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第15章 火の国ルシファーランド強制招待編
第398話 vs砂賊 その2
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敵が分散され、アリササイド――
「余程俺たちのことを下に見ているようだな」
「はい、相手の力量が分からないようでは、わたくしたちには勝てません」
「ならばその力、見せてもらおう!」
まず動いたのはアリサ側のライオン獣人だった。
「うおぉぉ!!」
掛け声と共に振り下ろされる大剣。しかし、それを半身ずらして難なく躱す。
そのまま薙ぎ払うものの、それもバックステップで避けた。
ライオンの後ろで機を窺っていたオークが勢いを付けて、巨大なハンマーを横に薙ぐも、その上を華麗にムーンサルトして避ける。
空中にいるアリサを狙い、小巨人がパンチを繰り出すものの、ミドルジャイアントの手にトンッと片腕を突いてその勢いで再度跳躍して避ける。もう片方の腕で捕まえようとするも、空中で身体を捻って無理矢理回転し、腕が迫る際の気流を利用して避けた。
その後も、三人が放つ斬撃、鎚撃、打撃を危なげなく躱す。
「コイツ、ちょこまかと!」
「全然当たらない……」
「なるほど、あなた方の実力は大体分かりました」
「実力が分かった? ただ避けていただけなのにか?」
「はい、わたくしの方から攻撃させていただきます」
その時、ライオン獣人が口角を上げてニヤリと笑う。
「俺たちがただ斬撃や打撃だけの脳筋だと思っているだろ?」
直後に突然アリサの足元に沼が出現、両脚が膝上辺りまで泥の中に沈んだ。
「これは!?」
ライオンがしゃべっている間に、オークが土属性と水属性の複合魔法を使ってアリサの足元を泥状態に変化させた。
「これで機動力を削いだ。そして水は電気を通しやすくする! 喰らえ! 【サンダーブレード】!」
剣を模した雷が、泥に沈んだアリサに突き刺さる。
「うぅッ! ああぁぁッッ!!」
泥水に浸かっているため水の相乗効果により、雷エネルギーが増幅。
通常喰らう以上の雷ダメージをまともに喰らってしまった。
強く感電しアリサの口や耳、身体全体から湯気が出ている。
「死んだか?」
オークのその言葉にもうつむいて答えない。
「【サンダーブレード】を直接腹に突き刺したんだ。その上水で電気を通しやすくなっている。普通の生物なら内臓は焼け焦げて使い物にならなくなってるだろう」
「ここまでやる必要があったか?」
「確かに……少々やり過ぎたかもしれないが……この女を見てると、殺さなければこちらが殺られるというような勘が働いてな」
「確かに……俺もそれは感じていた……常に威圧感を放っていて恐怖していたよ」
「名前すら分からず殺してしまったが……しかし俺たち三人を相手取ろうとは少々自惚れが過ぎたようだな」
「死体はどうする?」
「このままにしておけば砂漠の生物が全部処理してくれるだろう」
そう言い捨てその場を離れようとするが、しかし少し間を置いて――
再び威圧感を感じ、恐怖の表情で振り返る三人。
「ふぅ……中々の雷でした。肩凝りにはちょうど良い電圧ですね」
「バ、バカな! 今までこの連携で感電死しなかったヤツなんていなかったんだぞ!」
「わたくしたちはこの程度では死にませんよ。せめてこの数十倍浴びせてくれなければ」
「た、ただの負け惜しみだ! 内臓には相当なダメージを喰らっているはずだ! 身体から湯気まで出てダメージが無いわけがない!」
オークとミドルジャイアントが、未だ脚が泥に沈んでいるアリサに追い打ちとばかりに、左右それぞれから巨大ハンマーと拳で挟み撃ちする。
しかし――
「な……何でその細腕で受け止められる!?」
「お、俺たちの方がでかいのに……」
アリサは、オークの巨大ハンマーによる渾身の一撃を左手で、ミドルジャイアントの巨大な拳を右手で受け止める。
自分たちの数分の一しかない肉体に真正面から攻撃を受け止められ、驚愕するオークとミドルジャイアント。
「そ、そのまま押し潰せ!」
ライオン獣人のその言葉に、更に力を込めてアリサを押し潰そうとするが――
「う、動かない……」
「何なんだコイツ……」
「仕方ない! 二人ともそのまま抑えてろ!! 俺が近付いてトドメを刺す!」
動けないアリサに対し、直接斬撃を加えようと近付こうとするライオン獣人。
しかし、直後、一瞬だけアリサが腕を縮めたと思ったら、ハンマーと拳を勢い良く外側へと押し出した。
不意の反発に大きく体勢を崩すオークとミドルジャイアント。
両手が自由になったアリサは右拳を握り込み、自身の脚が沈んでいる目下の泥水に向かって拳を叩き下ろす。
泥水は拳の放つ衝撃波により四散。これにより泥の中に沈んでいた脚が姿を現した。
「これで脚も自由になりましたね。さあ、お覚悟ください」
脚が自由になったアリサは、オークとの距離を素早く詰め、腹に拳を叩き込む。
「ぐぁ……おぉぉ……」
そのまま踵を返し、強靭な脚力で跳躍、体操選手のように地面を跳ねつつライオン獣人を撹乱しながら距離を詰め、回し蹴り途中の動作で足の甲と足首の間にライオン獣人の首を引っ掛け、顔面を砂面へと叩き付けた。
「がぁッ……!!」
二人がやられたのを目撃した苦し紛れのミドルジャイアントの攻撃を身体の軸をずらして避け――
「あなたは身体が大きいので、少しだけキツイのをお見舞いしますね」
少しの魔力を拳に溜め、小ジャンプして腹に一撃――
「ごぁぁ……」
――着地してもう一度ジャンプ、一回目よりも高く飛び上がり、ミドルジャイアントの顔面を蹴り飛ばした。
「ぐああぁあぁぁ……!!」
オークは腹を押さえて前のめりに、ライオン獣人は顔を砂面にしたたかに打ち付けられ、小巨人は少し遠くまで蹴り飛ばされて全員そのまま気を失った。
「ふぅ……この程度の威力なら死にはしないでしょう。それにしても……死なないように力を加減するというのも中々大変ですね……」
◇
一方のレイアサイド――
「よっしゃ! いつでも来て良いよ!」
「俺一人でやる、小娘相手に三人は卑怯だ」
「え~! 自分たちの力量分かってないの~? 三人合わせたって私の足元にも及ばないよ?」
「「「なんだとっ!!?」」」
その天然で言ったのか挑発とも取れる言葉に憤慨するオーガ、カバ獣人、火トカゲ爬虫人。
「大口叩いたことを後悔させてやる!」
走り込んで剣を横薙ぎするオーガに、真正面から右腕で受け止めるレイア。
「良いね良いね! その調子でどんどん攻撃してきてよ! ほら、そっちの二人もさ! 三対一が卑怯なんて強盗団らしくないこと言ってないでさ!」
その誘いに乗り、サラマンディアが左腕側から剣を振り下ろし、ガキンという金属音に似た音を響かせる。
剣を持った二人に挟まれる形になるも、その硬い体質に二人は驚愕。
「生身の腕で受け止めたのに、金属音!?」
「な、何なんだお前!? あの男と言い、お前と言い、何なんだこの身体の硬さは!?」
「そんな質問されたって、私たちの体質としか言いようがないよ」
「二人ともそのまま抑えておけ、俺がぶった切る」
大斧を持ったカバ獣人が動けないレイアの正面に立ち、大斧を振りかぶる。
「ちょ、その大きさの斧は流石に喰らったら痛いかなぁ……」
「お前は危険だ! 問答無用!」
斧が振り下ろされるも、両横の二人を突き飛ばし、身体の軸をずらして斧を避けつつ、直後にカウンターで――
「よっ!」
――と言う軽い掛け声と共に、カバ獣人の顔を蹴り飛ばす。
「ぐあぁぁ!」
蹴りの勢いで砂面に埋まるカバ獣人。
「この小娘がぁ!」
オーガの大剣による連続攻撃。
剣とレイアの腕がぶつかり合い、キンキンキンと小気味の良い金属音を響かせる。
「良いね良いね! アルトレリアにはあなたくらい強いのが居ないから中々新鮮だよ!」
しゃべりながらも全ての攻撃を軽々と叩き落とす。
しかし、しゃべってる間に後ろに回っていたカバ獣人。
「うわ! いつの間に後ろに? さっき砂に埋まってたのに復帰早いね~」
斧を振りかぶり、そのまま上空に斧を投げた。
「え? 何やってんの? 斧手放したりして」
しかし、それはフェイントだった。
レイアが上空を見ながら呆気にとられていると、その隙を突いて左腕に噛みつく。
「痛あああぁぁぁ!!!」
「ぐおおぉ、い、痛てぇ……何て硬さだ……腕だけでも深手を負わせてやろうと思ったのに」
レイアの肌のあまりの硬さに、すぐに口を離す。
噛みついたカバ獣人の犬歯の方に亀裂が入ってしまった。
「何てことするのさ! あ~あ、肌が荒れちゃったじゃん!」
ヒビの入った左腕を見て、『肌荒れ』で済ますレイア。
「うん、もう良いや、結構楽しめたし、終わりにしよっか」
少し機嫌が悪くなったことで、自然に漏出する魔力に怒気が籠り、レイアの威圧感が増す。
危機感を覚え、後ずさる三人。
「な、何だこの威圧感は……!?」
「こ、殺される……」
「う……二人とも突撃しろ! 俺は隙を突いてとっておきを叩き込む!」
号令役らしきサラマンディアが、オーガとカバ獣人に命令する。
「確かにアレなら倒せるかもしれない」
「わ、わかった……」
二人は決死覚悟で攻撃するも、レイアはその全ての攻撃を叩き落とす。
全ての攻撃を捌き切ったレイアは滑るようにオーガの懐に入り込み、腹に拳を叩き込む。
「ぐぉぉあぁぁ……」
「そっちも!」
オーガに滑り込んだ時の反動を利用し、カバ獣人に裏拳を叩き込んで弾き飛ばした。
弾き飛ばされ、再び砂に埋まるカバ獣人。
「ううぅぅ……」
「あれ? トカゲがいない」
「こっちだ! 喰らえ俺のとっておきだ!」
息を吸い込み、レイアに対して業火を吐きかける――
――も、炎をものともせず、そのまま火を吹いている最中のサラマンディアの口を掴んだ。
「な、なぬぃ!? あ、熱づづ! は、離へ!」
火を吹き続ける口を掴んだまま、砂面に押し倒す。
「ぐあぁぁっ!! ど、どういうことだ!? ひ、火が効かないのか!?」
「う~ん、私たちって火にかなり強い種族だからね。こんなんじゃ何てことは無いよ。じゃあちょっとだけ本当の火ってのを見せてあげるね。あなたたちも火には強い種族だって話だし、きっと耐えられるよ! すぅーー……」
砂面に横たわっているサラマンディアに【ファイアブレス】を吐きかける。
「う、うわぁぁぁ!!」
ドオォォンという爆発によりサラマンディアも気を失った。
「思ったよりは楽しめたかな。あとはフレハル様だけだね」
「余程俺たちのことを下に見ているようだな」
「はい、相手の力量が分からないようでは、わたくしたちには勝てません」
「ならばその力、見せてもらおう!」
まず動いたのはアリサ側のライオン獣人だった。
「うおぉぉ!!」
掛け声と共に振り下ろされる大剣。しかし、それを半身ずらして難なく躱す。
そのまま薙ぎ払うものの、それもバックステップで避けた。
ライオンの後ろで機を窺っていたオークが勢いを付けて、巨大なハンマーを横に薙ぐも、その上を華麗にムーンサルトして避ける。
空中にいるアリサを狙い、小巨人がパンチを繰り出すものの、ミドルジャイアントの手にトンッと片腕を突いてその勢いで再度跳躍して避ける。もう片方の腕で捕まえようとするも、空中で身体を捻って無理矢理回転し、腕が迫る際の気流を利用して避けた。
その後も、三人が放つ斬撃、鎚撃、打撃を危なげなく躱す。
「コイツ、ちょこまかと!」
「全然当たらない……」
「なるほど、あなた方の実力は大体分かりました」
「実力が分かった? ただ避けていただけなのにか?」
「はい、わたくしの方から攻撃させていただきます」
その時、ライオン獣人が口角を上げてニヤリと笑う。
「俺たちがただ斬撃や打撃だけの脳筋だと思っているだろ?」
直後に突然アリサの足元に沼が出現、両脚が膝上辺りまで泥の中に沈んだ。
「これは!?」
ライオンがしゃべっている間に、オークが土属性と水属性の複合魔法を使ってアリサの足元を泥状態に変化させた。
「これで機動力を削いだ。そして水は電気を通しやすくする! 喰らえ! 【サンダーブレード】!」
剣を模した雷が、泥に沈んだアリサに突き刺さる。
「うぅッ! ああぁぁッッ!!」
泥水に浸かっているため水の相乗効果により、雷エネルギーが増幅。
通常喰らう以上の雷ダメージをまともに喰らってしまった。
強く感電しアリサの口や耳、身体全体から湯気が出ている。
「死んだか?」
オークのその言葉にもうつむいて答えない。
「【サンダーブレード】を直接腹に突き刺したんだ。その上水で電気を通しやすくなっている。普通の生物なら内臓は焼け焦げて使い物にならなくなってるだろう」
「ここまでやる必要があったか?」
「確かに……少々やり過ぎたかもしれないが……この女を見てると、殺さなければこちらが殺られるというような勘が働いてな」
「確かに……俺もそれは感じていた……常に威圧感を放っていて恐怖していたよ」
「名前すら分からず殺してしまったが……しかし俺たち三人を相手取ろうとは少々自惚れが過ぎたようだな」
「死体はどうする?」
「このままにしておけば砂漠の生物が全部処理してくれるだろう」
そう言い捨てその場を離れようとするが、しかし少し間を置いて――
再び威圧感を感じ、恐怖の表情で振り返る三人。
「ふぅ……中々の雷でした。肩凝りにはちょうど良い電圧ですね」
「バ、バカな! 今までこの連携で感電死しなかったヤツなんていなかったんだぞ!」
「わたくしたちはこの程度では死にませんよ。せめてこの数十倍浴びせてくれなければ」
「た、ただの負け惜しみだ! 内臓には相当なダメージを喰らっているはずだ! 身体から湯気まで出てダメージが無いわけがない!」
オークとミドルジャイアントが、未だ脚が泥に沈んでいるアリサに追い打ちとばかりに、左右それぞれから巨大ハンマーと拳で挟み撃ちする。
しかし――
「な……何でその細腕で受け止められる!?」
「お、俺たちの方がでかいのに……」
アリサは、オークの巨大ハンマーによる渾身の一撃を左手で、ミドルジャイアントの巨大な拳を右手で受け止める。
自分たちの数分の一しかない肉体に真正面から攻撃を受け止められ、驚愕するオークとミドルジャイアント。
「そ、そのまま押し潰せ!」
ライオン獣人のその言葉に、更に力を込めてアリサを押し潰そうとするが――
「う、動かない……」
「何なんだコイツ……」
「仕方ない! 二人ともそのまま抑えてろ!! 俺が近付いてトドメを刺す!」
動けないアリサに対し、直接斬撃を加えようと近付こうとするライオン獣人。
しかし、直後、一瞬だけアリサが腕を縮めたと思ったら、ハンマーと拳を勢い良く外側へと押し出した。
不意の反発に大きく体勢を崩すオークとミドルジャイアント。
両手が自由になったアリサは右拳を握り込み、自身の脚が沈んでいる目下の泥水に向かって拳を叩き下ろす。
泥水は拳の放つ衝撃波により四散。これにより泥の中に沈んでいた脚が姿を現した。
「これで脚も自由になりましたね。さあ、お覚悟ください」
脚が自由になったアリサは、オークとの距離を素早く詰め、腹に拳を叩き込む。
「ぐぁ……おぉぉ……」
そのまま踵を返し、強靭な脚力で跳躍、体操選手のように地面を跳ねつつライオン獣人を撹乱しながら距離を詰め、回し蹴り途中の動作で足の甲と足首の間にライオン獣人の首を引っ掛け、顔面を砂面へと叩き付けた。
「がぁッ……!!」
二人がやられたのを目撃した苦し紛れのミドルジャイアントの攻撃を身体の軸をずらして避け――
「あなたは身体が大きいので、少しだけキツイのをお見舞いしますね」
少しの魔力を拳に溜め、小ジャンプして腹に一撃――
「ごぁぁ……」
――着地してもう一度ジャンプ、一回目よりも高く飛び上がり、ミドルジャイアントの顔面を蹴り飛ばした。
「ぐああぁあぁぁ……!!」
オークは腹を押さえて前のめりに、ライオン獣人は顔を砂面にしたたかに打ち付けられ、小巨人は少し遠くまで蹴り飛ばされて全員そのまま気を失った。
「ふぅ……この程度の威力なら死にはしないでしょう。それにしても……死なないように力を加減するというのも中々大変ですね……」
◇
一方のレイアサイド――
「よっしゃ! いつでも来て良いよ!」
「俺一人でやる、小娘相手に三人は卑怯だ」
「え~! 自分たちの力量分かってないの~? 三人合わせたって私の足元にも及ばないよ?」
「「「なんだとっ!!?」」」
その天然で言ったのか挑発とも取れる言葉に憤慨するオーガ、カバ獣人、火トカゲ爬虫人。
「大口叩いたことを後悔させてやる!」
走り込んで剣を横薙ぎするオーガに、真正面から右腕で受け止めるレイア。
「良いね良いね! その調子でどんどん攻撃してきてよ! ほら、そっちの二人もさ! 三対一が卑怯なんて強盗団らしくないこと言ってないでさ!」
その誘いに乗り、サラマンディアが左腕側から剣を振り下ろし、ガキンという金属音に似た音を響かせる。
剣を持った二人に挟まれる形になるも、その硬い体質に二人は驚愕。
「生身の腕で受け止めたのに、金属音!?」
「な、何なんだお前!? あの男と言い、お前と言い、何なんだこの身体の硬さは!?」
「そんな質問されたって、私たちの体質としか言いようがないよ」
「二人ともそのまま抑えておけ、俺がぶった切る」
大斧を持ったカバ獣人が動けないレイアの正面に立ち、大斧を振りかぶる。
「ちょ、その大きさの斧は流石に喰らったら痛いかなぁ……」
「お前は危険だ! 問答無用!」
斧が振り下ろされるも、両横の二人を突き飛ばし、身体の軸をずらして斧を避けつつ、直後にカウンターで――
「よっ!」
――と言う軽い掛け声と共に、カバ獣人の顔を蹴り飛ばす。
「ぐあぁぁ!」
蹴りの勢いで砂面に埋まるカバ獣人。
「この小娘がぁ!」
オーガの大剣による連続攻撃。
剣とレイアの腕がぶつかり合い、キンキンキンと小気味の良い金属音を響かせる。
「良いね良いね! アルトレリアにはあなたくらい強いのが居ないから中々新鮮だよ!」
しゃべりながらも全ての攻撃を軽々と叩き落とす。
しかし、しゃべってる間に後ろに回っていたカバ獣人。
「うわ! いつの間に後ろに? さっき砂に埋まってたのに復帰早いね~」
斧を振りかぶり、そのまま上空に斧を投げた。
「え? 何やってんの? 斧手放したりして」
しかし、それはフェイントだった。
レイアが上空を見ながら呆気にとられていると、その隙を突いて左腕に噛みつく。
「痛あああぁぁぁ!!!」
「ぐおおぉ、い、痛てぇ……何て硬さだ……腕だけでも深手を負わせてやろうと思ったのに」
レイアの肌のあまりの硬さに、すぐに口を離す。
噛みついたカバ獣人の犬歯の方に亀裂が入ってしまった。
「何てことするのさ! あ~あ、肌が荒れちゃったじゃん!」
ヒビの入った左腕を見て、『肌荒れ』で済ますレイア。
「うん、もう良いや、結構楽しめたし、終わりにしよっか」
少し機嫌が悪くなったことで、自然に漏出する魔力に怒気が籠り、レイアの威圧感が増す。
危機感を覚え、後ずさる三人。
「な、何だこの威圧感は……!?」
「こ、殺される……」
「う……二人とも突撃しろ! 俺は隙を突いてとっておきを叩き込む!」
号令役らしきサラマンディアが、オーガとカバ獣人に命令する。
「確かにアレなら倒せるかもしれない」
「わ、わかった……」
二人は決死覚悟で攻撃するも、レイアはその全ての攻撃を叩き落とす。
全ての攻撃を捌き切ったレイアは滑るようにオーガの懐に入り込み、腹に拳を叩き込む。
「ぐぉぉあぁぁ……」
「そっちも!」
オーガに滑り込んだ時の反動を利用し、カバ獣人に裏拳を叩き込んで弾き飛ばした。
弾き飛ばされ、再び砂に埋まるカバ獣人。
「ううぅぅ……」
「あれ? トカゲがいない」
「こっちだ! 喰らえ俺のとっておきだ!」
息を吸い込み、レイアに対して業火を吐きかける――
――も、炎をものともせず、そのまま火を吹いている最中のサラマンディアの口を掴んだ。
「な、なぬぃ!? あ、熱づづ! は、離へ!」
火を吹き続ける口を掴んだまま、砂面に押し倒す。
「ぐあぁぁっ!! ど、どういうことだ!? ひ、火が効かないのか!?」
「う~ん、私たちって火にかなり強い種族だからね。こんなんじゃ何てことは無いよ。じゃあちょっとだけ本当の火ってのを見せてあげるね。あなたたちも火には強い種族だって話だし、きっと耐えられるよ! すぅーー……」
砂面に横たわっているサラマンディアに【ファイアブレス】を吐きかける。
「う、うわぁぁぁ!!」
ドオォォンという爆発によりサラマンディアも気を失った。
「思ったよりは楽しめたかな。あとはフレハル様だけだね」
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