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第14章 アルトラルサンズ本格始動編
第380話 フリアマギアはドアが気になる その2
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【修正場所について】
前話第379話で『ミスリル銀』が魔力を分解し『アブソロニウム鋼石』が魔力を吸着すると書きましたが、これは誤りでした。
正確には魔力を吸着するのが『ミスリル銀』、魔力を分解するのが『リダクティウム鋼石』ということになり、設定をあべこべに記述していました。
また、『アブソロニウム鋼石』の名前の由来が『アブソーブ(吸収)』が由来のため、名前も『リダクション(還元)』が由来の『リダクティウム鋼石』に変更しました。
誤:分解の『ミスリル銀』 → 正:分解の『リダクティウム鋼石』
誤:吸着の『アブソロニウム鋼石』 → 正:吸着の『ミスリル銀』
誤:『アブソロニウム鋼石』という名称 → 正:『リダクティウム鋼石』に変更
なお、この前書きは頃合いを見て削除します。
度々間違いを起こしてしまいすみません。
◆◇◆
翌朝――
ゼロ距離ドアで町へ出ると何かが身体に当たって地面に転がった。
「ん? なにこれ? 虫?」
この辺りでは見たことない虫だな。
地球で言うところの服に付く植物の種、通称『ひっつき虫』のような形をした虫が飛んで来た。指で摘まんで見てみると、足が沢山あってめっちゃウネウネ動いててキモい。
魔界の『ひっつき虫』は植物の種じゃなくて本当に虫みたいだ。こんなのまでアルトレリアに住み着くようになってきたのか。
「まあ針みたいなものも持ってないし、多分毒は無いでしょ」
と言いつつ虫を遠くの茂みに投げ捨てようとした瞬間、後ろからカイベルに声をかけられた。
「アルトラ様」
珍しく我が家からゼロ距離ドアを越えてまでカイベルが追いかけて来た。何か伝えないといけないことでもあるのだろうか?
「カイベル、どうかした?」
「フリアマギア様が――――――したようです」
カイベルに耳打ちされた。
「は?」
この『ひっつき虫』ってそういうことなのか。
どうやら私に対して、樹の国との信用を損ねかねないことをしようとしているらしい。
「それでフリアマギアさんはどこに?」
「ここからは見えませんが、あの家の影にいらっしゃいます」
「分かった、ありがとう」
ゲートで転移。行き先は樹の国の大森林の中心辺り。
森の中にさっき飛んできたひっつき虫を捨てて、すぐさまアルトレリアに帰還。
家の影に隠れてたフリアマギアさんの背後に陣取る。
と、モバイルパソコンのような形の受信機を取り出して見始めた。
受信機には地図が表示されている。
ここでさっき大森林に捨てて来た『ひっつき虫』について説明。
私には本当の虫のように見えたが、カイベルによると発信機が内蔵されているらしく、フリアマギアさんが今見ている受信機と対になっているそうだ。この受信機に表示されている地図によって、今現在ひっつき虫がどこにいるかを知ることができるのだろう。
さっきカイベルが私を追いかけて付いて来たのは、それが発信機であることを報告しにきたらしい。
私がいつかはゼロ距離ドアを発掘した (ことになっている)遺跡に行くかもと予想して服に貼り付けようとしたのかもしれないが、私の纏う闇のドレスは、少量の水や土埃 (※)以外の物理的なものは全部通り抜けるから虫ほど大きいものがくっ付くことはない。そのため通り抜けて私の身体に当たったと思われる。
(※少量の水や土埃:ごく微量の物質なら纏った闇が消し去ってくれるが、質量が大きいと消し去ることができないため通り抜ける)
「よ~し、アルトラ殿はどこへ転移したのかな~と」
後ろからフリアマギアさんに近付き、耳元で――
「アルトラ殿は上手いことドアを掘り起こした遺跡へ行ってくれますかね?」
――とカマをかけてみた。声色も変えずに話しかけたにも関わらず、部下に話しかけられたと思っているのか後ろに居る私に全く気付かない。
その声にいち早く気付いたフリアマギアさんの周囲に居た部下のクリストさんとパトリックさんが青い顔になって驚愕している。さっきどこかに転移してこの場にいるはずのない私が突然現れたから声も出ないほど驚いたのだろう。
「そうだね~、上手いこと遺跡に行ってくれれば、私も秘密裏に調べに行けるんだけどね~」
カマかけてみたら案の定、なるほど、やっぱり目的は遺跡なわけか。
「………………アレ? アルトラ殿の転移した先、これって……樹の国の大森林? 何でこんな何も無いところに? 転移してから全然動かないし」
「なぜだと思いますか?」
「なぜって……そんなの私に分かるわけ…………ひっ! ア、アルトラ殿ぉっ!?」
ようやく後ろに立っていた私の存在に気付き、上擦った声と共に、驚愕した表情でこちらを振り向くフリアマギアさん。
「なななな、何でここにいらっしゃるのですか?」
「さっき私に投げたひっつき虫は何ですか?」
「う……あの……その……そ、そんなの居たんですか?」
どうやらこの期に及んでも誤魔化すつもりらしい。
「ただの虫に見えましたけど、あれは発信機が内蔵されてますよね?」
「は、発信機……? さささて、なな何のことでしょう……?」
この動揺具合。
正解をズバリ言ってもまだシラを切るつもりか……
「全部分かってるので、隠すと身のためになりませんよ?」
「うぅ……」
「フリアマギアさん!!」
「う……あ……は、はい……そ、その通りです……発信機です……」
「いつか遺跡に行くかもと予想して付けたのだと思いますが、私にこんなの付けても遺跡になんか行きません。こういうのはやめてください、国家間の信用に関わります。場合によっては樹の国に報告しないといけません。もしここでっ樹の国との関係がこじれてしまえば疑似太陽はもちろん白紙です。そうしたらあなたにもそれ相応の処分が下るかも? 少なくとも返還命令が下り、下手したら投獄という可能性もあり得ないことではないかもしれません」
「あわわわ……そ、そんなことになったら研究が出来なくなっちゃう……!」
「ドアの謎を解明したいと研究熱心になるのは良いことですけど、他人を監視しようとするのはいただけません。ましてや私はまだまだ威厳は無いですが一応アルトラルサンズの国主です。こういうことをされてはこちら側としてもそれ相応の処断を下さなければならなくなります」
「う…………も、申し訳ありませんでした……」
観念したのかようやく非を認めた。
「フリアマギアさんは、私の呼びかけに応じてくれた恩人ですし大事にはしたくありません。今回に限りお咎め無しとします。しかし今後こういうのはご遠慮くださいね」
「は、はい……しょ、承知しました……」
やれやれ……
大分脅かしたし、多分もうストーカー紛いなことはやらないだろう。
カイベルが耳打ちしてくれて良かった……
「その代わりドアはいくら調べても良いので、壊したり取り外したりしない限りは自由にしてください」
私としても『創成魔法』以外で、正当に空間魔法系の魔道具が作られるのなら、それが良いと思っている。
創成魔法は自分で言うのもなんだけど、ズルみたいなもんだしね。
この研究によって新たな移動手段が作られるなら、私としてはむしろ望むところだ。
その後、ダム建設現場が休みの度にドアを熱心に調べている彼女らを目撃するようになった。
◆◇◆
【後書き】
突然ですが、次回からこの小説の名前を変えようかと思います。
一時はツイッターで変更候補の投票をしてもらおうかとも思ったのですが、やはり自分で変えるのが筋かなと。
候補タイトルは『魔界の天使アルトラは住み心地をよくしたい!』と『魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚』のどちらにするか迷っていますが、どちらかにしようと思いますのでよろしくお願いしますm(__)m
欲を言うならもう少し短いタイトルになれば良いなぁと思いますが、これ以上短くはなりそうもないので(^^;
ちなみに現在のタイトルは61文字。我ながら長いな~……
次回は7月20日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第381話【来訪者急増!】
次話は木曜日投稿予定です。
前話第379話で『ミスリル銀』が魔力を分解し『アブソロニウム鋼石』が魔力を吸着すると書きましたが、これは誤りでした。
正確には魔力を吸着するのが『ミスリル銀』、魔力を分解するのが『リダクティウム鋼石』ということになり、設定をあべこべに記述していました。
また、『アブソロニウム鋼石』の名前の由来が『アブソーブ(吸収)』が由来のため、名前も『リダクション(還元)』が由来の『リダクティウム鋼石』に変更しました。
誤:分解の『ミスリル銀』 → 正:分解の『リダクティウム鋼石』
誤:吸着の『アブソロニウム鋼石』 → 正:吸着の『ミスリル銀』
誤:『アブソロニウム鋼石』という名称 → 正:『リダクティウム鋼石』に変更
なお、この前書きは頃合いを見て削除します。
度々間違いを起こしてしまいすみません。
◆◇◆
翌朝――
ゼロ距離ドアで町へ出ると何かが身体に当たって地面に転がった。
「ん? なにこれ? 虫?」
この辺りでは見たことない虫だな。
地球で言うところの服に付く植物の種、通称『ひっつき虫』のような形をした虫が飛んで来た。指で摘まんで見てみると、足が沢山あってめっちゃウネウネ動いててキモい。
魔界の『ひっつき虫』は植物の種じゃなくて本当に虫みたいだ。こんなのまでアルトレリアに住み着くようになってきたのか。
「まあ針みたいなものも持ってないし、多分毒は無いでしょ」
と言いつつ虫を遠くの茂みに投げ捨てようとした瞬間、後ろからカイベルに声をかけられた。
「アルトラ様」
珍しく我が家からゼロ距離ドアを越えてまでカイベルが追いかけて来た。何か伝えないといけないことでもあるのだろうか?
「カイベル、どうかした?」
「フリアマギア様が――――――したようです」
カイベルに耳打ちされた。
「は?」
この『ひっつき虫』ってそういうことなのか。
どうやら私に対して、樹の国との信用を損ねかねないことをしようとしているらしい。
「それでフリアマギアさんはどこに?」
「ここからは見えませんが、あの家の影にいらっしゃいます」
「分かった、ありがとう」
ゲートで転移。行き先は樹の国の大森林の中心辺り。
森の中にさっき飛んできたひっつき虫を捨てて、すぐさまアルトレリアに帰還。
家の影に隠れてたフリアマギアさんの背後に陣取る。
と、モバイルパソコンのような形の受信機を取り出して見始めた。
受信機には地図が表示されている。
ここでさっき大森林に捨てて来た『ひっつき虫』について説明。
私には本当の虫のように見えたが、カイベルによると発信機が内蔵されているらしく、フリアマギアさんが今見ている受信機と対になっているそうだ。この受信機に表示されている地図によって、今現在ひっつき虫がどこにいるかを知ることができるのだろう。
さっきカイベルが私を追いかけて付いて来たのは、それが発信機であることを報告しにきたらしい。
私がいつかはゼロ距離ドアを発掘した (ことになっている)遺跡に行くかもと予想して服に貼り付けようとしたのかもしれないが、私の纏う闇のドレスは、少量の水や土埃 (※)以外の物理的なものは全部通り抜けるから虫ほど大きいものがくっ付くことはない。そのため通り抜けて私の身体に当たったと思われる。
(※少量の水や土埃:ごく微量の物質なら纏った闇が消し去ってくれるが、質量が大きいと消し去ることができないため通り抜ける)
「よ~し、アルトラ殿はどこへ転移したのかな~と」
後ろからフリアマギアさんに近付き、耳元で――
「アルトラ殿は上手いことドアを掘り起こした遺跡へ行ってくれますかね?」
――とカマをかけてみた。声色も変えずに話しかけたにも関わらず、部下に話しかけられたと思っているのか後ろに居る私に全く気付かない。
その声にいち早く気付いたフリアマギアさんの周囲に居た部下のクリストさんとパトリックさんが青い顔になって驚愕している。さっきどこかに転移してこの場にいるはずのない私が突然現れたから声も出ないほど驚いたのだろう。
「そうだね~、上手いこと遺跡に行ってくれれば、私も秘密裏に調べに行けるんだけどね~」
カマかけてみたら案の定、なるほど、やっぱり目的は遺跡なわけか。
「………………アレ? アルトラ殿の転移した先、これって……樹の国の大森林? 何でこんな何も無いところに? 転移してから全然動かないし」
「なぜだと思いますか?」
「なぜって……そんなの私に分かるわけ…………ひっ! ア、アルトラ殿ぉっ!?」
ようやく後ろに立っていた私の存在に気付き、上擦った声と共に、驚愕した表情でこちらを振り向くフリアマギアさん。
「なななな、何でここにいらっしゃるのですか?」
「さっき私に投げたひっつき虫は何ですか?」
「う……あの……その……そ、そんなの居たんですか?」
どうやらこの期に及んでも誤魔化すつもりらしい。
「ただの虫に見えましたけど、あれは発信機が内蔵されてますよね?」
「は、発信機……? さささて、なな何のことでしょう……?」
この動揺具合。
正解をズバリ言ってもまだシラを切るつもりか……
「全部分かってるので、隠すと身のためになりませんよ?」
「うぅ……」
「フリアマギアさん!!」
「う……あ……は、はい……そ、その通りです……発信機です……」
「いつか遺跡に行くかもと予想して付けたのだと思いますが、私にこんなの付けても遺跡になんか行きません。こういうのはやめてください、国家間の信用に関わります。場合によっては樹の国に報告しないといけません。もしここでっ樹の国との関係がこじれてしまえば疑似太陽はもちろん白紙です。そうしたらあなたにもそれ相応の処分が下るかも? 少なくとも返還命令が下り、下手したら投獄という可能性もあり得ないことではないかもしれません」
「あわわわ……そ、そんなことになったら研究が出来なくなっちゃう……!」
「ドアの謎を解明したいと研究熱心になるのは良いことですけど、他人を監視しようとするのはいただけません。ましてや私はまだまだ威厳は無いですが一応アルトラルサンズの国主です。こういうことをされてはこちら側としてもそれ相応の処断を下さなければならなくなります」
「う…………も、申し訳ありませんでした……」
観念したのかようやく非を認めた。
「フリアマギアさんは、私の呼びかけに応じてくれた恩人ですし大事にはしたくありません。今回に限りお咎め無しとします。しかし今後こういうのはご遠慮くださいね」
「は、はい……しょ、承知しました……」
やれやれ……
大分脅かしたし、多分もうストーカー紛いなことはやらないだろう。
カイベルが耳打ちしてくれて良かった……
「その代わりドアはいくら調べても良いので、壊したり取り外したりしない限りは自由にしてください」
私としても『創成魔法』以外で、正当に空間魔法系の魔道具が作られるのなら、それが良いと思っている。
創成魔法は自分で言うのもなんだけど、ズルみたいなもんだしね。
この研究によって新たな移動手段が作られるなら、私としてはむしろ望むところだ。
その後、ダム建設現場が休みの度にドアを熱心に調べている彼女らを目撃するようになった。
◆◇◆
【後書き】
突然ですが、次回からこの小説の名前を変えようかと思います。
一時はツイッターで変更候補の投票をしてもらおうかとも思ったのですが、やはり自分で変えるのが筋かなと。
候補タイトルは『魔界の天使アルトラは住み心地をよくしたい!』と『魔界の天使アルトラの国造り奮闘譚』のどちらにするか迷っていますが、どちらかにしようと思いますのでよろしくお願いしますm(__)m
欲を言うならもう少し短いタイトルになれば良いなぁと思いますが、これ以上短くはなりそうもないので(^^;
ちなみに現在のタイトルは61文字。我ながら長いな~……
次回は7月20日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第381話【来訪者急増!】
次話は木曜日投稿予定です。
応援ありがとうございます!
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