうしょうへき』とか言う魔力の壁を一部無効化する能力があるそうだ。これは、強い魔力を持つ特定の種族に備わった防御魔法のようなもので自動的に自身の周囲を覆っているらしい」
「では我々の身体にもその『まほうしょうへき』が備わっているから溶岩ですら耐えられるということですか?」
「恐らく……」
「つまり炎に強い者を焼ける炎? では、あの赤アリが使ってるのがその『れべるじゅういちの炎』というわけですか?」
「た、多分な。よく分からん単語だらけだったから話半分に聞いていたが。『じゅういち』は恐らく10の次なんだろうが、『れべる』が何のことを指しているのか分からなかったから確証は無い」
『属性Lv11』という単語は、アルトラとカイベルの間だけでの共通認識のため、魔界に住む生物には全く共有・認識されていない。
そのため『Lv11』と言葉に吐いたところで、理解できる者はほぼいない。フリアマギア辺りは前後の文脈を汲み取って理解するかもしれないが……
「アルトラ殿の話を信じるなら、ヤツの炎は我々を消し炭にできる可能性があるということですね?」
「そうなるな。さっき溶岩の海を広げた爆発の時は直感で上空へ逃げたが、もし喰らってたら我らはここには居らんかったかもな。だがアルトラによれば我らの炎も『れべるじゅういちの炎』だ。裏を返せば我らの炎もヤツを焼けるということだ。さあ、ヤツが帰って来たぞ」
砂煙が収まり、とぼとぼとフレアハルトたちへ向かって歩いてくる赤アリ。
「さて、さっき中断された作戦会議だ。我がヤツの動きを止めるから、止めたら二人同時に【インフェルノ・ブレス】だ」
「ど、どうやって止めるつもりですか!?」
「考えがある! やはり溶岩は我らの主戦場だ!」
槍を手に走り出すフレアハルト。
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