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第12章 臨時会談編
第288話 稲刈りから試食
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そして、毎日少しずつ成長促進魔法をかけつつ一週間が経過――
成長促進魔法のお蔭で、一日で数日分進むため、あっという間に稲穂になり、収穫も間近に。
田んぼの水は昨日の時点で抜いておいた。コンバインなどを使うわけではないから抜く必要も無いかと思ったが、移動が楽になると判断したため。
しかし水抜きしても、一日では到底乾かないため、新たに魔道具『地面乾燥くん』を創って、明日までに地面が乾くように設置。
また同時に稲架掛けも設置しておいた。これは刈り取った稲穂をかけて干しておくためのもので、地球では木や竹を使って作られる。元々は太陽の存在しなかった魔界にある文化かどうか分からないが、刈り取った稲をしばらく干しておかなければならないのはここでもそう変わりはないはずだから似たようなものはあると思う。
昨日これを組む時に――
『この木で組んだものは何に使うんですか?』
『それは稲架掛けって言ってね、明日刈った稲をそこにかけていくの』
――というようなやり取りがあった。
二週間前に水を入れて、一週間前に田植え、そして昨日には水抜きと、現実ではあり得ない目まぐるしい田植えだ。
そして収穫予定の今日、田んぼ組のみんなには鎌を手に集まってもらった。
「さあ、一週間経って無事稲穂を付けました! 今から収穫したいと思います!」
何気なく『無事に』という言葉を使ったが、ちゃんと稲穂になってくれて良かったと思う。成長促進魔法のさじ加減を間違えていたら、一週間前に試しに使った稲のようにきっと枯れていただろう。
みんな各々田んぼに入っていく。
「稲って根本から切って良いんですか?」
「うん」
「切ったのは稲架掛けに掛けていけば良いんですよね?」
「ああ、稲はそのままじゃなくて結ばないとダメ。稲を束にして、縛るための藁を二、三本抜いて切った根本を縛る。で、左右に分けて掛ける」
縛り方、稲穂の掛け方を教え――
◇
――稲刈りも終了。
「皆さん、稲刈りご苦労様でした。あとは明々後日まで干して脱穀します」
「で、本当は稲って何日干すんですか?」
「二、三週間らしい」
「たった三日で良いんですか?」
「まあ、田んぼの中で稲架掛けに干しておけば『地面乾燥くん』が一緒に乾かしてくれると思うから。では皆さん、今日はこれにて解散とします、ご苦労様でした」
三日後――
干した稲穂を見に行くと、良い感じに仕上がっていた。
あとはこれを脱穀して、籾摺りして、精米して、そんで炊いてご飯だ!
工房で千歯扱きを作ってもらい、脱穀する。
それを聞きつけたフィンツさんがわざわざ見に来た。
「懐かしいな、アクアリヴィアでもこれに似たものがあるが、こんな古い道具を見たのは久しぶりだ」
「フフ……わざわざ見に来たんですか?」
「工房が米作りのために、変わった道具を頼まれたって聞いてな。こんなのは俺が若い頃に使ってた以来だ。今じゃあ使ってるところはほとんど無いと思うぞ?」
「やっぱりアクアリヴィアでも機械なんですか?」
「そうだな、手作業でゴリゴリやるより楽だしな。おっと油売ってるわけにはいかん。じゃ、米が出来るのを楽しみにしてるよ」
と急いで帰って行った。今発電施設建設の真っ最中だから忙しいらしい。
◇
その後、神社から正月に使った杵と臼を借りて籾摺り、その後精米。量が少ないからと杵と臼使ったけど、結構面倒くさい。
少量の稲穂を臼に入れて、杵でゴリゴリと地道に籾を剥がす。籾が剥がれたら今度は玄米の糠と胚芽を取り除く。
私は少し玄米が入ってる方が好きだから、そこそこそれなりの仕上がりにしようかと思ったが、試作なので私の好みを押し付けるわけにはいかないと思い、しっかり白米になるまで精米する。
白米にまでなれば洗米して終了。
このすぐ後に再び訪れた、フィンツさんに「あんたは空間魔法であちこち移動できるのだから、機械が無いなら機械があるところへ持って行って精米までしてもらえば楽だったんじゃないか?」と言われてしまった……
確かに……別に手作業にこだわる必要は無かったんだ……
「じゃあ作ってもらえませんか?」とお願いしてみたところ、「俺たちも食べるものだし良いぞ。まあ俺は手が離せないから弟子に作るよう言っておくよ。安くしてやる」ということで、精米のための機械は作ってもらえそうだ。
◇
そして様々な工程を経て、白米が出来た。
カイベルに任せていた小麦組も合流。こちらも同じように成長促進魔法を使って作ってもらった小麦。もう既に小麦粉に加工してくれてある。
農林部門全員と何でも屋、あとハンバームちゃんにも加わってもらって、ご飯とパンの試食会に。
「う~ん……」
「どう? ハンバームちゃん」
「お米はちょっと大きさの不揃いがありますね。少ないですが割れて欠片になってしまっているものもいくつか……その所為かちょっと食感が気になりますね……でも味は悪くないです、美味しいですよ。十分生産に足ると思います」
お米が不揃いだったり割れてしまったりは、私の成長促進魔法の加減の問題かな? もう少し長期間で育てれば問題無く育つかも。
「パンの方は問題無いです。とても美味しいですよ!」
「「「おお~~~!」」」
流石カイベル、私とは違って成長促進魔法も絶妙な加減らしい。
まあ、生産するにも十分と言うなら、生産地を拡大しても大丈夫そうかな。
「じゃあ、ニートス、今後は他の田んぼでの稲作もお願い」
「了解しました!」
「R・G・Bも小麦の生産をお願いね」
「「「はい!」」」
「じゃあ、試作とは言え、せっかく作ったご飯とパンですので、みんなでいただきましょう!」
そういうわけで、試食会では一応及第点ということになり、ここから米・小麦共に増産へと動き出すことになった。
成長促進魔法のお蔭で、一日で数日分進むため、あっという間に稲穂になり、収穫も間近に。
田んぼの水は昨日の時点で抜いておいた。コンバインなどを使うわけではないから抜く必要も無いかと思ったが、移動が楽になると判断したため。
しかし水抜きしても、一日では到底乾かないため、新たに魔道具『地面乾燥くん』を創って、明日までに地面が乾くように設置。
また同時に稲架掛けも設置しておいた。これは刈り取った稲穂をかけて干しておくためのもので、地球では木や竹を使って作られる。元々は太陽の存在しなかった魔界にある文化かどうか分からないが、刈り取った稲をしばらく干しておかなければならないのはここでもそう変わりはないはずだから似たようなものはあると思う。
昨日これを組む時に――
『この木で組んだものは何に使うんですか?』
『それは稲架掛けって言ってね、明日刈った稲をそこにかけていくの』
――というようなやり取りがあった。
二週間前に水を入れて、一週間前に田植え、そして昨日には水抜きと、現実ではあり得ない目まぐるしい田植えだ。
そして収穫予定の今日、田んぼ組のみんなには鎌を手に集まってもらった。
「さあ、一週間経って無事稲穂を付けました! 今から収穫したいと思います!」
何気なく『無事に』という言葉を使ったが、ちゃんと稲穂になってくれて良かったと思う。成長促進魔法のさじ加減を間違えていたら、一週間前に試しに使った稲のようにきっと枯れていただろう。
みんな各々田んぼに入っていく。
「稲って根本から切って良いんですか?」
「うん」
「切ったのは稲架掛けに掛けていけば良いんですよね?」
「ああ、稲はそのままじゃなくて結ばないとダメ。稲を束にして、縛るための藁を二、三本抜いて切った根本を縛る。で、左右に分けて掛ける」
縛り方、稲穂の掛け方を教え――
◇
――稲刈りも終了。
「皆さん、稲刈りご苦労様でした。あとは明々後日まで干して脱穀します」
「で、本当は稲って何日干すんですか?」
「二、三週間らしい」
「たった三日で良いんですか?」
「まあ、田んぼの中で稲架掛けに干しておけば『地面乾燥くん』が一緒に乾かしてくれると思うから。では皆さん、今日はこれにて解散とします、ご苦労様でした」
三日後――
干した稲穂を見に行くと、良い感じに仕上がっていた。
あとはこれを脱穀して、籾摺りして、精米して、そんで炊いてご飯だ!
工房で千歯扱きを作ってもらい、脱穀する。
それを聞きつけたフィンツさんがわざわざ見に来た。
「懐かしいな、アクアリヴィアでもこれに似たものがあるが、こんな古い道具を見たのは久しぶりだ」
「フフ……わざわざ見に来たんですか?」
「工房が米作りのために、変わった道具を頼まれたって聞いてな。こんなのは俺が若い頃に使ってた以来だ。今じゃあ使ってるところはほとんど無いと思うぞ?」
「やっぱりアクアリヴィアでも機械なんですか?」
「そうだな、手作業でゴリゴリやるより楽だしな。おっと油売ってるわけにはいかん。じゃ、米が出来るのを楽しみにしてるよ」
と急いで帰って行った。今発電施設建設の真っ最中だから忙しいらしい。
◇
その後、神社から正月に使った杵と臼を借りて籾摺り、その後精米。量が少ないからと杵と臼使ったけど、結構面倒くさい。
少量の稲穂を臼に入れて、杵でゴリゴリと地道に籾を剥がす。籾が剥がれたら今度は玄米の糠と胚芽を取り除く。
私は少し玄米が入ってる方が好きだから、そこそこそれなりの仕上がりにしようかと思ったが、試作なので私の好みを押し付けるわけにはいかないと思い、しっかり白米になるまで精米する。
白米にまでなれば洗米して終了。
このすぐ後に再び訪れた、フィンツさんに「あんたは空間魔法であちこち移動できるのだから、機械が無いなら機械があるところへ持って行って精米までしてもらえば楽だったんじゃないか?」と言われてしまった……
確かに……別に手作業にこだわる必要は無かったんだ……
「じゃあ作ってもらえませんか?」とお願いしてみたところ、「俺たちも食べるものだし良いぞ。まあ俺は手が離せないから弟子に作るよう言っておくよ。安くしてやる」ということで、精米のための機械は作ってもらえそうだ。
◇
そして様々な工程を経て、白米が出来た。
カイベルに任せていた小麦組も合流。こちらも同じように成長促進魔法を使って作ってもらった小麦。もう既に小麦粉に加工してくれてある。
農林部門全員と何でも屋、あとハンバームちゃんにも加わってもらって、ご飯とパンの試食会に。
「う~ん……」
「どう? ハンバームちゃん」
「お米はちょっと大きさの不揃いがありますね。少ないですが割れて欠片になってしまっているものもいくつか……その所為かちょっと食感が気になりますね……でも味は悪くないです、美味しいですよ。十分生産に足ると思います」
お米が不揃いだったり割れてしまったりは、私の成長促進魔法の加減の問題かな? もう少し長期間で育てれば問題無く育つかも。
「パンの方は問題無いです。とても美味しいですよ!」
「「「おお~~~!」」」
流石カイベル、私とは違って成長促進魔法も絶妙な加減らしい。
まあ、生産するにも十分と言うなら、生産地を拡大しても大丈夫そうかな。
「じゃあ、ニートス、今後は他の田んぼでの稲作もお願い」
「了解しました!」
「R・G・Bも小麦の生産をお願いね」
「「「はい!」」」
「じゃあ、試作とは言え、せっかく作ったご飯とパンですので、みんなでいただきましょう!」
そういうわけで、試食会では一応及第点ということになり、ここから米・小麦共に増産へと動き出すことになった。
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