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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第336話 偶然の出会い二回目
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そして、更に一日後、樹の国と風の国の空間魔術師がそれぞれの兵士を呼び寄せたことによって戦力が整いつつあった。
「今から第二回作戦会議を行うので、各隊長・責任者は出席していただきたい」
「では会議に行ってきます。会議で決まったことは後々ご報告致しますので」
「はい」
トリニアさんが会議室に入って行った。
さて、会議をしている間は蚊帳の外か。
ロクトスとナナトスの様子でも見に行くか。
「おや? アルトラさんではないですか?」
偶然訪れたエルフの町で、偶然声をかけられるのも二回目。
偶然が過ぎるな。
などと思いながら振り向くと、エルフの兄妹が居た。
「フレデリックさん!」 (第134話、第264話から第265話参照)
「お久しぶりです。偶然ですね。あなたがこんなところに居るなんて」
「同行者が森でエルフに捕まってしまいまして……それを引き取りに来たんです」
「ああ……まだあの悪習を引きずってるんですね……もうエルフの町襲撃も大分過去のことなのですが……」
「そちらの方は?」
「ああ、この子は私の娘です」
あ、兄妹かと思ってたら父娘の間違いだったか。父親の見た目が若すぎて、どっちなのか判断が難しい。
「お初にお目にかかりますアルトラ様、フレデリカと申します。先日は父の命を助けていただき、ありがとうございました」 (第134話参照)
「いえ、助けられて良かったです。こちらとしてもエルフと友好を結ぶ切っ掛けが出来て良かったと思います」
「それで、フレデリックさんたちはなぜここに?」
「ああ、ここは私の出身地ですので、一時的に戻って来たんです。しかし戻ってみればこんな大騒動になっているとは……他種族を信用しないからこんなことになるんですよ」
やっぱり、予想通り彼は都市エルフじゃなくて真のエルフの出身か。
「ああ、変な話になってしまってすみません。ちょっと親族への顔見せで立ち寄っただけなので、行商の仕入れのためにすぐに樹の国第一首都へ発ちます。アルトラ殿にお願いされたものもそこにありますので」
「そうなんですか?」
「私の用意する商品は、家畜も作物もスパイスもそこで育てられていますので。一緒に行かれますか?」
「いえ、残念ながらまだここで私がやらなければならないことがあるようなので……」
「デスキラービー退治に参加されるのですか?」
「はい、そのつもりです」
「私は武人ではないので駆除に協力できませんが、ご武運をお祈りします。その代わりと言ってはなんですが、アルトラ殿が希望されているものは取り揃えておくのでご期待ください」
「よろしくお願いします!」
「それにしても『アルトラという方に大恩があるから、その人がもし訪れることがあったら丁重にもてなしてくれ』と伝えておいたんですが……忘れているのか気付かなかったのか……改めて伝えておきます。ではまたアルトレリアでお会いしましょう」
「アルトラ様、失礼致します」
と、父娘ともども頭を下げられ、彼らはエルフヴィレッジを後にした。
◇
第二回の作戦会議が終わり、トリニアさんが帰って来た。
「作戦準備予定は明日の二十二時頃、作戦決行は四時頃を予定しているようです。最終判断は本日夜に行われる最後の作戦会議で決定致します」
「はい、それで現在決まっている作戦内容は?」
「兵団を八個団体に分けて、更に二つずつに分け、まずは周りにある八個のコロニーを各個撃破していきます」
「十六個団体ってことですか?」
「はい、各コロニーにつき、二個団体で対応します。二個のうち片方を引き付け役。もう片方をコロニーへの突撃役とします。これは昨日説明したように鎧の黒白で役割を分けます。蜂は黒いものに主に反応して追跡するため、黒が引き付け役です。アラクネ族と風の国の翼のある方々は各団体に散らばって配置されます。作戦開始前にアラクネ族に蜘蛛の巣トラップを張ってもらい、風の国の方々が空から蜂をトラップに引き込み、多数の蜂を絡めとる作戦でスタートです。下準備次第ですが、これによりかなりの数を削ぐことができると思います」
おお、なるほど、空飛べる風の国の亜人たちの後を付いて来させれば、蜘蛛の巣トラップに引き込むのも容易いか。
「トラップに引き込む役の風の国の方々は全身鎧を装備せず、身軽な格好で行いますので、トラップに引き込み次第、彼ら・彼女らには戦線を離脱してもらいます。またアラクネ族も蜂たちの天敵とは言え、毒を無効化できるというわけではないので、この時点で離脱となると思います」
全身鎧装備してない者をそのまま居させるのは危ないしね。
「風の国の全身鎧組はその後も続けて空からの引き付け、空からのコロニーへの爆撃などを行います。とは言え、羽は全身鎧で守ることができないため、危険を感じたらこの方々も離脱する手筈です」
風の国の方々は飛べる者が多いため、今回トラップへの引き込み役として起用される。
「フッと疑問に思ったんですけど……殺虫剤とか無いんですか?」
『ハチアブメガトンジェット』みたいなやつ。
「…………普通の虫に効くものなら売ってますけど……一メートルもある巨体に効くものとなると、亜人にも効果が出てしまうので、難しいのではないでしょうか?」
「ですよね~……亜人まで殺してちゃ意味無いですしね」
「デスキラービーに効く殺虫剤あったら、こんな軍隊作って駆除しなくて良いので便利なんですけどね~」
「今から第二回作戦会議を行うので、各隊長・責任者は出席していただきたい」
「では会議に行ってきます。会議で決まったことは後々ご報告致しますので」
「はい」
トリニアさんが会議室に入って行った。
さて、会議をしている間は蚊帳の外か。
ロクトスとナナトスの様子でも見に行くか。
「おや? アルトラさんではないですか?」
偶然訪れたエルフの町で、偶然声をかけられるのも二回目。
偶然が過ぎるな。
などと思いながら振り向くと、エルフの兄妹が居た。
「フレデリックさん!」 (第134話、第264話から第265話参照)
「お久しぶりです。偶然ですね。あなたがこんなところに居るなんて」
「同行者が森でエルフに捕まってしまいまして……それを引き取りに来たんです」
「ああ……まだあの悪習を引きずってるんですね……もうエルフの町襲撃も大分過去のことなのですが……」
「そちらの方は?」
「ああ、この子は私の娘です」
あ、兄妹かと思ってたら父娘の間違いだったか。父親の見た目が若すぎて、どっちなのか判断が難しい。
「お初にお目にかかりますアルトラ様、フレデリカと申します。先日は父の命を助けていただき、ありがとうございました」 (第134話参照)
「いえ、助けられて良かったです。こちらとしてもエルフと友好を結ぶ切っ掛けが出来て良かったと思います」
「それで、フレデリックさんたちはなぜここに?」
「ああ、ここは私の出身地ですので、一時的に戻って来たんです。しかし戻ってみればこんな大騒動になっているとは……他種族を信用しないからこんなことになるんですよ」
やっぱり、予想通り彼は都市エルフじゃなくて真のエルフの出身か。
「ああ、変な話になってしまってすみません。ちょっと親族への顔見せで立ち寄っただけなので、行商の仕入れのためにすぐに樹の国第一首都へ発ちます。アルトラ殿にお願いされたものもそこにありますので」
「そうなんですか?」
「私の用意する商品は、家畜も作物もスパイスもそこで育てられていますので。一緒に行かれますか?」
「いえ、残念ながらまだここで私がやらなければならないことがあるようなので……」
「デスキラービー退治に参加されるのですか?」
「はい、そのつもりです」
「私は武人ではないので駆除に協力できませんが、ご武運をお祈りします。その代わりと言ってはなんですが、アルトラ殿が希望されているものは取り揃えておくのでご期待ください」
「よろしくお願いします!」
「それにしても『アルトラという方に大恩があるから、その人がもし訪れることがあったら丁重にもてなしてくれ』と伝えておいたんですが……忘れているのか気付かなかったのか……改めて伝えておきます。ではまたアルトレリアでお会いしましょう」
「アルトラ様、失礼致します」
と、父娘ともども頭を下げられ、彼らはエルフヴィレッジを後にした。
◇
第二回の作戦会議が終わり、トリニアさんが帰って来た。
「作戦準備予定は明日の二十二時頃、作戦決行は四時頃を予定しているようです。最終判断は本日夜に行われる最後の作戦会議で決定致します」
「はい、それで現在決まっている作戦内容は?」
「兵団を八個団体に分けて、更に二つずつに分け、まずは周りにある八個のコロニーを各個撃破していきます」
「十六個団体ってことですか?」
「はい、各コロニーにつき、二個団体で対応します。二個のうち片方を引き付け役。もう片方をコロニーへの突撃役とします。これは昨日説明したように鎧の黒白で役割を分けます。蜂は黒いものに主に反応して追跡するため、黒が引き付け役です。アラクネ族と風の国の翼のある方々は各団体に散らばって配置されます。作戦開始前にアラクネ族に蜘蛛の巣トラップを張ってもらい、風の国の方々が空から蜂をトラップに引き込み、多数の蜂を絡めとる作戦でスタートです。下準備次第ですが、これによりかなりの数を削ぐことができると思います」
おお、なるほど、空飛べる風の国の亜人たちの後を付いて来させれば、蜘蛛の巣トラップに引き込むのも容易いか。
「トラップに引き込む役の風の国の方々は全身鎧を装備せず、身軽な格好で行いますので、トラップに引き込み次第、彼ら・彼女らには戦線を離脱してもらいます。またアラクネ族も蜂たちの天敵とは言え、毒を無効化できるというわけではないので、この時点で離脱となると思います」
全身鎧装備してない者をそのまま居させるのは危ないしね。
「風の国の全身鎧組はその後も続けて空からの引き付け、空からのコロニーへの爆撃などを行います。とは言え、羽は全身鎧で守ることができないため、危険を感じたらこの方々も離脱する手筈です」
風の国の方々は飛べる者が多いため、今回トラップへの引き込み役として起用される。
「フッと疑問に思ったんですけど……殺虫剤とか無いんですか?」
『ハチアブメガトンジェット』みたいなやつ。
「…………普通の虫に効くものなら売ってますけど……一メートルもある巨体に効くものとなると、亜人にも効果が出てしまうので、難しいのではないでしょうか?」
「ですよね~……亜人まで殺してちゃ意味無いですしね」
「デスキラービーに効く殺虫剤あったら、こんな軍隊作って駆除しなくて良いので便利なんですけどね~」
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