建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

文字の大きさ
上 下
326 / 544
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏

第321話 vsマンイーター その2

しおりを挟む
 トリニアさんが木々たちの声を聞いてくれたお蔭ですぐに二体目のマンイーターが見つかった。身体に花の咲いた個体。恐らく雌と思われる。花で雄とか雌とか不思議でしかないが、雌雄あるというので、多分雌なんだろう。
 が、すでに腹 (茎)の中に二人の影。飲み込まれてしまっているらしい。

「ロクトス! ナナトス!」

 幸いにも中の様子がシルエットとして見えていて、もがいている様子から生きてはいるらしいことは分かった。
 でも、早く救い出さないとドロドロに溶けてしまう!
 かと言って、さっきのように炎で焼尽なんてしたら、中の二人が焼け死んでしまうし……

「と、とりあえず水を流し込んで中の強酸を希釈させましょう!」

 強酸の樹液を薄めるため、ルイスさんがマンイーターの頭上から水魔法を放つも、何かに弾かれて中には入らない。

「どういうこと!?」

 よく見ると口の部分に蓋がされている。さっき牙だと思っていたギザギザした部分は、獲物を捕らえて逃さないための蓋の役割をするものだったらしい。
 マズイマズイマズイ! 早くしないと溶かされちゃう!
 そうだ!

「二人ともナイフ使って中から出られない?」

 二人に自力で脱出できないか、それとなく聞いてみるものの……液体の中にいるためこちらの声は聞こえないのか、動きに変化が無い。
 と言うか……ロクトスは既にナイフを使って脱出を試みてるようにも見える。あの中が硬いのか、それとも別の要素があるのか中から切り裂いて出てくる様子は無い。
 この二人の行動の変化の無さに、自分の頭からサーッと血の気が引くのが分かった。

 マズイマズイマズイ!! 早くしないと溶ける前に溺れる!
 急いで物質魔法で刀と鞘を作る。職人の打ったものと比べれば遥かに見劣りするが、ある程度切れれば良い! 確か私の刀の使用レベルも10だから達人級の動きができるはず! (第7話のステータス欄参照)

 前方へと跳躍し、ロクトスとナナトスのシルエットがあるところより、かなり上の部分を真一文字に切り裂いた。
 留め金の役割をしていた口の部分が無くなったため、マンイーター自身の体内にある液体の重さに耐えきれず、大量にこぼれ出し、それに呼応するように身体が崩壊。
 ロクトスとナナトスが中から転がり出て来た。

「ブハァ……!!」
「ガハッ!! ゲホッ!!」
「ロクトスさん! ナナトスさん! 大丈夫ですか!?」
「つ、捕まった時に咄嗟に息止めたから何とか溺れずに済んだッス……」
「……同じく……」
「でもそのままにしておくと徐々に肉が溶けだしてしまうので、すぐ水で洗ってください」
「そ、そうなんスか!? あの液体怖えぇッスね!!」
「全身浸かれる水があれば良いのですが……特に鼻の中とか耳の中とか、ちゃんと洗い流しておかないと……」
「……何か身体がヌルヌルする……」
「多分皮膚の表面が溶けてヌルヌルになってるんじゃない?」
「うぅ……そういえば身体中ヒリヒリして痛いッス……」
「……服も大部分溶かされた……」
「おわぁ!! 腕の産毛が無くなってるッス! まさか髪の毛も!?」
「い、今のところは大丈夫よ。でも早く洗わないと抜け落ちるかもね」
「ひぃ~~!!」

 トロル族は、毒には強い耐性があるけど、酸にはあまり耐性無しか。
 やっぱりケルベロスの口内細菌を中和したのは正解だった。 (第28話参照)
 とりあえず、早く身体を洗わないと溶けてしまう。

 土魔法で囲いを作り、その中を水で満たして即席で洗い場を作った。

「あなたたちナイフ持ってたよね? それで切り裂いて出て来られなかったの?」
「……何度も試した……けど、中がヌルヌルしてて全然刃が刺さらなかった……ナイフ程度じゃ中から切り裂いて出るのは難しいと思った方が良い……刃渡りがもっとあれば違う結果だったかも……」
「まあ無事で良かったわ。でもそのままだと溶けてしまうから、さっさと身体を洗い流して。今洗い場作ったから」
「ありがてぇッス!」
「……アルトラ様、ありがと……」

 『亜人を好んで食べる』って辺り、あの液体の中には血とか肉とか混じってる可能性があるし、感染症とか大丈夫なのかとか気になるけど……まあ病気知らずの彼らなら多分大丈夫か。
 それに消化液で滅菌されて無菌の可能性だってあるし。

 二人が身体を洗い終わるまで小休憩。
 今後出番があるかどうか分からないが、作った刀は亜空間収納ポケットに放り込んだ。

   ◇

「身体はサッパリしたッス……でも服がビリビリになちゃったッスけど……」
「町に買いに戻るのも面倒だし、私が修復するよ」
「アルトラ様、そんなことも出来るんですか!?」

 トリニアさんに驚かれた。

「まあ、一度見ていてイメージはし易いので、似たような服を再現することは可能だと思います。細かいところに差異はあるかもしれませんが」

 創成魔法の便利なところね。
 ということで、服の破れた部分を掴んで……ハイ修復した!

「いや~、アルトラ様便利ッスね」
「……ホント、便利……」

 多分素直に褒めてるんだろうけど、『便利』って言われると使われてる気がする……まあ便利なんだろう。それは自分でも認めてるし。
 悪気は感じないし、一応敬意は感じるからプラマイゼロかな。

「ん? ポケットの穴が半分くらい塞がってるッス。修復をお願いするッス」
「そんなのナイフで切れば良いじゃん」
「そんなことしたら後でほつれるじゃないッスか!」

 村が発展して、贅沢になったなコイツら……生活水準が上がると贅沢になる。これは人型生物の性なのかな。

「……ここの紋様、前と違ってるけど……」
「そこは別に良いんじゃない? 機能と関わりが無いし。気に入らなかったら、後で自分で修復して」

 流石に細かい紋様までは覚えていない。そこまで記憶力良くはない。

「マンイーターの討伐、ありがとうございました。では、元通りになったということで、次のキャンプ地を目指しましょう」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

そんなの知らない。自分で考えれば?

ファンタジー
逆ハーレムエンドの先は? ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

処理中です...