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第17章 風の国ストムバアル『暴食』の大罪騒乱編

第442話 各所への要請

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 と言うわけで、風の国ストムバアルに行く旨とその理由をリーヴァントと副リーダー四人に伝え、旅の支度をする。

「それほど危険な生物なのですか?」
「そうらしい。博物館で実物を見たことがあるけど、ひと噛みで亜人の腕くらいなら吹っ飛ぶんじゃないかな?」
「そんなに巨大なんですか!?」
「軍隊とか騎士団とかが総出で対処しなくちゃいけないくらいの害虫らしいから、基礎訓練くらいしか受けてないアルトレリアの自警団じゃ対処は難しいかもしれない。もしここにジャイアントアントが出現したら、被害が出る前に避難指示と各国への救援要請をお願い。特徴は『巨大なアリ』ってところだから一目見てすぐ分かると思う」

「「「「「分かりました」」」」」

「それと各国から来る隊商の中には腕に覚えがある者もいるかもしれない。彼らにも応援要請して。ああ、カイベルは置いて行くからそんな事態が来た場合は存分に頼って良いから」

 今回はできれば連れて行きたいところだが、様子を聞く限りアルトラルサンズ国内に出現しないとも限らない。
 アスタロトには悪いけど、私の優先順位はアルトレリアが優先だから、カイベルは置いていく。
 仮にアリがここに出現しても、彼女がここに残れば適切に対処してくれるだろう。

「それなら安心ですね! では気を付けて行って来てください」

   ◇

 各国大使館へ状況説明と、もしもアリがアルトレリアに出現した時は救援要請をするかもしれない旨を伝える。
 雷の国エレアースモ大使館に状況説明とお願いをしに行ったところ、大使のエミリーさん自ら対応してくれた。

「アルトラ様、ごきげんよう。あなたが直接ここを訪れたということは、ジャイアントアントのことですね?」
「もう知れ渡ってるんですか?」
「既にストムバアルからジャイアントアント発生の通達がされています。今回は今までとは少し違うようで、飛行するアリや、水中でも活動できるアリが発見されたそうですね? そのため危険度が高いとみなされ、発見されて日が浅いにもかかわらず、発生源から遠い国にも警告が来ています」

 周辺国には協力要請しているって言ってたけど、遠く離れた国にも既に通達されているのか。

「通常もジャイアントアントが見つかったら、すぐに主要七大国に通達されるものなんですか?」
「いえ、今回は特に異様な速さですね。アリが世界中に広がらなければ良いのですが……」

 不穏だな……

「ですので、現在は世界中の隊商、トレジャーハンター、魔物駆除業者、傭兵にもある程度周知されていると思います。ここにアリが出現しても、アルトラルサンズを訪れている隊商その他の方々が協力して討伐を手伝ってくれるかと。ここに出現しても五大国が協力して駆除をお手伝いしますのでご心配なく!」
「そうですか。アルトラルサンズはまだまだ小さい国なので、それを聞いて安心しました!」

 残りの四ヵ国の大使館にも状況説明と救援依頼。
 雷の国大使館で聞いた通り、今回は異例の事態らしく他の四大国でも既に知られているようで、話が早かった。

 次は同行者を頼みに行く。フレアハルトにお願いしよう。今回の作戦で彼は必要不可欠。
 そうだ、クリューにも同行をお願いしよう。
 魔王クラスの能力を持つ彼が居てくれれば『暴食グラトニー』の対処も相当楽になるかもしれない。

   ◇

 というわけで、先にクリューの住む家を訪れた。
 ――のだが……

「いない……何で肝心な時にいないのよ! 死神業務にでも行ってるのかしら?」

 彼は戦力として申し分ないから連れて行きたい。
 待つか? でもいつ帰ってくるか分からないし……
 そうだ! 何でも屋のスケジュールはどうなってるんだろう。フレアハルトのところに行ってみよう。あそこなら彼のスケジュールが分かっているはずだ!

   ◇

 何でも屋を訪れた。

「フレアハルト、ちょっと厄介なことになっててね、手伝ってもらえると嬉しい」
「厄介なこと? 今度は何だ? また魔王に目を付けられたとかではないだろうな?」
「目を付けられているわけじゃないけど、魔王には関係しているかな。今風の国から相談を受けててね――」

 ここまでの経緯を説明。

「――ってわけで、フレアハルトにも手伝ってもらいたいの」
「詳細は分かった。だが、我程度の力では魔王相手にはどうにもならんぞ?」

 “我程度”か……
 う~ん……七大国会談の時は恐がりながらもサタナエルに反論できてたけど、先日のルシファーへの謁見では本人の意思に反してひざまずかされたから、大分自信を喪失させてしまったみたいだ……

「魔王は多分他国の精鋭たちが相手をするだろうから、あなたにはその強力な炎のブレスを見込んで別のことをお願いしたい」
「別のこととは何だ?」
「あなたにはアリの巣穴を発見次第焼き払ってほしい」
「巣を焼き払う? 中々えげつないことをするな」
「発生源とは別のところにも巣が作られてるらしくてね、細々と潰していかないと数が多過ぎて対処し切れないらしいから」

 潜伏していた年数を考えると、今回も多分ハチの時同様コロニーが多数出来ているはず。
 コロニーごとに女王蟻が一体か、複数のコロニーに一体かは分からないが、穴の外から焼き払ってしまえばかなりの数の働きアリを減らせると思う。

「だとしたら、今回は我々三人では対処し切れんな。赤龍峰の連中にも頼むか」
「それはありがたいわ! じゃあすぐ行こう!」
「今すぐか!?」
「緊急を要する事案だから早い方が良い」

 そうだ、クリューのことも聞いておかないと。

「ところでアリサ、クリューの今日のスケジュールってどうなってる?」
「今日は農作業の手伝いですね。ですが、急に用事ができたからとお休みを取られたので、どこへ行ったのかまでは……」

 緊急の死神業務か?
 仕方ない……同行をお願いしようと思ったけど、諦めるか。

 ゲートで赤龍峰内部と繋げる。

「アリサ、今日から少しの間、何でも屋は休業だ。仕事の断りを入れておいてくれ。緊急の用事ができたと」

 ゲートをくぐる前にフレアハルトがアリサへ指示を残す。

「了解しました」

   ◇

 赤龍峰火山内部・族長謁見の間――

「父上! ご無沙汰しています」
「族長さん、お久しぶりです」
「フレアハルトか、アルトラ殿も? ここへ来るなど珍しいですな」

 着いて早々本題を切り出す。

「レッドドラゴンの中で強い方を見繕って二十人ほど貸していただきたいのです」
「二十人も? レッドドラゴンの二十人と言えば大戦力に値しますが、どこと戦争するおつもりですか?」
「戦争ではないですが、下手をすれば風の国の滅亡、ひいては世界が滅亡する危機に瀕しているそうなので。その原因の除去に協力してもらいたのです」
「世界が滅亡? 一体何が起こっているのですか?」

 ここまでの経緯を説明。

「ジャイアントアント……山に引きこもっているとそういった情報も入ってきませんな。そんな危険なアリがいるとは……分かりました。二十人、戦力として十分に働けそうな者を見繕っておきます。急なことなので少々お時間を取らせてしまいますが、お待ちいただけますかな?」
「お願いします」
「アルトラ、準備が出来次第、我が超音波を放って知らせるから迎えに来てくれ。風の国には協力の申し出を受けると伝えておいてくれ」
「分かった、お願いね」

 私は一旦我が家へ戻ることにした。

   ◇

「あ、お帰りなさいベルゼビュート様ぁ。さっきメイドさんが帰って来ましたよ」

 庭に居るネッココの観察をして暇を潰していたティナリスからカイベルが帰って来たとの報告を受ける。

「アスタロトは中に居る?」
「大使館に現況を聞きに行くって言って、ベルゼビュート様の後に出ていきましたよ」

 じゃあ二人とも揃ってからの方が良いか。

「イルリースさんは?」
「中で椅子にもたれかかってうたた寝してます」

 国内の状況が状況だからお疲れなのかな?
 ブランケットでもかけてあげるか。

 かけた直後に目を覚ました。

「あ! すみません! わたくし寝てしまったようで……」
「お疲れみたいだし、横になってても良いですよ?」
「ありがとうございます。ですが、椅子で十分です。申し訳ありませんが少し仮眠を取らせていただきます」

 再び座ったまま目を閉じた。
 我が家内で待っていると、少しして険しい顔で帰って来たアスタロトに戦場の現況を聞かされる。

「ベルゼビュート様、援軍は期待できそうですか?」
「うん、大丈夫。取り付けて来たよ。選りすぐってもらえることになった。」
「現場の状況は芳しくないようです……今、我が国の大使館へ行って来たところ、ヴィントルの戦況が変わったようで増援が必要な事態に陥ったようです。すぐに風の国首都ボレアースの城へ戻り、援軍の編成をする必要があります。ベルゼビュート様側の援軍はどれくらいかかるのでしょうか? 今すぐにでもここを発ちたいと思うのですが……」
「い、今すぐ!? も、もうちょっと待ってもらえるかな? 助っ人の人選に少しかかるって言うから……」
「一刻を争います! その助っ人は居れば戦況を覆せるほどの人物なのですか!?」
「さっきアリを退治するのに炎が効果的って言ってたよね?」
「はい」
「戦況は覆せるよ! そこは保証する! 彼らが居ると居ないとでは天地の差が出ると確信できる」
「そこまではっきりと断言できるほどの人物なのですか?」
「火魔法のエキスパートたちだからね。人選が終わったら合図をしてもらえる手筈だから、もう少しだけ待って!」
「…………分かりました……そこまで言うのであれば……」
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