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第17章 風の国ストムバアル『暴食』の大罪騒乱編
第440話 七つの大罪『暴食』の所在が判明?
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アルトレリアが五大国と国交が結ばれてからふた月あまり。
アルトラ邸にて――
コンコンコン
「アルトラ様~、風の国の大使館からご連絡です~」
この声はマリリアか。
ガチャ
「はい、連絡ってどんな用事?」
「それが……魔王代理の方がアルトレリアを訪れるそうです」
「そう、わかったよ。それで何日後に?」
「と言うか……もう来てます」
ん? 聞き間違えたか?
「誰が来てるって?」
「アスタロトと名乗る魔王代理の方が直接……」
え!? アスタロト!?
もう来てる!? 風の国の魔王代理が!?
大使館の連絡と同時に来るって、早過ぎない? 空間魔法っていう移動手段があるから、魔界ではこれが普通なのかしら?
いや、でも魔王代理が大使館へ連絡と同時に来るってことは、相当緊急の用事ってことなのかもしれない。
「分かった、じゃあ登庁するよ」
「いえ、こちらに来たいとのことです」
ああ……ってことはまだあまり知られたくない話ってわけか……
「分かった。こちらへ通してもらえる?」
「了解しました」
◇
「お久しぶりでございます、ベルゼビュート様」
「ヤッホー! お久しぶりですベルゼビュート様ぁ」
ティナリスも一緒か。
何なんだ、突然魔王代理と騎士団のトップが一緒に訪ねてくるなんて……
嫌な予感しかしない。
「イルリースさん、最近度々会いますね」
今回も彼女が運搬役。もしかしてアルトレリア専門になってるのかしら? それとも風の国って空間魔術師不足で彼女しかいないとか?
「そうですね。ですが前回アスク先生とネム先生を送って来た時とは違って今回は緊急のお話ですので」 (第422話参照)
やっぱり緊急なのね。
でも風の国とアルトラルサンズに接点はまだアスク先生とネムさんくらいしか無いのに、一体どんな話が?
まあとりあえず話を聞いてみましょうか。
「それでアスタロト殿、なぜ私に会いに来たんですか? 私はもう『暴食』の大罪の宿主じゃありませんし、風の国とは無関係だと思うんですけど……?」
「どうか呼び捨てでお呼びください」
「でも……あなたは風の国の魔王代理ですし……」
「呼び捨てで!」
何でそこまでこだわるんだ?
まさか、これも私を女王に据えようという計画の一環? (第235話参照)
「わ、わかりました……いや、わかったよ。それでなぜ私に会いに?」
「まさにその大罪のことでお話に参りました。実は最近我が国のとある場所に『暴食』の能力に酷似した能力を持つ者が現れたとの報告を受けました」
「あ、そうなの!? やっと見つかったのね。じゃあそのヒトが次の王様になるってことかな?」
ようやく行方不明だった大罪の一つが見つかったのか。
これでアスタロトも、私を女王にするのを諦めてくれるだろう。
「いえ……残念なことに、その者はヒトではないようでして……」
「ヒトではない? 亜人でも魔人でも精霊でもないってこと? 七つの大罪ってヒト以外も宿主にするの?」
「我々も知らなかったことです。国が興って九千年余り、そんなことは前代未聞でしたので。もっとも……大罪ごとに性質が違うのであり得ないことではないのですが」
「性質?」
「例えば、歴史上の継承者を照らし合わせるとレヴィアタン殿の『嫉妬』とアスモデウス殿の宿す『色欲』の大罪は女性しか宿主の対象にせず、ルシファー殿の宿す『傲慢』は男性しか宿主の対象にしないとされています」
「えっ!? 大罪自体に性格があるの!?」
大罪を受け継いだ時に、そのヒトと大罪との相性次第で性格が変わるのかと思ってた。大罪自体にも好き嫌いがあるのか。
そういえば、エミリーさんがアスモの宿す『色欲』は光魔法が嫌いだから白天使は継承の対象にしないって言ってたな。 (第125話参照)
「そのように大罪によって性質に違いがありますが、歴史上ヒト以外を宿主にした例がありませんでしたので、ヒト以外を宿主に選ぶというところに思い至りませんでした」
「なるほど。それで、その発見された場所と宿主にされた生物は何なの?」
「場所は樹の国との国境の国、風の国の属国ヴィントル。所謂戦時下で言うなれば『緩衝地帯』といった国です。宿主となった者は、どうやら『ジャイアントアント』という蟻のようなのです」
「蟻!?」
ジャイアントアントって、何か聞き覚えあるぞ?
確か……博物館に展示されてた巨大昆虫だ! (第271話参照)
「それって三大凶虫ってやつよね!?」
「はい、その通りです」
デスキラービーに続いて、第二の三大凶虫を相手にしなきゃいけないってことか……
「ティナリス、あなた大変ね。ハチに続いて次はアリって……」
「まあ私も国に従事する兵士ですから仕方ないですよ」
「話を戻してよろしいでしょうか?」
「あ、はい、どうぞ」
「接敵した調査兵の話では、どうやらそのジャイアントアントの女王とみられる個体が『暴食』の大罪の宿主となっているようなのです」
女王蟻……
何か聞いた覚えがあるぞこんな展開。
とある漫画に食った相手の能力をストックして、次世代の子供に遺伝させる『キマイラアント』っていうアリの敵がいた。その名の通り複数の生物が融合している『キマイラ』から名付けられたアリ。
レヴィに聞いた話によると、『暴食』の大罪としての権能は『喰べた相手の能力を得る』と『喰べた対象に変身できる』って能力だったはず。
ってことは……
「もしかして、その女王蟻の子供がアリ以外の見た目をしてるとか? 例えば亜人みたいな容姿だったり。もしくはアリに何か混じってるとか、例えばクモの特徴を持ってたり、それら別の生物の能力を使えるとか?」
「いえ、今のところそう言った異様な姿の働きアリの報告はありません」
「あ、そうなの?」
それを聞いて大分安心した。
子供にまで遺伝するような能力かと思ったが、大罪の影響があるのは宿主となった一代限りなのね。
もし女王蟻の子供にまで他生物の特徴が遺伝するようなら、デスキラービー以上の大惨事に発展していただろうことは想像に難くない。
でも、まだ報告に上がってないだけで、別の能力を持ってるヤツがいる可能性は十分にある。
「しかし仰る通り、特に問題なのは女王蟻でして、生還した調査兵の話によると亜人のような姿に変身するところを目撃したとのこと。それどころかアリの女王にも関わらず、鳥のような羽が生えたり、皮膚がウロコのようになったり、背中が亀の甲羅のようになったりするそうです。また、片言ながら人語をしゃべったりするという話まで出てきています」
「それってやっぱり……」
「『暴食』を宿しているからと見て間違いないでしょう。様々な生物に変身する生物など、他に見たことがありませんから」
女王蟻については、ホントに『キマイラアント』みたいだな……これが『暴食』の大罪の能力か。
と言うか、亜人の姿を取るってことは、誰か一人以上は食われてる亜人がいるってことよね?
それは、通常のアリのように死体を食ったのか、生きてる亜人を食ったのかまではわからないけど……
やっぱりヒト以外が『暴食』を得ると、その力をフルに使おうとするのね……
ここに来て表面化してきたってことは、前々世の私が死んでからおよそ二十七年間地下に潜んでたってことなのかな?
ってことは、もしかしたら密かに物凄い多種類の生物を食べてる可能性があるんじゃないの?
しかも変身能力をフルに使ってるってことは、それらの生物の能力も会得しているわけで……ヒトではないだけで魔王の力を得た生物に対して、魔王の力を失っている私が勝てる相手なのかしら?
「もしかして最近風の国で発見されたっていうジャイアントアントの集団がそれ?」
「ご存じでしたか。既に接敵しており、現在も働きアリの集団との交戦状態が続いています」
「昨日ちょうどラジオで聞いてたところ。確か……ジャイアントアントってかなり大きかったよね?」
「体高二メートル、体長三メートルというところでしょうか」
「改めて聞いても大きいわ……」
しかも普通にその辺に生息するアリの生態と同様、これが一体だけではなく集団で存在しているというところに戦慄を覚える……
生まれる数は流石に普通のアリほど多くは無いでしょうけど……これがもし普通のアリと遜色無いほどの生産数を誇るなら、もうとっくの昔に魔界はアリの一大帝国になっているはずだし。
「ご存じかもしれませんが、その身体の大きさから、ジャイアントアントは全世界的に見つけ次第駆除する対象になっています。ですが……今回はなぜか長年発見されずにどんどん個体数を増やしたケースのようで、地上に現れた時には既にかなりの大勢力になっていたようです」
きっと『暴食』の効果で知恵を得た女王の指示ね。戦力が整うまでしばらく潜伏するように命令してたってところか。
「大勢力って……今はどれくらいの被害に?」
「今回最初にジャイアントアントが発見された属国ヴィントルのカゼハナという町は、報告された時点で既に壊滅された後だったようです」
「町が壊滅!? じゃあ住民は!?」
「……ほぼ見つからなかったと報告を受けています。数人から十数人程度が近隣の町で保護されたようですが、全員恐慌状態で事情を聴くにもままならず……辛うじてアリにやられたということだけ。他の住民は恐らくアリに……」
「そう……」
「更に、その近隣の町にも巣穴を拡張をしていたらしく、既に働きアリによる被害が出ています。また、別の報告によるとヴィントル西部で集団で移動している姿が目撃されたとの報告も」
これって放っておいたらあっという間に世界中がアリに蹂躙されるんじゃ……
デスキラービーの親衛蜂ばりにヤバイ案件かもしれない……
「それと、他生物の能力を持つというわけではありませんが、女王蟻の魔力の影響を受けているのか、これまでのアリとは違う性質のアリも登場してきています」
「それって……今までのアリにはない能力を持ってたりするってこと?」
「はい。中には水の中に潜る個体や、飛行する個体まで出てきたようで……」
「アリが?」
潜水するアリなんて聞いたことないな……雨上がりとかに水たまりで水面上をもがいてるのはよく見たことがあるけど。
飛行する個体は、そんな巨体で上手く飛べるのか? もし鳥のように飛べるなら、あっという間に被害範囲が拡大することになる。
「今までのアリで駆除にここまで苦戦することはありませんでした。わたくしどもは他生物の能力とは思っていませんでしたが、もしかしたらこれが?」
「そこまでは分からない……デスキラービーの時も今までに無い能力を持つ個体が出現してたから、もしかしたらそれに類似するケースかも」
まさかデスキラービーと同じで、巣が大きくなれば大きくなるほど強力になる性質なのか?
ハチとアリって確か同じ『ハチ目』だったはず。
それに付け加えて、『三大凶虫』と言われてるくらいだから、デスキラービーと同じような性質を持っててもおかしくはない。
アルトラ邸にて――
コンコンコン
「アルトラ様~、風の国の大使館からご連絡です~」
この声はマリリアか。
ガチャ
「はい、連絡ってどんな用事?」
「それが……魔王代理の方がアルトレリアを訪れるそうです」
「そう、わかったよ。それで何日後に?」
「と言うか……もう来てます」
ん? 聞き間違えたか?
「誰が来てるって?」
「アスタロトと名乗る魔王代理の方が直接……」
え!? アスタロト!?
もう来てる!? 風の国の魔王代理が!?
大使館の連絡と同時に来るって、早過ぎない? 空間魔法っていう移動手段があるから、魔界ではこれが普通なのかしら?
いや、でも魔王代理が大使館へ連絡と同時に来るってことは、相当緊急の用事ってことなのかもしれない。
「分かった、じゃあ登庁するよ」
「いえ、こちらに来たいとのことです」
ああ……ってことはまだあまり知られたくない話ってわけか……
「分かった。こちらへ通してもらえる?」
「了解しました」
◇
「お久しぶりでございます、ベルゼビュート様」
「ヤッホー! お久しぶりですベルゼビュート様ぁ」
ティナリスも一緒か。
何なんだ、突然魔王代理と騎士団のトップが一緒に訪ねてくるなんて……
嫌な予感しかしない。
「イルリースさん、最近度々会いますね」
今回も彼女が運搬役。もしかしてアルトレリア専門になってるのかしら? それとも風の国って空間魔術師不足で彼女しかいないとか?
「そうですね。ですが前回アスク先生とネム先生を送って来た時とは違って今回は緊急のお話ですので」 (第422話参照)
やっぱり緊急なのね。
でも風の国とアルトラルサンズに接点はまだアスク先生とネムさんくらいしか無いのに、一体どんな話が?
まあとりあえず話を聞いてみましょうか。
「それでアスタロト殿、なぜ私に会いに来たんですか? 私はもう『暴食』の大罪の宿主じゃありませんし、風の国とは無関係だと思うんですけど……?」
「どうか呼び捨てでお呼びください」
「でも……あなたは風の国の魔王代理ですし……」
「呼び捨てで!」
何でそこまでこだわるんだ?
まさか、これも私を女王に据えようという計画の一環? (第235話参照)
「わ、わかりました……いや、わかったよ。それでなぜ私に会いに?」
「まさにその大罪のことでお話に参りました。実は最近我が国のとある場所に『暴食』の能力に酷似した能力を持つ者が現れたとの報告を受けました」
「あ、そうなの!? やっと見つかったのね。じゃあそのヒトが次の王様になるってことかな?」
ようやく行方不明だった大罪の一つが見つかったのか。
これでアスタロトも、私を女王にするのを諦めてくれるだろう。
「いえ……残念なことに、その者はヒトではないようでして……」
「ヒトではない? 亜人でも魔人でも精霊でもないってこと? 七つの大罪ってヒト以外も宿主にするの?」
「我々も知らなかったことです。国が興って九千年余り、そんなことは前代未聞でしたので。もっとも……大罪ごとに性質が違うのであり得ないことではないのですが」
「性質?」
「例えば、歴史上の継承者を照らし合わせるとレヴィアタン殿の『嫉妬』とアスモデウス殿の宿す『色欲』の大罪は女性しか宿主の対象にせず、ルシファー殿の宿す『傲慢』は男性しか宿主の対象にしないとされています」
「えっ!? 大罪自体に性格があるの!?」
大罪を受け継いだ時に、そのヒトと大罪との相性次第で性格が変わるのかと思ってた。大罪自体にも好き嫌いがあるのか。
そういえば、エミリーさんがアスモの宿す『色欲』は光魔法が嫌いだから白天使は継承の対象にしないって言ってたな。 (第125話参照)
「そのように大罪によって性質に違いがありますが、歴史上ヒト以外を宿主にした例がありませんでしたので、ヒト以外を宿主に選ぶというところに思い至りませんでした」
「なるほど。それで、その発見された場所と宿主にされた生物は何なの?」
「場所は樹の国との国境の国、風の国の属国ヴィントル。所謂戦時下で言うなれば『緩衝地帯』といった国です。宿主となった者は、どうやら『ジャイアントアント』という蟻のようなのです」
「蟻!?」
ジャイアントアントって、何か聞き覚えあるぞ?
確か……博物館に展示されてた巨大昆虫だ! (第271話参照)
「それって三大凶虫ってやつよね!?」
「はい、その通りです」
デスキラービーに続いて、第二の三大凶虫を相手にしなきゃいけないってことか……
「ティナリス、あなた大変ね。ハチに続いて次はアリって……」
「まあ私も国に従事する兵士ですから仕方ないですよ」
「話を戻してよろしいでしょうか?」
「あ、はい、どうぞ」
「接敵した調査兵の話では、どうやらそのジャイアントアントの女王とみられる個体が『暴食』の大罪の宿主となっているようなのです」
女王蟻……
何か聞いた覚えがあるぞこんな展開。
とある漫画に食った相手の能力をストックして、次世代の子供に遺伝させる『キマイラアント』っていうアリの敵がいた。その名の通り複数の生物が融合している『キマイラ』から名付けられたアリ。
レヴィに聞いた話によると、『暴食』の大罪としての権能は『喰べた相手の能力を得る』と『喰べた対象に変身できる』って能力だったはず。
ってことは……
「もしかして、その女王蟻の子供がアリ以外の見た目をしてるとか? 例えば亜人みたいな容姿だったり。もしくはアリに何か混じってるとか、例えばクモの特徴を持ってたり、それら別の生物の能力を使えるとか?」
「いえ、今のところそう言った異様な姿の働きアリの報告はありません」
「あ、そうなの?」
それを聞いて大分安心した。
子供にまで遺伝するような能力かと思ったが、大罪の影響があるのは宿主となった一代限りなのね。
もし女王蟻の子供にまで他生物の特徴が遺伝するようなら、デスキラービー以上の大惨事に発展していただろうことは想像に難くない。
でも、まだ報告に上がってないだけで、別の能力を持ってるヤツがいる可能性は十分にある。
「しかし仰る通り、特に問題なのは女王蟻でして、生還した調査兵の話によると亜人のような姿に変身するところを目撃したとのこと。それどころかアリの女王にも関わらず、鳥のような羽が生えたり、皮膚がウロコのようになったり、背中が亀の甲羅のようになったりするそうです。また、片言ながら人語をしゃべったりするという話まで出てきています」
「それってやっぱり……」
「『暴食』を宿しているからと見て間違いないでしょう。様々な生物に変身する生物など、他に見たことがありませんから」
女王蟻については、ホントに『キマイラアント』みたいだな……これが『暴食』の大罪の能力か。
と言うか、亜人の姿を取るってことは、誰か一人以上は食われてる亜人がいるってことよね?
それは、通常のアリのように死体を食ったのか、生きてる亜人を食ったのかまではわからないけど……
やっぱりヒト以外が『暴食』を得ると、その力をフルに使おうとするのね……
ここに来て表面化してきたってことは、前々世の私が死んでからおよそ二十七年間地下に潜んでたってことなのかな?
ってことは、もしかしたら密かに物凄い多種類の生物を食べてる可能性があるんじゃないの?
しかも変身能力をフルに使ってるってことは、それらの生物の能力も会得しているわけで……ヒトではないだけで魔王の力を得た生物に対して、魔王の力を失っている私が勝てる相手なのかしら?
「もしかして最近風の国で発見されたっていうジャイアントアントの集団がそれ?」
「ご存じでしたか。既に接敵しており、現在も働きアリの集団との交戦状態が続いています」
「昨日ちょうどラジオで聞いてたところ。確か……ジャイアントアントってかなり大きかったよね?」
「体高二メートル、体長三メートルというところでしょうか」
「改めて聞いても大きいわ……」
しかも普通にその辺に生息するアリの生態と同様、これが一体だけではなく集団で存在しているというところに戦慄を覚える……
生まれる数は流石に普通のアリほど多くは無いでしょうけど……これがもし普通のアリと遜色無いほどの生産数を誇るなら、もうとっくの昔に魔界はアリの一大帝国になっているはずだし。
「ご存じかもしれませんが、その身体の大きさから、ジャイアントアントは全世界的に見つけ次第駆除する対象になっています。ですが……今回はなぜか長年発見されずにどんどん個体数を増やしたケースのようで、地上に現れた時には既にかなりの大勢力になっていたようです」
きっと『暴食』の効果で知恵を得た女王の指示ね。戦力が整うまでしばらく潜伏するように命令してたってところか。
「大勢力って……今はどれくらいの被害に?」
「今回最初にジャイアントアントが発見された属国ヴィントルのカゼハナという町は、報告された時点で既に壊滅された後だったようです」
「町が壊滅!? じゃあ住民は!?」
「……ほぼ見つからなかったと報告を受けています。数人から十数人程度が近隣の町で保護されたようですが、全員恐慌状態で事情を聴くにもままならず……辛うじてアリにやられたということだけ。他の住民は恐らくアリに……」
「そう……」
「更に、その近隣の町にも巣穴を拡張をしていたらしく、既に働きアリによる被害が出ています。また、別の報告によるとヴィントル西部で集団で移動している姿が目撃されたとの報告も」
これって放っておいたらあっという間に世界中がアリに蹂躙されるんじゃ……
デスキラービーの親衛蜂ばりにヤバイ案件かもしれない……
「それと、他生物の能力を持つというわけではありませんが、女王蟻の魔力の影響を受けているのか、これまでのアリとは違う性質のアリも登場してきています」
「それって……今までのアリにはない能力を持ってたりするってこと?」
「はい。中には水の中に潜る個体や、飛行する個体まで出てきたようで……」
「アリが?」
潜水するアリなんて聞いたことないな……雨上がりとかに水たまりで水面上をもがいてるのはよく見たことがあるけど。
飛行する個体は、そんな巨体で上手く飛べるのか? もし鳥のように飛べるなら、あっという間に被害範囲が拡大することになる。
「今までのアリで駆除にここまで苦戦することはありませんでした。わたくしどもは他生物の能力とは思っていませんでしたが、もしかしたらこれが?」
「そこまでは分からない……デスキラービーの時も今までに無い能力を持つ個体が出現してたから、もしかしたらそれに類似するケースかも」
まさかデスキラービーと同じで、巣が大きくなれば大きくなるほど強力になる性質なのか?
ハチとアリって確か同じ『ハチ目』だったはず。
それに付け加えて、『三大凶虫』と言われてるくらいだから、デスキラービーと同じような性質を持っててもおかしくはない。
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