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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第331話 三人が連れて行かれたエルフヴィレッジへ
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全員がいなくなったのを確認したら、急いで服を着る。私は闇のドレスを創成。
指をパチンと鳴らして、認識阻害の魔法を解除。
「さて、迎えに行きましょうか」
「はい」
その時、微かな羽音――
「ん? トリニアさん何か聞こえましたか?」
何か目の端で大きい生物が横切ったような……
羽音がする大きい生物って何だ……?
「まあ、良いか、早いとこナナトスらを回収して首都へ向かいましょう」
◇
エルフの町に着いた。
のどかな村のようなところを想像してたが、外壁が作られていて想像よりもずっと堅牢な造り。恐らく獣とかも多いだろうから、町ごと外壁で囲まれているんだろう。アルトレリアと同じような造りだ。
町の出入口らしきところに守る気マンマンの二体のゴーレム。大きさは四から五メートルというところか。
これがトリニアさんが道中説明してくれた紋章術で作られたゴーレムか。脚の外側の付け根辺りに紋章らしき紋様がある。
近付いてもすぐさま攻撃してくることはなかったが、身体ごと動かして通せんぼされた。
二体同時に身体を動かして近寄って来たから威圧感が凄い……
「あの……こちらに連れて来られた緑色の亜人と人魚の亜人がいると思うんですが……」
話を聞いてくれそうな見た目ではないが、ダメ元で目の前のゴーレムに話しかけてみるも、うんともすんとも言わない。
「トリニアさん、これどうしたら良いんでしょう?」
「わ、わたくしにも分かりかねます……いつもは訪問を事前にお知らせしてからエルフヴィレッジを訪れますので……その時には横に控えて道を開けてくれています」
困ったな……ゴーレムを壊して入ったら、明らかに敵意ありと取られるだろうから、壊して入るわけにはいかないし。かと言って、空飛んで入っても……多分同じように敵意ありとみなされるだろう。
その時、外壁の上の方から声がした。
「ああ、そいつらには心が無いから話なんか聞いてくれないよ。あんたたちがさっき緑のヤツが喚いてたアルトラさん? そっちはトリニア殿かな?」
「そうですそうです! 良かった近くに亜人居た! 取り次ぎをお願いできますか?」
「少し待ってな」
◇
さっきロクトスたちを連れて行ったリーダー格に取り次いでもらった。
エルフの男女が案内役として付けられる。
「こちらへどうぞ」
中に入れてもらったが、その先にもう一つ壁があり、また二体のゴーレムが守っている。
通されたのはその壁と壁の間に設えられた小さい小屋くらいの大きさの家。
随分用心深いな……壁の先に更に壁があるなんて……
小屋の中は給湯室とトイレくらいしかないワンルームと言った感じで、部屋の中央にソファのような椅子とテーブルが置かれている。
なるほど、ここは村に入る前に入れても大丈夫かどうか判定される場所ってところか。
「少々お待ちください」
エルフの男性を置いて、女性だけが小屋を出て行った。
この置いてかれた男性は多分見張りかな。
◇
少し経って――
「お待たせしました、エルフヴィレッジ族長のシルヴァンと申します。お久しぶりですトリニア殿」
さっきロクトスたちを連れて行った男性じゃあないな。人間で言うところの、四十代くらいの見た目。エルフだから多分何百歳なんだろうけど。
と、思ったらさっきロクトスたちを連れてった時のリーダー格らしい二人も入室してきた。
「シルヴァン殿、お久しぶりです」
「初めまして、アルトラルサンズという国で国主をしています、アルトラと申します」
「あなたがアルトラ殿ですか」
後から入って来た二人にジロジロと見られているような視線を感じる。
と思ったら小声が聞こえてしまった。
「……天使のような魔人のような人間? ツノはあるが羽は見えないな……」
「……そのようですね……恐らくヘルヘヴン族のように、普段は収納しているのでしょう……」
まあ、見られてるだけだし今は三人の安否の確認をしないと。
トリニアさんが族長シルヴァンに話しかける。
「シルヴァン殿、単刀直入に申し上げます。先程あなた方が連れて行ったグリーントロル族のお二人と水の国の空間魔術師をお返しいただけますか?」
「グリーントロル二人については既に連れて来ています。今すぐにお返しいたしましょう。ロニー、レーネ、連れて来てくれ」
「了解した」
すぐにロクトスとナナトスは部屋に入って来た。
「アルトラ様~、どこ行ってたんスか!」
「……迎えに来てもらえて助かった……」
「ルイスさんは?」
「さあ? 俺っちたちとは違うところにいるみたいッス」
何で……?
「あの……なぜルイスさんはお返しいただけないのでしょうか?」
「水の国の空間魔術師については、こちらとしても慎重を期さなければならないため、今すぐお返しすることはできません」
え? マジ?
トリニアさんが居れば全員問題無く帰ってくるかと思ってたのに……
「それは……なぜですか?」
「彼が空間魔術師だからです。解放リスクがある以上、確認も取れずに簡単に返すことはできません」
「その理屈で言ってしまうと、私も空間魔術師ですが……私も拘束されるんですか?」
「「「なっ!?」」」
私の発言に驚くエルフたち。
「マジック・シ――」
「レーネ殿! そこまでです!」
【マジック・シール】と言い終わる前に大声で制止したトリニアさん。
「無闇やたらに他人に対して魔法を使うのはいかがかと思います。特にこの方は新興国ながら一国の主です。その方に危害を加えたとなれば国際問題に発展しかねませんよ? エルフヴィレッジの宗主国であるわたくしども樹の国も黙っているわけにはいきません!」
ロクトスたちを連れて行ったメガネのエルフ・レーネを諫めるトリニアさん。
「う……しかし……空間魔術師を逃すとなると……」
「なぜそこまで警戒されてるんですか?」
「我々トゥルーエルフは森賊によって、絶滅寸前まで追い込まれた過去があるのです」
ロクトスたちを連れて行ったもう片方・ロニーが理由を話してくれた。
「空間魔術師はたった一人いるだけで、戦況を激変させるほどの力があります。そのため身分の判明しない空間魔術師は捕えて幽閉していた過去があるのです」
気持ちは分かるけど……過剰防衛じゃないか?
何もしてない者を捕まえるというのは。
「もちろん確認が取れればきちんとお返ししています」
「じゃあ、彼の主であるレヴィアタンを連れて来れば良いということですか?」
「そこまでしていただけるのであれば文句の付けようはありません。レヴィアタン殿であれば我々も見知っておりますので即座にお返しできるかと思います」
仕方ない……レヴィに事の顛末を伝えて何とかここへ来てもらおうか。
そこへ意図しない報せが届く。
「族長!」
「何事だ?」
「捕えた空間魔術師にかまけてる場合ではありません!」
「何か不測の事態があったのか?」
指をパチンと鳴らして、認識阻害の魔法を解除。
「さて、迎えに行きましょうか」
「はい」
その時、微かな羽音――
「ん? トリニアさん何か聞こえましたか?」
何か目の端で大きい生物が横切ったような……
羽音がする大きい生物って何だ……?
「まあ、良いか、早いとこナナトスらを回収して首都へ向かいましょう」
◇
エルフの町に着いた。
のどかな村のようなところを想像してたが、外壁が作られていて想像よりもずっと堅牢な造り。恐らく獣とかも多いだろうから、町ごと外壁で囲まれているんだろう。アルトレリアと同じような造りだ。
町の出入口らしきところに守る気マンマンの二体のゴーレム。大きさは四から五メートルというところか。
これがトリニアさんが道中説明してくれた紋章術で作られたゴーレムか。脚の外側の付け根辺りに紋章らしき紋様がある。
近付いてもすぐさま攻撃してくることはなかったが、身体ごと動かして通せんぼされた。
二体同時に身体を動かして近寄って来たから威圧感が凄い……
「あの……こちらに連れて来られた緑色の亜人と人魚の亜人がいると思うんですが……」
話を聞いてくれそうな見た目ではないが、ダメ元で目の前のゴーレムに話しかけてみるも、うんともすんとも言わない。
「トリニアさん、これどうしたら良いんでしょう?」
「わ、わたくしにも分かりかねます……いつもは訪問を事前にお知らせしてからエルフヴィレッジを訪れますので……その時には横に控えて道を開けてくれています」
困ったな……ゴーレムを壊して入ったら、明らかに敵意ありと取られるだろうから、壊して入るわけにはいかないし。かと言って、空飛んで入っても……多分同じように敵意ありとみなされるだろう。
その時、外壁の上の方から声がした。
「ああ、そいつらには心が無いから話なんか聞いてくれないよ。あんたたちがさっき緑のヤツが喚いてたアルトラさん? そっちはトリニア殿かな?」
「そうですそうです! 良かった近くに亜人居た! 取り次ぎをお願いできますか?」
「少し待ってな」
◇
さっきロクトスたちを連れて行ったリーダー格に取り次いでもらった。
エルフの男女が案内役として付けられる。
「こちらへどうぞ」
中に入れてもらったが、その先にもう一つ壁があり、また二体のゴーレムが守っている。
通されたのはその壁と壁の間に設えられた小さい小屋くらいの大きさの家。
随分用心深いな……壁の先に更に壁があるなんて……
小屋の中は給湯室とトイレくらいしかないワンルームと言った感じで、部屋の中央にソファのような椅子とテーブルが置かれている。
なるほど、ここは村に入る前に入れても大丈夫かどうか判定される場所ってところか。
「少々お待ちください」
エルフの男性を置いて、女性だけが小屋を出て行った。
この置いてかれた男性は多分見張りかな。
◇
少し経って――
「お待たせしました、エルフヴィレッジ族長のシルヴァンと申します。お久しぶりですトリニア殿」
さっきロクトスたちを連れて行った男性じゃあないな。人間で言うところの、四十代くらいの見た目。エルフだから多分何百歳なんだろうけど。
と、思ったらさっきロクトスたちを連れてった時のリーダー格らしい二人も入室してきた。
「シルヴァン殿、お久しぶりです」
「初めまして、アルトラルサンズという国で国主をしています、アルトラと申します」
「あなたがアルトラ殿ですか」
後から入って来た二人にジロジロと見られているような視線を感じる。
と思ったら小声が聞こえてしまった。
「……天使のような魔人のような人間? ツノはあるが羽は見えないな……」
「……そのようですね……恐らくヘルヘヴン族のように、普段は収納しているのでしょう……」
まあ、見られてるだけだし今は三人の安否の確認をしないと。
トリニアさんが族長シルヴァンに話しかける。
「シルヴァン殿、単刀直入に申し上げます。先程あなた方が連れて行ったグリーントロル族のお二人と水の国の空間魔術師をお返しいただけますか?」
「グリーントロル二人については既に連れて来ています。今すぐにお返しいたしましょう。ロニー、レーネ、連れて来てくれ」
「了解した」
すぐにロクトスとナナトスは部屋に入って来た。
「アルトラ様~、どこ行ってたんスか!」
「……迎えに来てもらえて助かった……」
「ルイスさんは?」
「さあ? 俺っちたちとは違うところにいるみたいッス」
何で……?
「あの……なぜルイスさんはお返しいただけないのでしょうか?」
「水の国の空間魔術師については、こちらとしても慎重を期さなければならないため、今すぐお返しすることはできません」
え? マジ?
トリニアさんが居れば全員問題無く帰ってくるかと思ってたのに……
「それは……なぜですか?」
「彼が空間魔術師だからです。解放リスクがある以上、確認も取れずに簡単に返すことはできません」
「その理屈で言ってしまうと、私も空間魔術師ですが……私も拘束されるんですか?」
「「「なっ!?」」」
私の発言に驚くエルフたち。
「マジック・シ――」
「レーネ殿! そこまでです!」
【マジック・シール】と言い終わる前に大声で制止したトリニアさん。
「無闇やたらに他人に対して魔法を使うのはいかがかと思います。特にこの方は新興国ながら一国の主です。その方に危害を加えたとなれば国際問題に発展しかねませんよ? エルフヴィレッジの宗主国であるわたくしども樹の国も黙っているわけにはいきません!」
ロクトスたちを連れて行ったメガネのエルフ・レーネを諫めるトリニアさん。
「う……しかし……空間魔術師を逃すとなると……」
「なぜそこまで警戒されてるんですか?」
「我々トゥルーエルフは森賊によって、絶滅寸前まで追い込まれた過去があるのです」
ロクトスたちを連れて行ったもう片方・ロニーが理由を話してくれた。
「空間魔術師はたった一人いるだけで、戦況を激変させるほどの力があります。そのため身分の判明しない空間魔術師は捕えて幽閉していた過去があるのです」
気持ちは分かるけど……過剰防衛じゃないか?
何もしてない者を捕まえるというのは。
「もちろん確認が取れればきちんとお返ししています」
「じゃあ、彼の主であるレヴィアタンを連れて来れば良いということですか?」
「そこまでしていただけるのであれば文句の付けようはありません。レヴィアタン殿であれば我々も見知っておりますので即座にお返しできるかと思います」
仕方ない……レヴィに事の顛末を伝えて何とかここへ来てもらおうか。
そこへ意図しない報せが届く。
「族長!」
「何事だ?」
「捕えた空間魔術師にかまけてる場合ではありません!」
「何か不測の事態があったのか?」
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