321 / 487
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第316話 エルフと紋章術学
しおりを挟む
「ところで、初代マモンがエルフだったのに、現在の首都にはエルフが住んでないんですか? 前代までのマモンはエルフだったのに、今代のマモンさんは木の精霊なんですよね?」
「いえ、普通に住んでますよ。現在首都はエルフほか亜人たち、獣人、精霊がごちゃ混ぜで暮らしてるような状態です。ただ首都は機械が入ってきたり、電気を利用したりするようになってきたので、その生活に合わない自然のままに暮らしたいエルフたちが、別の国を興して移住したという感じでしょうか。エルフの国とは別に獣人の国もありますが、似たような境遇で出来ました」
「機械とか電気とかってことは……分裂したのはここ数十年くらいの間てことですか?」
「いえ、もう何百年も前ですよ。首都は機械を使わなかった時代でも、文明的には一歩進んだ生活をしていたため、それに合わない方々が出て行って国を作りました。恐らくですが魔法学にも種類があって、魔術学、紋章術学、呪いなどがあり、彼らはそれらに精通しているため科学や機械文明との相性が悪かったのかもしれません」
あ~、これは何となく分かるな。地球でも科学とスピリチュアルなことは相性悪いって感じがするし。
「いがみ合ってるというわけではありませんし、現在も交流や交易がありますので属国扱いなんですが、文明的な生活、特に機械を嫌う方は多いですね。魔道具作りにも長けていて、機械的な作業も紋章術学を駆使してこなしてしまうので」
なにそれちょっと見てみたい!
要は、紋章術学のポジションを機械に取って代わられるってのが嫌ってことか。何と言うかちょっと……狭量?
「紋章術学ってのはどういったものなんですか?」
「平たく言ってしまえば……そうですね……“魔道具を作るための技術”というところでしょうか。紋章術を書き記し、魔力を付与したものに命令を与えることができます。例えば『〇〇が△△になるまで□□を続けろ』とか『〇〇を△△したら□□を起動しろ』とか、そういう命令をするのが紋章術学です。簡単な魔道具ならお土産としても各地で売られていますので、もしかしたら見たことがあるかもしれません」
「……え~と……例えば“魔力を流し込んだら水が出るようになるジョウロ”とか、“魔力を流し込んだら火魔法が使えない人でも火が出せるライター”とか?」
「そうですね。そんな感じの」
あ~、エレアースモの国立博物館にあったお土産みたいなものを作る技術ってことか。 (第276話参照)
「これを利用することでゴーレムという巨大な石人形を作ったりでき、彼らはそれを利用して自分たちの町を守らせたり、労働に用いたりしています」
え!? ゴーレムって魔術とは違う系統だったのか……
「もちろんもっと高度なものはありますし、古代の技術の中にはこれを利用して形を変える家などもあるそうですよ。確か……俗に“ダンジョン”とか言われてるとか。ただ、術式が複雑過ぎて、現在のエルフで再現しようとする者はいないそうですが」
それは凄い。ゲームの『トルヌコの不思議のダンジョン』を現実にしたかのような建造物ってことか。
勝手に形を変えるダンジョン……私が使う創成魔法では作れそうもない。
コンピュータープログラミングのような魔法技術ね。
「そういえばアルトラルサンズでも古代の魔道具が発掘されるんでしたよね? 畑を拝見しましたがゴーレムのようなものを見ました。古代からあのような技術があったのですね!」
「そそそそ、そうですね! あのゴーレムを発掘してから、獣に作物を狙われなくなって重宝しています!」
意図しないところからいきなり球が飛んできたから慌ててしまった……
しかし、魔道具って『紋章術』っていう文字が書かれているものなのか……私の作った魔道具には文字なんか書かれてないわ。
書いておかないとマズイけど……困ったな……どれがどんな文字なのか分からない……カイベルに聞いておくか。
でも、元々動く魔道具に、更に紋章術なんか書き足したら二重に動作することになっちゃうんじゃ……? まあ帰ってから考えることにしよう。一応紋章術が必要なのかどうかも聞いておくか。
「魔道具作るには紋章術というものが必要なんですか?」
「作る方法も紋章術だけではありませんので、別の方法で作ってる方もいますよ。ただ紋章術は雛型として作ったものを当てはめられるので、修得さえ出来れば簡単な魔道具ならすぐに作れるようになると思います」
あ、そうなのか。
じゃあ私が作った魔道具に紋章刻む必要は無いか。やらなくてセーフ!
「余談ですけど、首都に住む者からはエルフヴィレッジに住む者を真のエルフという俗称で呼ばれています」
「知り合いにエルフは気難しいって聞きましたけど、それって……」
「トゥルーエルフのことではないでしょうか? 首都住まいのエルフはそこまで排他的ではないと思います。ちなみに首都や第二首都にいるエルフは首都以外から都市エルフと呼ばれていますね」
「へぇ~」
外から聞くのと中から聞くのでは大分情報が違うわね。
フィンツさんが言ってた「気難しい」ってのは、もう大分古い情報ってことかな?
フレデリックさんはあの口ぶりからするとトゥルーエルフの出身なのかも?
「でも精霊であるトリニアさんたちは、機械文明を受け入れてるんですね。最も自然や魔法に近い存在なのに……」
「それは亜人側の主観に他ならないですね。確かにわたくしたち精霊は生態としては自然や魔法に近い存在ですが、魔界で受肉して生活する高位精霊たちは、亜人の習慣に興味を持ったり憧れたりして、その生活を選ぶので科学や機械や仕組みを知るのは面白いのですよ。そもそも亜人に興味の無い精霊は受肉せずに自然と一体となって生活を送りますから」
「精霊って『自然を壊すな!』ってイメージだったんですけど……」
「そういう方々は受肉せずに聖域とか霊域のような魔力の濃い場所でひっそりと暮らしますね。滅多に人前には出て来ませんし、自身の領域を侵されるのを激しく嫌います。ただ、敬意を持ってその場を利用する限りは、許してくれる精霊も多いですよ。それすら嫌う方はそもそも魔界へは来ませんね」
精霊って自然破壊に関して厳しいイメージだったから、トリニアさんのような考えの精霊もいるってのはちょっと驚きだわ。精霊も考え方が人それぞれなのね。
「そろそろ小屋に着きますので、今日のところはそこで一泊と致しましょう」
「この森の中に小屋があるんですか?」
「はい、何ヶ所か小屋が立っている場所があり、道中宿泊する施設として利用されています」
広大な森林地帯だから、小屋なんて無いと覚悟していたけど、休息できる場所は必要なのね。
「いえ、普通に住んでますよ。現在首都はエルフほか亜人たち、獣人、精霊がごちゃ混ぜで暮らしてるような状態です。ただ首都は機械が入ってきたり、電気を利用したりするようになってきたので、その生活に合わない自然のままに暮らしたいエルフたちが、別の国を興して移住したという感じでしょうか。エルフの国とは別に獣人の国もありますが、似たような境遇で出来ました」
「機械とか電気とかってことは……分裂したのはここ数十年くらいの間てことですか?」
「いえ、もう何百年も前ですよ。首都は機械を使わなかった時代でも、文明的には一歩進んだ生活をしていたため、それに合わない方々が出て行って国を作りました。恐らくですが魔法学にも種類があって、魔術学、紋章術学、呪いなどがあり、彼らはそれらに精通しているため科学や機械文明との相性が悪かったのかもしれません」
あ~、これは何となく分かるな。地球でも科学とスピリチュアルなことは相性悪いって感じがするし。
「いがみ合ってるというわけではありませんし、現在も交流や交易がありますので属国扱いなんですが、文明的な生活、特に機械を嫌う方は多いですね。魔道具作りにも長けていて、機械的な作業も紋章術学を駆使してこなしてしまうので」
なにそれちょっと見てみたい!
要は、紋章術学のポジションを機械に取って代わられるってのが嫌ってことか。何と言うかちょっと……狭量?
「紋章術学ってのはどういったものなんですか?」
「平たく言ってしまえば……そうですね……“魔道具を作るための技術”というところでしょうか。紋章術を書き記し、魔力を付与したものに命令を与えることができます。例えば『〇〇が△△になるまで□□を続けろ』とか『〇〇を△△したら□□を起動しろ』とか、そういう命令をするのが紋章術学です。簡単な魔道具ならお土産としても各地で売られていますので、もしかしたら見たことがあるかもしれません」
「……え~と……例えば“魔力を流し込んだら水が出るようになるジョウロ”とか、“魔力を流し込んだら火魔法が使えない人でも火が出せるライター”とか?」
「そうですね。そんな感じの」
あ~、エレアースモの国立博物館にあったお土産みたいなものを作る技術ってことか。 (第276話参照)
「これを利用することでゴーレムという巨大な石人形を作ったりでき、彼らはそれを利用して自分たちの町を守らせたり、労働に用いたりしています」
え!? ゴーレムって魔術とは違う系統だったのか……
「もちろんもっと高度なものはありますし、古代の技術の中にはこれを利用して形を変える家などもあるそうですよ。確か……俗に“ダンジョン”とか言われてるとか。ただ、術式が複雑過ぎて、現在のエルフで再現しようとする者はいないそうですが」
それは凄い。ゲームの『トルヌコの不思議のダンジョン』を現実にしたかのような建造物ってことか。
勝手に形を変えるダンジョン……私が使う創成魔法では作れそうもない。
コンピュータープログラミングのような魔法技術ね。
「そういえばアルトラルサンズでも古代の魔道具が発掘されるんでしたよね? 畑を拝見しましたがゴーレムのようなものを見ました。古代からあのような技術があったのですね!」
「そそそそ、そうですね! あのゴーレムを発掘してから、獣に作物を狙われなくなって重宝しています!」
意図しないところからいきなり球が飛んできたから慌ててしまった……
しかし、魔道具って『紋章術』っていう文字が書かれているものなのか……私の作った魔道具には文字なんか書かれてないわ。
書いておかないとマズイけど……困ったな……どれがどんな文字なのか分からない……カイベルに聞いておくか。
でも、元々動く魔道具に、更に紋章術なんか書き足したら二重に動作することになっちゃうんじゃ……? まあ帰ってから考えることにしよう。一応紋章術が必要なのかどうかも聞いておくか。
「魔道具作るには紋章術というものが必要なんですか?」
「作る方法も紋章術だけではありませんので、別の方法で作ってる方もいますよ。ただ紋章術は雛型として作ったものを当てはめられるので、修得さえ出来れば簡単な魔道具ならすぐに作れるようになると思います」
あ、そうなのか。
じゃあ私が作った魔道具に紋章刻む必要は無いか。やらなくてセーフ!
「余談ですけど、首都に住む者からはエルフヴィレッジに住む者を真のエルフという俗称で呼ばれています」
「知り合いにエルフは気難しいって聞きましたけど、それって……」
「トゥルーエルフのことではないでしょうか? 首都住まいのエルフはそこまで排他的ではないと思います。ちなみに首都や第二首都にいるエルフは首都以外から都市エルフと呼ばれていますね」
「へぇ~」
外から聞くのと中から聞くのでは大分情報が違うわね。
フィンツさんが言ってた「気難しい」ってのは、もう大分古い情報ってことかな?
フレデリックさんはあの口ぶりからするとトゥルーエルフの出身なのかも?
「でも精霊であるトリニアさんたちは、機械文明を受け入れてるんですね。最も自然や魔法に近い存在なのに……」
「それは亜人側の主観に他ならないですね。確かにわたくしたち精霊は生態としては自然や魔法に近い存在ですが、魔界で受肉して生活する高位精霊たちは、亜人の習慣に興味を持ったり憧れたりして、その生活を選ぶので科学や機械や仕組みを知るのは面白いのですよ。そもそも亜人に興味の無い精霊は受肉せずに自然と一体となって生活を送りますから」
「精霊って『自然を壊すな!』ってイメージだったんですけど……」
「そういう方々は受肉せずに聖域とか霊域のような魔力の濃い場所でひっそりと暮らしますね。滅多に人前には出て来ませんし、自身の領域を侵されるのを激しく嫌います。ただ、敬意を持ってその場を利用する限りは、許してくれる精霊も多いですよ。それすら嫌う方はそもそも魔界へは来ませんね」
精霊って自然破壊に関して厳しいイメージだったから、トリニアさんのような考えの精霊もいるってのはちょっと驚きだわ。精霊も考え方が人それぞれなのね。
「そろそろ小屋に着きますので、今日のところはそこで一泊と致しましょう」
「この森の中に小屋があるんですか?」
「はい、何ヶ所か小屋が立っている場所があり、道中宿泊する施設として利用されています」
広大な森林地帯だから、小屋なんて無いと覚悟していたけど、休息できる場所は必要なのね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
63
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる