建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

文字の大きさ
上 下
293 / 548
第12章 臨時会談編

第288話 稲刈りから試食

しおりを挟む
 そして、毎日少しずつ成長促進魔法をかけつつ一週間が経過――

 成長促進魔法のお蔭で、一日で数日分進むため、あっという間に稲穂になり、収穫も間近に。
 田んぼの水は昨日の時点で抜いておいた。コンバインなどを使うわけではないから抜く必要も無いかと思ったが、移動が楽になると判断したため。
 しかし水抜きしても、一日では到底乾かないため、新たに魔道具『地面乾燥くん』を創って、明日までに地面が乾くように設置。
 また同時に稲架掛はさがけも設置しておいた。これは刈り取った稲穂をかけて干しておくためのもので、地球では木や竹を使って作られる。元々は太陽の存在しなかった魔界にある文化かどうか分からないが、刈り取った稲をしばらく干しておかなければならないのはここでもそう変わりはないはずだから似たようなものはあると思う。
 昨日これを組む時に――

『この木で組んだものは何に使うんですか?』
『それは稲架掛はさがけって言ってね、明日刈った稲をそこにかけていくの』

 ――というようなやり取りがあった。

 二週間前に水を入れて、一週間前に田植え、そして昨日には水抜きと、現実ではあり得ない目まぐるしい田植えだ。

 そして収穫予定の今日、田んぼ組のみんなには鎌を手に集まってもらった。

「さあ、一週間経って無事稲穂を付けました! 今から収穫したいと思います!」

 何気なく『無事に』という言葉を使ったが、ちゃんと稲穂になってくれて良かったと思う。成長促進魔法のさじ加減を間違えていたら、一週間前に試しに使った稲のようにきっと枯れていただろう。
 みんな各々田んぼに入っていく。

「稲って根本から切って良いんですか?」
「うん」
「切ったのは稲架掛けここに掛けていけば良いんですよね?」
「ああ、稲はそのままじゃなくて結ばないとダメ。稲を束にして、縛るための藁を二、三本抜いて切った根本を縛る。で、左右に分けて掛ける」

 縛り方、稲穂の掛け方を教え――

   ◇

 ――稲刈りも終了。

「皆さん、稲刈りご苦労様でした。あとは明々後日まで干して脱穀します」
「で、本当は稲って何日干すんですか?」
「二、三週間らしい」
「たった三日で良いんですか?」
「まあ、田んぼの中で稲架掛はさがけに干しておけば『地面乾燥くん』が一緒に乾かしてくれると思うから。では皆さん、今日はこれにて解散とします、ご苦労様でした」





 三日後――

 干した稲穂を見に行くと、良い感じに仕上がっていた。
 あとはこれを脱穀して、もみりして、精米して、そんで炊いてご飯だ!

 工房でせんきを作ってもらい、脱穀する。
 それを聞きつけたフィンツさんがわざわざ見に来た。

「懐かしいな、アクアリヴィアでもこれに似たものがあるが、こんな古い道具を見たのは久しぶりだ」
「フフ……わざわざ見に来たんですか?」
「工房が米作りのために、変わった道具を頼まれたって聞いてな。こんなのは俺が若い頃に使ってた以来だ。今じゃあ使ってるところはほとんど無いと思うぞ?」
「やっぱりアクアリヴィアでも機械なんですか?」
「そうだな、手作業でゴリゴリやるより楽だしな。おっと油売ってるわけにはいかん。じゃ、米が出来るのを楽しみにしてるよ」

 と急いで帰って行った。今発電施設建設の真っ最中だから忙しいらしい。

   ◇

 その後、神社から正月に使ったきねうすを借りてもみり、その後精米。量が少ないからときねうす使ったけど、結構面倒くさい。
 少量の稲穂をうすに入れて、きねでゴリゴリと地道にもみを剥がす。もみが剥がれたら今度は玄米のぬかと胚芽を取り除く。
 私は少し玄米が入ってる方が好きだから、そこそこそれなりの仕上がりにしようかと思ったが、試作なので私の好みを押し付けるわけにはいかないと思い、しっかり白米になるまで精米する。
 白米にまでなれば洗米して終了。

 このすぐ後に再び訪れた、フィンツさんに「あんたは空間魔法であちこち移動できるのだから、機械が無いなら機械があるところへ持って行って精米までしてもらえば楽だったんじゃないか?」と言われてしまった……
 確かに……別に手作業にこだわる必要は無かったんだ……
 「じゃあ作ってもらえませんか?」とお願いしてみたところ、「俺たちも食べるものだし良いぞ。まあ俺は手が離せないから弟子に作るよう言っておくよ。安くしてやる」ということで、精米のための機械は作ってもらえそうだ。

   ◇

 そして様々な工程を経て、白米が出来た。
 カイベルに任せていた小麦組も合流。こちらも同じように成長促進魔法を使って作ってもらった小麦。もう既に小麦粉に加工してくれてある。
 農林部門全員と何でも屋、あとハンバームちゃんにも加わってもらって、ご飯とパンの試食会に。

「う~ん……」
「どう? ハンバームちゃん」
「お米はちょっと大きさの不揃いがありますね。少ないですが割れて欠片になってしまっているものもいくつか……その所為かちょっと食感が気になりますね……でも味は悪くないです、美味しいですよ。十分生産に足ると思います」

 お米が不揃いだったり割れてしまったりは、私の成長促進魔法の加減の問題かな? もう少し長期間で育てれば問題無く育つかも。

「パンの方は問題無いです。とても美味しいですよ!」

「「「おお~~~!」」」

 流石カイベル、私とは違って成長促進魔法も絶妙な加減らしい。
 まあ、生産するにも十分と言うなら、生産地を拡大しても大丈夫そうかな。

「じゃあ、ニートス、今後は他の田んぼでの稲作もお願い」
「了解しました!」
アールシアジーメリービーメイヤも小麦の生産をお願いね」
「「「はい!」」」

「じゃあ、試作とは言え、せっかく作ったご飯とパンですので、みんなでいただきましょう!」

 そういうわけで、試食会では一応及第点ということになり、ここから米・小麦共に増産へと動き出すことになった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。

よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

処理中です...