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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第354話 エルフヴィレッジを発つ時
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そして葬儀の翌日。
元第五部隊の方々に別れの挨拶をされた。
「じゃあな、アルトラ殿」
「あんたと戦えて楽しかったよ!」
「いや~、あんたと居ると戦わなくて良かったから楽できたよ」
それぞれの元隊員たちから挨拶を受ける。
「次はあんたの身体に傷を付けられるくらい強くなっておく! 次に会った時は覚悟しておけよ!」
斬撃パフォーマンスで、手に怪我を負った牛獣人のボルヴァン。 (第337話から第338話参照)
戦場では、近くにいなかったから会わなかったが、引き付け部隊にいたらしい。
今度会ったら傷を付けるって……宣言して言うことか?
「はは……今度会った時は私、怪我させられるの? じゃあ今後再会したくはないわね……」
「そりゃそうか、だはははは」
「アルトラ殿、あなたの功績は素晴らしいものでした。またお会いしましょう」
アランドラ元隊長とも挨拶を終え――
最後に元副隊長兼参謀ルシガンに挨拶された。
「アルトラ殿、またお会いしましょう! と、そうだ、一つ聞いておかなければならないことがあります。突然ですが預金口座を教えていただけますか?」
何で?
「な、何ですか突然?」
「ああ、怪しいものではないですよ。実は部隊の会計も担当していて、女王蜂や働き蜂の死骸や卵が売れた場合に分配するのに必要なので」
「え!? 私にも分配されるんですか!? 二ヵ国や軍に所属しているわけでもないのに!?」
「もちろんです。あなたには多大な貢献をしていただいたので、その権利はあります」
「そうなんですか?」
まあ、所詮害虫駆除だし、私に回ってくるのはそう大した金額ではないだろう。
とは言え、くれると言うなら貰っておくのが筋か。断ったらあちらさんが困るかもしれない。
そういうわけで水の国の口座を教えた。
この口座、実はアクアリヴィアから出張してくれている銀行員のシーラさんの勧めで開設したもの。
現状アルトレリアの口座だとアルトレリア通貨に全く価値が無いから、他の国とのやり取りで金銭の授受が発生した場合に困るだろうと言う理由で勧められて作った。
「承りました。期待しててください」
害虫駆除した程度なのに?
あ、でも女王は何億で売れるとか言ってたっけ? でも胴体を真っ二つに切り裂いちゃったしそんな大した金額にはならないだろ。完全な状態なら何億だったかもしれないけど……そう考えると倒し方考えて倒せば良かったかな……?
それに駆除隊全体や部隊全体でも分配されるだろうから、そう大した額にはならないと思う。
殉死者への補償金にも充てられるだろうしね。
「はぁ、まあ期待しておきますよ」
と一応返事をしておく。
一通りの挨拶を済ませ、元第五部隊員たちは忙しく去って行った。
「何でみんなあんなに急いでるのかしら? さて、私たちもエルフヴィレッジを発つ準備をしなくちゃ!」
◇
エルフヴィレッジを発つ時が来た。
いや! ジョアンニャさんに付いて行けば、もう森を歩かなくても良い!
すぐにでもジョアンニャさんを見つけないと!
とその前に、先にロクトスとナナトス、ルイスさんの泊まっている施設に行き、今日すぐにでも出発することを伝える。
「やっとエルフヴィレッジを発つんスね!」
「……思えば、ここ来てただ寝てるだけの毎日だったな……」
「そッスね……」
そういえば普段私の周りで騒がしかったコイツらは、この町に滞在してる間ほとんど寝てたんだっけ。
「でもあなたたちが同行してくれてて助かったわ。まさかたまたま呼ばれた国で、こんな突発イベントが起こるとはね……」
「そういえば俺っちたちから抜いた血って全部使ったんスかねぇ?」
「さあ、どうだろうね? まだ残っていて、今は保存しておいてまたデスキラービーが発生した時に使うって可能性もあるね」
「まあ、抜いた血なんでとうでも良いッスけど……」
「じゃあ、出発の準備しておいてね、私はちょっと用があるから」
早いとこジョアンニャさんを見つけないと!
さっき元第五部隊に会ったばかりだし、まだ町にいるはず!
いざジョアンニャさんを探しに!
◇
と、思ったものの、いくら探してもいない!
どこへ行った!?
と言うか、樹の国から派遣されて来てた守護志士の面々がもう見当たらない!
たった三十分でいなくなったの!?
出発の準備をしているトリニアさんに聞きに来た。
「あの……トリニアさん、ジョアンニャさんは……?」
「三十分ほど前に首都の方へ帰られましたが……ただでさえ王のお世話を他の者に任せて来てますので、これ以上は滞在するわけにはいかないと……」
「ああ……遅かった……」
私はゆっくりと膝から崩れ落ちた。
トリニアさんにも、『ジョアンニャさんの空間転移魔法で首都へ行く』と伝えておくべきだった……
あ、もしかして元第五部隊が忙しく去って行ったのは、空間転移の足が無くなるからだったのか……
「アルトラ様に挨拶したいけど、急ぎ帰らないといけないとかでよろしく言っておいてほしいと。どうかいたしましたか?」
「ジョアンニャさんに直接首都に連れて行ってもらえれば、これ以上森林歩く必要は無いかなと……」
「………………あっ! そうですね!」
『今気付いた!』という顔をした。
「も、申し訳ございません! 至らぬことばかりで!」
「いえ……参考までに聞きますけど、ここから首都まではあとどれくらいかかるんですか?」
「もう大分迫ってます。一日から一日半ほどで着くと思います」
もうそんなに近くに来てたのか!
「じゃ、じゃあそれほどの労力にはならないですね」
ちょっと安心した。まだ三日とかかかるなら、ジョアンニャさんを捕まえられなかったことを後悔したかもしれないが。
その後、出発の準備を済ませ、数時間後にエルフヴィレッジを出発した。
元第五部隊の方々に別れの挨拶をされた。
「じゃあな、アルトラ殿」
「あんたと戦えて楽しかったよ!」
「いや~、あんたと居ると戦わなくて良かったから楽できたよ」
それぞれの元隊員たちから挨拶を受ける。
「次はあんたの身体に傷を付けられるくらい強くなっておく! 次に会った時は覚悟しておけよ!」
斬撃パフォーマンスで、手に怪我を負った牛獣人のボルヴァン。 (第337話から第338話参照)
戦場では、近くにいなかったから会わなかったが、引き付け部隊にいたらしい。
今度会ったら傷を付けるって……宣言して言うことか?
「はは……今度会った時は私、怪我させられるの? じゃあ今後再会したくはないわね……」
「そりゃそうか、だはははは」
「アルトラ殿、あなたの功績は素晴らしいものでした。またお会いしましょう」
アランドラ元隊長とも挨拶を終え――
最後に元副隊長兼参謀ルシガンに挨拶された。
「アルトラ殿、またお会いしましょう! と、そうだ、一つ聞いておかなければならないことがあります。突然ですが預金口座を教えていただけますか?」
何で?
「な、何ですか突然?」
「ああ、怪しいものではないですよ。実は部隊の会計も担当していて、女王蜂や働き蜂の死骸や卵が売れた場合に分配するのに必要なので」
「え!? 私にも分配されるんですか!? 二ヵ国や軍に所属しているわけでもないのに!?」
「もちろんです。あなたには多大な貢献をしていただいたので、その権利はあります」
「そうなんですか?」
まあ、所詮害虫駆除だし、私に回ってくるのはそう大した金額ではないだろう。
とは言え、くれると言うなら貰っておくのが筋か。断ったらあちらさんが困るかもしれない。
そういうわけで水の国の口座を教えた。
この口座、実はアクアリヴィアから出張してくれている銀行員のシーラさんの勧めで開設したもの。
現状アルトレリアの口座だとアルトレリア通貨に全く価値が無いから、他の国とのやり取りで金銭の授受が発生した場合に困るだろうと言う理由で勧められて作った。
「承りました。期待しててください」
害虫駆除した程度なのに?
あ、でも女王は何億で売れるとか言ってたっけ? でも胴体を真っ二つに切り裂いちゃったしそんな大した金額にはならないだろ。完全な状態なら何億だったかもしれないけど……そう考えると倒し方考えて倒せば良かったかな……?
それに駆除隊全体や部隊全体でも分配されるだろうから、そう大した額にはならないと思う。
殉死者への補償金にも充てられるだろうしね。
「はぁ、まあ期待しておきますよ」
と一応返事をしておく。
一通りの挨拶を済ませ、元第五部隊員たちは忙しく去って行った。
「何でみんなあんなに急いでるのかしら? さて、私たちもエルフヴィレッジを発つ準備をしなくちゃ!」
◇
エルフヴィレッジを発つ時が来た。
いや! ジョアンニャさんに付いて行けば、もう森を歩かなくても良い!
すぐにでもジョアンニャさんを見つけないと!
とその前に、先にロクトスとナナトス、ルイスさんの泊まっている施設に行き、今日すぐにでも出発することを伝える。
「やっとエルフヴィレッジを発つんスね!」
「……思えば、ここ来てただ寝てるだけの毎日だったな……」
「そッスね……」
そういえば普段私の周りで騒がしかったコイツらは、この町に滞在してる間ほとんど寝てたんだっけ。
「でもあなたたちが同行してくれてて助かったわ。まさかたまたま呼ばれた国で、こんな突発イベントが起こるとはね……」
「そういえば俺っちたちから抜いた血って全部使ったんスかねぇ?」
「さあ、どうだろうね? まだ残っていて、今は保存しておいてまたデスキラービーが発生した時に使うって可能性もあるね」
「まあ、抜いた血なんでとうでも良いッスけど……」
「じゃあ、出発の準備しておいてね、私はちょっと用があるから」
早いとこジョアンニャさんを見つけないと!
さっき元第五部隊に会ったばかりだし、まだ町にいるはず!
いざジョアンニャさんを探しに!
◇
と、思ったものの、いくら探してもいない!
どこへ行った!?
と言うか、樹の国から派遣されて来てた守護志士の面々がもう見当たらない!
たった三十分でいなくなったの!?
出発の準備をしているトリニアさんに聞きに来た。
「あの……トリニアさん、ジョアンニャさんは……?」
「三十分ほど前に首都の方へ帰られましたが……ただでさえ王のお世話を他の者に任せて来てますので、これ以上は滞在するわけにはいかないと……」
「ああ……遅かった……」
私はゆっくりと膝から崩れ落ちた。
トリニアさんにも、『ジョアンニャさんの空間転移魔法で首都へ行く』と伝えておくべきだった……
あ、もしかして元第五部隊が忙しく去って行ったのは、空間転移の足が無くなるからだったのか……
「アルトラ様に挨拶したいけど、急ぎ帰らないといけないとかでよろしく言っておいてほしいと。どうかいたしましたか?」
「ジョアンニャさんに直接首都に連れて行ってもらえれば、これ以上森林歩く必要は無いかなと……」
「………………あっ! そうですね!」
『今気付いた!』という顔をした。
「も、申し訳ございません! 至らぬことばかりで!」
「いえ……参考までに聞きますけど、ここから首都まではあとどれくらいかかるんですか?」
「もう大分迫ってます。一日から一日半ほどで着くと思います」
もうそんなに近くに来てたのか!
「じゃ、じゃあそれほどの労力にはならないですね」
ちょっと安心した。まだ三日とかかかるなら、ジョアンニャさんを捕まえられなかったことを後悔したかもしれないが。
その後、出発の準備を済ませ、数時間後にエルフヴィレッジを出発した。
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