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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第312話 vsキャノンエラテリウム その1
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みんなと離れて囮になるためにマシンガンエラテリウムの弾丸飛び交う戦場へと歩を進める。
射程距離に入ると、早速種マシンガンの集中砲火。
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン
う~~ん♪ 金属に当たるような小気味良い音。相変わらず自分の身体から発してるとは思えない音だけど。
攻撃を受けながらも全然痛くないから、まるでゲームの無敵モードをやってる気になってくる。楽しい!
マシンガンエラテリウム街道をズンズン進み、時折種の弾数を消費させるようにその場で留まって、クルクル回ったり、踊ったりして注意を引き付け、全く種が飛んでこなくなったら、その一区画の花の種が空になったとみなして、次へ歩き出す。
「…………アルトラ様、まだ俺っちたちから見える距離にいるんで、動きが気になるッスねぇ……あの花、動く者を追うって言ってたんで動きまくるのは仕方ないッスけど、一人で踊ったり回ったり反復横跳びしててバカみたいッスね……時折たくましそうな謎の動き (※)が混ざるし……」
「……ナナトスお前……それ聞かれたらまた脳天にチョップ喰らうよ……?」 (第251話参照)
「確かに……傍から見てると……」
「フフ……わたくしたちが安全に進めるように囮を買って出てくれたわけですから、そう思わず黙って見守りましょう」
「それにしてもアルトラ様ってホントに金属音がするんですね……道中半信半疑で聞いていましたが……」
(※たくましそうな謎の動き:ラジオ体操第二の男女、特に女子がやるのを恥ずかしがるあのポーズ)
◇
進んだ距離は感覚的には二百メートルってところか。トリニアさんが言っていたことが合ってるなら今半分くらいまで来たってことかな。
射出可能な種を空にしないといけないから、かなり時間がかかるわ。ここまで一時間くらいかしら? 二百メートル進むのに一時間って……牛歩にも程がある……
今思ったけど、これって人数多ければ多いほど攻撃が分散するから、一人で通行しようとすると全部の弾丸を喰らうよね。
ここを通る時には出来る限り大人数で通る方が傷が浅くて済みそうね。
◇
狙撃エリアの最後の方まで来た。
大木が目と鼻の先で終わっているから、多分ここがエリアの端のはずだけど、最後に来て異様な光景を見た。
とあるポイントから扇状に地面を抉られた線が何本も続いており、その延長線上の木々はかなりの数なぎ倒されている。
川の土手も少しだが抉られていて、このまま抉られ続ければ川の氾濫を招くかもしれない。
「何これ……どういうこと?」
その時、ドォォォンという音と共に後ろから物凄い衝撃を喰らってしまい――
……
…………
………………
――気付いた時にはなぎ倒された木々の中に居た。
「な、なに……!? ここどこ!? 何で私は寝っ転がってるの!?」
さっきまで居た場所とは明らかに様子が違う。凄く暗くはないが明るくもない場所に仰向けで倒れていた。
気付かないうちに数十メートル吹き飛ばされてしまったみたいだ。
少し記憶が飛んでいる。吹き飛ばされた時の衝撃で、多分少しの時間気絶したんだろう。痛みが無くても気絶ってするものなのね。
私が倒れていた周囲には物凄い力で抉られたような木々の残骸が沢山。
「しまった! 迷っ……ってないか」
よく見れば自分がどこから吹き飛ばされてきたのかが容易に分かる。
地面ごと抉られて草木が全く無い道が目の前に広がっているから、そっちから吹き飛ばされてきたと思われる。
「…………!?」
そしてこの場所、微かに腐敗臭がする。
目を凝らして周囲をよく見ると、なぎ倒された木々の残骸に混じって多数の生物の骨が転がっている。しかもバラバラ。
大型の獣の手足や頭蓋骨、亜人のものと思われる手足や頭蓋骨、身体のどの部分か分からない骨もある。幸いなことに比較的新しめなものは無く、ほぼ全てが骨になるまで朽ちていて、グロテスクさはあまり無い。
不思議なことに二足歩行する生物の胴体、例えば肋骨や骨盤のような部分はほとんど見当たらず、きちんとした形で残っているのは手足の骨や頭蓋骨ばかり。
どうやら何らかの強い力で吹き飛ばされた生物たちの“死体墓場”になっているようだ。
「私が吹き飛ばされる前の地点に何かあった? どうやってここへ飛ばされてきた?」
ここに居ても疑問だらけなので、戻って確認することにしよう。
◇
私が吹き飛ばされる前に居たと思われる場所まで戻って来たところ、その川の対岸に何があるか気付いてしまった。
さっきは木々の少し奥にあって暗いからよく見えなかったんだ。正面に来てみてようやく分かった。通常の三倍ほどある大きさのマシンガンエラテリウムが育っていた。
原木も他のものより二回りほど大きく見える。手前に上半身の大部分が吹き飛んでしまったらしき二本の大木の残骸があるが、恐らくこの巨大マシンガンエラテリウムの攻撃で吹き飛ばされてしまった成れの果てと思われる。
しかし花柱の形が通常のものと異なっている。通常のものが複数の穴に対し、今目の前にある巨大化したものは穴が一個だけ。
それに、通常この大木には花が複数咲いているが、対してこの巨大化したものがある大木だけは花が一輪しか咲いていない。恐らく花を咲かせるためのエネルギーの全てをこの一輪に込められているからと思われる。よく見ると葉っぱも他の木々に比べて小さめ。例え話でもなくこの花がほとんどのエネルギーを吸い取っているのかも。
「突然変異種かしら? これってどう見ても……大砲……」
この花の“マシンガンのように種を飛ばす性質”のことを考えると、目の前の巨大マシンカンエラテリウムの穴は大砲にしか見えない。
名付けるならさしずめ『キャノンエラテリウム』と言ったところか。
直後、目の前の命名:キャノンエラテリウムが大きく息を吸い込んだように膨らんだ。
「……まさか……」
その予感通り、ドオォォォンというけたたましい爆音と共に、巨大な種が撃ち出された。
巨大花は川の対岸にあるにも関わらず、その種の射出速度に成す術無く、そのまま種大砲の餌食となってさっき倒れていた地点まで再び吹き飛ばされてしまった。
……
…………
………………
「……なるほどね……あのなぎ倒された木々の中にバラバラに散らばっていた死体の数々は、この巨大な種大砲を喰らって胴体だけ綺麗に吹き飛ばされてしまった結果ってわけか……だから手足や頭蓋骨が多く散乱してたのね」
この身体でなければ即死どころかバラバラだった。ナナトスたちを置いて来て正解だったわね。
さて、あの巨大花はあと何発発射させれば弾倉が空になるのかな?
◇
その頃のナナトスたち――
「アルトラ様、遅いッスね。どれくらい経ったんスかね?」
ルイスが自分の腕を見て――
「え~と……二時間というところですね」
「何で分かるんスか?」
「腕時計ですけど……」
「アクアリヴィアにはそんなのあるッスか! うちの町にはまだ無いッス!」
「……いや、そういえばフィンツさんやトーマスさんが持ってたよ……」
「そうッスか? ロク兄、よく見てるッスね」
「……彼ら結構頻繁に時間を気にしてるよ……?」
「都会の亜人たちは時間を気にして動くことが多いですから。こうしてすぐに時間を確認できるものを身に付けているんです」
「へぇ~」
「マシンガンエラテリウムの撃ち出す種の数は多いですから、全部空にするとなるとかなりの時間がかかるかもしれませんね」
「じゃあ、まだ時間かかりそうなんで、俺っちたちちょっとその辺を探索してくるッス」
その時、アルトラが進んだ方向で大きい音がする。
ドオォォォン!!
「な、なんスか!? 凄い音ッスよ!?」
「わ、わかりません……わたくしがガイドしてた時にはこんな音が聞こえたことはありません……」
「凄い音でしたね……まるで大砲を撃ったかのような」
「……アルトラ様、大丈夫かな……」
……
…………
………………
少し経過ののち――
ドオォォォン!!
「また!?」
「な、何が行われてるんでしょう?」
「アルトラ様、死んでないッスよね……?」
ドオォォォン!!
「ななななんか怖いッスけど……大丈夫ッスよね?」
「か、確認に行きますか? 行きたい人挙手~……――」
ルイスが多数決を提案するも誰一人手を上げず……
「――で、ですよね……」
「……ここまで得体が知れないと行って確認したいとは思わない……」
「絶対死ぬ音ッス……」
「ア、アルトラ様が戻って来るまで待ちましょうか」
「でも……もし戻って来なかったら……?」
ルイスの言葉に全員サッと顔色が青くなる。
「ア、アルトラ様のあの頑丈さで死ぬわけないッスよ……」
「……し、信じて待ちましょう……一日経っても戻って来なかった場合は、わたくしが確認に行きます」
その時、アルトラが進んだ方向で今までで一番大きい轟音が聞こえる。
ドゴゴゴオオォォォォン!!
「今度は何スか!!?」
「い、今までで一番大きい音でしたね……」
「……あ、アルトラ様の向かった方向……薄っすら木らしきものが倒れていくのが見える……」
射程距離に入ると、早速種マシンガンの集中砲火。
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン
う~~ん♪ 金属に当たるような小気味良い音。相変わらず自分の身体から発してるとは思えない音だけど。
攻撃を受けながらも全然痛くないから、まるでゲームの無敵モードをやってる気になってくる。楽しい!
マシンガンエラテリウム街道をズンズン進み、時折種の弾数を消費させるようにその場で留まって、クルクル回ったり、踊ったりして注意を引き付け、全く種が飛んでこなくなったら、その一区画の花の種が空になったとみなして、次へ歩き出す。
「…………アルトラ様、まだ俺っちたちから見える距離にいるんで、動きが気になるッスねぇ……あの花、動く者を追うって言ってたんで動きまくるのは仕方ないッスけど、一人で踊ったり回ったり反復横跳びしててバカみたいッスね……時折たくましそうな謎の動き (※)が混ざるし……」
「……ナナトスお前……それ聞かれたらまた脳天にチョップ喰らうよ……?」 (第251話参照)
「確かに……傍から見てると……」
「フフ……わたくしたちが安全に進めるように囮を買って出てくれたわけですから、そう思わず黙って見守りましょう」
「それにしてもアルトラ様ってホントに金属音がするんですね……道中半信半疑で聞いていましたが……」
(※たくましそうな謎の動き:ラジオ体操第二の男女、特に女子がやるのを恥ずかしがるあのポーズ)
◇
進んだ距離は感覚的には二百メートルってところか。トリニアさんが言っていたことが合ってるなら今半分くらいまで来たってことかな。
射出可能な種を空にしないといけないから、かなり時間がかかるわ。ここまで一時間くらいかしら? 二百メートル進むのに一時間って……牛歩にも程がある……
今思ったけど、これって人数多ければ多いほど攻撃が分散するから、一人で通行しようとすると全部の弾丸を喰らうよね。
ここを通る時には出来る限り大人数で通る方が傷が浅くて済みそうね。
◇
狙撃エリアの最後の方まで来た。
大木が目と鼻の先で終わっているから、多分ここがエリアの端のはずだけど、最後に来て異様な光景を見た。
とあるポイントから扇状に地面を抉られた線が何本も続いており、その延長線上の木々はかなりの数なぎ倒されている。
川の土手も少しだが抉られていて、このまま抉られ続ければ川の氾濫を招くかもしれない。
「何これ……どういうこと?」
その時、ドォォォンという音と共に後ろから物凄い衝撃を喰らってしまい――
……
…………
………………
――気付いた時にはなぎ倒された木々の中に居た。
「な、なに……!? ここどこ!? 何で私は寝っ転がってるの!?」
さっきまで居た場所とは明らかに様子が違う。凄く暗くはないが明るくもない場所に仰向けで倒れていた。
気付かないうちに数十メートル吹き飛ばされてしまったみたいだ。
少し記憶が飛んでいる。吹き飛ばされた時の衝撃で、多分少しの時間気絶したんだろう。痛みが無くても気絶ってするものなのね。
私が倒れていた周囲には物凄い力で抉られたような木々の残骸が沢山。
「しまった! 迷っ……ってないか」
よく見れば自分がどこから吹き飛ばされてきたのかが容易に分かる。
地面ごと抉られて草木が全く無い道が目の前に広がっているから、そっちから吹き飛ばされてきたと思われる。
「…………!?」
そしてこの場所、微かに腐敗臭がする。
目を凝らして周囲をよく見ると、なぎ倒された木々の残骸に混じって多数の生物の骨が転がっている。しかもバラバラ。
大型の獣の手足や頭蓋骨、亜人のものと思われる手足や頭蓋骨、身体のどの部分か分からない骨もある。幸いなことに比較的新しめなものは無く、ほぼ全てが骨になるまで朽ちていて、グロテスクさはあまり無い。
不思議なことに二足歩行する生物の胴体、例えば肋骨や骨盤のような部分はほとんど見当たらず、きちんとした形で残っているのは手足の骨や頭蓋骨ばかり。
どうやら何らかの強い力で吹き飛ばされた生物たちの“死体墓場”になっているようだ。
「私が吹き飛ばされる前の地点に何かあった? どうやってここへ飛ばされてきた?」
ここに居ても疑問だらけなので、戻って確認することにしよう。
◇
私が吹き飛ばされる前に居たと思われる場所まで戻って来たところ、その川の対岸に何があるか気付いてしまった。
さっきは木々の少し奥にあって暗いからよく見えなかったんだ。正面に来てみてようやく分かった。通常の三倍ほどある大きさのマシンガンエラテリウムが育っていた。
原木も他のものより二回りほど大きく見える。手前に上半身の大部分が吹き飛んでしまったらしき二本の大木の残骸があるが、恐らくこの巨大マシンガンエラテリウムの攻撃で吹き飛ばされてしまった成れの果てと思われる。
しかし花柱の形が通常のものと異なっている。通常のものが複数の穴に対し、今目の前にある巨大化したものは穴が一個だけ。
それに、通常この大木には花が複数咲いているが、対してこの巨大化したものがある大木だけは花が一輪しか咲いていない。恐らく花を咲かせるためのエネルギーの全てをこの一輪に込められているからと思われる。よく見ると葉っぱも他の木々に比べて小さめ。例え話でもなくこの花がほとんどのエネルギーを吸い取っているのかも。
「突然変異種かしら? これってどう見ても……大砲……」
この花の“マシンガンのように種を飛ばす性質”のことを考えると、目の前の巨大マシンカンエラテリウムの穴は大砲にしか見えない。
名付けるならさしずめ『キャノンエラテリウム』と言ったところか。
直後、目の前の命名:キャノンエラテリウムが大きく息を吸い込んだように膨らんだ。
「……まさか……」
その予感通り、ドオォォォンというけたたましい爆音と共に、巨大な種が撃ち出された。
巨大花は川の対岸にあるにも関わらず、その種の射出速度に成す術無く、そのまま種大砲の餌食となってさっき倒れていた地点まで再び吹き飛ばされてしまった。
……
…………
………………
「……なるほどね……あのなぎ倒された木々の中にバラバラに散らばっていた死体の数々は、この巨大な種大砲を喰らって胴体だけ綺麗に吹き飛ばされてしまった結果ってわけか……だから手足や頭蓋骨が多く散乱してたのね」
この身体でなければ即死どころかバラバラだった。ナナトスたちを置いて来て正解だったわね。
さて、あの巨大花はあと何発発射させれば弾倉が空になるのかな?
◇
その頃のナナトスたち――
「アルトラ様、遅いッスね。どれくらい経ったんスかね?」
ルイスが自分の腕を見て――
「え~と……二時間というところですね」
「何で分かるんスか?」
「腕時計ですけど……」
「アクアリヴィアにはそんなのあるッスか! うちの町にはまだ無いッス!」
「……いや、そういえばフィンツさんやトーマスさんが持ってたよ……」
「そうッスか? ロク兄、よく見てるッスね」
「……彼ら結構頻繁に時間を気にしてるよ……?」
「都会の亜人たちは時間を気にして動くことが多いですから。こうしてすぐに時間を確認できるものを身に付けているんです」
「へぇ~」
「マシンガンエラテリウムの撃ち出す種の数は多いですから、全部空にするとなるとかなりの時間がかかるかもしれませんね」
「じゃあ、まだ時間かかりそうなんで、俺っちたちちょっとその辺を探索してくるッス」
その時、アルトラが進んだ方向で大きい音がする。
ドオォォォン!!
「な、なんスか!? 凄い音ッスよ!?」
「わ、わかりません……わたくしがガイドしてた時にはこんな音が聞こえたことはありません……」
「凄い音でしたね……まるで大砲を撃ったかのような」
「……アルトラ様、大丈夫かな……」
……
…………
………………
少し経過ののち――
ドオォォォン!!
「また!?」
「な、何が行われてるんでしょう?」
「アルトラ様、死んでないッスよね……?」
ドオォォォン!!
「ななななんか怖いッスけど……大丈夫ッスよね?」
「か、確認に行きますか? 行きたい人挙手~……――」
ルイスが多数決を提案するも誰一人手を上げず……
「――で、ですよね……」
「……ここまで得体が知れないと行って確認したいとは思わない……」
「絶対死ぬ音ッス……」
「ア、アルトラ様が戻って来るまで待ちましょうか」
「でも……もし戻って来なかったら……?」
ルイスの言葉に全員サッと顔色が青くなる。
「ア、アルトラ様のあの頑丈さで死ぬわけないッスよ……」
「……し、信じて待ちましょう……一日経っても戻って来なかった場合は、わたくしが確認に行きます」
その時、アルトラが進んだ方向で今までで一番大きい轟音が聞こえる。
ドゴゴゴオオォォォォン!!
「今度は何スか!!?」
「い、今までで一番大きい音でしたね……」
「……あ、アルトラ様の向かった方向……薄っすら木らしきものが倒れていくのが見える……」
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