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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第333話 デスキラービーの生態
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現在、エルフたちとトリニアさんで今後の対処・方針について話し合っている。
緊急で飛び込んで来た事態であるため、作戦会議室はまだ用意できておらず、通路のようなところで会議している。
「火魔法を使えれば対処は楽なんですがね……」
「森で使うと大火災に発展しかねませんからね……」
「しかしコロニーが九つとなるとかなり厄介ですよ? 火災覚悟で包囲して殲滅させるのが良いのでは?」
「バカを言うな、ずっと森林地帯が続いているんだぞ! 消火に失敗すれば多数の死者が出かねない! 延焼すれば森の木がごっそり無くなってしまう」
「ゴーレムをけしかけたらどうだ?」
「もうやった。一瞬で群がられて、紋章部分を砕かれて、ただの石と土に逆戻りだ。逆に火に油を注いだかもしれん」
「あの……皆さん少々よろしいでしょうか? わたくしの方で本国へ連絡して援軍を呼んで来ようと思います」
「そうですね、この数は人員も大量に必要になりそうです」
「ではトリニア殿、よろしくお願いします」
色々と話は聞こえる。
デスキラービーについてはほとんど知らないが、現状が芳しくない事態であることくらいは分かる。
道端会議に参加していたトリニアさんがこちらに歩いて来た。
「緊急時なので、少々席を外させていただきます」
「どうするつもりなんですか?」
「第一首都に植物転移して、本国と属国に援軍を要請します。場合によっては隣の風の国にも応援要請するつもりですが……しかし、あれの対処には身体全体を鎧に包む真っ黒に塗った全身鎧が必要不可欠ですので、空間魔法を使える者がいないとなると準備が整うまでは数日を要します」
「精霊は物理的な攻撃ではダメージを負わないんですよね? それなら精霊を集めて対処すれば良いんじゃないんですか?」
「以前言ったように魔力の込められていないものならダメージを負わないんですが、残念なことにデスキラービーの攻撃には強い魔力が含まれています。そのため毒も我々精霊にも普通に効いてしまい、最悪な場合には死に至ります。そういう特性を鑑みて三大凶虫に数えられてるというわけですね」
「な……なるほど……」
精霊をも殺せる虫か……
「魔法はどの程度効くんですか? 火で焼き払いたいけどできないという話が聞こえましたけど、虫なら凍らせてしまえば動かなくなるのでは?」
「それも残念なことに彼らは巨体のため身体の芯まで凍り付かせるには相当の魔力が必要となります。その上身体を振るわせて振動で熱を作って自力解凍します。この地の魔術師には樹使いや風使いが多く、氷使いは少ないので対処は難しいでしょう。大きさを考えても普通の虫と同じと考えない方が良いと思います」
自力で解凍する生物っているんだ……
「じゃあ大量の土で埋めてしまったり、大岩を落とすとかは?」
「蜂はアリの仲間ですので、すぐに穴掘って出てくると思います。数が大量ですので瞬時に出てくるのではないかと。同じように大岩で圧殺しようと試みたことがあるそうですが、力持ちだったため大勢で岩を持ち上げられてしまい潰すことはできませんでした」
「風魔法で乱気流を起こして飛べなくしたりとかは?」
「それもやったことがあるようですが、風の中で毒針を発射されて、毒針が風と共に流れてきて大惨事になったことがあるそうです。多数の死傷者が出て、森の木々にも毒針が刺さっており、毒に侵されて枯れてしまったとか。どうやら自分たちに危険が迫ると、周りに被害が及ぶように巻き込もうとするみたいです」
何て迷惑なヤツら!
たかが虫と侮るなかれか……滅茶苦茶なヤツらだな……
う~ん……今回もダメージを受けない私が単身で行けば被害規模も少なくなるのでは?
「雷魔法ならどうですか? 聞いた話ではエレアースモに巣を作られたことはないという話でしたが」 (第271話参照)
「そうなのですか? 他国のことについては詳しくは存じ上げませんが、電気に特別弱いという話を聞いたことはありません」
確かエレアースモに作らない理由は、巣に落ちやすいからだったはず。これだけだと効果があるか分からないな……
もし巣に落としてみて、蜂たちに全く効果が無かったら巣だけ焼け落ちるだけで、大量の蜂が飛び出してきて余計に事態を悪化させる可能性もあり得る。やらないのが無難か……
「じゃあマシンガンエラテリウムの時同様、今回も私一人で対処しますよ」
と提案してみたものの。
「確かに……アルトラ様なら傷を負わないかもしれません。しかし、コロニー一つにおよそ五百から千匹ほどの蜂がいます。九つコロニーがあるということは、少なく見積もったとしても五千弱の蜂がいるわけです。一人で対処に行ったとしても大勢に集られて身動き取れなくなってしまうのではないでしょうか?」
「魔法で蹴散らしつつ進めば……」
「集られないほど連続して魔法放つことができるのですか? しかも巣は九ヶ所もあるのに」
うっ……確かに身動き取れなくなる可能性は高いかもしれない。
「今回九つのコロニーが出来てるとのことですけど、それって平均と比べてどの程度なんですか?」
「魔界全土で見ても前例が無い数です。今までの最多数は六個でしたから」
「えぇ!? 最多数の一.五倍!?」
「こういうものも樹人に巡回させて早期発見するのが常で、コロニーが一つ、多くても二つ程度で発見され早期駆除されます。しかし、今回はエルフの町の更に奥ということで、樹人が入らないようなところに出来ていたそうです。エルフたちのここまでの対応から感じているとは思いますが、よそ者を嫌がるために樹人の巡回も拒否されていたので……」
なるほど、なるべくしてなったってわけか。
「あの蜂に対処するための定石通り、多数の引き付け役を用意して、手薄になった巣に別動隊が突撃するという作戦が良いかと思います」
「引き付け役は通常どれくらい必要になるんですか?」
「コロニー九個は聞いたことがないので……そうですね……仮に百の引き付け役兵士が居たとしても一人当たり単純計算で五十匹から百匹を引き付けないといけないわけです。適正な数を考えると引き付け役と巣への突撃役で三百から五百は欲しいところですが、それほどの全身鎧は用意できないでしょう」
全身鎧着た亜人が五百?
西洋の合戦のようだ。虫退治するのに全身鎧って……
「流石にほとんど戦争の無かったこの地では三百の全身鎧ですら手に入れるのは大変なので、それ以下の兵装になってしまうと思いますが……」
「全身鎧を着ていれば、命の危機は無いんですか?」
「いえ、必ずしも安全というわけではありません。針一発が弾丸並みの攻撃力と考えてもらえると、集団で一斉に攻撃された時の衝撃はかなりのものになります。集団で襲われた場合、例えるならマシンガンを喰らってるのと同じようなものですから」
怖ぁ……そりゃ鎧着てないとすぐやられるわ。
「他の国に比べて樹の国はデスキラービーの発生確率が高いので、わたくしも駆除する場面を何度か見たことがあるのですが、駆除が終わった後の全身鎧はあちこちボコボコになって、中には針を喰らい過ぎたところが擦り切れて穴が開いてしまうこともありますから」
鋼鉄の鎧を!? 攻撃力高っか!!
「それに鎧と鎧の繋ぎ目に当たって、運悪く中に食い込まれてしまうこともあります。下地に鎖かたびらを着込みますが、弾丸並みの威力を相殺できるほど防御力は高くありません」
全身鎧装備ですら命の危機があるのに、それ以下の兵装しか準備できない可能性があるとなると、物凄い数の死傷者が出る可能性があるんじゃ……?
これの駆除は本当に命懸けってわけか。
「針は一匹につき何発くらい発射するんですか?」
「生態調査書によれば、三から五発程度だそうです。稀に六か七もいるそうですが本当に稀なケースですね。一匹が終わったとしても次から次へ波状攻撃のように入れ替わって攻撃されるので、物凄い数を浴びてるように錯覚するでしょうね」
弾丸並みの針を三から五発、数十から数百匹分喰らえば、そりゃ鎧もボコボコになるわな。
「生命力が高いため、次の日かその次の日には毒針の補充が完了してしまうそうです」
再生早いな……じゃあ撃ち尽くしても、次の日には元通りってわけか。それが最低でも五千匹弱……三大凶虫に数えられるはずだ。
「コロニーとコロニーの間はどの程度離れているのでしょうね?」
「先ほどエルフたちとの会議で聞いていた話では、それぞれ百から二百メートルの間には入るのではないかと。ただ……何か不穏なことも聞かされまして、一つのコロニーを中心に八つがそれを守ってるかのように作られているそうです」
「まさか……女王蜂より更に上の『女帝蜂』みたいなのがいる可能性が?」
「そんな前例は無いですが、その可能性も……」
より厄介な感じになってきたな……
「各コロニーの女王蜂を倒せてしまえば、そのコロニーは終わったも同然なんですが……女王を逃がしてしまった場合はまた別の場所で繁殖するので厄介ですよね」
「終わったも同然って、他の働き蜂はどうなるんですか?」
「戦意喪失して無力化され、一日後から三日後くらいにはほぼ全部死んでしまうそうです。デスキラービーは女王を中心とした一個の生命体というような生態ですね」
「へぇ~、不思議な生態ですね。でも、全滅するなら何で駆除してもまた発生するんですか?」
「それが分からないんですよね。そのため『“ほぼ”全部』と記載されてるのではないかと。もしかしたらその生き延びた働き蜂の中から女王に変質するものがいるのかもしれません」
これもイナゴの王同様、この世界の自然現象の一つなのかもしれないな…… (第271話参照)
「女王って普通の蜂とどれくらい見た目が違うんですか?」
「働き蜂に比べると二倍くらい大きいですよ。多分二メートルくらいあるんじゃないでしょうか?」
「でかっ!!」
「異様に大きいので一目で分かります。あと卵持ってて、お腹が膨らんでる……と言うか長くなってることが多いですね」
「色の違いとかはあるんですかね?」
「色ですか……多分違いは無いと思います。黄色に黒の模様ですよ」
普通の蜂の模様とあまり変わらないわけか。
「さて、わたくしは今から本国に援軍要請をしてこようと思います。ただ……木の精霊でない者はここに来るのに時間がかかってしまいます。先程の会議で戦力が整うまでしばしの間待機ということになりました。幸いにもエルフヴィレッジはまだ彼らのナワバリの外にあります。偵察蜂だけは気を付けて監視する必要がありますが、戦力が整うまでの時間くらいは、ここで待機していても問題無いでしょう。とりあえずは、早い方が良いと思いますのでユグドグランに行ってこようと思います。では少々失礼致します!」
その言葉を残して、近くの植物から花が散るように消えた。
緊急で飛び込んで来た事態であるため、作戦会議室はまだ用意できておらず、通路のようなところで会議している。
「火魔法を使えれば対処は楽なんですがね……」
「森で使うと大火災に発展しかねませんからね……」
「しかしコロニーが九つとなるとかなり厄介ですよ? 火災覚悟で包囲して殲滅させるのが良いのでは?」
「バカを言うな、ずっと森林地帯が続いているんだぞ! 消火に失敗すれば多数の死者が出かねない! 延焼すれば森の木がごっそり無くなってしまう」
「ゴーレムをけしかけたらどうだ?」
「もうやった。一瞬で群がられて、紋章部分を砕かれて、ただの石と土に逆戻りだ。逆に火に油を注いだかもしれん」
「あの……皆さん少々よろしいでしょうか? わたくしの方で本国へ連絡して援軍を呼んで来ようと思います」
「そうですね、この数は人員も大量に必要になりそうです」
「ではトリニア殿、よろしくお願いします」
色々と話は聞こえる。
デスキラービーについてはほとんど知らないが、現状が芳しくない事態であることくらいは分かる。
道端会議に参加していたトリニアさんがこちらに歩いて来た。
「緊急時なので、少々席を外させていただきます」
「どうするつもりなんですか?」
「第一首都に植物転移して、本国と属国に援軍を要請します。場合によっては隣の風の国にも応援要請するつもりですが……しかし、あれの対処には身体全体を鎧に包む真っ黒に塗った全身鎧が必要不可欠ですので、空間魔法を使える者がいないとなると準備が整うまでは数日を要します」
「精霊は物理的な攻撃ではダメージを負わないんですよね? それなら精霊を集めて対処すれば良いんじゃないんですか?」
「以前言ったように魔力の込められていないものならダメージを負わないんですが、残念なことにデスキラービーの攻撃には強い魔力が含まれています。そのため毒も我々精霊にも普通に効いてしまい、最悪な場合には死に至ります。そういう特性を鑑みて三大凶虫に数えられてるというわけですね」
「な……なるほど……」
精霊をも殺せる虫か……
「魔法はどの程度効くんですか? 火で焼き払いたいけどできないという話が聞こえましたけど、虫なら凍らせてしまえば動かなくなるのでは?」
「それも残念なことに彼らは巨体のため身体の芯まで凍り付かせるには相当の魔力が必要となります。その上身体を振るわせて振動で熱を作って自力解凍します。この地の魔術師には樹使いや風使いが多く、氷使いは少ないので対処は難しいでしょう。大きさを考えても普通の虫と同じと考えない方が良いと思います」
自力で解凍する生物っているんだ……
「じゃあ大量の土で埋めてしまったり、大岩を落とすとかは?」
「蜂はアリの仲間ですので、すぐに穴掘って出てくると思います。数が大量ですので瞬時に出てくるのではないかと。同じように大岩で圧殺しようと試みたことがあるそうですが、力持ちだったため大勢で岩を持ち上げられてしまい潰すことはできませんでした」
「風魔法で乱気流を起こして飛べなくしたりとかは?」
「それもやったことがあるようですが、風の中で毒針を発射されて、毒針が風と共に流れてきて大惨事になったことがあるそうです。多数の死傷者が出て、森の木々にも毒針が刺さっており、毒に侵されて枯れてしまったとか。どうやら自分たちに危険が迫ると、周りに被害が及ぶように巻き込もうとするみたいです」
何て迷惑なヤツら!
たかが虫と侮るなかれか……滅茶苦茶なヤツらだな……
う~ん……今回もダメージを受けない私が単身で行けば被害規模も少なくなるのでは?
「雷魔法ならどうですか? 聞いた話ではエレアースモに巣を作られたことはないという話でしたが」 (第271話参照)
「そうなのですか? 他国のことについては詳しくは存じ上げませんが、電気に特別弱いという話を聞いたことはありません」
確かエレアースモに作らない理由は、巣に落ちやすいからだったはず。これだけだと効果があるか分からないな……
もし巣に落としてみて、蜂たちに全く効果が無かったら巣だけ焼け落ちるだけで、大量の蜂が飛び出してきて余計に事態を悪化させる可能性もあり得る。やらないのが無難か……
「じゃあマシンガンエラテリウムの時同様、今回も私一人で対処しますよ」
と提案してみたものの。
「確かに……アルトラ様なら傷を負わないかもしれません。しかし、コロニー一つにおよそ五百から千匹ほどの蜂がいます。九つコロニーがあるということは、少なく見積もったとしても五千弱の蜂がいるわけです。一人で対処に行ったとしても大勢に集られて身動き取れなくなってしまうのではないでしょうか?」
「魔法で蹴散らしつつ進めば……」
「集られないほど連続して魔法放つことができるのですか? しかも巣は九ヶ所もあるのに」
うっ……確かに身動き取れなくなる可能性は高いかもしれない。
「今回九つのコロニーが出来てるとのことですけど、それって平均と比べてどの程度なんですか?」
「魔界全土で見ても前例が無い数です。今までの最多数は六個でしたから」
「えぇ!? 最多数の一.五倍!?」
「こういうものも樹人に巡回させて早期発見するのが常で、コロニーが一つ、多くても二つ程度で発見され早期駆除されます。しかし、今回はエルフの町の更に奥ということで、樹人が入らないようなところに出来ていたそうです。エルフたちのここまでの対応から感じているとは思いますが、よそ者を嫌がるために樹人の巡回も拒否されていたので……」
なるほど、なるべくしてなったってわけか。
「あの蜂に対処するための定石通り、多数の引き付け役を用意して、手薄になった巣に別動隊が突撃するという作戦が良いかと思います」
「引き付け役は通常どれくらい必要になるんですか?」
「コロニー九個は聞いたことがないので……そうですね……仮に百の引き付け役兵士が居たとしても一人当たり単純計算で五十匹から百匹を引き付けないといけないわけです。適正な数を考えると引き付け役と巣への突撃役で三百から五百は欲しいところですが、それほどの全身鎧は用意できないでしょう」
全身鎧着た亜人が五百?
西洋の合戦のようだ。虫退治するのに全身鎧って……
「流石にほとんど戦争の無かったこの地では三百の全身鎧ですら手に入れるのは大変なので、それ以下の兵装になってしまうと思いますが……」
「全身鎧を着ていれば、命の危機は無いんですか?」
「いえ、必ずしも安全というわけではありません。針一発が弾丸並みの攻撃力と考えてもらえると、集団で一斉に攻撃された時の衝撃はかなりのものになります。集団で襲われた場合、例えるならマシンガンを喰らってるのと同じようなものですから」
怖ぁ……そりゃ鎧着てないとすぐやられるわ。
「他の国に比べて樹の国はデスキラービーの発生確率が高いので、わたくしも駆除する場面を何度か見たことがあるのですが、駆除が終わった後の全身鎧はあちこちボコボコになって、中には針を喰らい過ぎたところが擦り切れて穴が開いてしまうこともありますから」
鋼鉄の鎧を!? 攻撃力高っか!!
「それに鎧と鎧の繋ぎ目に当たって、運悪く中に食い込まれてしまうこともあります。下地に鎖かたびらを着込みますが、弾丸並みの威力を相殺できるほど防御力は高くありません」
全身鎧装備ですら命の危機があるのに、それ以下の兵装しか準備できない可能性があるとなると、物凄い数の死傷者が出る可能性があるんじゃ……?
これの駆除は本当に命懸けってわけか。
「針は一匹につき何発くらい発射するんですか?」
「生態調査書によれば、三から五発程度だそうです。稀に六か七もいるそうですが本当に稀なケースですね。一匹が終わったとしても次から次へ波状攻撃のように入れ替わって攻撃されるので、物凄い数を浴びてるように錯覚するでしょうね」
弾丸並みの針を三から五発、数十から数百匹分喰らえば、そりゃ鎧もボコボコになるわな。
「生命力が高いため、次の日かその次の日には毒針の補充が完了してしまうそうです」
再生早いな……じゃあ撃ち尽くしても、次の日には元通りってわけか。それが最低でも五千匹弱……三大凶虫に数えられるはずだ。
「コロニーとコロニーの間はどの程度離れているのでしょうね?」
「先ほどエルフたちとの会議で聞いていた話では、それぞれ百から二百メートルの間には入るのではないかと。ただ……何か不穏なことも聞かされまして、一つのコロニーを中心に八つがそれを守ってるかのように作られているそうです」
「まさか……女王蜂より更に上の『女帝蜂』みたいなのがいる可能性が?」
「そんな前例は無いですが、その可能性も……」
より厄介な感じになってきたな……
「各コロニーの女王蜂を倒せてしまえば、そのコロニーは終わったも同然なんですが……女王を逃がしてしまった場合はまた別の場所で繁殖するので厄介ですよね」
「終わったも同然って、他の働き蜂はどうなるんですか?」
「戦意喪失して無力化され、一日後から三日後くらいにはほぼ全部死んでしまうそうです。デスキラービーは女王を中心とした一個の生命体というような生態ですね」
「へぇ~、不思議な生態ですね。でも、全滅するなら何で駆除してもまた発生するんですか?」
「それが分からないんですよね。そのため『“ほぼ”全部』と記載されてるのではないかと。もしかしたらその生き延びた働き蜂の中から女王に変質するものがいるのかもしれません」
これもイナゴの王同様、この世界の自然現象の一つなのかもしれないな…… (第271話参照)
「女王って普通の蜂とどれくらい見た目が違うんですか?」
「働き蜂に比べると二倍くらい大きいですよ。多分二メートルくらいあるんじゃないでしょうか?」
「でかっ!!」
「異様に大きいので一目で分かります。あと卵持ってて、お腹が膨らんでる……と言うか長くなってることが多いですね」
「色の違いとかはあるんですかね?」
「色ですか……多分違いは無いと思います。黄色に黒の模様ですよ」
普通の蜂の模様とあまり変わらないわけか。
「さて、わたくしは今から本国に援軍要請をしてこようと思います。ただ……木の精霊でない者はここに来るのに時間がかかってしまいます。先程の会議で戦力が整うまでしばしの間待機ということになりました。幸いにもエルフヴィレッジはまだ彼らのナワバリの外にあります。偵察蜂だけは気を付けて監視する必要がありますが、戦力が整うまでの時間くらいは、ここで待機していても問題無いでしょう。とりあえずは、早い方が良いと思いますのでユグドグランに行ってこようと思います。では少々失礼致します!」
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