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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
【EX】第349.3話 vsデスキラービー・パープル
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今回のエピソードは駆除隊の隊長たちサイドの話で、登場人物の登場時期が浅いため、人名聞いても分からない方もいると思い、本筋から離すエピソード構成にしました。
「登場人物が誰が誰か分からなくて面白くない」という方は、本筋だけで話が繋がるように書いてるので、本エピソード【EX】を飛ばしてもらっても大丈夫です。
◇◆◇
一方、アルトラが黒い個体を倒す少し前に時間が遡る――
北側は既に最大級の警戒網が敷かれている状態。
働き蜂の数も多い。
司令官マルクが第九コロニーから退却してきた各部隊の隊員に向けて檄を飛ばす。
「今から駆除作戦を再開する! 出現した特殊個体三体については我々隊長各位が少数精鋭で相手にする! 諸君ら副隊長以下は、我々が特殊個体と戦っている間に働き蜂が邪魔に入らないように牽制してもらいたい! 特殊個体に対して良いようにやられてしまった恐怖感はあるだろうが、ここであの特殊個体を倒しきらなければ、いずれはあれ以上の特殊個体がどんどん生産され、世界中の亜人が虐殺されるほどの大災害に発展するだろう! ここが正念場だ! 恐怖に打ち克ち、我々と共に戦ってほしい!」
「「「おう!!」」」
恐怖を感じている隊員は少なくないが、みな奮起して気合を込める。
「よし! では手筈通り、ティナリス殿、セシーリア殿、ルーコス殿、フリアマギアは緑の個体を、ウォライト、アランドラ、ベオバルツは私と共に紫の個体を相手にする!」
「「「了解!」」」
風魔法を使う緑の個体には、怪鳥種ルフ族のティナリス、怪鳥種ガルダ族のセシーリア、鳥人種ヘルヘヴン族のルーコスなど風使いと亜人種エルフ族のフリアマギアが相手にする。
対して雷を使う紫の個体は、竜種ユグドドラゴン族のウォライト、竜人種ドラゴニュート族のアランドラ、土の精霊種ソリッドノーム族のベオバルツ、そして司令官・木の精霊種トレント族のマルクが対峙。
「では、クラウディオ、我らへ道を示してくれ」
「承知した」
マルクの指示で魔人種バルバトス族のクラウディオが動く。
クラウディオは広範囲攻撃にすぐれた魔術師。
樹魔法により空中に無数の矢を作り出し、それを働き蜂の大群に向けて乱射する。
広範囲の働き蜂が次々と倒れ、七人の隊長と司令官に対し特殊個体への道が示される。
「クラウディオはそのまま引き付け部隊の掩護を続けてくれ」
「了解した」
「よし! では全員征くぞ!」
「まずは緑と紫の個体を分断します!」
ティナリス、セシーリア、ルーコスの有翼種三人が、『紫の個体』、『緑の個体』それぞれに対して暴風を引き起こし、巣から離すように吹き飛ばした。
「よし! 分断は成功だ! あとは手筈通り頼む! 武運を祈る!」
「そちらも!」
◆
紫の個体グループ、作戦開始前――
「アランドラ、この作戦はお前に負担を強いることになるがやれそうか?」
「ええ、これでもドラゴンの端くれです。任せてください」
「ではアランドラが紫の個体と一対一で戦い、私たち樹魔法組は彼らを樹の檻で囲む。その後はベオバルツにお願いする」
「任せておけい!」
「だが、これは最終的な作戦だ。まずは全員で倒しにかかる。それで倒せるようなら良し。解毒カプセルをいつ飲むかは各々の判断に任せる」
◇
そして現在、分断後――
「まずは俺の攻撃だ。特大のをくれてやる!」
全身鎧を脱ぎ捨てウォライトがみるみる巨大化、七メートルほどあるユグドドラゴンに変化。
ウォライトらユグドドラゴン族はユグドラシルを守護する樹と水と土と光を操るドラゴン。
光の魔力を凝縮し、レーザーのように放つ。
レーザーは紫の個体に当たり、彼方へと飛んで行った。
「当たったようですが……」
「これで終わりなら良いんだがな」
しかし、少しすると何事も無かったように第九コロニーへ戻ろうとする。
「効果はあまり無かったようだな」
「雷エネルギーで威力を逃がされたようです。それにかなり硬い装甲のようですね」
「なら直接叩くまでだ!」
ウォライトはドラゴン形態のまま紫の個体へと突進し、尻尾を振り回して打ち払う。
続いて追撃し、前足で踏み潰した。
かに見えたが……
「痛っつ!!」
「大丈夫ですか!?」
「しまった……針を刺された……出来ることならこんなに早々使いたくなかったのだがな……」
ウォライトは人型へと戻り、解毒カプセルを口にする。
「どうやら俺の体重の乗った攻撃ですらあまりダメージを与えられないようだ」
「我が軍随一の攻撃力でも敵わないとなると、さっきの作戦で行くしかないな。アランドラ、頼むぞ」
「了解!」
解毒カプセルを飲むとアランドラが竜人化して、紫の個体に飛び掛かる。
木の精霊種トレント族のマルクが樹魔法で大きな足場を作り、アランドラはそれを伝って空中を飛ぶ紫の個体の下へとたどり着いた。
「さあ、今度は俺が相手だ!」
「ギギ……」
紫の個体の弱点は、レールガンを使う前に溜めが必要なこと。
そのため緑の個体と分断してしまえば、紫の個体は溜めに時間をかけられなくなり、レールガンを放てない。
それを見越しての近接戦闘だった。
「いくぞ!」
手に持った槍で突く。
が、素早く動く紫の個体は難なく回避。
なおも連続して突くが、全て回避。
横薙ぎ、打ち下ろし、斜め払い、振り回し、牽制しながら槍を駆使するが、素早い動きで躱されてしまう。
「働き蜂と違って早いな……」
いずれの攻撃も回避され、まごついていると、紫の個体は毒針を発射。
毒針はレールガンほどではないが、電気エネルギーで速度を増していた。
「おっと! 一匹しかいないなら毒針を出すところを注視してれば、避けるのはそれほど難しくないぞ! 槍単体で当たらないなら、風の槍ならどうだ!」
槍に風魔法を付与し、横に薙ぐ。
我武者羅に振り回し真空の刃を作り出すが、紫の個体は装甲が硬く、細かい傷を付ける程度に留まった。
「ウォライト殿の超重量攻撃で倒せない相手だ。俺の風魔法では大きい傷を付けるには至らないか……」
しかし、アランドラの役目は紫の個体の目を引き付けることと時間稼ぎ。一対一で倒せず、倒されずという状態は引き付けに成功していると言える。
誤算だったのは、アランドラはこの時、雷は充電が足りてなくて使わないと高をくくっていた。
手数の面では押しているように思えたが……突然ピシャッ!という轟音と共に紫の個体の身体から放電。
充電しなければ雷は出さないという先入観で戦っていたため、アランドラは不意を突かれてしまう。
「アランドラ!!」
「ヤバイ! 身体から湯気が出て白目を剥いてるぞ! 援護を……いくら身体が竜鱗で覆われてるとは言え、無防備でデスキラービーの針を喰らえば穴が開くぞ!!」
マルクが援護に入ろうとすると、すぐに意識を取り戻し、槍を横に薙いだ。
咄嗟に放った横一閃の槍は、感電して気絶したと思い込み、油断していた紫の個体に当たり、樹魔法で作られた床の上を転がる。
「アランドラ、大丈夫か!?」
「も、問題ありません! 俺もドラゴン属なので雷には少し耐性があります。それに十分な充電が完了してなかったのか弱い電気でした! しかし……槍が当たりましたが……硬すぎて傷を付けられない! 早いとこ作戦の進行をお願いします」
「わかった!」
マルクとウォライトは、樹魔法を使い、紫の個体とアランドラを囲うように樹の檻を作り出す。
それに気付いた紫の個体は十分な充電でないながらも、樹の檻を壊そうと放電。
囲われていた樹の檻は、雷の放電現象により焼け落ちる。
しかし、マルクとウォライトの樹魔法により、何度も何度も樹の檻を作り出して紫の個体を包む。
包まれる度に雷を小充電して放ち、樹の檻を壊す。
それでもなおも同じことを繰り返す二人と一匹。
この光景を遠目から見ていた引き付け役の隊員が呟く。
「隊長たちは何をやってるんだ? 何度も何度も同じことを繰り返して」
しかしその樹の檻は目くらましだった!
本命はその外側に作られた鉄製の檻!
マルクとウォライトが樹魔法によって樹の枝を生い茂らせることによってカモフラージュして時間を稼ぎ、物質魔法を使えるベオバルツがその外側に堅牢な鉄の檻を作っていたのだ!
気付いた時には二人とも鉄の檻の中。
「アランドラ! もう良い、脱出してくれ! お前のお蔭で紫の個体を閉じ込めることができた。中央下部に脱出口を作ってある」
鉄の檻の下部には人が通れそうな穴。
そこは筒状の滑り台になっており、檻の外へ脱出できる仕組みになっている。
「了解!」
アランドラが鉄製の檻を抜け出し、その直後にベオバルツが脱出口に蓋をして塞ぐ。
紫の個体はその巨体さ故に檻を通り抜けることはできず、アランドラが脱出した穴も今しがた塞がれた。
ここに、紫の個体を閉じ込める虫かごが完成した。
「もうどうあっても抜け出すことはできんゾイ」
ベオバルツらソリッドノーム族は、硬いと名付けられるだけあり、土魔法と物質魔法の鉄属性を主に使う。
鉄の檻を作り出し、紫の個体を捕まえたベオバルツは満足げ。
「このまま生かして飼っておくか?」
「バカを言うな、災害級のモンスターだぞ」
しかし油断したところに、檻の中から十分な充電をされていない弱めのレールガンが飛んで来た。
「おおっとぉ! 危ない危ない」
「このまま放置は危ない。トドメと行こうか」
ウォライトが水魔法により鉄の虫かご内を水で満たすため、空中に巨大な水球が作られる。
「ギギギ……ガチガチガチガチガチガチガチガチ!」
命の危機を悟ったのか、警告音を発する紫の個体。
水球から抜け出してしまえば窒息することはないが、今現在紫の個体は鉄製の虫かごの中にいる。
虫かご内が水に満たされてしまえば、空気の供給スペースも無くなり、窒息は必定!
紫の個体は苦し紛れに電気を発して抵抗を示す。残った電力全てを使ってレールガンを放つが、水を少し蒸発させ、鉄の檻を少し歪めただけに過ぎず、水は外からウォライトがどんどん供給するため鉄の虫かごの中の水は飽和状態となり、逃げることができず、成す術無く窒息。
こうして紫の個体は倒された。
「登場人物が誰が誰か分からなくて面白くない」という方は、本筋だけで話が繋がるように書いてるので、本エピソード【EX】を飛ばしてもらっても大丈夫です。
◇◆◇
一方、アルトラが黒い個体を倒す少し前に時間が遡る――
北側は既に最大級の警戒網が敷かれている状態。
働き蜂の数も多い。
司令官マルクが第九コロニーから退却してきた各部隊の隊員に向けて檄を飛ばす。
「今から駆除作戦を再開する! 出現した特殊個体三体については我々隊長各位が少数精鋭で相手にする! 諸君ら副隊長以下は、我々が特殊個体と戦っている間に働き蜂が邪魔に入らないように牽制してもらいたい! 特殊個体に対して良いようにやられてしまった恐怖感はあるだろうが、ここであの特殊個体を倒しきらなければ、いずれはあれ以上の特殊個体がどんどん生産され、世界中の亜人が虐殺されるほどの大災害に発展するだろう! ここが正念場だ! 恐怖に打ち克ち、我々と共に戦ってほしい!」
「「「おう!!」」」
恐怖を感じている隊員は少なくないが、みな奮起して気合を込める。
「よし! では手筈通り、ティナリス殿、セシーリア殿、ルーコス殿、フリアマギアは緑の個体を、ウォライト、アランドラ、ベオバルツは私と共に紫の個体を相手にする!」
「「「了解!」」」
風魔法を使う緑の個体には、怪鳥種ルフ族のティナリス、怪鳥種ガルダ族のセシーリア、鳥人種ヘルヘヴン族のルーコスなど風使いと亜人種エルフ族のフリアマギアが相手にする。
対して雷を使う紫の個体は、竜種ユグドドラゴン族のウォライト、竜人種ドラゴニュート族のアランドラ、土の精霊種ソリッドノーム族のベオバルツ、そして司令官・木の精霊種トレント族のマルクが対峙。
「では、クラウディオ、我らへ道を示してくれ」
「承知した」
マルクの指示で魔人種バルバトス族のクラウディオが動く。
クラウディオは広範囲攻撃にすぐれた魔術師。
樹魔法により空中に無数の矢を作り出し、それを働き蜂の大群に向けて乱射する。
広範囲の働き蜂が次々と倒れ、七人の隊長と司令官に対し特殊個体への道が示される。
「クラウディオはそのまま引き付け部隊の掩護を続けてくれ」
「了解した」
「よし! では全員征くぞ!」
「まずは緑と紫の個体を分断します!」
ティナリス、セシーリア、ルーコスの有翼種三人が、『紫の個体』、『緑の個体』それぞれに対して暴風を引き起こし、巣から離すように吹き飛ばした。
「よし! 分断は成功だ! あとは手筈通り頼む! 武運を祈る!」
「そちらも!」
◆
紫の個体グループ、作戦開始前――
「アランドラ、この作戦はお前に負担を強いることになるがやれそうか?」
「ええ、これでもドラゴンの端くれです。任せてください」
「ではアランドラが紫の個体と一対一で戦い、私たち樹魔法組は彼らを樹の檻で囲む。その後はベオバルツにお願いする」
「任せておけい!」
「だが、これは最終的な作戦だ。まずは全員で倒しにかかる。それで倒せるようなら良し。解毒カプセルをいつ飲むかは各々の判断に任せる」
◇
そして現在、分断後――
「まずは俺の攻撃だ。特大のをくれてやる!」
全身鎧を脱ぎ捨てウォライトがみるみる巨大化、七メートルほどあるユグドドラゴンに変化。
ウォライトらユグドドラゴン族はユグドラシルを守護する樹と水と土と光を操るドラゴン。
光の魔力を凝縮し、レーザーのように放つ。
レーザーは紫の個体に当たり、彼方へと飛んで行った。
「当たったようですが……」
「これで終わりなら良いんだがな」
しかし、少しすると何事も無かったように第九コロニーへ戻ろうとする。
「効果はあまり無かったようだな」
「雷エネルギーで威力を逃がされたようです。それにかなり硬い装甲のようですね」
「なら直接叩くまでだ!」
ウォライトはドラゴン形態のまま紫の個体へと突進し、尻尾を振り回して打ち払う。
続いて追撃し、前足で踏み潰した。
かに見えたが……
「痛っつ!!」
「大丈夫ですか!?」
「しまった……針を刺された……出来ることならこんなに早々使いたくなかったのだがな……」
ウォライトは人型へと戻り、解毒カプセルを口にする。
「どうやら俺の体重の乗った攻撃ですらあまりダメージを与えられないようだ」
「我が軍随一の攻撃力でも敵わないとなると、さっきの作戦で行くしかないな。アランドラ、頼むぞ」
「了解!」
解毒カプセルを飲むとアランドラが竜人化して、紫の個体に飛び掛かる。
木の精霊種トレント族のマルクが樹魔法で大きな足場を作り、アランドラはそれを伝って空中を飛ぶ紫の個体の下へとたどり着いた。
「さあ、今度は俺が相手だ!」
「ギギ……」
紫の個体の弱点は、レールガンを使う前に溜めが必要なこと。
そのため緑の個体と分断してしまえば、紫の個体は溜めに時間をかけられなくなり、レールガンを放てない。
それを見越しての近接戦闘だった。
「いくぞ!」
手に持った槍で突く。
が、素早く動く紫の個体は難なく回避。
なおも連続して突くが、全て回避。
横薙ぎ、打ち下ろし、斜め払い、振り回し、牽制しながら槍を駆使するが、素早い動きで躱されてしまう。
「働き蜂と違って早いな……」
いずれの攻撃も回避され、まごついていると、紫の個体は毒針を発射。
毒針はレールガンほどではないが、電気エネルギーで速度を増していた。
「おっと! 一匹しかいないなら毒針を出すところを注視してれば、避けるのはそれほど難しくないぞ! 槍単体で当たらないなら、風の槍ならどうだ!」
槍に風魔法を付与し、横に薙ぐ。
我武者羅に振り回し真空の刃を作り出すが、紫の個体は装甲が硬く、細かい傷を付ける程度に留まった。
「ウォライト殿の超重量攻撃で倒せない相手だ。俺の風魔法では大きい傷を付けるには至らないか……」
しかし、アランドラの役目は紫の個体の目を引き付けることと時間稼ぎ。一対一で倒せず、倒されずという状態は引き付けに成功していると言える。
誤算だったのは、アランドラはこの時、雷は充電が足りてなくて使わないと高をくくっていた。
手数の面では押しているように思えたが……突然ピシャッ!という轟音と共に紫の個体の身体から放電。
充電しなければ雷は出さないという先入観で戦っていたため、アランドラは不意を突かれてしまう。
「アランドラ!!」
「ヤバイ! 身体から湯気が出て白目を剥いてるぞ! 援護を……いくら身体が竜鱗で覆われてるとは言え、無防備でデスキラービーの針を喰らえば穴が開くぞ!!」
マルクが援護に入ろうとすると、すぐに意識を取り戻し、槍を横に薙いだ。
咄嗟に放った横一閃の槍は、感電して気絶したと思い込み、油断していた紫の個体に当たり、樹魔法で作られた床の上を転がる。
「アランドラ、大丈夫か!?」
「も、問題ありません! 俺もドラゴン属なので雷には少し耐性があります。それに十分な充電が完了してなかったのか弱い電気でした! しかし……槍が当たりましたが……硬すぎて傷を付けられない! 早いとこ作戦の進行をお願いします」
「わかった!」
マルクとウォライトは、樹魔法を使い、紫の個体とアランドラを囲うように樹の檻を作り出す。
それに気付いた紫の個体は十分な充電でないながらも、樹の檻を壊そうと放電。
囲われていた樹の檻は、雷の放電現象により焼け落ちる。
しかし、マルクとウォライトの樹魔法により、何度も何度も樹の檻を作り出して紫の個体を包む。
包まれる度に雷を小充電して放ち、樹の檻を壊す。
それでもなおも同じことを繰り返す二人と一匹。
この光景を遠目から見ていた引き付け役の隊員が呟く。
「隊長たちは何をやってるんだ? 何度も何度も同じことを繰り返して」
しかしその樹の檻は目くらましだった!
本命はその外側に作られた鉄製の檻!
マルクとウォライトが樹魔法によって樹の枝を生い茂らせることによってカモフラージュして時間を稼ぎ、物質魔法を使えるベオバルツがその外側に堅牢な鉄の檻を作っていたのだ!
気付いた時には二人とも鉄の檻の中。
「アランドラ! もう良い、脱出してくれ! お前のお蔭で紫の個体を閉じ込めることができた。中央下部に脱出口を作ってある」
鉄の檻の下部には人が通れそうな穴。
そこは筒状の滑り台になっており、檻の外へ脱出できる仕組みになっている。
「了解!」
アランドラが鉄製の檻を抜け出し、その直後にベオバルツが脱出口に蓋をして塞ぐ。
紫の個体はその巨体さ故に檻を通り抜けることはできず、アランドラが脱出した穴も今しがた塞がれた。
ここに、紫の個体を閉じ込める虫かごが完成した。
「もうどうあっても抜け出すことはできんゾイ」
ベオバルツらソリッドノーム族は、硬いと名付けられるだけあり、土魔法と物質魔法の鉄属性を主に使う。
鉄の檻を作り出し、紫の個体を捕まえたベオバルツは満足げ。
「このまま生かして飼っておくか?」
「バカを言うな、災害級のモンスターだぞ」
しかし油断したところに、檻の中から十分な充電をされていない弱めのレールガンが飛んで来た。
「おおっとぉ! 危ない危ない」
「このまま放置は危ない。トドメと行こうか」
ウォライトが水魔法により鉄の虫かご内を水で満たすため、空中に巨大な水球が作られる。
「ギギギ……ガチガチガチガチガチガチガチガチ!」
命の危機を悟ったのか、警告音を発する紫の個体。
水球から抜け出してしまえば窒息することはないが、今現在紫の個体は鉄製の虫かごの中にいる。
虫かご内が水に満たされてしまえば、空気の供給スペースも無くなり、窒息は必定!
紫の個体は苦し紛れに電気を発して抵抗を示す。残った電力全てを使ってレールガンを放つが、水を少し蒸発させ、鉄の檻を少し歪めただけに過ぎず、水は外からウォライトがどんどん供給するため鉄の虫かごの中の水は飽和状態となり、逃げることができず、成す術無く窒息。
こうして紫の個体は倒された。
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