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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第355話 私たち……若返ってる!?
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エルフヴィレッジを発って半日ほど過ぎた頃――
「ん?」
トリニアさんが、何かに気付いた様子。
「どうかしたんですか?」
「いえ、亜人の気配がするなと思いまして」
「この近くに人里があるんですか?」
「いえ、無いのでおかしいなと……たまに自分の生活していた町や村からはぐれて迷子になる亜人がいるんですよ」
頻繁に道が変わるからそんなことが起こるのかな……?
「トリニアさんたちは、木の精霊だから森のことを把握しているんじゃないんですか?」
「確かにある程度は分かっていますが、流石に神様ではないのでこの広大な森を全部把握しているわけではないですね……」
そりゃそうか。
「それに把握していると言っても、木の下位精霊からの情報で知るだけなので直接見てるというわけではないですから、亜人がする噂話や伝聞とそれほど変わりませんよ?」
「なるほど」
「ちょっと見に行って良いですか? 迷子なら元の町に送り届けなければなりませんし……この辺りならもう首都住まいの方かもしれませんね」
「はい、私たちは急ぐわけではないのでお構いなく、ルイスさんも良いよね?」
「は、はい」
と言うわけで、はぐれ亜人がいるらしき方向へ進むことに。
◇
少し進むと大森林の中にありながら、随分と開けた場所に着いた。
目線のすぐ先には木で作られた小屋がある。
光を咲かせる花が沢山植えられており、この広い空間全体が昼のように明るい。それにちょうど川が流れていて飲み水確保も容易で、水魔法が使えない者でも生活するには困らなそうだ。
その広場に一歩足を踏み入れると――
……
…………
………………
広場に入った瞬間に違和感を覚えた……
何だか急激に目線が下がったような……
………………いや! 確実に何かがおかしい!
この辺一体、若芽ばかりだ! 育ってる木ですらかなり背丈が低い!
「ア、アルトラ様……?」
後ろから聞こえた戸惑いに満ちた高めの声に振り替えると――
そこには見覚えの無い子供が三人居た。見た目で六歳から八歳くらい。
「子供……?」
誰だこの子ら!?
後ろを歩いてたのはルイスさんとロクトスとナナトスだったはず。
何でこんなところに子供が!? 三人のうち二人はアルトレリアのトロルの子にソックリ。
それに、子供にしては私より背が高い……
「ルイスさんはどこへ!? ロクトスとナナトスは!? あなたたちどこから来たの? いつから私の後ろに?」
その子供が自身を指さして――
「何言ってるんですか! ルイスは僕ですよ! 僕、僕!」
「俺っちたちもここッス!」
「え!? あなたルイスさん!? ロクトスとナナトス!? 何でそんなに若く!?」
「アルトラ様こそお姿が……」
私の姿? 何言ってるんだ?
と思って両手を見ると、いつも見知っている自分の手じゃない! 明らかに子供のような手だ!
まさかと思い、物質魔法で手鏡を作って覗き込むと――
「若返ってる!? 何で!?」
普段の私が十二歳から十五歳くらいの容姿とすると、三人と同じように六歳から八歳くらいまで若返っていた。
「ぼ、僕の前を歩いていたお二人が突然縮みだしたので、何事かと思いましたが……」
「……後ろを歩いてたら、みんなどんどん縮んでいった……」
そう言っているルイスさんとロクトスも同じくらいの容姿まで若返っている。
「トリニアさんは?」
私の前を歩いてたトリニアさんの方に振り返ると――
「か……可愛らしい見た目ですね」
「そ、そうですか? わたくしも若返っているのでしょうか? わたくしは自身を高位精霊と自覚した時から同じ姿なのですが……」
いつも頭に咲いている花がつぼみになっている。
分かりやすく若返ってるみたいだ。
三百歳の割には少女のようだと思ってたけど、今は幼女のように見える。
「みんな若返ってる? どういうこと?」
自覚した時から同じ姿なのは私も同じ。この身体に転生した時にはもう今の姿だったから私に子供時代などあるはずがないのだが、どういうわけだろう?
「と、とりあえずあそこに小屋があるので訪ねてみましょう」
いや、この状態で小屋って、危険じゃないかしら?
確実に誰かいるんだろうし。もしそれが危険な人物だったら……
などと考えていたら、既にナナトスが小屋の玄関付近にいる。
ちょっと! 無警戒にもほどがある!
どんな人物が潜んでるかも分からないのに!
そんな心配もよそに、躊躇無く小屋のドアをノックするナナトス。
ゴンゴンゴン
「誰かいるッスかーー?」
小屋のドアをノックすると中からエルフらしき端正な顔立ちの男性が出て来た。
何でこんなポツンと一軒家にエルフが?
エルフヴィレッジだってここからなら近いのに……
「他人がこんなところを訪ねてくるなんて珍しいな! 一応聞くが、あんたたち子供か?」
「いえ……」
『子供か?』などと普通じゃない質問をされた。この若返りの原因はこのエルフにあるみたいね。
「あ~、トラップにかかっちまったんだな。すまんすまん」
「あ、あなたは?」
「俺か? 俺はトキノンってエルフさ」
随分可愛らしい名前だ。
性格は全然エルフっぽくない。
高貴な振舞いも無くおっさんみたいな口調……所作に優雅さも無く、ガニ股で、本当におっさんみたいな動きだ……エルフヴィレッジの面々が貴族のように見える。
髭は……無いな。エルフは無精ひげすら生えないのか?
「こ、ここで生活しているのですか? エルフの町だって近くにあるじゃないですか!」
「まあそうだな。俺はちょっと狙われててね、人間関係を構築するのが難しいからここに住んでるんだ」
「お尋ね者!? 犯罪者ですか!?」
やっぱり危険人物!?
それを聞いて一同に緊張が走り、私以外の四人が武器を構える。私も身構えた。
「お、お、おぉ……重い……」
「うわ……ただのナイフなのに、いつもより重いッス……」
「わ、わたくしもいつもより重く感じます」
四人とも若返っている所為か、使い慣れている武器が重く感じるようだ。四人とも武器に振り回されている。
「いやいやいや、武器を収めてくれ! 犯罪者として狙われてるわけじゃないんだ! 俺の出自がちょっと特殊でね。あまり人の多いところへは出られないんだよ」
「その理由をお尋ねしても?」
「まあ良いぞ。理由を聞いたところで、どうせ覚えていられないだろうからな」
覚えていられない? どういうこと?
「俺は時間魔術師だよ」
「「「「時間魔術師!?」」」」
「あ、あの数百万人に一人しか生まれないという……?」
「空間魔術師よりなお希少な魔術師だと聞いたことがありますよ! 僕たちの国でも聞いたことがありませんよ!」
あれ? リナさんがアクアリヴィアにいる時代に『私が時間魔法を使える』という話したことがあったと思ったけどルイスさんには伝わってないっぽい?
「わ……わたくしも三百年生きてきましたが樹の国国内で存在するという話を聞いたことがありません! まさか存在しているとは……」
「そういうわけで俺は希少な生まれだから人前に出られないってわけよ」
ああ……自分が時間魔法使えるってことはあまり他人に言っちゃいけないことだったのか。
私が時間魔法を使えることを知っているのは……現時点ではレヴィとリナさんくらいか。うっかりリナさんにはしゃべっちゃったけど、ルイスさんが知らないってことは、口外するとまずい系統の魔法属性だから黙っててくれたのかな?
これからはおいそれと口外しないように注意しよう。
「あれ? でもアルトラ様も時間まほ……もがっ」
慌ててナナトスの口を塞いだ。
しまった! アルトレリアの人物は見たことある者もいるんだ!
「な、なにするんスか?」
「今私が時間魔法使ってたって言おうとしたんじゃない?」
「そうッスけど……」
「あの時木を成長させたのは、時間魔法じゃなくて樹魔法の成長促進魔法だから」
ということにしておきたい。
「そうだったんスか? あまりにも急激に成長したから俺っちはてっきり時間魔法なのかと……あれ? でも確か潤いの木を苗木に戻してたのを見たことあるような……」
しまった! そういえば苗木に戻したことがある! 何気なくやってたから今の今まで忘れてた! (第167話参照)
「あああ、あれも樹魔法の一種だから……い、一度枯れさせてから新芽が出たから、それを見て苗木に戻ったように見えたのよ! きっと!」
かなり苦しい言い訳だ……
木が枯れたところで、朽ち果ててすっかり無くなるにはかなりの時間を要する。いくら樹魔法で成長促進したとは言え、枯れて朽ち果てるまで魔力を注ぎ込める者がどれくらいいるだろう?
が――
「そうだったんスね! 俺っちはあれも時間魔法なのかと思ったッス!」
ホッ……い、一応信じてくれた……
ロクトスからのツッコミが無いけど、彼はあの場にはいなかったのかしら?
今まではバレても良いかと思ってたけど、想像してた以上に知られたらまずい系統の魔法属性らしい。
ホントに、今後は口外しないようにしないと!
「もし本当に時間魔術師であるなら、我が国で重用されますよ!! 国に仕えてみませんか!? どうでしょうか!?」
突然トリニアさんが勧誘し始めた。
「悪いけど、そういうの興味無いんだわ。まあ見つけられたのも何かの縁だから、メシでも食って行くかい?」
人と関わらない割にはフレンドリー。コミュニケーション能力はかなり高いと見える。
ちょっとでも情報を得られるかもしれないし、およばれするのも良いかもしれない。
「じゃあお言葉に甘えて」
「じゃ、じゃあ私たちも、ちょうどお腹減ってたんですよ」
提供してくれた食事は若鳥の丸焼き。ローストチキンのようなものだった。
鳥らしき肉だけど何の鳥か分からんから、さしずめ『ローストバード』ってところか。
「美味しいですね!」
「まあいつも作ってるからな。それであんたたちの名前は?」
「アルトラと言います」
「ナナトスッス」
「ルイスです」
「……ロクトスです……」
「トリニアと申します」
「トリニア? 樹の国の政務官の?」
「はい」
「へぇ~、それでさっきの勧誘か。それで何でこんなところを歩いてるんだ?」
「王都に向かう途中なのです」
「あ、ああ、今は王様の関係で空間魔術師を使えないんだっけ? それで歩いて王都まで行くってのか! 大変だな! ユグドフロントから来たんなら、何日も歩いて来たんじゃないのか?」
「え、ええ……まあ……ほとんどわたくしの不手際なんですけど……」
後半へ行くほど話し声が小さくなるトリニアさん。
ジョアンニャさんを捕まえられなかったことを、大分気にしてるみたいだ。
話題を変えるか。
「ん?」
トリニアさんが、何かに気付いた様子。
「どうかしたんですか?」
「いえ、亜人の気配がするなと思いまして」
「この近くに人里があるんですか?」
「いえ、無いのでおかしいなと……たまに自分の生活していた町や村からはぐれて迷子になる亜人がいるんですよ」
頻繁に道が変わるからそんなことが起こるのかな……?
「トリニアさんたちは、木の精霊だから森のことを把握しているんじゃないんですか?」
「確かにある程度は分かっていますが、流石に神様ではないのでこの広大な森を全部把握しているわけではないですね……」
そりゃそうか。
「それに把握していると言っても、木の下位精霊からの情報で知るだけなので直接見てるというわけではないですから、亜人がする噂話や伝聞とそれほど変わりませんよ?」
「なるほど」
「ちょっと見に行って良いですか? 迷子なら元の町に送り届けなければなりませんし……この辺りならもう首都住まいの方かもしれませんね」
「はい、私たちは急ぐわけではないのでお構いなく、ルイスさんも良いよね?」
「は、はい」
と言うわけで、はぐれ亜人がいるらしき方向へ進むことに。
◇
少し進むと大森林の中にありながら、随分と開けた場所に着いた。
目線のすぐ先には木で作られた小屋がある。
光を咲かせる花が沢山植えられており、この広い空間全体が昼のように明るい。それにちょうど川が流れていて飲み水確保も容易で、水魔法が使えない者でも生活するには困らなそうだ。
その広場に一歩足を踏み入れると――
……
…………
………………
広場に入った瞬間に違和感を覚えた……
何だか急激に目線が下がったような……
………………いや! 確実に何かがおかしい!
この辺一体、若芽ばかりだ! 育ってる木ですらかなり背丈が低い!
「ア、アルトラ様……?」
後ろから聞こえた戸惑いに満ちた高めの声に振り替えると――
そこには見覚えの無い子供が三人居た。見た目で六歳から八歳くらい。
「子供……?」
誰だこの子ら!?
後ろを歩いてたのはルイスさんとロクトスとナナトスだったはず。
何でこんなところに子供が!? 三人のうち二人はアルトレリアのトロルの子にソックリ。
それに、子供にしては私より背が高い……
「ルイスさんはどこへ!? ロクトスとナナトスは!? あなたたちどこから来たの? いつから私の後ろに?」
その子供が自身を指さして――
「何言ってるんですか! ルイスは僕ですよ! 僕、僕!」
「俺っちたちもここッス!」
「え!? あなたルイスさん!? ロクトスとナナトス!? 何でそんなに若く!?」
「アルトラ様こそお姿が……」
私の姿? 何言ってるんだ?
と思って両手を見ると、いつも見知っている自分の手じゃない! 明らかに子供のような手だ!
まさかと思い、物質魔法で手鏡を作って覗き込むと――
「若返ってる!? 何で!?」
普段の私が十二歳から十五歳くらいの容姿とすると、三人と同じように六歳から八歳くらいまで若返っていた。
「ぼ、僕の前を歩いていたお二人が突然縮みだしたので、何事かと思いましたが……」
「……後ろを歩いてたら、みんなどんどん縮んでいった……」
そう言っているルイスさんとロクトスも同じくらいの容姿まで若返っている。
「トリニアさんは?」
私の前を歩いてたトリニアさんの方に振り返ると――
「か……可愛らしい見た目ですね」
「そ、そうですか? わたくしも若返っているのでしょうか? わたくしは自身を高位精霊と自覚した時から同じ姿なのですが……」
いつも頭に咲いている花がつぼみになっている。
分かりやすく若返ってるみたいだ。
三百歳の割には少女のようだと思ってたけど、今は幼女のように見える。
「みんな若返ってる? どういうこと?」
自覚した時から同じ姿なのは私も同じ。この身体に転生した時にはもう今の姿だったから私に子供時代などあるはずがないのだが、どういうわけだろう?
「と、とりあえずあそこに小屋があるので訪ねてみましょう」
いや、この状態で小屋って、危険じゃないかしら?
確実に誰かいるんだろうし。もしそれが危険な人物だったら……
などと考えていたら、既にナナトスが小屋の玄関付近にいる。
ちょっと! 無警戒にもほどがある!
どんな人物が潜んでるかも分からないのに!
そんな心配もよそに、躊躇無く小屋のドアをノックするナナトス。
ゴンゴンゴン
「誰かいるッスかーー?」
小屋のドアをノックすると中からエルフらしき端正な顔立ちの男性が出て来た。
何でこんなポツンと一軒家にエルフが?
エルフヴィレッジだってここからなら近いのに……
「他人がこんなところを訪ねてくるなんて珍しいな! 一応聞くが、あんたたち子供か?」
「いえ……」
『子供か?』などと普通じゃない質問をされた。この若返りの原因はこのエルフにあるみたいね。
「あ~、トラップにかかっちまったんだな。すまんすまん」
「あ、あなたは?」
「俺か? 俺はトキノンってエルフさ」
随分可愛らしい名前だ。
性格は全然エルフっぽくない。
高貴な振舞いも無くおっさんみたいな口調……所作に優雅さも無く、ガニ股で、本当におっさんみたいな動きだ……エルフヴィレッジの面々が貴族のように見える。
髭は……無いな。エルフは無精ひげすら生えないのか?
「こ、ここで生活しているのですか? エルフの町だって近くにあるじゃないですか!」
「まあそうだな。俺はちょっと狙われててね、人間関係を構築するのが難しいからここに住んでるんだ」
「お尋ね者!? 犯罪者ですか!?」
やっぱり危険人物!?
それを聞いて一同に緊張が走り、私以外の四人が武器を構える。私も身構えた。
「お、お、おぉ……重い……」
「うわ……ただのナイフなのに、いつもより重いッス……」
「わ、わたくしもいつもより重く感じます」
四人とも若返っている所為か、使い慣れている武器が重く感じるようだ。四人とも武器に振り回されている。
「いやいやいや、武器を収めてくれ! 犯罪者として狙われてるわけじゃないんだ! 俺の出自がちょっと特殊でね。あまり人の多いところへは出られないんだよ」
「その理由をお尋ねしても?」
「まあ良いぞ。理由を聞いたところで、どうせ覚えていられないだろうからな」
覚えていられない? どういうこと?
「俺は時間魔術師だよ」
「「「「時間魔術師!?」」」」
「あ、あの数百万人に一人しか生まれないという……?」
「空間魔術師よりなお希少な魔術師だと聞いたことがありますよ! 僕たちの国でも聞いたことがありませんよ!」
あれ? リナさんがアクアリヴィアにいる時代に『私が時間魔法を使える』という話したことがあったと思ったけどルイスさんには伝わってないっぽい?
「わ……わたくしも三百年生きてきましたが樹の国国内で存在するという話を聞いたことがありません! まさか存在しているとは……」
「そういうわけで俺は希少な生まれだから人前に出られないってわけよ」
ああ……自分が時間魔法使えるってことはあまり他人に言っちゃいけないことだったのか。
私が時間魔法を使えることを知っているのは……現時点ではレヴィとリナさんくらいか。うっかりリナさんにはしゃべっちゃったけど、ルイスさんが知らないってことは、口外するとまずい系統の魔法属性だから黙っててくれたのかな?
これからはおいそれと口外しないように注意しよう。
「あれ? でもアルトラ様も時間まほ……もがっ」
慌ててナナトスの口を塞いだ。
しまった! アルトレリアの人物は見たことある者もいるんだ!
「な、なにするんスか?」
「今私が時間魔法使ってたって言おうとしたんじゃない?」
「そうッスけど……」
「あの時木を成長させたのは、時間魔法じゃなくて樹魔法の成長促進魔法だから」
ということにしておきたい。
「そうだったんスか? あまりにも急激に成長したから俺っちはてっきり時間魔法なのかと……あれ? でも確か潤いの木を苗木に戻してたのを見たことあるような……」
しまった! そういえば苗木に戻したことがある! 何気なくやってたから今の今まで忘れてた! (第167話参照)
「あああ、あれも樹魔法の一種だから……い、一度枯れさせてから新芽が出たから、それを見て苗木に戻ったように見えたのよ! きっと!」
かなり苦しい言い訳だ……
木が枯れたところで、朽ち果ててすっかり無くなるにはかなりの時間を要する。いくら樹魔法で成長促進したとは言え、枯れて朽ち果てるまで魔力を注ぎ込める者がどれくらいいるだろう?
が――
「そうだったんスね! 俺っちはあれも時間魔法なのかと思ったッス!」
ホッ……い、一応信じてくれた……
ロクトスからのツッコミが無いけど、彼はあの場にはいなかったのかしら?
今まではバレても良いかと思ってたけど、想像してた以上に知られたらまずい系統の魔法属性らしい。
ホントに、今後は口外しないようにしないと!
「もし本当に時間魔術師であるなら、我が国で重用されますよ!! 国に仕えてみませんか!? どうでしょうか!?」
突然トリニアさんが勧誘し始めた。
「悪いけど、そういうの興味無いんだわ。まあ見つけられたのも何かの縁だから、メシでも食って行くかい?」
人と関わらない割にはフレンドリー。コミュニケーション能力はかなり高いと見える。
ちょっとでも情報を得られるかもしれないし、およばれするのも良いかもしれない。
「じゃあお言葉に甘えて」
「じゃ、じゃあ私たちも、ちょうどお腹減ってたんですよ」
提供してくれた食事は若鳥の丸焼き。ローストチキンのようなものだった。
鳥らしき肉だけど何の鳥か分からんから、さしずめ『ローストバード』ってところか。
「美味しいですね!」
「まあいつも作ってるからな。それであんたたちの名前は?」
「アルトラと言います」
「ナナトスッス」
「ルイスです」
「……ロクトスです……」
「トリニアと申します」
「トリニア? 樹の国の政務官の?」
「はい」
「へぇ~、それでさっきの勧誘か。それで何でこんなところを歩いてるんだ?」
「王都に向かう途中なのです」
「あ、ああ、今は王様の関係で空間魔術師を使えないんだっけ? それで歩いて王都まで行くってのか! 大変だな! ユグドフロントから来たんなら、何日も歩いて来たんじゃないのか?」
「え、ええ……まあ……ほとんどわたくしの不手際なんですけど……」
後半へ行くほど話し声が小さくなるトリニアさん。
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