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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏

第342話 デスキラービー駆除作戦開始!

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 そして二十二時少し前、来たる作戦決行の時――

 各隊の隊長・副隊長・隊員がエルフヴィレッジの広場に勢ぞろい。その数総勢七百十一名。各隊平均して九十名弱の編成。
 今回およそ五千匹から最大で一万匹と予想されるデスキラービーだが、流石に二倍の差は考えられないとし実際のところは七千から八千ほどではないかと言われている。
 一メートルもの蜂七千匹に対し、七百人程度では少々不安な数字と思われるが、通常の駆除作戦では一人当たり十五から二十匹、多いと三十匹ほどを相手にするらしく、この人数はむしろ多いくらいに思われている。
 それと言うのも全身鎧フルプレートを着込む戦法が編み出されて以降、死傷者も劇的に抑えられるようになったため、少ない人数で多数を相手取れるようになったからだそうだ。
 とは言え、前代未聞の九個のコロニーの発生ということで、念には念を入れて多めに投入されたと言ったところ。

 全員駆除の準備は万端のようだ。

「アルトラ殿、空間転移座標の取得、お疲れ様です。こちらも準備が整っています」

 総司令官マルクが隊員全員の眼前へ出て駆除作戦開始を宣言する。

「ではこれより、デスキラービーの巣の駆除作戦を開始する! 今回の巣の数は九個と、未だかつてない数を相手しなければならない! 当然危険を伴うだろう! しかしこれを放置すればいずれ世界的な危機に繋がる可能性がある! 諸君らには自らの役割を全うし、何としても全ての女王を駆除してもらいたい! 各隊は担当の巣を撃滅次第、配った通信機にてその成功を知らせてくれ。担当の巣を破壊できた隊はその場で待機。外周の八個の巣を撃滅し次第、八部隊揃えて本丸と思われる九個目の巣の駆除にかかる。全ての隊員たちの武運を祈る!」

「「「おう!!」」」

「ではアルトラ殿、早速蜘蛛の巣トラップ作成ポイントまで輸送をお願いできますか?」
「はい」

 ゲートを八個出現させ、作戦開始ポイントと繋げた。

「おぉ!?」
「一度に八個もの転移魔法を!?」

 あ、そうか、普通の空間魔術師は一日に十回程度が使用限界だったっけ。
 やり過ぎた……突然同時に八個出現させるのはまずかった……
 まあ、もうやってしまったのは仕方がない。このまま押し通そう。

「左から順に地図の番号に対応するコロニーの裏手に転移します。全員を輸送次第、エルフヴィレッジにデスキラービーが流れ込まないように転移ゲートを閉じます。それでは各隊の方々のご武運をお祈りします」

 第一部隊から第八部隊までの大人数が転移ゲートに吸い込まれるように入って行き、私の所属する第五部隊だけが残った。
 私が所属する第五部隊担当のゲートだけを残し、他七つのゲートを閉じる。
 なお各空間魔術師は、もし危機的状況になり、退却が必要になった場合を想定して、各々二部隊の退却を手助けする。それぞれ第一・第二部隊担当にイルリースさん、第三・第四部隊担当にルイスさん、第五・第六部隊担当に私、第七・第八部隊担当にジョアンニャさんというように振り分けて配置された。

「さて、では我々も行きましょうか」

 待機していた第五部隊に混ざってゲートを通過後、すぐに閉じる。

   ◇

「では、まずアラクネ族の方々、トラップの設置を頼む」
「了解した」

 第五部隊隊長兼引き付け部隊隊長アランドラの指示により、蜘蛛の巣トラップの設置が開始された。
 これより作戦開始の四時から五時になるまでに数多くの蜘蛛の巣トラップを設置してもらう算段。

「トラップが出来るまで我々は彼らの護衛だ。もし偵察蜂が来たら絶対に逃がさずに処分しろ! 巣に戻られた時点で大量の働き蜂を呼ばれ、この作戦は無効になると考えろ! その場合は蜘蛛の巣トラップ無しで、戦わなければならなくなるから不利な状況に陥る可能性が高くなる! 感知班、偵察蜂の動向は逃さず報せてくれ、頼むぞ!」
「了解!」

 ここで特攻部隊の隊長ルシガンからの指示。

特攻部隊われわれは南へ移動する。引き付け部隊がデスキラービーを引き付けた一時間後に巣に突撃だ。それまでは潜伏して待機」

 私は分身体を特攻部隊側に残してルシガン隊長に付いて移動する。

「じゃあ特攻部隊の方よろしく頼むね、分身体わたし!」
「コロニーの撃滅頼んだよ、本体わたし!」

   ◇

 潜伏場所まで移動し、ここから作戦開始の合図があるまでおよそ六から七時間の待機。

「……敵に見つからないようにしておけ」

「「「……了解」」」

「見つからないようにするなら打ってつけの魔法がありますよ」
「なに? あんたホントに何でもありだな」
「【全体的不可視化インビジブル・オール】&【全体的魔力遮断シャットアウト・スペル・オール】」

 認識阻害の魔法を特攻隊員全員にかける。

「おお!? 姿が見えなくなった!」
「もうこのまま任務を遂行すれば良いんじゃないか?」
「いえ、光の屈折率を変えてるだけなので、万が一光の屈折まで感知できる蜂や熱感知できる蜂が居れば、その蜂には我々の姿がばっちり見えてます。それにこのままだと味方同士でも見えてないので、味方同士でぶつかったりする可能性がありますし、隊列が乱れてむしろ危険かもしれません」
「確かにな」
「なのでコロニー突入時には認識阻害を解除してから突撃します。現在のところはそのまま身を潜めておきましょう」

 余談だけど、第五部隊の隊員全員に、私が鋼のごとき身体だと知られているものの、全身鎧フルプレートはちゃんと着させられた。
 その理由は、一人だけ顔や肌を露出した場違いな格好だと、『非常に目立つ』からだそうだ。
 味方の士気に関わるし、客観的に見て『危なっかしい』と思うのと、敵が来た際に肌を露出した私を隊員が見て瞬間的に『危ない!』という思考に染まるから判断に迷いが生じるという二つの理由らしい。
 小柄な分、小さめの全身鎧フルプレートだが、それでもそれ相応に重いし暑苦しい……
 しかし利点もあって、分身体の方は元々の頑丈な性質に加え、鎧まで着込んだとあって更に壊されにくくなったと言える。

「でも早く終わらせて脱ぎたいわ……」


   ◇


 そして六時間後――

 特攻隊隊長ルシガンに、全部隊の準備が終わったと通信が入った。

「間もなく引き付け部隊が作戦を開始するようだ。俺たちはその一時間後に巣に突撃する」

 やっと蜘蛛の巣トラップの設置が終わったか。待機するだけってのも簡単じゃないな……ここを動けるのはあと一時間後か……
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