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第14章 アルトラルサンズ本格始動編

第373話 各国の大使館建設始動 その3(大使館建設予定地の視察団)

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 ここから何日かにかけて各国から日替わりで視察団が訪れることになる。
 その先鋒となったのは水の国の視察団。

「アルトラ様、水の国の方々がお見えです」

 マリリアが我が家に呼びに来てくれた。

「わかった、報告ありがとう。すぐ行く」

   ◇

 役所応接室には水の国の視察団三人とルイスさんが来ていた。

「アルトラ様、少し振りですね!」
「アハハ、ついこの間樹の国から帰ったばかりですからね。そちらが今回視察団の団長さんですか?」

 私はまだお目にかかったことがない三人が居る。この方々が今回大使館建設予定地の視察団だろう。

「お初にお目にかかりますアルトラ殿、今回視察団の団長を務めさせていただいております、アーノルド・レインナートと申します。派遣員候補でもありますので、以後お見知りおきを」

 おぉ! 金髪の美青年! ……上だけを見ればね。
 下半身が馬になっている。種族はケンタウロスかしら?

「あ、すみません、種族名も教えてもらえますか? わたくし色んな種族に興味がありまして」

 アクアリヴィアでは種族名を名前に含めないって言ってたし、ファーストネームとファミリーネーム以外答えてないから、『レインナート』が種族名ってことはないだろう。
 この方アーノルドさん、見た目はどう見てもケンタウロスなんだけど、それにしては魔力の質が亜人より精霊に近いのが気になる。見た目では何の種族なのか判断しづらい。

「承知しました。改めまして、わたくしアーノルド・ネック・レインナートと申します」

 『ネック』? 初めて聞く種族名だ。
 魔界に来て人馬というのを初めて見たけど、人馬の幻想生物ってケンタウロス以外にも居るんだ。

「補佐官のシャノン・グウレイグ・レイクノースです」

 こっちの方は金髪の美少女だわ。どこか病的なほどに肌が透き通るように白い。
 成人してるとは思えないくらい華奢で幼く見える。
 まあそれは少女の見た目でも三百歳というトリニアさんのような精霊ひとも居たわけだし、魔界では見た目で判断しない方が良いのは分かっているけど。
 『グウレイグ』って種族も聞き馴染みが無い。

「同じく補佐官のモリスン・セイレーン・リバーヒルと申します」

 最後に自己紹介してくれた亜人ひとは、セイレーンという種族にも関わらず男性だ。
 この種族は流石に聞き馴染みある。

「本日ご案内致します、アルトラと補佐のリーヴァントです」
「よろしくお願い致します」

 私、リーヴァント共々、深々とお辞儀。

「ところで皆様、失礼ながらちょっと質問させてもらってもよろしいですか?」
「どうぞ」
「アーノルドさんはケンタウロスではないんですか?」
「私は『ネック』という水の精霊の一種です。ある程度姿を変えられるので亜人のように二本足になるのも可能ですが、信頼の証にと最も私どもの本質に近い姿でお会いすることと致しました。しかし、この格好では業務もしづらいので、普段は二本足で過ごしますが」

 なるほど、『ケンタウロス』は亜人で、『ネック』は水の精霊、本質的に違うわけか。
 ネックは地球では一般に浸透しているほど有名ってわけじゃなかったし、初めて見たわ。水の精霊ってことである程度姿を変えられるってところを聞いた限りは、ケンタウロスの上位互換って感じかしら?

「シャノンさん、グウレイグってどんな種族なんですか?」
「アーノルドと同じく水の精霊ですよ」
「精霊なんですか!? 人間ソックリですよ!」
「そうらしいですね。そういうわけもあって、よく亡者や亜人と間違われますね。能力と言えば……救難救助くらいしか出来ませんけど。小舟程度の船を出現させる能力がありますので、誰か溺れた時には是非お声がけください」

 おお、水害に対応できるのは現状人魚族のウォルタ兄妹トーマスとリナさんと銀行員で水の精霊ルサールカのシーラさんしかいなかったから、ありがたいかも!
 一回水害起こしてるしね……もうそうならないように注意しないと…… (第22話参照)

「モリスンさんは、セイレーンなのに男性なんですね」
「セ、セイレーンって別に女性しかいない種族というわけではないですよ。確かに女性の方が有名かもしれませんが……」
「あ、すみません。それはそうですよね」

 いや、まあ同じ種族なんだから女性だけなわけがないんだけど、セイレーンの男性は初めてお目にかかる。ゲームにも出てくるセイレーンはほぼ全てと言って良いほど女性ばかりだし。

「皆様すみません、不躾な質問に答えていただきありがとうございました」
「いえいえ」

「私とモリスンは楽器が得意ですので、楽団要員が必要な時は呼んでくださればお力になれると思います。さて、それでは自己紹介も済みましたので、大使館候補地へご案内いただけますか?」
「はい、ではどうぞこちらへ」

 ゲートを出現させて、最初の大使館候補地へ。

「町中なのに空間転移魔法で行くのですか?」
「そうですが……何か問題でも?」
「いえ……候補地は七ヶ所あるのですよね? それだけ魔法を繰り返したら疲れませんか?」

 あ、そうか、一般的な亜人は日にそう何回も空間転移魔法が使えるってわけではないから、私のことを心配して言ってくれてるのか。

「大丈夫です。候補地を見て回るくらいの回数なら全く問題ありませんので。ではどうぞ」

   ◇

「ここが最も町に近いところにある候補地です」
「なるほど、ここが一番交通には便利ということですね。しかし周りには何もありませんね」

 まだ“大使館予定地”だから建物が無く、周りにも何も無い。買い物できる店などもまだ無いため、生活するには大分不便。

「すみません、アルトラルサンズが国として認められてから急遽広げた土地ですのでまだ建物も建っていません。第一壁内も少々手狭になってきて、第一壁内に大きめの建物を大使館を新築するというわけにはいきませんでしたので。今後アルトレリアの人々も徐々に第一壁外へ進出していくと考えています。成長株と見ていただければと思います」
「そうですね。ただやはり町に最も近いというのは生活面を考えても魅力的です。次の候補地へお願いします」

   ◇

「この場所は、最も川に近い候補地です」
「おお、ここ良いですね!」
「我々にも合ってますしね!」

 補佐官のモリスンさんが写真を、シャノンさんがメモを取っている。

「やはり我々水の国の民としては、水が近くにあると和みます。ここは有力候補の一つになりそうです。次の候補地へお願いします」

   ◇

 こんな感じに七つある候補地を見て回った。
 補佐官のシャノンさんとモリスンさんが、全ての場所でメモと写真を取っていた。後で検討するためだろう。
 その後、アルトレリアの町中を少し見て回りたいとのことだったため、六脚馬スレイプルの馬車を用意。
 町中を見て回った後、水の国の視察は終了。

「本日は視察させていただきありがとうございました。国に帰って検討したいと思います。希望が決まり次第追って連絡致します」
「女王様に良い場所を確保して来いって言われてますので、そこのところよろしくお願いしますね」

 という、ルイスさんからのお願いの言葉を残し、視察団の方々はルイスさんの空間転移魔法で帰って行った。

   ◇

「あ~~、疲れた~~」
「お疲れ様でした」

 ずっと付いてサポートしてくれてたリーヴァントから労いの言葉。

「あなたもご苦労様」

 お互い労う言葉をかける。

「これがまだあと最多で四大国あるわけか……」

 手紙には『必要があれば予定地の視察に来て欲しい』と書いたから派遣して来ない国もあるかもしれないが。

   ◇

 その後日、何日かにかけて残り四大国の視察団も続々訪問。

 (▼ここより各国視察団の簡易的な紹介。読み飛ばし可)

 雷の国から『エミリーさん』がナタリアさんの空間転移魔法で訪れた。 (ナタリアさんは第371話にちょっと登場)
 大使候補として視察に来たらしく、派遣はほぼ確定らしい。
 七大国の中で最も発展した国である所為か、誰も辺境のアルトレリアには行きたがらず、私と関わりがあったため『行きたい』ということを申し出たらしい。ありがたい!

 樹の国からはトライアさん、トリニアさん、トルテアさんたちの妹、四女『トレシアさん』と五女『トロモアさん』が視察に。とは言えまだ大使として派遣されてくるかどうかは未定。
 一番驚いたのは補佐官として来た木の精霊ドリアードの子。大森林で、私の目の前で高位精霊に昇華した『リリーア』だった。 (第327話参照)
 何でも、私の魔力が元で昇華したからという理由で補佐官に選ばれたらしい。
 樹の国と違って木々の遮りの無い、我が国の疑似太陽を浴びて、視察団員全員が恍惚とした表情を浮かべていたのは印象深い。
 全員『植物転移法』で来たため、帰りもその方法で帰った。

 風の国からは私と関りがあるということでティナリスが視察に同行してきたが、彼女は大使として赴任するわけではなさそうだ。国の最高戦力を手放すわけにはいかないから当然か。
 送り迎えの空間転移役はイルリースさん。 (第340話から第341話参照)

 土の国は……あ~、え~と……土の国とは現在のところほとんど関わりが無いから、全く知らない人が来た。
 とは言え、視察団は全員静かで丁寧な人ばかりだった。土地柄真面目な人が多いのかもしれない。

 視察に来た各国のメンバーの名前については割愛。

 (▲読み飛ばしここまで)

 手紙には『“必要があれば”予定地の視察に来て欲しい』とつづったにも関わらず、蓋を開けてみれば全ての国が視察団を派遣してきた。
 やはりずっと中立地帯だったという特殊な土地柄、どこの国も少しでも希望する場所を確保したいらしい。
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