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第12章 臨時会談編
第287話 試験的な田植えの開始
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というわけで一週間後、試験的に水を入れた田んぼで田植えが始まった。
試験的な田植えの今回は臨時で人員を雇うこともなく、農林部門田んぼ組の人員だけで行おうと思ったが、水に強くなったフレアハルトたちと、何でも屋従業員のクリューにも参加してもらった。
同時に小麦組も始動したため、R・G・Bとカイベルは小麦畑の方に行ってもらった。懇願された『ゼロ距離ドア3号』も、責任者が立ったということで創成。統括のメイフィーが移動し易いように野菜畑の近くから行けるように近くの岩にはめ込んだ。
「おお! この田んぼの周り何だか暖かい!」
「水も全然冷たくないね!」
「むしろ寒いところから入ったから良い感じに温いよ」
「こんな寒い時期に水仕事なんて……って思ってましたけど、これなら長時間でも作業してられそうです」
「『お水温めるくん』の効果凄いですね、アルトラ様」
一週間前にメイフィーだけが体験している所為かちょっとドヤ顔。
全員まだ気温が低い田んぼの外から中に入ったためか、水温も温かく感じられるらしい。
「おお……こうして水に入って作業できるようになるとは……感無量だな」
「私はもう海へも行ってますから、水に関してはフレハル様より知ってますよ」
と、レイアが『私、二人よりも水のこと知ってますよ』感を出す。
「む、そうか、我はまだあまり水に関わったことはないからな」
「わたくしもそれほど……」
「水浴びでもしてみますか、フレハル様?」
「水に関わっていないとは言っても、流石に我にもここが水浴びに適してないことくらいはわかるぞ?」
「泥だらけになりそうですしね……」
などという会話が聞こえた。
レイアは漁師 (仮)の運搬のために海へ行っているだけあり、他二人より早く水に慣れたらしい。
「それで、アルトラ、私は一とこに落ち着いて生活したことは無いから田んぼのことをほとんど知らないけど、最初は何をしたら良いんだい?」
クリューは死神という職業柄、こういった体験は初めてらしい。
その質問を聞いていた田んぼ組メンバーが傾聴する。田んぼ組とは言っても彼らにとっても初めてのことだから、右も左も分からないのである。
「田植えには等間隔で苗を植えるのが大事だから、まずは植えるポイントの目安を付けましょうか」
間隔が広いと十分な苗を植えられないし、狭いと太陽の恩恵が十分に受けられずエネルギー不足になるらしい。まあこの稲は今まで太陽が無かったところで育ってたような品種だから太陽については問題無いが、それでも間隔が狭すぎるとエネルギーを取り合ってしまって上手く育たなかったり、除草が大変だったりする、とカイベルから聞いた。
「目安ってどうやって付けるんですか?」
「これを使います!」
ジャーンという効果音が鳴りそうな感じに『六角転がし』を掲げる。
構造が簡単なので、物質魔法で作っておいた。
三十センチ四方の枠が十個、六角だから合計六十個の枠が付いた、転がして苗を植えるための目安を付ける道具。
「それは何ですか?」
「これは『枠転がし』って道具でね、等間隔にマス目を付けられるの。これで田んぼにマス目を引いて、その真ん中に苗を植えます。はい、じゃあ何でも屋の四人、四つ用意してあるからそれぞれお願い」
「力仕事か?」
「う~ん、力仕事ではないけど、重労働には変わりないかな」
「どうやって使うものなのだ?」
「田んぼに入れて転がすだけで良い。それで目安を作れるから。ああ、それと引いたマス目はなるべく踏まないように歩いて。目安が分からなくなったら意味が無いから」
「相分かった」
「「了解」」
「了解しました」
それぞれバラけてもらって、目安を作ってもらった。
◇
マス目が出来たところで、いよいよ田植え。
「じゃあ全員一列になって植えていきましょうか。前に進むと苗を踏んでしまう可能性があるから、後ろへ後ろへ植えていきます」
一列に並び全員で動作を合わせて苗を植えて行く。
「あ、苗は深く植え過ぎないようにしてね。深く植え過ぎると葉が水に潜ってしまって酸欠になって生育不良を起こすらしいから。大体二から三センチくらいの深さに植えて」
◇
みんな一丸となって田植えをしたお蔭で思ったよりも早く終わった。
「大変って聞きましたけど、割と簡単に終わりましたね」
「でもちょっと腰が痛いな」
今日はこれで終わりだけど、彼らはまだ知らない。水田は二十個ほどあるということを……
腰痛は蓄積するはず。
「今回試験的に植えたところは、私が成長促進魔法で早く収穫できるようにします」
「どれくらいかかるのでしょうか?」
それを聞いたニートスが率先して質問する。
お! 田んぼ組に任命しただけあってやる気だねぇ~。
「多分一週間くらいで収穫できると思う」
「お米って成長促進魔法使わなかったら、収穫までに普通どれくらいかかるんですか?」
今度はメイフィーから質問が来る。
「え~と……一ヶ月から一ヶ月半くらいって聞いてるかな」
「それを一週間で!? でも潤いの木とか一瞬でしたよね? 今回も今すぐ収穫できるくらいにはならないんですか? 明日とか」
「木と稲じゃ頑丈さが全然違うからね。一瞬で成長させたら魔力に耐えられないかもしれない」
「試しに一本成長させてみてはどうしょう?」
「………………そうね、じゃあ一本試しにやってみようか」
試しに稲に成長促進魔法をかける。
「「「おお~~ぉぉ……?」」」
最初は物凄く元気に成長したが、後半でしおれてしまった……
「これって……どういうことですか?」
「う~ん……私にも分からないなぁ。多分エネルギーの供給過多とかそんな感じかな? 稲穂を付ける前にしおれちゃったみたいだね。やっぱり毎日少しずつ成長促進していく必要があるかも」
「すぐ収穫できると思ったんですけど……残念です……」
「まあすぐに収穫とは行かないけど、今回のは試験的な収穫なので、なるべく早くしたいなと思う。この試作第一号を収穫して、食べてみて問題無さそうだと思ったら、育てる場所を広げていこうと思う。それで田んぼ組のみなさんには、この一週間水田の管理をお願いします」
「管理というと?」
「雑草が生えて来たり、害虫が涌いたりするので、それらを駆除してください。後半になると鳥とか小動物が稲穂を食べにくるからそれも追い払って。じゃあ、ニートス、先導お願いね」
「お任せください!」
「では今回はこれにて解散とします。皆さん、お疲れ様でした」
試験的な田植えの今回は臨時で人員を雇うこともなく、農林部門田んぼ組の人員だけで行おうと思ったが、水に強くなったフレアハルトたちと、何でも屋従業員のクリューにも参加してもらった。
同時に小麦組も始動したため、R・G・Bとカイベルは小麦畑の方に行ってもらった。懇願された『ゼロ距離ドア3号』も、責任者が立ったということで創成。統括のメイフィーが移動し易いように野菜畑の近くから行けるように近くの岩にはめ込んだ。
「おお! この田んぼの周り何だか暖かい!」
「水も全然冷たくないね!」
「むしろ寒いところから入ったから良い感じに温いよ」
「こんな寒い時期に水仕事なんて……って思ってましたけど、これなら長時間でも作業してられそうです」
「『お水温めるくん』の効果凄いですね、アルトラ様」
一週間前にメイフィーだけが体験している所為かちょっとドヤ顔。
全員まだ気温が低い田んぼの外から中に入ったためか、水温も温かく感じられるらしい。
「おお……こうして水に入って作業できるようになるとは……感無量だな」
「私はもう海へも行ってますから、水に関してはフレハル様より知ってますよ」
と、レイアが『私、二人よりも水のこと知ってますよ』感を出す。
「む、そうか、我はまだあまり水に関わったことはないからな」
「わたくしもそれほど……」
「水浴びでもしてみますか、フレハル様?」
「水に関わっていないとは言っても、流石に我にもここが水浴びに適してないことくらいはわかるぞ?」
「泥だらけになりそうですしね……」
などという会話が聞こえた。
レイアは漁師 (仮)の運搬のために海へ行っているだけあり、他二人より早く水に慣れたらしい。
「それで、アルトラ、私は一とこに落ち着いて生活したことは無いから田んぼのことをほとんど知らないけど、最初は何をしたら良いんだい?」
クリューは死神という職業柄、こういった体験は初めてらしい。
その質問を聞いていた田んぼ組メンバーが傾聴する。田んぼ組とは言っても彼らにとっても初めてのことだから、右も左も分からないのである。
「田植えには等間隔で苗を植えるのが大事だから、まずは植えるポイントの目安を付けましょうか」
間隔が広いと十分な苗を植えられないし、狭いと太陽の恩恵が十分に受けられずエネルギー不足になるらしい。まあこの稲は今まで太陽が無かったところで育ってたような品種だから太陽については問題無いが、それでも間隔が狭すぎるとエネルギーを取り合ってしまって上手く育たなかったり、除草が大変だったりする、とカイベルから聞いた。
「目安ってどうやって付けるんですか?」
「これを使います!」
ジャーンという効果音が鳴りそうな感じに『六角転がし』を掲げる。
構造が簡単なので、物質魔法で作っておいた。
三十センチ四方の枠が十個、六角だから合計六十個の枠が付いた、転がして苗を植えるための目安を付ける道具。
「それは何ですか?」
「これは『枠転がし』って道具でね、等間隔にマス目を付けられるの。これで田んぼにマス目を引いて、その真ん中に苗を植えます。はい、じゃあ何でも屋の四人、四つ用意してあるからそれぞれお願い」
「力仕事か?」
「う~ん、力仕事ではないけど、重労働には変わりないかな」
「どうやって使うものなのだ?」
「田んぼに入れて転がすだけで良い。それで目安を作れるから。ああ、それと引いたマス目はなるべく踏まないように歩いて。目安が分からなくなったら意味が無いから」
「相分かった」
「「了解」」
「了解しました」
それぞれバラけてもらって、目安を作ってもらった。
◇
マス目が出来たところで、いよいよ田植え。
「じゃあ全員一列になって植えていきましょうか。前に進むと苗を踏んでしまう可能性があるから、後ろへ後ろへ植えていきます」
一列に並び全員で動作を合わせて苗を植えて行く。
「あ、苗は深く植え過ぎないようにしてね。深く植え過ぎると葉が水に潜ってしまって酸欠になって生育不良を起こすらしいから。大体二から三センチくらいの深さに植えて」
◇
みんな一丸となって田植えをしたお蔭で思ったよりも早く終わった。
「大変って聞きましたけど、割と簡単に終わりましたね」
「でもちょっと腰が痛いな」
今日はこれで終わりだけど、彼らはまだ知らない。水田は二十個ほどあるということを……
腰痛は蓄積するはず。
「今回試験的に植えたところは、私が成長促進魔法で早く収穫できるようにします」
「どれくらいかかるのでしょうか?」
それを聞いたニートスが率先して質問する。
お! 田んぼ組に任命しただけあってやる気だねぇ~。
「多分一週間くらいで収穫できると思う」
「お米って成長促進魔法使わなかったら、収穫までに普通どれくらいかかるんですか?」
今度はメイフィーから質問が来る。
「え~と……一ヶ月から一ヶ月半くらいって聞いてるかな」
「それを一週間で!? でも潤いの木とか一瞬でしたよね? 今回も今すぐ収穫できるくらいにはならないんですか? 明日とか」
「木と稲じゃ頑丈さが全然違うからね。一瞬で成長させたら魔力に耐えられないかもしれない」
「試しに一本成長させてみてはどうしょう?」
「………………そうね、じゃあ一本試しにやってみようか」
試しに稲に成長促進魔法をかける。
「「「おお~~ぉぉ……?」」」
最初は物凄く元気に成長したが、後半でしおれてしまった……
「これって……どういうことですか?」
「う~ん……私にも分からないなぁ。多分エネルギーの供給過多とかそんな感じかな? 稲穂を付ける前にしおれちゃったみたいだね。やっぱり毎日少しずつ成長促進していく必要があるかも」
「すぐ収穫できると思ったんですけど……残念です……」
「まあすぐに収穫とは行かないけど、今回のは試験的な収穫なので、なるべく早くしたいなと思う。この試作第一号を収穫して、食べてみて問題無さそうだと思ったら、育てる場所を広げていこうと思う。それで田んぼ組のみなさんには、この一週間水田の管理をお願いします」
「管理というと?」
「雑草が生えて来たり、害虫が涌いたりするので、それらを駆除してください。後半になると鳥とか小動物が稲穂を食べにくるからそれも追い払って。じゃあ、ニートス、先導お願いね」
「お任せください!」
「では今回はこれにて解散とします。皆さん、お疲れ様でした」
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