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第15章 火の国ルシファーランド強制招待編
第411話 謁見の取り次ぎを……
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「すみません、ステラーシアさん。取り急ぎ王様に取り次いではもらえないでしょうか?」
「急ぎで……ですか?」
「はい」
「難しいと思います。本日は本日のご公務がありますので……」
「私との謁見はいつに予定されているんですか?」
「アルトラ様の到着日が不確定でしたので、謁見のスケジュールを組んでいなかったのですが――」
ってことは何日も先になるってことか……
滞在する間、ずっとこのことを考えてないといけないと考えると胃が痛いな……実際は痛くないからイメージ感覚だけだけど。
「――アルトラ様がご到着されたのを聞いて、急遽予定をキャンセルしてくださって、明日謁見できることになりました」
「え?」
予定をキャンセル……? 私のために……?
それって、そんなにも私に期待を持ってるってことなのか……?
移住を断った時にどうなるか……穏便に済めば良いのだけど……
前評判を聞いてるとそうは思えない。何かあったらすぐに全員連れて逃げられるように心構えだけはしておこう。
「それでは私は街で宿を取って明日に備えることにします」
「宿など取らずとも、この邸宅に泊まっていただいて構いませんが……ここはもう貴女の家ですので」
まだ移住の了承もしていないのに、既に私の家に決定しているのか……
「いえ、そういうわけにはいきません。まだ移住していませんので」
ステラーシアさんには、断る前提でここを訪れていることを言わない方が良いだろう。
もしそれを知ってしまったら、私が移住を断ったことによって彼女にも罰の矛先が向かうかもしれない。
「そ、そうですか……わ、わかりました……」
少し悪いなとは思いながらも、こういうところで『移住しませんよ』という意思を示しておいた方が良い。
「おい! ステラーシア殿が困惑しているではないか! 泊まるくらい良いのではないか?」
さっきの言葉が一転、フレアハルトがちょっとややこしいポジションになってるな……
「訪れて早々自宅のような扱いで利用するわけにはいかないよ。物事には順序というものがあって、自宅として利用するならそれなりの手続きをしないと」
相手が泊まって良いと言っている以上、大分苦しい言い訳をもっともらしく作ったが、もちろん『移住を断る』ことをステラーシアさんに悟らせないためだ。
泊まったことによって、移住を了承したと捉えられかねないし、簡単に泊まるわけにはいかない。
『自宅として利用するなら』とは言ったが、『移住するなら』とは一言も言っていない。
「む……そ、そうか……」
殊更落ち込んでしまったが仕方ない。断る前提でここへ訪れたことを知られれば、下手したら彼女らの生き死ににも関わるかもしれないから『フレアハルトは泊まってあげたら?』などとも簡単には言えない。
屋敷を去ろうとした直後、ステラーシアさんに声をかけられた。
「あの……アルトラ様」
「はい?」
「その……もしや断ることを前提でこの国を訪れたのですか?」
ギクッ
屋敷内検時の消極的な態度で感づかれたか!?
「………………」
どう言い繕おうか考えを巡らせていたところ、ステラーシアさんが察して先に口を開いた。
「やはりそうなのですね……それはなぜでしょう……? この待遇にご不満でもあるのでしょうか……?」
「いえ、素晴らしい待遇だと思います。私もアルトレリアという町に住んでいなければ二つ返事で移住を決めていたかもしれません」
それとは別の理由として、国中が困窮しているのに何の対策も打っていないどころか、貧困を助長するような発言を七大国会談でしていたことを思い出して、そんな王様の下で働くのは遠慮したいと考えた。
「それではなぜ……?」
「やはり、自身がアルトレリアを良い町にしようと決めたからだと思います。私は一応国主に祀り上げられてしまったので途中で投げ出すわけにはいきません。ですので取り急ぎ王様に取り付いてくださるとありがたいのですが……」
それに、現ルシファーは『傲慢』の大罪ととても相性が良いらしいことを聞いている。それは『=傲慢さの度合い』も強いということ。
傲慢さの度合いが強いということは、我儘で自分勝手で、プライドが高く、自身が一番でなければ気が済まない。七大国会談でも自身より、王様としての就任期間が長い者に対して突っかかっていたのを何度か目にした。
仮に私が火の国に移住し、こちらから民の生活を良くするよう提言しても聞き入れてもらえない可能性が高いと見ている。つまり、この貧困に陥った国の内情を内側から良くしようとしても、ルシファーがそれに納得しないのであれば政策に組み入れることは不可能だということ。
前評判を聞いている限り、今は私のことを特別待遇で国に迎え入れようとしていても、気に入られなければ『お小言が多い五月蝿いヤツ』と判断されて処刑される可能性だって十分あり得る。
何せ、誘拐しに来た部下に『四肢を砕いても良いし、首さえ残ってて、しゃべることさえできれば良い』なんて命令まで下した人物だ。 (第301話参照)
首だけ残してアンデッドにしたところで、その後どうするのか気になるが……ロボットか人形か、仮初の胴体でも与えるつもりだったのだろうか……? それは私の考えの及ぶところではないが……
「わ……わかりました……」
ステラーシアさんの顔が真っ青になっている。
彼女に私の思惑がバレたのはまずかったかもしれない。彼女の身が危険に晒されるかも……
「もし……あなたが完全にルシファーの言いなりでないのなら、このことは他言無用でお願いします」
「…………はい……」
口止めしておかないと、他のヒトたちにも罰が及ぶかもしれない。
それでも理不尽に罰が与えられるようであれば、私にはどうしようもできないが……
「また、あなたも『私が移住を断るために訪れた』ということを知らなかったこととして通してください。そうすればあなたもお咎め無しになるかもしれませんし」
彼女とルシファーとの付き合いは長いようなので、そこまで酷い罰を加えられることはないのではないかと思っている。
が、
「…………だと良いのですが……」
「え?」
小声でよく聞き取れなかったが、何か否定的な言葉のように聞こえた。
「いえ、分かりました……」
しかし、すぐにこちらを見て表情が戻ったので追及まではしなかった。
その後に手ごろな宿を教えてもらい、そこに宿泊することにした。
◇
泊まった宿にて――
今日はきちんと女子部屋、男子部屋に分かれて宿泊。
「ふぅ……今日は疲れたわ……」
「こっちは断ること前提で来てるのに、いきなりアルトラ様の住む住居の紹介ですもんね~」
「やはり聞いていた通り随分と強引な王様のようですね……」
「明日がどうなることか……穏便に済めば良いのだけど……一応二人もすぐにでも逃げられるような覚悟を持っていてね。今回は魔王相手だから穏便に済まない場合、私ではどうにもならないかもしれないから」
「「はい」」
「私を置いて逃げることも選択肢にしておいて」
「それは……難しい判断ですね……」
謁見の間で襲われるなんてことはあり得ない話ではあるけど……
疑問に思っていたフレアハルトについて気になっていることを聞いてみることにした。
「……ねえアリサ、レイア、あなたたちはフレアハルトの態度に納得しているの?」
「何がですか?」
「他国の女性と恋に落ちるなんて」
「わたくしたちはただの従者ですので。フレアハルト様がお決めになったのでしたら問題ありません」
「むしろ今までは発情期の時期になってすら女性に興味が薄かったし、フレハル様にもやっと良いお相手が見つかったか~って思いますよ~!」
ただ、その後遠い目をして――
「「そもそも……あのヒトは私になびきませんから……」」
――二人同時に同じことを口走った。
どうやら、およそ二百年の竜生の間に既にフラレているらしい。
「あ、そう」
この二人のフレアハルトに対しての恋慕の情については整理が付いているのだろう。
それにしてもドラゴンの発情期って、確か十年単位で訪れるって言ってたはずだ。次はいつになるか知らんけど、もしこの縁が成立しても子供生まれるのは大分先になるな。 (第222話参照)
「ま、まあそれなら良いわ」
私の考えでは、もしかしたら彼女らもフレアハルトのことが好きで、修羅場になるんじゃないかとヒヤヒヤしたから、きちんと心の整理が付いているなら何も問題無し!
「フレアハルトにやっとってことは、あなたたちにはもうパートナーが?」
「「………………いませんけど?」」
「あ、そ、そう……」
藪をつついちゃったか……
「私たちより強いって条件だと中々見つかんないんですよね~」
「必ずしもわたくしたちより強くなくても良いのですが、頼りない男性はちょっと……」
王子お付きの側近二人じゃ、そりゃ中々見つからないか。
「アルトラ様だっていないじゃないですか~」
「私はまだこの世界に来たばかりだからこれから、これからだから!」
とは言え、私も私より弱い人を好きになれるか自信が無い……
その上で、『七大国にまで認められる国の国主』という権力まで持ちかけている……私は一体どこへ行くんだ……?
「急ぎで……ですか?」
「はい」
「難しいと思います。本日は本日のご公務がありますので……」
「私との謁見はいつに予定されているんですか?」
「アルトラ様の到着日が不確定でしたので、謁見のスケジュールを組んでいなかったのですが――」
ってことは何日も先になるってことか……
滞在する間、ずっとこのことを考えてないといけないと考えると胃が痛いな……実際は痛くないからイメージ感覚だけだけど。
「――アルトラ様がご到着されたのを聞いて、急遽予定をキャンセルしてくださって、明日謁見できることになりました」
「え?」
予定をキャンセル……? 私のために……?
それって、そんなにも私に期待を持ってるってことなのか……?
移住を断った時にどうなるか……穏便に済めば良いのだけど……
前評判を聞いてるとそうは思えない。何かあったらすぐに全員連れて逃げられるように心構えだけはしておこう。
「それでは私は街で宿を取って明日に備えることにします」
「宿など取らずとも、この邸宅に泊まっていただいて構いませんが……ここはもう貴女の家ですので」
まだ移住の了承もしていないのに、既に私の家に決定しているのか……
「いえ、そういうわけにはいきません。まだ移住していませんので」
ステラーシアさんには、断る前提でここを訪れていることを言わない方が良いだろう。
もしそれを知ってしまったら、私が移住を断ったことによって彼女にも罰の矛先が向かうかもしれない。
「そ、そうですか……わ、わかりました……」
少し悪いなとは思いながらも、こういうところで『移住しませんよ』という意思を示しておいた方が良い。
「おい! ステラーシア殿が困惑しているではないか! 泊まるくらい良いのではないか?」
さっきの言葉が一転、フレアハルトがちょっとややこしいポジションになってるな……
「訪れて早々自宅のような扱いで利用するわけにはいかないよ。物事には順序というものがあって、自宅として利用するならそれなりの手続きをしないと」
相手が泊まって良いと言っている以上、大分苦しい言い訳をもっともらしく作ったが、もちろん『移住を断る』ことをステラーシアさんに悟らせないためだ。
泊まったことによって、移住を了承したと捉えられかねないし、簡単に泊まるわけにはいかない。
『自宅として利用するなら』とは言ったが、『移住するなら』とは一言も言っていない。
「む……そ、そうか……」
殊更落ち込んでしまったが仕方ない。断る前提でここへ訪れたことを知られれば、下手したら彼女らの生き死ににも関わるかもしれないから『フレアハルトは泊まってあげたら?』などとも簡単には言えない。
屋敷を去ろうとした直後、ステラーシアさんに声をかけられた。
「あの……アルトラ様」
「はい?」
「その……もしや断ることを前提でこの国を訪れたのですか?」
ギクッ
屋敷内検時の消極的な態度で感づかれたか!?
「………………」
どう言い繕おうか考えを巡らせていたところ、ステラーシアさんが察して先に口を開いた。
「やはりそうなのですね……それはなぜでしょう……? この待遇にご不満でもあるのでしょうか……?」
「いえ、素晴らしい待遇だと思います。私もアルトレリアという町に住んでいなければ二つ返事で移住を決めていたかもしれません」
それとは別の理由として、国中が困窮しているのに何の対策も打っていないどころか、貧困を助長するような発言を七大国会談でしていたことを思い出して、そんな王様の下で働くのは遠慮したいと考えた。
「それではなぜ……?」
「やはり、自身がアルトレリアを良い町にしようと決めたからだと思います。私は一応国主に祀り上げられてしまったので途中で投げ出すわけにはいきません。ですので取り急ぎ王様に取り付いてくださるとありがたいのですが……」
それに、現ルシファーは『傲慢』の大罪ととても相性が良いらしいことを聞いている。それは『=傲慢さの度合い』も強いということ。
傲慢さの度合いが強いということは、我儘で自分勝手で、プライドが高く、自身が一番でなければ気が済まない。七大国会談でも自身より、王様としての就任期間が長い者に対して突っかかっていたのを何度か目にした。
仮に私が火の国に移住し、こちらから民の生活を良くするよう提言しても聞き入れてもらえない可能性が高いと見ている。つまり、この貧困に陥った国の内情を内側から良くしようとしても、ルシファーがそれに納得しないのであれば政策に組み入れることは不可能だということ。
前評判を聞いている限り、今は私のことを特別待遇で国に迎え入れようとしていても、気に入られなければ『お小言が多い五月蝿いヤツ』と判断されて処刑される可能性だって十分あり得る。
何せ、誘拐しに来た部下に『四肢を砕いても良いし、首さえ残ってて、しゃべることさえできれば良い』なんて命令まで下した人物だ。 (第301話参照)
首だけ残してアンデッドにしたところで、その後どうするのか気になるが……ロボットか人形か、仮初の胴体でも与えるつもりだったのだろうか……? それは私の考えの及ぶところではないが……
「わ……わかりました……」
ステラーシアさんの顔が真っ青になっている。
彼女に私の思惑がバレたのはまずかったかもしれない。彼女の身が危険に晒されるかも……
「もし……あなたが完全にルシファーの言いなりでないのなら、このことは他言無用でお願いします」
「…………はい……」
口止めしておかないと、他のヒトたちにも罰が及ぶかもしれない。
それでも理不尽に罰が与えられるようであれば、私にはどうしようもできないが……
「また、あなたも『私が移住を断るために訪れた』ということを知らなかったこととして通してください。そうすればあなたもお咎め無しになるかもしれませんし」
彼女とルシファーとの付き合いは長いようなので、そこまで酷い罰を加えられることはないのではないかと思っている。
が、
「…………だと良いのですが……」
「え?」
小声でよく聞き取れなかったが、何か否定的な言葉のように聞こえた。
「いえ、分かりました……」
しかし、すぐにこちらを見て表情が戻ったので追及まではしなかった。
その後に手ごろな宿を教えてもらい、そこに宿泊することにした。
◇
泊まった宿にて――
今日はきちんと女子部屋、男子部屋に分かれて宿泊。
「ふぅ……今日は疲れたわ……」
「こっちは断ること前提で来てるのに、いきなりアルトラ様の住む住居の紹介ですもんね~」
「やはり聞いていた通り随分と強引な王様のようですね……」
「明日がどうなることか……穏便に済めば良いのだけど……一応二人もすぐにでも逃げられるような覚悟を持っていてね。今回は魔王相手だから穏便に済まない場合、私ではどうにもならないかもしれないから」
「「はい」」
「私を置いて逃げることも選択肢にしておいて」
「それは……難しい判断ですね……」
謁見の間で襲われるなんてことはあり得ない話ではあるけど……
疑問に思っていたフレアハルトについて気になっていることを聞いてみることにした。
「……ねえアリサ、レイア、あなたたちはフレアハルトの態度に納得しているの?」
「何がですか?」
「他国の女性と恋に落ちるなんて」
「わたくしたちはただの従者ですので。フレアハルト様がお決めになったのでしたら問題ありません」
「むしろ今までは発情期の時期になってすら女性に興味が薄かったし、フレハル様にもやっと良いお相手が見つかったか~って思いますよ~!」
ただ、その後遠い目をして――
「「そもそも……あのヒトは私になびきませんから……」」
――二人同時に同じことを口走った。
どうやら、およそ二百年の竜生の間に既にフラレているらしい。
「あ、そう」
この二人のフレアハルトに対しての恋慕の情については整理が付いているのだろう。
それにしてもドラゴンの発情期って、確か十年単位で訪れるって言ってたはずだ。次はいつになるか知らんけど、もしこの縁が成立しても子供生まれるのは大分先になるな。 (第222話参照)
「ま、まあそれなら良いわ」
私の考えでは、もしかしたら彼女らもフレアハルトのことが好きで、修羅場になるんじゃないかとヒヤヒヤしたから、きちんと心の整理が付いているなら何も問題無し!
「フレアハルトにやっとってことは、あなたたちにはもうパートナーが?」
「「………………いませんけど?」」
「あ、そ、そう……」
藪をつついちゃったか……
「私たちより強いって条件だと中々見つかんないんですよね~」
「必ずしもわたくしたちより強くなくても良いのですが、頼りない男性はちょっと……」
王子お付きの側近二人じゃ、そりゃ中々見つからないか。
「アルトラ様だっていないじゃないですか~」
「私はまだこの世界に来たばかりだからこれから、これからだから!」
とは言え、私も私より弱い人を好きになれるか自信が無い……
その上で、『七大国にまで認められる国の国主』という権力まで持ちかけている……私は一体どこへ行くんだ……?
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