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第15章 火の国ルシファーランド強制招待編

第399話 vs砂賊 その3(砂賊たちを拘束)

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「サンドニオさん、アリサとレイアの方は決着が付いたみたいですよ」
「それは助かりました! 砂賊たちは生きているのですか?」
「ここかだと遠くてまだ分かりませんけど、彼女らが連れて来てるみたいです。生きてた場合どうすれば良いですか?」
「今から向かうデザートソリドで引き渡しましょう。砂賊拘束に貢献したとして多少の賞金を貰えるはずです」

 会話の直後に離れたところからレイアの声がする。

「アルトラ様~」

 レイアが倒した砂賊十人を引きずって戻って来た。

「お疲れ様」

 その後ろには例の嫌味な商人とその隊商メンバー、それとラクダが八頭付いて来る。
 砂漠の宿屋出発時は十四頭居たはずだけど六頭はやられてしまったのか? (第394話参照)

「おのヒトたち、あのまま置いておくとフレハル様の戦いに巻き込まれそうだから連れてきましたよ」
「あ、ああ、はい……お疲れ様……」

 正直内心『嫌だな……』と思いながらも火を主に使うレッドドラゴンの戦闘スタイルを考えると、戦いの真っただ中に放置しておいたら焼け死にかねない。
 幸いなことに砂賊に襲われて憔悴しているのか、隊商メンバーは一様に黙り込んでいる。

「とりあえずこっちの対処が先かな」

 すぐさまレイアが引きずって来た砂賊を闇魔法【影縛りシャドウ・バインド】で拘束する。
 軽く回復もしておいてやろう。特に火トカゲ爬虫人サラマンディアの彼は火傷が多少酷い。レイアに火でも浴びせかけられたか?

 さて、次は連れて来た隊商のメンバー。

「重傷のヒトはいますか?」
「は、はい、私たちの護衛の方が四人、大怪我を負っています。あと軽傷も何人か」
「すみませんが、軽傷の方はそちらで対処してください」

 私は重傷と言われた護衛の方を診る。
 金属製ではあるものの軽装であまり厚くない鎧。四人とも切り裂かれて全身に傷があり、腕だったり腹だったりどこかしらに深手まで負っている。
 これ、あまり良い装備じゃないな。傭兵について詳しくはないけど、装備からするとケチって装備を買う元手も無い経験の少ない傭兵を雇ったのかもしれない。
 これは全身を徐々に回復していった方が良いかな。

 重傷の護衛四人に対して、徐々に回復する【自己再生魔法リジェネレート】を施す。

「おい、小娘! 水が飲みたい、水を寄越せ!」

 ムカッ!
 誰のために救援までして、こんな回復までしてると思ってるんだ!

「……レドナルドさん、仕方ないので彼に水を……」
「分かりました」

 砂漠渡るのに、自分の隊商に水使える魔術師おらんのかい……

 と、見回してみると、女性の半魚人サハギンのような見た目のヒトが一人。それも耳がヒレのような形をしていて身体の色が青いのを考えると砂漠の半魚人デザートサハギンじゃなくて、水が得意な方の。 (デザートサハギンは体色が黄色)

 水使えそうな亜人居るやんけ……
 水飲みたいなら何で彼女に頼まないの?
 もしかして、高圧的な態度で他人に物を譲らせることで、私に対して優位性を保とうとしているとか?
 まあ、こんなのは放っとこう……関わるのも面倒くさい。

 一通り介抱を終えてレイアに聞く。

「他の砂賊は? ここに居るので全部じゃないよね?」
「アリサが連れて来るんじゃないですかね? そんなことより見てくださいよ~! カバのヒトに噛まれてこんな肌荒れしちゃったんです!」

 見せられた左腕には大きなヒビが。

「肌……荒れ……?」

 これのどこが肌荒れ?
 私にはどう見ても石像にヒビが入ったような、今にも砕け落ちそうな傷に見えるんだけど!

「そ、それ大丈夫なの!? 痛くない!? ボロッと落ちそうな怪我に見えるけど!? 回復魔法かける!?」
「え? 大丈夫ですよ。ただの肌荒れですし、ウロコ抜いて少し経てば普通に再生しますから」

 ウロ……コ……? ウロコを抜いて何であのヒビが治るの?

「ってことで、このままだと見栄えも悪いのでちょっとウロコ抜いてきますね」
「あ、ああ、はい」

 『ウロコを抜いたら治る』の意味も分からず生返事をしてしまった。
 もう一年くらい付き合いがあるけど、未だに生態がよく分からないわ……
 と言うか、この旅で新発見ばかりだし……

「アルトラ様」
「あ、アリサお疲れ様」

 アリサも砂賊四人を引きずって戻って来た。

「巨人は近くで見ると大きいね……」

 以前襲撃に来た巨人も確かこれくらいの大きさだったかしら?
 あの時は家壊されないかとヒヤヒヤしてて体型までよく見てなかったけど…… (第300話から第301話参照)

 こちらの四人も【影縛りシャドウ・バインド】で拘束。

「巨人はこの程度の拘束で大丈夫なのですか?」

 サンドニオさんに問われる。

「以前ブルードラゴンを捕まえた時も破られることは無かったので大丈夫だと思います」

 ただ、あの時は弱ってたから拘束できてただけかもしれないが…… (第326話参照)
 もし巨人が自力で【影縛りシャドウ・バインド】を破るようなら再度拘束すれば良い。

「ブルードラゴン!? フレアハルト殿以外のドラゴンとも関りが!? その方は今回いらっしゃらなかったのですか!?」
「ああ、そいつは私たちの仲間ではありません。凄く悪いヤツだったので逮捕してもらいました。今頃は力を封じられて樹の国のどこぞの牢屋の地下深くに捕まってると思います」

 砂賊の拘束と商人の隊商の回復がひと段落したところで、アリサに近寄ると――

「何だか焼肉みたいな匂いしない?」
「あ、はい、強い雷で全身焼かれたので、多分それでしょう」
「全身焼かれた!? 大丈夫なの!?」

 こちらはこちらでレイアより更に心配になるような『パワーワード“全身焼かれた”』という言葉が出てきた……

「火山内部に住んでるわたくしたちにとって、何でもないことですよ」

 そういえばそうか。
 溶岩のような超高熱で死なないのだから、雷程度の熱量でどうかなるわけがない。

「もっとも……今回喰らったのは電気なので、ビリビリ痺れるところは不快ではありますし、強い雷だと喰らった直後は少しの間痺れて動けなくなりますけど」
「それで、この焼肉のような匂いは何で漂ってるの?」
「恐らくですが……火山内部は匂いすら燃えてしまうほどの高温ですが、ここは匂いが燃えるほどの高温ではないので、雷でわずかに焼けたわたくしの肉の匂いが漏れてるのかもしれません。わたくしも身体からこんな匂いがするのは初めてですので憶測ですけど……」

 な、何て香ばしくて良い匂い!
 レッドドラゴンってローストするとこんな良い匂いがするのか。お腹空いてきた。
 ドラゴンステーキを焼いてるアニメを割とよく見るが、これは食べたくなる匂いだ!

「あの……アルトラ様、その……ヨダレが出てます……」

 ああ、しまったしまった。思考が態度にまで出てたか。

「…………わたくしたちを食べないでくださいね」
「たたた、食べないよ!!」

 流石に仲間を食べるような特殊な嗜好は無い。

「ふふ……冗談です」
「あ、アリサの方も終わったんだね」

 レイアがウロコを抜き終わったのか帰って来た。

「ウロコは?」
「抜いてきましたよ。ほら」

 左腕を見せられたもののウロコを抜いたかどうかなんて人型形態の見た目では分からない。しかし、ヒビどころか肌荒れも無い綺麗な肌になっていた。
 あのヒビって表面だけに付いてたのかしら?
 彼女らのドラゴン形態と人型では、どこがどう影響してるのか私には分からないわ……

「ところで何だか焼肉みたいな美味しそうな匂いしません?」

 経緯を説明した。

「へぇ~~!! ドラゴンって焼けるとこんな匂いするんだ~! 美味しそうだねぇ~、食べちゃおっかな~」

 と言いながら、アリサにすり寄る。

「冗談はやめてください」

 近付こうとするレイアの顔を両手で押しのけるアリサ。
 レッドドラゴン本人たちにすら認識していない新しいことを知る。

「話変わるけど、あなたたちって武術に心得があったのね」
「武術? ありませんよそんなの」
「あんなに良い体捌きだったのに!?」
「私たちって火山内部で娯楽みたいなものが無いじゃないですか~、なので同族同士で身体使って遊ぶんですよ。中には亜人の言う武術めいた動きもするので自然に身に着けた体捌きってことですね」
「種族みなが、ある程度の水準の動きを生活の中で会得していきますね。元々身体能力は高い種族ですので」
「へぇ~、なるほどね~。私に初めて会った時に体術使って戦ったりとかは考えなかったんだね」
「フレハル様の尻尾の一撃を喰らって、ケロッとしてるアルトラ様ヒトに私たち程度の体術なんて全く効果ありませんよ。フレハル様もあの時は警告のために軽めに尻尾を振ったみたいでしたけど、それでも私たちの人型形態の打撃よりはかなり強いくらいですから」

 『殺して死体を晒してやる』みたいなこと言われた気がするけど、あの時の一撃はまだ警告だったからあの程度吹っ飛ぶだけで済んだのか。
 本気で尻尾振られてたら、山の下まで吹っ飛ばされてたかもしれないってわけね。 (第42話参照)

「あ、フレハル様が動くみたいですよ!」
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