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第16章 大使就任とアルトレリア健康計画編
第419話 信任状奉呈式
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そして来る八月一日――
各国大使が就任する日が来た。
この日より、アルトラルサンズと、七大国から火の国と氷の国を除いた五大国との国交・同盟が正式に結ばれる。
「アルトラ様、ドレスの着付けを致しますので多目的室の控室までお越しください」
「はい」
◇
呼ばれて来た控室。エルフィーレとリナさんが待っていた。
ドレスは既に運び込まれている。
「着付けますので、そこに立っててください。あ、闇のドレスは解除しておいてください」
闇のドレスを消して下着姿になると、白を基調とし、薄い赤と黄色の中間くらいのグラデーションのかかったドレスを着せられる。アルトラルサンズのシンボルカラーということで太陽をモチーフにしたドレスらしい。
「少し身長伸びましたね! でも、カイベルさんの言う通りぴったりです!」
「アルトラ様、比較的大食いだと思うのですけど、きちんと体型維持されていて素晴らしいです」
別に維持はしてないんだよなぁ……少量でも食べさえすれば問題無くはあるから常に大食いってわけでもないし。
次にリナさんが見慣れないものを持ってきた。
「なんですかそれ?」
「コルセットですよ」
「えっ!? そんなの付けないといけないの?」
「もちろんです、淑女の嗜みですよ」
今までアクアリヴィアに行くまでは下着すら付けない締め付けられない生活を送っていた私にはキツめの服装だ。
お腹にコルセットをセットされ、思い切り紐を引っ張られる。
「ぐぇっ!」
痛みは無効化してくれるけど、息苦しさを軽減してくれることはないらしい。
リナさんはお構いなしになおも引っ張る。
「ちょ、苦しいんですけど……」
こ、これは攻撃扱いじゃないの? 防御機能が働いてない……そういえば窒息しかけた時も無効化はされなかった。 (第324話参照)
私の身体! 苦しくないように防御してよ!
「そ、そうですね、ちょっと力を入れ過ぎてしまいました」
少し緩めて紐を結ぶ。
ホッと一安心……したのも束の間――
「さ、メイクしますので鏡の前に座ってください」
この格好で椅子に……?
こんな苦しい格好で椅子に座ったことなんて、人間だった時代にも無かった。まずコルセットというものに馴染みが無いし。
「時間も差し迫ってますし、お早くお願いします」
「あ、はい……」
もう時間も迫ってるから有無を言えない……
鏡の前に座らされ、メイク。髪型もドレスに合うようにアップにされ後ろでくくられる。前髪が両サイドに分けられ、普段は見せてないおでこが見える状態に。
「おお……何だか別人みたいだ」
普段ののほほんとした締まらない顔とは違い、キリッとした淑女感が醸し出される。
転生されてきた時ですら人間だった時の元の顔より美人だと思ったが、今は一層美人に見える!
「お綺麗ですよ、アルトラ様!」
「これでどこに出しても恥ずかしくないですね!」
服装の準備は整った。
後は開始を待つのみだ。
◇
控室廊下には今回の信任式に無関係な人物数人……
「あ、アルトラ様、綺麗ッスよ!」
「馬子にも衣裳だな」
ム……失礼だな……
馬子がいなかったこの地に生活してるのに、何でそんな言葉知ってるんだ?
フレアハルトはたまにこの地に似つかわしくない諺使うのよね。以前『乗りかかった舟』とか言ってたし。 (第60話参照)
「ナナトスにフレアハルト、カンナーも。勝手にこんなとこ入って何やってんの?」
「ぼ、僕は止めたんですけど……二人が勝手に……」
「人目に付かなければ問題無いであろう?」
「裏から出てくから良いんスよ」
控室には裏から入れるようになっているため、人目に付かず移動できる。
「フレアハルトはもう吹っ切れたのね」
「吹っ切れてなどおらん……が、いつまでも落ち込んでいられん」
どうやら一応落ち込みから復帰したらしい。
「何かゴツいカメラ持ってるヒトがいるからその報告に来たッス! それに、沢山の見たことない種族のヒトたちが大挙して押し寄せてるッス」
「ああ、知ってるよ。カメラ来る予定だって聞いてるから」
カメラ自体は以前身分証明を作った時に証明写真を撮っているため、トロルたちもレッドドラゴンたちも、そのほぼ全てのヒトが見知っている。が、テレビ用のカメラは見るのが初めてだからちょっと興奮しているのだろう。
多種族が来てるって話だけど、多分記者が多いのかな。まあ禁断の中立地帯が他国と正式に国交を結ぶのだからニュースにもなるか。
「肩に担ぐほど大きいが……あんなでかいカメラで写真を撮るのか? どれほど巨大な写真にするつもりなのだ?」
「いや、あれはテレビ用のカメラだよ。動いてる絵を撮影できるやつ」
「絵が動くんスか!? それはどうやって見るんスか!?」
「テレビっていう道具が必要で、それ用に環境も整えなきゃならないから、残念ながらこの町ではまだ見られないね」
「あれが水の国とか雷の国出身のヒトたちが言ってるテレビというものなんですね! 動く絵がどう見えるのか見てみたいです!」
「今日で他国との交流も一層増えるだろうし、もう少し経ったらこの町でも見られるようになるかもね」
「それは楽しみッス! 期待してるッスよ!」
◇
各大使館へ、大使を出迎える馬車を遣わせる。
それを見ると日本で行われていた、馬車による大使のお出迎えが思い浮かぶ。
しかし、この世界ではまだ自動車が一部にしか無く、主要な乗り物として馬車はまだまだ現役だ。そのため、馬車で出迎えるのは珍しいことではない。
現に私も雷の国では雷馬の馬車に乗り、樹の国ではエアホース (ペガサス)の馬車に乗って出迎えられた。
アルトレリアで以前馬車に乗った大使もいる (第373話参照)のだが、そうでない大使には驚かれる。
その一因となっているのが、六脚馬の存在。
スレイプルはこの中立地帯付近に生息する固有種らしく、この幻想世界にあっても、六本脚の馬というのは珍しいとのことで、その脚の数を見て驚くらしい。
そして各国大使が大使館から馬車で集結し――
◇
信任式開催の時間が訪れる――
「えー、本日は信任式にお集まりくださり、誠にありがとうございます。これより信任式を始めさせていただきます」
リーヴァントが信任式の開催を宣言する。
私は国家元首のため信任状を受け取る役。椅子の置かれた中央へ移動。
「わたくしの呼んだ順に信任状の奉呈をお願いします。では水の国の大使アーノルド殿、お願い致します」
アクアリヴィアの大使アーノルドさんが私に近付いてくる。 (水の国大使については第373話参照)
「アクアリヴィア大使より、アルトラルサンズへ信任状を奉呈させていただきます」
水の国からの信任状を出し、両手で私に向けて差し出した。
それを受け取る私。
ここで一斉に各国記者のカメラのシャッターがたかれる。
厳かな儀式など今までこの町でやったことはなく、『ここは写真撮ってはいけませんよ』というような明確なルールは決まっていない。そのため記者たちがこの瞬間に撮ろうと示し合わせていたようだ。
突然のシャッター音の連続に少し心乱されたが、信任状を受け取りながらアーノルドさんに向けて一言声をかける。
「承りました。これからアルトラルサンズ、アクアリヴィア両国繁栄のために尽力してください」
アーノルドさんが元の位置へ戻る。
「雷の国の大使エミリー殿、お願い致します」
エレアースモよりの大使は、以前私の世話をしてくれたエミリーさん。 (第373話参照)
派遣はほぼ確定と言っていたが、大使としてアルトレリアに来てくれた。
案内してくれたのは短い間だったとは言え、少しは気心が知れているためこの人選はありがたい。
「エレアースモ大使より、アルトラルサンズへ信任状を奉呈させていただきます」
エレアースモを案内してくれた時には大分砕けた言葉使いだったが、厳かな場なのできちっとした言い回しに。
そして再びカメラがたかれる。どうやら五大国分、同じようなシーンで写真撮影されるらしい。
「承りました。これからアルトラルサンズ、エレアースモ両国繁栄のために尽力してください」
・
・
・
そんなこんなでこの後、樹の国大使トレシアさん、風の国大使アンドリューさん、土の国大使ルビアンさんから信任状を奉呈され――
「大使の方々、お越しいただいた各国新聞社・テレビメディアのみなさま、ご足労いただきありとうございました。これにてアルトラルサンズ信任式を終了させていただきます」
――数十分ほどという短い時間で信任状奉呈式は終了した。
終わってみて思ったのは、「テレビカメラの取れ高、大丈夫か?」というところだった。
日本だったら小コーナーで二分で放送されるようなイベントだ。これのためにテレビ環境を整えたと言う樹、土、風の国はこんなの長時間放送して大丈夫か?と。
本当に動きが無いから、各国で放送されたところできっと面白くはないだろう。
他国で放送されることながらどう思われるのかちょっぴり不安だ……
◇
信任式が終わって、我が家――
カイベルにコルセットを外してもらいドレスを脱ぎ、とりあえず闇のドレスを纏う。アップにしていた髪の毛も一時ほどいた。
「あ~~、疲れた~~!!」
リビングの床に敷かれた絨毯の上に突っ伏す。
「お疲れさマ。早かったナ、もう終わりカ?」
「まだ、この後夜に晩餐会がある。どっちかと言ったらこっちの方が気が重い……」
信任状奉呈式後に晩餐会なんてあるのか?と思うが、今回は五大国と正式に国交・同盟が樹立し、初めて大使が着任した日ということで、晩餐会を催すことに決定した。
「晩餐会って何ダ?」
「え~と……会食? まあヒトが集まって食べるみたいな、そんな集まり」
「リディアも行って良いカ? 美味しい物出るんだロ?」
『じゃあ私も私も!』
「ごめんね、今回は偉いヒトの集まりだから、リディアとネッココは連れていけないかな」
と言うか……ネッココは固形物食べられないのに晩餐会に何を目的で行くつもりなんだろう……?
「ええーー? じゃあご飯貰ってきてくレ!」
「無理だよ……」
「アルトラなら出来るだロ? 亜空間収納ポケットに入れて持ってくるとカ」
隙を見て出来ないことは無さそうだが……心情的に行儀が悪いからやりたくない。
「後でカイベルが同じようなの作ってくれるからさ、今回は我慢して」
「ムーー!」
『まあ私はそれで構わないわ! どうせ固形物は摂れないし』
「じゃあ行ってくるから、お留守番お願いね。カイベル二人をお願い」
「はい」
今度は多目的ホールの方へと向かう。
二棟建てられた中で、多目的室は信任式に使い、多目的ホールは晩餐会に使う。
みんなが頑張って用意してくれ、町の料理人たちが総出で腕を振るって晩餐会用の食事を作ってくれた。
着付けをお願いするため今度は多目的ホール側の控室へ向かう。
既にエルフィーレとリナさんが待っていてくれた。
「二人とももう一回着付けとメイクアップをお願いね」
「「お任せください」」
ドレスは昼間とは別の、濃紺を基調としたドレスに着なおした。
カイベルが晩餐会も想定して二着目も頼んでおいてくれたらしい。
そしてその夜、晩餐会が開催される――
各国大使が就任する日が来た。
この日より、アルトラルサンズと、七大国から火の国と氷の国を除いた五大国との国交・同盟が正式に結ばれる。
「アルトラ様、ドレスの着付けを致しますので多目的室の控室までお越しください」
「はい」
◇
呼ばれて来た控室。エルフィーレとリナさんが待っていた。
ドレスは既に運び込まれている。
「着付けますので、そこに立っててください。あ、闇のドレスは解除しておいてください」
闇のドレスを消して下着姿になると、白を基調とし、薄い赤と黄色の中間くらいのグラデーションのかかったドレスを着せられる。アルトラルサンズのシンボルカラーということで太陽をモチーフにしたドレスらしい。
「少し身長伸びましたね! でも、カイベルさんの言う通りぴったりです!」
「アルトラ様、比較的大食いだと思うのですけど、きちんと体型維持されていて素晴らしいです」
別に維持はしてないんだよなぁ……少量でも食べさえすれば問題無くはあるから常に大食いってわけでもないし。
次にリナさんが見慣れないものを持ってきた。
「なんですかそれ?」
「コルセットですよ」
「えっ!? そんなの付けないといけないの?」
「もちろんです、淑女の嗜みですよ」
今までアクアリヴィアに行くまでは下着すら付けない締め付けられない生活を送っていた私にはキツめの服装だ。
お腹にコルセットをセットされ、思い切り紐を引っ張られる。
「ぐぇっ!」
痛みは無効化してくれるけど、息苦しさを軽減してくれることはないらしい。
リナさんはお構いなしになおも引っ張る。
「ちょ、苦しいんですけど……」
こ、これは攻撃扱いじゃないの? 防御機能が働いてない……そういえば窒息しかけた時も無効化はされなかった。 (第324話参照)
私の身体! 苦しくないように防御してよ!
「そ、そうですね、ちょっと力を入れ過ぎてしまいました」
少し緩めて紐を結ぶ。
ホッと一安心……したのも束の間――
「さ、メイクしますので鏡の前に座ってください」
この格好で椅子に……?
こんな苦しい格好で椅子に座ったことなんて、人間だった時代にも無かった。まずコルセットというものに馴染みが無いし。
「時間も差し迫ってますし、お早くお願いします」
「あ、はい……」
もう時間も迫ってるから有無を言えない……
鏡の前に座らされ、メイク。髪型もドレスに合うようにアップにされ後ろでくくられる。前髪が両サイドに分けられ、普段は見せてないおでこが見える状態に。
「おお……何だか別人みたいだ」
普段ののほほんとした締まらない顔とは違い、キリッとした淑女感が醸し出される。
転生されてきた時ですら人間だった時の元の顔より美人だと思ったが、今は一層美人に見える!
「お綺麗ですよ、アルトラ様!」
「これでどこに出しても恥ずかしくないですね!」
服装の準備は整った。
後は開始を待つのみだ。
◇
控室廊下には今回の信任式に無関係な人物数人……
「あ、アルトラ様、綺麗ッスよ!」
「馬子にも衣裳だな」
ム……失礼だな……
馬子がいなかったこの地に生活してるのに、何でそんな言葉知ってるんだ?
フレアハルトはたまにこの地に似つかわしくない諺使うのよね。以前『乗りかかった舟』とか言ってたし。 (第60話参照)
「ナナトスにフレアハルト、カンナーも。勝手にこんなとこ入って何やってんの?」
「ぼ、僕は止めたんですけど……二人が勝手に……」
「人目に付かなければ問題無いであろう?」
「裏から出てくから良いんスよ」
控室には裏から入れるようになっているため、人目に付かず移動できる。
「フレアハルトはもう吹っ切れたのね」
「吹っ切れてなどおらん……が、いつまでも落ち込んでいられん」
どうやら一応落ち込みから復帰したらしい。
「何かゴツいカメラ持ってるヒトがいるからその報告に来たッス! それに、沢山の見たことない種族のヒトたちが大挙して押し寄せてるッス」
「ああ、知ってるよ。カメラ来る予定だって聞いてるから」
カメラ自体は以前身分証明を作った時に証明写真を撮っているため、トロルたちもレッドドラゴンたちも、そのほぼ全てのヒトが見知っている。が、テレビ用のカメラは見るのが初めてだからちょっと興奮しているのだろう。
多種族が来てるって話だけど、多分記者が多いのかな。まあ禁断の中立地帯が他国と正式に国交を結ぶのだからニュースにもなるか。
「肩に担ぐほど大きいが……あんなでかいカメラで写真を撮るのか? どれほど巨大な写真にするつもりなのだ?」
「いや、あれはテレビ用のカメラだよ。動いてる絵を撮影できるやつ」
「絵が動くんスか!? それはどうやって見るんスか!?」
「テレビっていう道具が必要で、それ用に環境も整えなきゃならないから、残念ながらこの町ではまだ見られないね」
「あれが水の国とか雷の国出身のヒトたちが言ってるテレビというものなんですね! 動く絵がどう見えるのか見てみたいです!」
「今日で他国との交流も一層増えるだろうし、もう少し経ったらこの町でも見られるようになるかもね」
「それは楽しみッス! 期待してるッスよ!」
◇
各大使館へ、大使を出迎える馬車を遣わせる。
それを見ると日本で行われていた、馬車による大使のお出迎えが思い浮かぶ。
しかし、この世界ではまだ自動車が一部にしか無く、主要な乗り物として馬車はまだまだ現役だ。そのため、馬車で出迎えるのは珍しいことではない。
現に私も雷の国では雷馬の馬車に乗り、樹の国ではエアホース (ペガサス)の馬車に乗って出迎えられた。
アルトレリアで以前馬車に乗った大使もいる (第373話参照)のだが、そうでない大使には驚かれる。
その一因となっているのが、六脚馬の存在。
スレイプルはこの中立地帯付近に生息する固有種らしく、この幻想世界にあっても、六本脚の馬というのは珍しいとのことで、その脚の数を見て驚くらしい。
そして各国大使が大使館から馬車で集結し――
◇
信任式開催の時間が訪れる――
「えー、本日は信任式にお集まりくださり、誠にありがとうございます。これより信任式を始めさせていただきます」
リーヴァントが信任式の開催を宣言する。
私は国家元首のため信任状を受け取る役。椅子の置かれた中央へ移動。
「わたくしの呼んだ順に信任状の奉呈をお願いします。では水の国の大使アーノルド殿、お願い致します」
アクアリヴィアの大使アーノルドさんが私に近付いてくる。 (水の国大使については第373話参照)
「アクアリヴィア大使より、アルトラルサンズへ信任状を奉呈させていただきます」
水の国からの信任状を出し、両手で私に向けて差し出した。
それを受け取る私。
ここで一斉に各国記者のカメラのシャッターがたかれる。
厳かな儀式など今までこの町でやったことはなく、『ここは写真撮ってはいけませんよ』というような明確なルールは決まっていない。そのため記者たちがこの瞬間に撮ろうと示し合わせていたようだ。
突然のシャッター音の連続に少し心乱されたが、信任状を受け取りながらアーノルドさんに向けて一言声をかける。
「承りました。これからアルトラルサンズ、アクアリヴィア両国繁栄のために尽力してください」
アーノルドさんが元の位置へ戻る。
「雷の国の大使エミリー殿、お願い致します」
エレアースモよりの大使は、以前私の世話をしてくれたエミリーさん。 (第373話参照)
派遣はほぼ確定と言っていたが、大使としてアルトレリアに来てくれた。
案内してくれたのは短い間だったとは言え、少しは気心が知れているためこの人選はありがたい。
「エレアースモ大使より、アルトラルサンズへ信任状を奉呈させていただきます」
エレアースモを案内してくれた時には大分砕けた言葉使いだったが、厳かな場なのできちっとした言い回しに。
そして再びカメラがたかれる。どうやら五大国分、同じようなシーンで写真撮影されるらしい。
「承りました。これからアルトラルサンズ、エレアースモ両国繁栄のために尽力してください」
・
・
・
そんなこんなでこの後、樹の国大使トレシアさん、風の国大使アンドリューさん、土の国大使ルビアンさんから信任状を奉呈され――
「大使の方々、お越しいただいた各国新聞社・テレビメディアのみなさま、ご足労いただきありとうございました。これにてアルトラルサンズ信任式を終了させていただきます」
――数十分ほどという短い時間で信任状奉呈式は終了した。
終わってみて思ったのは、「テレビカメラの取れ高、大丈夫か?」というところだった。
日本だったら小コーナーで二分で放送されるようなイベントだ。これのためにテレビ環境を整えたと言う樹、土、風の国はこんなの長時間放送して大丈夫か?と。
本当に動きが無いから、各国で放送されたところできっと面白くはないだろう。
他国で放送されることながらどう思われるのかちょっぴり不安だ……
◇
信任式が終わって、我が家――
カイベルにコルセットを外してもらいドレスを脱ぎ、とりあえず闇のドレスを纏う。アップにしていた髪の毛も一時ほどいた。
「あ~~、疲れた~~!!」
リビングの床に敷かれた絨毯の上に突っ伏す。
「お疲れさマ。早かったナ、もう終わりカ?」
「まだ、この後夜に晩餐会がある。どっちかと言ったらこっちの方が気が重い……」
信任状奉呈式後に晩餐会なんてあるのか?と思うが、今回は五大国と正式に国交・同盟が樹立し、初めて大使が着任した日ということで、晩餐会を催すことに決定した。
「晩餐会って何ダ?」
「え~と……会食? まあヒトが集まって食べるみたいな、そんな集まり」
「リディアも行って良いカ? 美味しい物出るんだロ?」
『じゃあ私も私も!』
「ごめんね、今回は偉いヒトの集まりだから、リディアとネッココは連れていけないかな」
と言うか……ネッココは固形物食べられないのに晩餐会に何を目的で行くつもりなんだろう……?
「ええーー? じゃあご飯貰ってきてくレ!」
「無理だよ……」
「アルトラなら出来るだロ? 亜空間収納ポケットに入れて持ってくるとカ」
隙を見て出来ないことは無さそうだが……心情的に行儀が悪いからやりたくない。
「後でカイベルが同じようなの作ってくれるからさ、今回は我慢して」
「ムーー!」
『まあ私はそれで構わないわ! どうせ固形物は摂れないし』
「じゃあ行ってくるから、お留守番お願いね。カイベル二人をお願い」
「はい」
今度は多目的ホールの方へと向かう。
二棟建てられた中で、多目的室は信任式に使い、多目的ホールは晩餐会に使う。
みんなが頑張って用意してくれ、町の料理人たちが総出で腕を振るって晩餐会用の食事を作ってくれた。
着付けをお願いするため今度は多目的ホール側の控室へ向かう。
既にエルフィーレとリナさんが待っていてくれた。
「二人とももう一回着付けとメイクアップをお願いね」
「「お任せください」」
ドレスは昼間とは別の、濃紺を基調としたドレスに着なおした。
カイベルが晩餐会も想定して二着目も頼んでおいてくれたらしい。
そしてその夜、晩餐会が開催される――
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