建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第12章 臨時会談編

第294話 臨時会談を終えて……

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 各国それぞれ退室する中、司会進行のカイムさんに声をかけられた。

「アルトラ様、中立地帯に変わる新しい国の名前を考えて七大国会談運営連盟までお知らせください。わたくしどもから新しい国が出来たことを各国へと通達致します」

 え!? 今度は国の名前!?

「そ、それは今まで通り中立地帯ではダメなんですか?」
「今後は“中立地帯”ではなくなりますので、やはり新たな国の名前を付けるのが筋かと思います」
「わ、わかりました」

 そうか、アルトレリアは町の名前だから、新しく国が興るってことは国の名前も必要になるわけか。

   ◇

 会談終了後――

「それでさ、ベルゼ――」

 レヴィに会談後に話しかけられた。

「――あんな根も葉もないこと言っちゃって良かったの? ゼロ距離ドアってあなたが作ったものでしょ?」
「……バレた時にバレた時なりの対応をすれば良いのよ。あれを作ったのが私だとバレたら、『我が国にも是非!』って話にもなりかねないからバレたくない……」
「どうして?」
「私が対応可能な範囲だけの問題で収まるなら良いけど、他国に輸出すると考えると空間魔法系の魔道具は予想が出来ないから広がり過ぎると怖い……使い方次第では一瞬で死人が出る可能性のある魔法系統だから」
「……ああ、雷の国で起こった空間魔法災害は聞いてるよ。大惨事だったらしいね。それを考えると確かに自分の手を離れた魔道具は怖いかもしれないね……」

「そういえばレヴィには私の素性がバレてるのに、『私の国にもドア作って』って言わないよね、何で?」
「だって私は現状、女王わたし専用の空間魔術師が常に二人傍に付いてくれてるから。固定して使うドア貰っても仕方ないもの」

 た、確かに……
 今まで何で要求しないか疑問だったけど、そりゃ自由に使える空間魔術師がいるなら必要無いか。しかも彼らは私が似せて作った双方向にしか行けない『どこにでもドア“もどき”』じゃなくて、世界中どこへでも自由に行けるリアル仕様の『どこにでもドア』だし。
 女王専属の空間魔術師なのだから訪れた場所の数を考えれば、私より遥かにいろんな国へ行けるだろう。

「国民のために設置したいとかは考えなかったの?」
「国民のことは常に考えてるよ。でもドア一組あってもねぇ……どこに設置するのが最も効果的かとか、国内のどこを国民が最も多く利用してるかとか、そういう面倒くさいこと考えなきゃいけないしね。仮に最も国民が利用する場所に設置したとしても、そこを利用しない人たちからは不満が上がるだろうし。最も多く利用する場所が分かったとしても、じゃあそれと対となるドアをどこへ設置するかって話にもなるよね。ドアを十組も二十組も創ってくれるって言うなら効果があるかもしれないけど、一組あったところで国民の暮らしは大して変わらないしね」

 う……物凄くよく考えてるわ……
 我が家から町へ一歩で行くドアを作ってる辺り、私は私利私欲のために使っているのかな……?
 う~ん……アレ作ったそもそもの理由って旧トロル村の時に私の家に走って来たニートスとサントスが「私の家まで遠すぎる!」ってことがあって設置したんだっけか。じゃあ一応町の役に立ったってことで良いのかな? (第22話参照)

「それにもう『疑似太陽』を貰ったから、それだけでもベルゼは我が国にかなりの貢献をしてくれたと考えてるよ」
「そう考えてもらえてるなら良かったよ」
「ところで、もしゼロ距離ドアが明確にバレてしまったら、研究のため譲って欲しいって言ってきたりするかもよ? そうしたらどうする?」
「現時点では分からない……まあ今回の件で遺跡から出土したってことになっているから、調べられて未知の何かが出て来ても知らぬ存ぜぬで通せるんじゃないかと踏んでいる……」
「ふ~ん……まあそれを研究して、そこから空間魔法系の魔道具作りに対してヒントを得られればその国に対しては儲けものよね。それほど深刻に考えるほどのものでもないか」

 だと良いんだけど……

「それじゃ、今回は簡易会談ってことで、宿泊施設は押えてないらしいからこのまま帰るね」
「うん、今回も色々と先導してくれてありがとう。ホントに助かるよ」

 お抱えの空間魔術師・ルイスさんの転移魔法で帰って行った。

   ◇

「今回は殺伐としたものが無くて良かったな。死と隣り合わせの危険も無かったしな……」

 多分、サタナエルに歯向かった時のことを思い出してるんだろうな…… (第232話参照)

「そうね、争いに発展しそうなルシファーとサタナエルがいなかったことが大きいかな。あの二人、特にサタナエルは血の気が多いから、言い争いに発展してた可能性は大いにあるからね」
「ただ、何もせんでも疲れるなこの場は。今回は魔王がレヴィアタンしかいなかったから、威圧感も大分弱めだったが……」
「あなたでも気を使うのね」
「ここに来ると我より強い者ばかりだからな。自分がいかに井の中の蛙だったかを思い知らされる。そこに立っているだけで神経すり減らすことになるな」
「まあ、アルトレリアに帰ったらゆっくり休んでよ」

 そういえば、会談の最終盤にマルファスさんが口ごもって何か言ってたな。カイベルに聞いておくか。

「カイベル、マルファスさんが最後何か言ってたみたいだけど、何言ってたの?」
「まだアルトラ様にお話しする時ではないようですので、もう少し状況の変化が必要なようです」
「それは私に関係するってことなの?」
「さあ?」
「『さあ?』って……そこは分からないの?」
「以前にもお話しましたが、私は未来が見えているわけではありませんし、他人の心の内まで感知出来るわけではありませんので。マルファス様の口振りを考える限り、まだアルトラ様にお教えする内容ではないかと判断しました」
「あっそう……」

 何を言ったかくらいは教えてくれても良いと思うんだけど、それすらまだ言えないことってことなんだろう。秘密にすることだと主人の私にすら頑として教えてくれないから、これ以上聞いても無駄だと思う。
 時期があるものらしいし、しばらく待つか。

 私もゲートでアルトレリアへ帰還した。

「我は会議に出る必要があるのか?」
「う~ん、まあ議題にする内容は今日話し合ったことだから特別出席する必要も無いけど……」
「では我はゆっくり休ませてもらう。大分気疲れしてしまった。会議には代理でアリサに行かせる。レッドドラゴンの頭脳と言っても良いからアレにも知っておいてもらった方が良いだろ」
「わかったよ、護衛ありがとうね」
「ああ」

 フレアハルトは家へ帰って行った。

 さて、私はこれから役所で臨時の会議だ。
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