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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第341話 空間転移座標の取得と強制転移魔法の伝授
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空間転移座標を取得するにしても、大体の地形を把握しておく必要がある。昼間の第五部隊会議で地図を見たけど、手元には無いから改めて取得しておきたい。
そういうわけで部隊長のアランドラに訊ねたところ――
「さっきの作戦会議で使った隠し渓谷の地図はありますか?」
「ああ、空間転移座標の取得に必要なんですね、持って行ってください」
地図は簡単に手に入った。
この地図を見る限りでは、蜂たちにとって最も重要と見られる蜂の巣は渓谷のど真ん中辺りに鎮座していることになる。その周りを囲むように八個の蜂の巣。
改めて詳しく説明すると――
至:大森林の外
┃
┏┓ ╋┳┳
┗④━╋⑤┻┳┳
┣③┗┓┃ ⑥┛
┣┻┳┻⑨━┳┛ ┃
┣━②┏┻┓┣⑦━┫
┗┓┗①┳┻⑧┓┣┛
┗━┻╋━━┻┛
┃
至:エルフヴィレッジ
⑨が蜂にとって最も重要と思われるコロニー。
それを守るように囲む八個のコロニー。
①②③⑦⑧は外周を回れば作戦開始ポイントまで徒歩で移動できる。
しかし④⑤⑥は、途中で大岩や岩壁などにより不自然に道が途切れているため、蜂の巣を避けて作戦開始ポイントまで行くためには、それらを登り降りしなければならないということ。
今回の私の役目は④⑤⑥を襲撃できるように、これらの巣の裏手の空間転移座標を得てくること。
ちなみに、作戦開始ポイントを記すと以下のようになる。〇が開始ポイント。
至:大森林の外
┃
〇┓ ╋┳〇
┗④━╋⑤┻┳〇
┣③┗┓┃ ⑥┛
〇┻┳┻⑨━┳┛ ┃
〇━②┏┻┓┣⑦━┫
┗┓┗①┳┻⑧┓┣〇
┗━┻〇━〇┻┛
┃
至:エルフヴィレッジ
しかし解せないことがある。
隠し渓谷になっていて、エルフの商人たちが行商の通行に使っているなら、なぜ九つもの巣が作られるまで気付かなかったのか。
その疑問を解消するため、作戦本部に行ってエルフに聞いてみることにする。
「ここってエルフの商人が通行で使うこともあるんですよね? 何で今までデスキラービーの巣に気付かなかったんですか?」
五十メートルもあるような巣を普通見逃すだろうか?
そんな巨大なものが建ってたら一目で分かると思うが……
「ああ、それは大森林の外に出る渓谷はここ以外に二つあ――」
と、ほぼ要点を話し終わった後に、
「わーーー!!」
という別のエルフの声に掻き消された。
必死に大声で隠そうとしたらしいが、もう遅い!
「あ、あははは……今のは聞かなかったことにしてください」
過去に襲撃されたと言う話があったことから、逃げられる道を何通りか用意してるってところか。
「しかしもう聞かれてしまったからにはお話します。今デスキラービーが巣を作っているのは、ここしばらく通行に使っていなかった道なんです。そのため発見が遅れたのでしょう。ああこの話は他言無用でお願いします。バレたら怒られちゃうので」
なるほど、今現在メインで使っている道じゃなかったから住み着かれてしまったわけか。
さて、地図も手に入ったことだし、空間転移座標の取得に行って来よう。
と、その前に――
◇
トリニアさんとティナリスにお願いして、今回この町に滞在している空間魔術師全員に集まってもらった。
「アルトラ様、空間魔術師全員集めてどうするおつもりなんですか?」
と、ルイスさん。
「それは話の流れで説明するので、まずは話を聞いてください」
「はぁ」
改めて他の二人の方向へ向き直り、
「初めまして、ジョアンニャさん、イルリースさん、アルトラルサンズという国で国主をやっています。アルトラと申します」
「こ、国主様だったのですか!?」
と、樹の国ジョアンニャさん。
猫の獣人と聞いていたから、語尾が「ニャ」なんじゃないかと期待したが、普通に話すタイプの獣人だった……
「先ほどは、わたくしの役目を変わっていただきありがとうございました。それで……なぜわたくしたちを集めたのでしょう?」
と、風の国イルリースさん。
先程の最終会議で、空間転移座標取得の任務を押し付けられそうになっていたセイレーン族の女性。
「あなた方は、強制転移魔法を使えますか?」
「強制転移魔法? 本人の意思とは無関係に強制的に転移させるのですか?」
「そうですね、そういう魔法です」
「知らないですね……移動魔法は普通の転移魔法だけです」
「わたくしも存じません」
「ルイスさんは?」
「僕も知らないですね。そもそも我々は全員魔王様かそれに準ずる方のお付きをしているので、他人を強制的に動かすなんてケースがありませんから、考えたことも無いです」
「では強制転移魔法を覚えてください」
三人に【強制転移】の魔法を伝授した。
使えるかどうかは本人たち次第だが、これをイメージできるのとできないのでは大きな違いがあると思い、【強制転移】を披露しておいた。
「なぜこのような広範囲の人員を巻き込むような魔法を?」
「これを使う場面が無ければ良いのですが、少し嫌な予感がしますので、三人にも使えるようになってほしいと思いまして。この駆除作戦で大量に怪我人が出た時に必要になるかもしれません」
「「「わかりました」」」
「では私は私の任務があるので、これにて」
次は急ぎ空間転移座標の取得のために飛ばなければならない!
あ、ジョアンニャさんに後で会う約束を取り付けておくべきだったか!
駆除作戦終了後にあの人に樹の国の首都まで連れてってもらえば、これ以上大森林を歩く必要が無いし。とは言え、今の優先事項は座標取得だ!
◇
二十一時過ぎ――
デスキラービーが寝静まった頃に空間転移座標取得のために動く。
「じゃあ、みなさんちょっと行ってきますね」
「「「お気を付けて」」」
作戦本部のみんなに見送られながら、エルフヴィレッジから飛び立つ。
渓谷まではそれほど遠くない。エルフヴィレッジから一キロから二キロの間くらいと言ったところ。
渓谷に着いたら外周を旋回して空間転移座標を得る。と言っても、現地に着いて回りを飛ぶだけだから蜂に気付かれさえしなければ何も起きない。
「よし、デスキラービーも寝ているし、静かなもんだ。せっかくだから中心にある巣の確認をしてから帰還しようか」
そう思っていたが、中心の巣に近付く前に異質な何かを感じたため、近寄るのを中止した。
遠目から見た限りでは、他の巣と違い、活動時間外のはずなのに上空に偵察蜂らしき群体がいる。
「これ以上近寄ったら気付かれそうだ。作戦に支障が出るかもしれないし、帰還しよう」
中心の巣には近寄ることができなかったが、中心の巣から半径二キロ以内に他の巣があることが分かった。
一応、何事も無く空間転移座標を得ることができた。所要時間およそ三十分。
そういうわけで部隊長のアランドラに訊ねたところ――
「さっきの作戦会議で使った隠し渓谷の地図はありますか?」
「ああ、空間転移座標の取得に必要なんですね、持って行ってください」
地図は簡単に手に入った。
この地図を見る限りでは、蜂たちにとって最も重要と見られる蜂の巣は渓谷のど真ん中辺りに鎮座していることになる。その周りを囲むように八個の蜂の巣。
改めて詳しく説明すると――
至:大森林の外
┃
┏┓ ╋┳┳
┗④━╋⑤┻┳┳
┣③┗┓┃ ⑥┛
┣┻┳┻⑨━┳┛ ┃
┣━②┏┻┓┣⑦━┫
┗┓┗①┳┻⑧┓┣┛
┗━┻╋━━┻┛
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至:エルフヴィレッジ
⑨が蜂にとって最も重要と思われるコロニー。
それを守るように囲む八個のコロニー。
①②③⑦⑧は外周を回れば作戦開始ポイントまで徒歩で移動できる。
しかし④⑤⑥は、途中で大岩や岩壁などにより不自然に道が途切れているため、蜂の巣を避けて作戦開始ポイントまで行くためには、それらを登り降りしなければならないということ。
今回の私の役目は④⑤⑥を襲撃できるように、これらの巣の裏手の空間転移座標を得てくること。
ちなみに、作戦開始ポイントを記すと以下のようになる。〇が開始ポイント。
至:大森林の外
┃
〇┓ ╋┳〇
┗④━╋⑤┻┳〇
┣③┗┓┃ ⑥┛
〇┻┳┻⑨━┳┛ ┃
〇━②┏┻┓┣⑦━┫
┗┓┗①┳┻⑧┓┣〇
┗━┻〇━〇┻┛
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至:エルフヴィレッジ
しかし解せないことがある。
隠し渓谷になっていて、エルフの商人たちが行商の通行に使っているなら、なぜ九つもの巣が作られるまで気付かなかったのか。
その疑問を解消するため、作戦本部に行ってエルフに聞いてみることにする。
「ここってエルフの商人が通行で使うこともあるんですよね? 何で今までデスキラービーの巣に気付かなかったんですか?」
五十メートルもあるような巣を普通見逃すだろうか?
そんな巨大なものが建ってたら一目で分かると思うが……
「ああ、それは大森林の外に出る渓谷はここ以外に二つあ――」
と、ほぼ要点を話し終わった後に、
「わーーー!!」
という別のエルフの声に掻き消された。
必死に大声で隠そうとしたらしいが、もう遅い!
「あ、あははは……今のは聞かなかったことにしてください」
過去に襲撃されたと言う話があったことから、逃げられる道を何通りか用意してるってところか。
「しかしもう聞かれてしまったからにはお話します。今デスキラービーが巣を作っているのは、ここしばらく通行に使っていなかった道なんです。そのため発見が遅れたのでしょう。ああこの話は他言無用でお願いします。バレたら怒られちゃうので」
なるほど、今現在メインで使っている道じゃなかったから住み着かれてしまったわけか。
さて、地図も手に入ったことだし、空間転移座標の取得に行って来よう。
と、その前に――
◇
トリニアさんとティナリスにお願いして、今回この町に滞在している空間魔術師全員に集まってもらった。
「アルトラ様、空間魔術師全員集めてどうするおつもりなんですか?」
と、ルイスさん。
「それは話の流れで説明するので、まずは話を聞いてください」
「はぁ」
改めて他の二人の方向へ向き直り、
「初めまして、ジョアンニャさん、イルリースさん、アルトラルサンズという国で国主をやっています。アルトラと申します」
「こ、国主様だったのですか!?」
と、樹の国ジョアンニャさん。
猫の獣人と聞いていたから、語尾が「ニャ」なんじゃないかと期待したが、普通に話すタイプの獣人だった……
「先ほどは、わたくしの役目を変わっていただきありがとうございました。それで……なぜわたくしたちを集めたのでしょう?」
と、風の国イルリースさん。
先程の最終会議で、空間転移座標取得の任務を押し付けられそうになっていたセイレーン族の女性。
「あなた方は、強制転移魔法を使えますか?」
「強制転移魔法? 本人の意思とは無関係に強制的に転移させるのですか?」
「そうですね、そういう魔法です」
「知らないですね……移動魔法は普通の転移魔法だけです」
「わたくしも存じません」
「ルイスさんは?」
「僕も知らないですね。そもそも我々は全員魔王様かそれに準ずる方のお付きをしているので、他人を強制的に動かすなんてケースがありませんから、考えたことも無いです」
「では強制転移魔法を覚えてください」
三人に【強制転移】の魔法を伝授した。
使えるかどうかは本人たち次第だが、これをイメージできるのとできないのでは大きな違いがあると思い、【強制転移】を披露しておいた。
「なぜこのような広範囲の人員を巻き込むような魔法を?」
「これを使う場面が無ければ良いのですが、少し嫌な予感がしますので、三人にも使えるようになってほしいと思いまして。この駆除作戦で大量に怪我人が出た時に必要になるかもしれません」
「「「わかりました」」」
「では私は私の任務があるので、これにて」
次は急ぎ空間転移座標の取得のために飛ばなければならない!
あ、ジョアンニャさんに後で会う約束を取り付けておくべきだったか!
駆除作戦終了後にあの人に樹の国の首都まで連れてってもらえば、これ以上大森林を歩く必要が無いし。とは言え、今の優先事項は座標取得だ!
◇
二十一時過ぎ――
デスキラービーが寝静まった頃に空間転移座標取得のために動く。
「じゃあ、みなさんちょっと行ってきますね」
「「「お気を付けて」」」
作戦本部のみんなに見送られながら、エルフヴィレッジから飛び立つ。
渓谷まではそれほど遠くない。エルフヴィレッジから一キロから二キロの間くらいと言ったところ。
渓谷に着いたら外周を旋回して空間転移座標を得る。と言っても、現地に着いて回りを飛ぶだけだから蜂に気付かれさえしなければ何も起きない。
「よし、デスキラービーも寝ているし、静かなもんだ。せっかくだから中心にある巣の確認をしてから帰還しようか」
そう思っていたが、中心の巣に近付く前に異質な何かを感じたため、近寄るのを中止した。
遠目から見た限りでは、他の巣と違い、活動時間外のはずなのに上空に偵察蜂らしき群体がいる。
「これ以上近寄ったら気付かれそうだ。作戦に支障が出るかもしれないし、帰還しよう」
中心の巣には近寄ることができなかったが、中心の巣から半径二キロ以内に他の巣があることが分かった。
一応、何事も無く空間転移座標を得ることができた。所要時間およそ三十分。
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