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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第325話 vsブルードラゴン その2
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「死体を守って何のつもりだい!?」
「彼らはまだ生きてるわ」
「生きてる? あ……あはははは、自分で斬っておいて? 殺してないという自分への言い訳かい? あれだけ派手に刀で斬り伏せておいて、あれだけ派手に血しぶきが舞って、生きてるわけないだろう? 中には左肩から右腰まで真っ二つにしたやつもいるのに? 冗談はよしなよ」
「仮に死んでいたとしても、遺体が流されたら弔うこともできないじゃない! 仲間を弔ってやろうという気は無いの?」
「無いね。部下なんて下僕以外の何物でもない。使い捨ての手駒だよ。死んだらまた補充すれば良いだけさ」
同じドラゴンでもフレアハルトとは真逆の考え方ね。彼は自分の命を差し出して一族全員を助けようとしたのに…… (第43話参照)
「……クズね……」
「何とでも言うが良いさ、アタシは今までこういう生き方をしてきた! アタシさえ生きていれば何度でも立て直せる。アタシだけが生きてるのが重要なのさ! …………敵の死体まで守ろうとして、そんなに他人の命が大事かい?」
「私と関わりのある命以外大事ではないわ。正直あなたたちみたいな悪いヤツらは死のうがどうなろうが興味もないし、できることなら一生涯関わりたくもない。でも私の目の前で死ななくても良い、私の寝覚めが悪い!」
「キャハハハ! 自分で斬り殺しておいてそれを言う? お前さんだって十分身勝手じゃあないかい!」
だから死んではいないって!
「そいつらが生きているか死んでるかは知らないが、それなら死体が流れない方法でお前を殺してやるよ。津波で死んだ方が良かったと思うくらい、お前自身が惨たらしい死にざまになるだろうけどねぇ! ≪セヴァレンス・アクア≫!!」
という魔法を使ったものの、何か飛んでくるわけでもなく、変化も無し。
と思ったら、魔法が当たってから気が付いた。
左肩から右腰にかけて強い水が当たって水しぶきになっている。どうやら発射されたのが極細に圧縮された水で、当たるまで気付かないくらい細かったらしい。要は水圧のカッターをより細くしたもの。
「さて、切った範囲が小さすぎて気付いてないだろうけど、今お前の身体は見えない水のカッターで真っ二つになった。まだ細胞が繋がっているから死んでないが、一歩でも動けばたちまち細胞の結びが外れて上半身から崩れ落ちるよ」
やっぱりそういう類の魔法だったか。
さて、ここでちょっと考えなければならないことがある。
私はここで“身体を動かすことができるかどうか”ということ。
もし彼女の水レベルがフレアハルトと同じように11だった場合、私は気付かぬうちに袈裟掛けに切断されていることになる。一歩でも動いたら彼女の言うように上半身が滑り落ちて絶命するだろう。
でも、もし水レベルが11ではなかった場合、私には一切効き目が無いから動いて良いことになる。
動かなければ死なないけど、動かなければ私に効果があるかどうかも見分けられない。
さて、どうしようか?
とりあえずカマかけてみるか。
「動かなかったら切断された身体はくっ付くの?」
「そうだねぇ、細胞の切断面がかなり綺麗だから二時間ほど直立不動を保っていればくっ付くかもねぇ」
「じゃあ、このまま動かなければ見逃してくれるってこと?」
「そんなことは一言も言っていないじゃあないか。これからお前はアタシの放つ水流弾を浴びて、上半身が崩れ落ちるんだよ!」
「最初から助ける気は無いってわけね」
「アタシをバカにしたヤツは生かさない。直前まで恐怖を与えて最後の希望も摘み取るのさ」
「性格最悪ね……」
「さあもっと恐怖しな! もっと悲痛の顔を見せな! 早く『助けて』と懇願しな! もうすぐそこに死が迫っているよ? キャハハハハ!」
「じゃあ、わかった。どちらにしても死ぬ運命なら腹は決まったわ」
右手を勢い良く振り上げる。
「バカだねぇ、そんな勢い良く動けば上半身は崩れてぇ――」
何も起こらない! 思った通りコイツはレベル11の能力を持っていない!
身体に当たった時に水しぶきを上げていたから切断できていないだろうと思っていた。
「――崩れて…………どうした!? 何で上半身が滑り落ちない!?」
「さあ、今度はあなたが覚悟する番よ」
「亜人ごときがドラゴンであるこのアタシを倒せるもんか! ならば直接刺し殺してやるよ! ≪アイスランス≫!」
水だけじゃなく氷も使えるのか!
「アタシは水に特化したドラゴンだけど、氷が使えないわけじゃない、コイツを喰らって串刺しになりな!」
と投げつけて来たのは槍のように鋭い氷の塊。
私はその場から微動だにせず、氷の槍を胴体で受ける。
「キャハハハハハ! どてっ腹に直撃だ! 確実に死んだ! キャハハハハハ……ハハ……は?」
氷の槍は私に衝突後、粉々に砕け散った。
「く、砕けた……? あの巨大な氷塊が? あの大きさの氷塊を喰らえば、アタシたちドラゴンのウロコですら無傷で済まないんだよ!? そ、相当強力な魔法障壁を持ってるようだね……だったら直接物理的に叩き潰してやるだけさ!」
その巨体に似合わぬ素早さであっという間に間合いを詰められ、ぶん回した尻尾を叩きつけられる!
そのまま勢いよく森の中を吹き飛ばされ、木々を何本かなぎ倒して止まった。
「あ~、ビックリした! キャノンエラテリウムの種大砲より吹き飛ばされたかも」
などと仰向けのまま呑気に構えていたところ、上空から巨大な身体が降ってくるのが見える。
「ゲッ、あの巨体で踏みつける気!?」
そのまま全体重をかけて踏みつけられた。
「キャハハハハ! 死ね死ね死ね死ね!」
その後、なおもドスンッ!ドスンッ!ドスンッ!と地響きが起こるほどの地団駄を喰らう。
「ドラゴンの体重は四トンを超えるんだ! アタシの全体重を乗せたプレスなら、お前がどれほど頑丈でも生きてられないだろぉ?」
しばらく両前足で地団駄を踏み、踏みしめられる度に私は地中の下の方へ下の方へと埋まっていく。
……
…………
………………
「ハァハァハァ……これだけ踏めば……流石に跡形も残っていないだろうさねぇ」
地団駄が終わるまで地中で大人しくしていたところ、徐々に地表から伝わってくる振動も収まってきた。
そろそろ地上に出るか。
そして土埃が晴れて、ブルードラゴンの前に姿を現すと――
今まで笑い声を上げて私を踏んづけていた顔が、驚愕の表情に変わっていく。
「な……何で……? あ、あれだけ踏みつけたのに、まさか……ふ、踏まれなかったのか? 全部避けたのか?」
私は自分の身体に付いた土埃をパンパンと払いながら――
「めちゃくちゃ踏まれたよ。どんどん地中に押し込められていっちゃったから、今土魔法を使って出て来たところよ。全くこんなに土だらけにして……」
土埃が晴れてよく見ると、私が埋まっていた部分、つまり彼女が地団駄を踏んでいた辺りの地面が広範囲に大きく陥没していた。
普通の身体だったら肉片どころか血痕すら残ってないかもしれない。
「ちょうど良いや、土に埋まって汚れちゃったから水で洗い流してもらえない? あなた水得意でしょ?」
こんな冗談も今の彼女には届かず。
「な、何なんだお前……? 本当にこの世の生物なのか?」
、表情に動きの少ないドラゴンの顔にも、恐怖感のようなものが表れているのが分かる。それだけ私の存在は異質なのだろう。
「私には物理攻撃も魔法攻撃もほとんど効かないからね。四トンに踏まれてもどうということはないの」
「………………」
ブルードラゴンは、しばらく無言になった後、背中に生えた巨大な翼を使って猛スピードで上空へ飛んで行く。
勢いを付けて上空から突進攻撃でもしてくるのかと空を見上げていたが、一向に降りて来ない。
「…………………………あれ? もしかしてこれって……逃げたっ!?」
突然この場から離脱されたため、数秒呆気に取られてしまった。
「……まあ、さっき森賊全員にマーキングしておいたから逃がさないけど」
「彼らはまだ生きてるわ」
「生きてる? あ……あはははは、自分で斬っておいて? 殺してないという自分への言い訳かい? あれだけ派手に刀で斬り伏せておいて、あれだけ派手に血しぶきが舞って、生きてるわけないだろう? 中には左肩から右腰まで真っ二つにしたやつもいるのに? 冗談はよしなよ」
「仮に死んでいたとしても、遺体が流されたら弔うこともできないじゃない! 仲間を弔ってやろうという気は無いの?」
「無いね。部下なんて下僕以外の何物でもない。使い捨ての手駒だよ。死んだらまた補充すれば良いだけさ」
同じドラゴンでもフレアハルトとは真逆の考え方ね。彼は自分の命を差し出して一族全員を助けようとしたのに…… (第43話参照)
「……クズね……」
「何とでも言うが良いさ、アタシは今までこういう生き方をしてきた! アタシさえ生きていれば何度でも立て直せる。アタシだけが生きてるのが重要なのさ! …………敵の死体まで守ろうとして、そんなに他人の命が大事かい?」
「私と関わりのある命以外大事ではないわ。正直あなたたちみたいな悪いヤツらは死のうがどうなろうが興味もないし、できることなら一生涯関わりたくもない。でも私の目の前で死ななくても良い、私の寝覚めが悪い!」
「キャハハハ! 自分で斬り殺しておいてそれを言う? お前さんだって十分身勝手じゃあないかい!」
だから死んではいないって!
「そいつらが生きているか死んでるかは知らないが、それなら死体が流れない方法でお前を殺してやるよ。津波で死んだ方が良かったと思うくらい、お前自身が惨たらしい死にざまになるだろうけどねぇ! ≪セヴァレンス・アクア≫!!」
という魔法を使ったものの、何か飛んでくるわけでもなく、変化も無し。
と思ったら、魔法が当たってから気が付いた。
左肩から右腰にかけて強い水が当たって水しぶきになっている。どうやら発射されたのが極細に圧縮された水で、当たるまで気付かないくらい細かったらしい。要は水圧のカッターをより細くしたもの。
「さて、切った範囲が小さすぎて気付いてないだろうけど、今お前の身体は見えない水のカッターで真っ二つになった。まだ細胞が繋がっているから死んでないが、一歩でも動けばたちまち細胞の結びが外れて上半身から崩れ落ちるよ」
やっぱりそういう類の魔法だったか。
さて、ここでちょっと考えなければならないことがある。
私はここで“身体を動かすことができるかどうか”ということ。
もし彼女の水レベルがフレアハルトと同じように11だった場合、私は気付かぬうちに袈裟掛けに切断されていることになる。一歩でも動いたら彼女の言うように上半身が滑り落ちて絶命するだろう。
でも、もし水レベルが11ではなかった場合、私には一切効き目が無いから動いて良いことになる。
動かなければ死なないけど、動かなければ私に効果があるかどうかも見分けられない。
さて、どうしようか?
とりあえずカマかけてみるか。
「動かなかったら切断された身体はくっ付くの?」
「そうだねぇ、細胞の切断面がかなり綺麗だから二時間ほど直立不動を保っていればくっ付くかもねぇ」
「じゃあ、このまま動かなければ見逃してくれるってこと?」
「そんなことは一言も言っていないじゃあないか。これからお前はアタシの放つ水流弾を浴びて、上半身が崩れ落ちるんだよ!」
「最初から助ける気は無いってわけね」
「アタシをバカにしたヤツは生かさない。直前まで恐怖を与えて最後の希望も摘み取るのさ」
「性格最悪ね……」
「さあもっと恐怖しな! もっと悲痛の顔を見せな! 早く『助けて』と懇願しな! もうすぐそこに死が迫っているよ? キャハハハハ!」
「じゃあ、わかった。どちらにしても死ぬ運命なら腹は決まったわ」
右手を勢い良く振り上げる。
「バカだねぇ、そんな勢い良く動けば上半身は崩れてぇ――」
何も起こらない! 思った通りコイツはレベル11の能力を持っていない!
身体に当たった時に水しぶきを上げていたから切断できていないだろうと思っていた。
「――崩れて…………どうした!? 何で上半身が滑り落ちない!?」
「さあ、今度はあなたが覚悟する番よ」
「亜人ごときがドラゴンであるこのアタシを倒せるもんか! ならば直接刺し殺してやるよ! ≪アイスランス≫!」
水だけじゃなく氷も使えるのか!
「アタシは水に特化したドラゴンだけど、氷が使えないわけじゃない、コイツを喰らって串刺しになりな!」
と投げつけて来たのは槍のように鋭い氷の塊。
私はその場から微動だにせず、氷の槍を胴体で受ける。
「キャハハハハハ! どてっ腹に直撃だ! 確実に死んだ! キャハハハハハ……ハハ……は?」
氷の槍は私に衝突後、粉々に砕け散った。
「く、砕けた……? あの巨大な氷塊が? あの大きさの氷塊を喰らえば、アタシたちドラゴンのウロコですら無傷で済まないんだよ!? そ、相当強力な魔法障壁を持ってるようだね……だったら直接物理的に叩き潰してやるだけさ!」
その巨体に似合わぬ素早さであっという間に間合いを詰められ、ぶん回した尻尾を叩きつけられる!
そのまま勢いよく森の中を吹き飛ばされ、木々を何本かなぎ倒して止まった。
「あ~、ビックリした! キャノンエラテリウムの種大砲より吹き飛ばされたかも」
などと仰向けのまま呑気に構えていたところ、上空から巨大な身体が降ってくるのが見える。
「ゲッ、あの巨体で踏みつける気!?」
そのまま全体重をかけて踏みつけられた。
「キャハハハハ! 死ね死ね死ね死ね!」
その後、なおもドスンッ!ドスンッ!ドスンッ!と地響きが起こるほどの地団駄を喰らう。
「ドラゴンの体重は四トンを超えるんだ! アタシの全体重を乗せたプレスなら、お前がどれほど頑丈でも生きてられないだろぉ?」
しばらく両前足で地団駄を踏み、踏みしめられる度に私は地中の下の方へ下の方へと埋まっていく。
……
…………
………………
「ハァハァハァ……これだけ踏めば……流石に跡形も残っていないだろうさねぇ」
地団駄が終わるまで地中で大人しくしていたところ、徐々に地表から伝わってくる振動も収まってきた。
そろそろ地上に出るか。
そして土埃が晴れて、ブルードラゴンの前に姿を現すと――
今まで笑い声を上げて私を踏んづけていた顔が、驚愕の表情に変わっていく。
「な……何で……? あ、あれだけ踏みつけたのに、まさか……ふ、踏まれなかったのか? 全部避けたのか?」
私は自分の身体に付いた土埃をパンパンと払いながら――
「めちゃくちゃ踏まれたよ。どんどん地中に押し込められていっちゃったから、今土魔法を使って出て来たところよ。全くこんなに土だらけにして……」
土埃が晴れてよく見ると、私が埋まっていた部分、つまり彼女が地団駄を踏んでいた辺りの地面が広範囲に大きく陥没していた。
普通の身体だったら肉片どころか血痕すら残ってないかもしれない。
「ちょうど良いや、土に埋まって汚れちゃったから水で洗い流してもらえない? あなた水得意でしょ?」
こんな冗談も今の彼女には届かず。
「な、何なんだお前……? 本当にこの世の生物なのか?」
、表情に動きの少ないドラゴンの顔にも、恐怖感のようなものが表れているのが分かる。それだけ私の存在は異質なのだろう。
「私には物理攻撃も魔法攻撃もほとんど効かないからね。四トンに踏まれてもどうということはないの」
「………………」
ブルードラゴンは、しばらく無言になった後、背中に生えた巨大な翼を使って猛スピードで上空へ飛んで行く。
勢いを付けて上空から突進攻撃でもしてくるのかと空を見上げていたが、一向に降りて来ない。
「…………………………あれ? もしかしてこれって……逃げたっ!?」
突然この場から離脱されたため、数秒呆気に取られてしまった。
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