建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第14章 アルトラルサンズ本格始動編

第383話 各国の大使館建設始動 その4(大使館予定地割り振り会議)

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 現在、各国第三希望まで出してもらった大使館予定地を割り振るための会議を開始。

 役所会議室に、リーヴァント、副リーダー各位、大使館建設予定地の整地の監督をしたダイクーを招集。
 それと意見を聞きたいと思い、外国からアルトレリアに移住している水の国代表リナさん、トーマス、樹の国代表にフリアマギアさんの部下クリストさん、雷の国代表にローレンスさんの部下ジョンさんに集まってもらった。
 フリアマギアさんとローレンスさんを呼んだが、それぞれ事情があり代わりに部下が来ているといった感じ。

「フリアマギアさんはどうしたんですか? クリストさん」
「フリアマギアはこういうことに無頓着でして、行きたがらなかったため代わりに私が来ました。今日も元気にドアを調べてますよ」

 なるほど……外交は部下の仕事ってわけね。

「ジョンさん、ローレンスさんは?」
「ローレンスはダムの現場総監督ですので、俺が代わりに」
「そうですか。それは仕方ないですね」

 そうして樹の国と雷の国の参考人として呼んだ二人は部下に引き継がれて会議が始まった

「やはりどこの国も第一壁に一番近いところを希望してますね」

 と、リーヴァント。

「まあ、視察に来てる時もそこら辺はよく見てたしね。第一壁内部だけ発展してて、その外は現在のところ畑とか田んぼとか、ちょっと遠くに小麦畑とか、そういったもの以外に建物はまだあまり無い状態だから、どうしても町にアクセスが良い利便性のある場所を陣取りたいよね」
「それで、どのように配置しましょうか?」
「う~ん……第一候補は五ヵ国全部が希望しているからね……」

 五ヵ国全部が同じところを希望してるってのが困るな……多少はバラけてくれることを期待したんだけど……
 出来れば私と関りの大きい水の国とか雷の国とかにしてあげたいところだけど……そういう贔屓ひいきって良いのかな?

「しかし、樹の国と水の国だけは迷いなく決められそうですね」
「何で?」

 ジュゼルマリオが私が見落としていた朗報を持って来てくれた。

「手紙に書かれています、樹の国からの手紙では『競合した場合は自然が多いところにしてもらえれば、少しばかり交通が不便でも文句はありません』、水の国からのは『派遣予定の職員候補に水棲亜人が多いため、競合した場合は川に最も近いところを希望します』と」
「あ、ホントだ。じゃあその二ヵ国は畑に一番近いところと、川に一番近いところで決まりで良いか」
「畑に近いと言っても、候補七ヶ所で一番近いという程度ですが」
「それはしょうがないでしょ。畑のすぐ近くに大使館建てるわけにはいかないし。“一番自然に近い場所”って希望には適ってるから多分納得してもらえるでしょ。事前に視察にも来てて場所も把握してるわけだし」

 そこでクリスティンが口を挟む。

「その二ヵ国って……その近くを利用したいってことなんでしょうか?」
「どういうこと?」
「大使館職員って、私はよく知らないんですけど、要するに外国の方々が役所でやってるようなことをする機関なんですよね?」
「う~ん……多分大分違うと思うけど」
「内仕事ではないんですか?」
「それは多分そう。屋内での仕事が多いと思う」

 私も大使館のお仕事なんてよく知らんけど……

「主に内仕事なら、その二ヶ所の近くを希望する理由と目的が分からないですよね? だとしたら例えば水の国の場合は川に入りたいからとか、樹の国の場合は農作業したいからとか、そんな理由でその近くを希望しているってことなんじゃないでしょうか?」
「さ、さあ? 相手の思惑までは分からないけど……でも、わざわざ他国に派遣されて来てる高官がそんなこと考える? 近くにそういったものがあると職員が落ち着くとか、心和むとか、そんな程度のことなんじゃない?」
「わ、私も疑問としか思わなかったので、想像で答えたに過ぎませんけど……」

 確かにクリスティンが疑問として口にした、相手国の意図が私にも分からない。
 お国柄を考えると、水浴びしたいとか、農作業したいとかは普通にあり得そうだ。水の国なんて街中に水路が走っていて、視界には常に水が入っている状態だったし、樹の国なんてそこら中畑だらけだった。
 種族別に性質や習慣があるかもしれないし、地球基準で考えない方が良いのかもしれない。
 水棲亜人って身体乾いてもちゃんと活動できてるのかしら?

「リナさんとトーマスって水に入る必要があるの?」
「日に二回ほど川へ水浴びに行ってますよ」
「え!? そうだったの!? それは気付かずにごめん! ってことはトーマスも?」
「私は潤いの木を管理していましたから。日に何度か水浴びさせてもらいました。現在もリナと同じく二回くらい」
「今更だけど、何で水に入る必要があるの? 呼吸が苦しくなるとか?」
「いえ、そうではありません。我々水棲亜人は長時間水に入らないと身体から油が出てくるんですよ、徐々に生臭くなってきます」
「そうなの!?」
「特に男の人魚マーマンはそれが顕著なので対面した方を不快にさせないためにも一日に一回、風呂の時間を含めて二回ほどは水に入ることは必須と言えます。トロル村に来てからは騎士団時代とは違い時間に余裕があるため風呂を除いて二回水浴びさせてもらってます。一日最低二回は水に入らないと通常の状態を保てません」

 そんな性質があったんだ……

「ってことは冬の間とか寒くて大変だったんじゃないの?」
「ドワーフの方々に潤いの木管理室に風呂を作ってもらって、そこでお湯浴びしてました」
「リナさんも?」
「私もエルフィーレさんにお願いして、縫製所にお風呂作ってもらいました。温かいお湯で水浴びできてありがたいです」
「なるほど、そうやって冬をしのいだわけね」

 そうだったんだ……そこに気付かなかったのは悪かったな……

「アクアリヴィアで遠征とかした場合どうしてたの?」
「現地で水場を探して水に入る、とかですかね。ただ、我々水棲亜人はほぼ百パーセントの者が水魔法を使えますので、それで何とかできます。とは言え無駄に魔力を消費できる場面はそう多くはありませんので水場も見つからない場合は、所持している水、例えば水筒に入れた水などを頭から浴びるとかですかね。水を浴びるだけでも少しは緩和するので。魔法を使うのは最終手段です」

 あれ? でも樹の国首都に行く時ルイスさんと二週間近く一緒に居たけど、水なんか浴びてたかな?

「樹の国に行く時何日もルイスさんと一緒だったけど、水浴びしてた様子は無かったよ? 服脱いだところを見たことがないし、濡れてた記憶も無いんだけど……」
「ルイス殿なら速乾性のローブを着てたのではないですか?」
「そういえば湖に落ちた後、すぐ乾いてたような……」
「それにあの方は我々のような騎士よりも魔力量が多いと思いますし、魔法で対処していた可能性が高いですよ」

 ってことは私が知らなかっただけで、私の見てないところで水浴びしてたってことなのか。水魔法使えば可能だろうし。
 そういえば道中ずっと私の後ろを歩いてたから、いつ水浴びしてたかなんて分からないわ。

「なるほど、じゃあ水の国の人々にとっては水が近くにあった方が良いってことなのね。水と言えば、もしかして水の精霊ルサールカであるシーラさんも何度も水浴びしてたりするの?」
「いえ、水の精霊種は水棲亜人とは構造そのものが違って長時間水に入らなくても臭いがしてくるということはありません。水の精霊種の場合は身体が極端に乾いてくると受肉体が保てないので水を体内に取り込むことが必要になります。とは言え私たちのように全身を水に浸す必要は無く、手を水に浸すだけで事足りるんですよ。だから多分川へ行ってたりすることは無いと思います」
「そうなのか。手から水を吸い上げるとか、そんな感じ?」
「そうですね。身体の一部が触れてれば水を取り込めるようなので、アクアリヴィアに住んでいる水の精霊種が手を水に浸して吸い上げてるのを見たことがあります。ただ、シーラさんの場合は銀行員で紙を扱うので、普通にコップに注いで飲むだけかもしれませんね」

 そこは普通に私たちと変わらないようね。
 クラーケンであるリディアは……家ではお風呂以外に水浴びしてるところを見たことがない。人の姿をとれるからあまり頻繁に水に触れて無くても良いのかな? いや、リナさんやトーマスはそうでもないようだし。リディアについては謎だわ。あれはまた別の生態と考えた方が良いのかも?

「水が近くにある方が良いと希望しているならそのように配置してあげるのがよいのではないでしょうか?」

 イチトスに促され、

「うん、そうだね。彼ら・彼女らの話を聞く限りは、水が近くにあった方が良いのかも。じゃあ水の国の大使館予定地は決まりね。次は樹の国だけど……自然が近くにあった方が良いというのはどういうことなんですか? クリストさん」
「まず先に謝っておこうかと思います。申し訳ありません、シティーエルフの私個人としては自然が近くにあることを特別希望するというわけではありませんので、今後大使になられる木の精霊の方々の気分の問題ではないかと思います」
「なるほど、つまり?」
「私にはその気持ちが分かりません」

 それだとクリストさんを参考人として呼んだ意味が無いな……

「な、何とか気持ちを理解できるようなポイントはありませんか? 樹の国の内情に詳しいのは現在のところあなた方お三方だけなので……例えば木の精霊さんたちの行動からとか」
「う~ん……そうですねぇ……確かに、私の記憶の限りでは木の精霊の方々は土いじりが好きだったように思います。木の精霊の方々は大なり小なり自身の菜園を持っている方がほとんどでしたので。もしかしたら大使館の土地でも作物を育てることをしたいのかもしれません」
「なるほど、それで自然の多い場所を希望。もっと言うなら仕事が無い時には畑いじりもしたいってわけですね」
「大使館の敷地内で作物育てても良いんですか?」
「う~ん……大使館の敷地内なら治外法権だし、一応常識的な範囲内ならどんな状態にしても良いことにはなるけど……」

 そもそもこの国にはまだ法律が無いんだっけな……
 急いで法律作った方が良いかもしれない。
 法律のことなんてほとんど分からんし、カイベルにお願いしておくか。

「意図は分からないけど、まあ自然が一番多い予定地へは振り分けましょうか。それは樹の国側の希望でもあるし」

 よし! 二ヵ国の場所は暫定的に決まった。
 さて残りの三ヵ国はどうするか。


   ◆◇◆


 今回からタイトルが『魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚』に変わりました。
 『魔界の天使アルトラは住み心地をよくしたい!』とどちらにしようか散々迷いましたが、『住み心地』を入れたかったところでしたが、少し堅めのタイトルにしました。
 これもまだ様子見の段階ですので、後々変更になるかもしれませんが、しばらくはこの名前で行こうと思います。
 今後もよろしくお願い致します!m(__)m

 次回は7月23日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
  第384話【前乗り組】
 次話は明日投稿予定です。
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