292 / 531
第12章 臨時会談編
第287話 試験的な田植えの開始
しおりを挟む
というわけで一週間後、試験的に水を入れた田んぼで田植えが始まった。
試験的な田植えの今回は臨時で人員を雇うこともなく、農林部門田んぼ組の人員だけで行おうと思ったが、水に強くなったフレアハルトたちと、何でも屋従業員のクリューにも参加してもらった。
同時に小麦組も始動したため、R・G・Bとカイベルは小麦畑の方に行ってもらった。懇願された『ゼロ距離ドア3号』も、責任者が立ったということで創成。統括のメイフィーが移動し易いように野菜畑の近くから行けるように近くの岩にはめ込んだ。
「おお! この田んぼの周り何だか暖かい!」
「水も全然冷たくないね!」
「むしろ寒いところから入ったから良い感じに温いよ」
「こんな寒い時期に水仕事なんて……って思ってましたけど、これなら長時間でも作業してられそうです」
「『お水温めるくん』の効果凄いですね、アルトラ様」
一週間前にメイフィーだけが体験している所為かちょっとドヤ顔。
全員まだ気温が低い田んぼの外から中に入ったためか、水温も温かく感じられるらしい。
「おお……こうして水に入って作業できるようになるとは……感無量だな」
「私はもう海へも行ってますから、水に関してはフレハル様より知ってますよ」
と、レイアが『私、二人よりも水のこと知ってますよ』感を出す。
「む、そうか、我はまだあまり水に関わったことはないからな」
「わたくしもそれほど……」
「水浴びでもしてみますか、フレハル様?」
「水に関わっていないとは言っても、流石に我にもここが水浴びに適してないことくらいはわかるぞ?」
「泥だらけになりそうですしね……」
などという会話が聞こえた。
レイアは漁師 (仮)の運搬のために海へ行っているだけあり、他二人より早く水に慣れたらしい。
「それで、アルトラ、私は一とこに落ち着いて生活したことは無いから田んぼのことをほとんど知らないけど、最初は何をしたら良いんだい?」
クリューは死神という職業柄、こういった体験は初めてらしい。
その質問を聞いていた田んぼ組メンバーが傾聴する。田んぼ組とは言っても彼らにとっても初めてのことだから、右も左も分からないのである。
「田植えには等間隔で苗を植えるのが大事だから、まずは植えるポイントの目安を付けましょうか」
間隔が広いと十分な苗を植えられないし、狭いと太陽の恩恵が十分に受けられずエネルギー不足になるらしい。まあこの稲は今まで太陽が無かったところで育ってたような品種だから太陽については問題無いが、それでも間隔が狭すぎるとエネルギーを取り合ってしまって上手く育たなかったり、除草が大変だったりする、とカイベルから聞いた。
「目安ってどうやって付けるんですか?」
「これを使います!」
ジャーンという効果音が鳴りそうな感じに『六角転がし』を掲げる。
構造が簡単なので、物質魔法で作っておいた。
三十センチ四方の枠が十個、六角だから合計六十個の枠が付いた、転がして苗を植えるための目安を付ける道具。
「それは何ですか?」
「これは『枠転がし』って道具でね、等間隔にマス目を付けられるの。これで田んぼにマス目を引いて、その真ん中に苗を植えます。はい、じゃあ何でも屋の四人、四つ用意してあるからそれぞれお願い」
「力仕事か?」
「う~ん、力仕事ではないけど、重労働には変わりないかな」
「どうやって使うものなのだ?」
「田んぼに入れて転がすだけで良い。それで目安を作れるから。ああ、それと引いたマス目はなるべく踏まないように歩いて。目安が分からなくなったら意味が無いから」
「相分かった」
「「了解」」
「了解しました」
それぞれバラけてもらって、目安を作ってもらった。
◇
マス目が出来たところで、いよいよ田植え。
「じゃあ全員一列になって植えていきましょうか。前に進むと苗を踏んでしまう可能性があるから、後ろへ後ろへ植えていきます」
一列に並び全員で動作を合わせて苗を植えて行く。
「あ、苗は深く植え過ぎないようにしてね。深く植え過ぎると葉が水に潜ってしまって酸欠になって生育不良を起こすらしいから。大体二から三センチくらいの深さに植えて」
◇
みんな一丸となって田植えをしたお蔭で思ったよりも早く終わった。
「大変って聞きましたけど、割と簡単に終わりましたね」
「でもちょっと腰が痛いな」
今日はこれで終わりだけど、彼らはまだ知らない。水田は二十個ほどあるということを……
腰痛は蓄積するはず。
「今回試験的に植えたところは、私が成長促進魔法で早く収穫できるようにします」
「どれくらいかかるのでしょうか?」
それを聞いたニートスが率先して質問する。
お! 田んぼ組に任命しただけあってやる気だねぇ~。
「多分一週間くらいで収穫できると思う」
「お米って成長促進魔法使わなかったら、収穫までに普通どれくらいかかるんですか?」
今度はメイフィーから質問が来る。
「え~と……一ヶ月から一ヶ月半くらいって聞いてるかな」
「それを一週間で!? でも潤いの木とか一瞬でしたよね? 今回も今すぐ収穫できるくらいにはならないんですか? 明日とか」
「木と稲じゃ頑丈さが全然違うからね。一瞬で成長させたら魔力に耐えられないかもしれない」
「試しに一本成長させてみてはどうしょう?」
「………………そうね、じゃあ一本試しにやってみようか」
試しに稲に成長促進魔法をかける。
「「「おお~~ぉぉ……?」」」
最初は物凄く元気に成長したが、後半でしおれてしまった……
「これって……どういうことですか?」
「う~ん……私にも分からないなぁ。多分エネルギーの供給過多とかそんな感じかな? 稲穂を付ける前にしおれちゃったみたいだね。やっぱり毎日少しずつ成長促進していく必要があるかも」
「すぐ収穫できると思ったんですけど……残念です……」
「まあすぐに収穫とは行かないけど、今回のは試験的な収穫なので、なるべく早くしたいなと思う。この試作第一号を収穫して、食べてみて問題無さそうだと思ったら、育てる場所を広げていこうと思う。それで田んぼ組のみなさんには、この一週間水田の管理をお願いします」
「管理というと?」
「雑草が生えて来たり、害虫が涌いたりするので、それらを駆除してください。後半になると鳥とか小動物が稲穂を食べにくるからそれも追い払って。じゃあ、ニートス、先導お願いね」
「お任せください!」
「では今回はこれにて解散とします。皆さん、お疲れ様でした」
試験的な田植えの今回は臨時で人員を雇うこともなく、農林部門田んぼ組の人員だけで行おうと思ったが、水に強くなったフレアハルトたちと、何でも屋従業員のクリューにも参加してもらった。
同時に小麦組も始動したため、R・G・Bとカイベルは小麦畑の方に行ってもらった。懇願された『ゼロ距離ドア3号』も、責任者が立ったということで創成。統括のメイフィーが移動し易いように野菜畑の近くから行けるように近くの岩にはめ込んだ。
「おお! この田んぼの周り何だか暖かい!」
「水も全然冷たくないね!」
「むしろ寒いところから入ったから良い感じに温いよ」
「こんな寒い時期に水仕事なんて……って思ってましたけど、これなら長時間でも作業してられそうです」
「『お水温めるくん』の効果凄いですね、アルトラ様」
一週間前にメイフィーだけが体験している所為かちょっとドヤ顔。
全員まだ気温が低い田んぼの外から中に入ったためか、水温も温かく感じられるらしい。
「おお……こうして水に入って作業できるようになるとは……感無量だな」
「私はもう海へも行ってますから、水に関してはフレハル様より知ってますよ」
と、レイアが『私、二人よりも水のこと知ってますよ』感を出す。
「む、そうか、我はまだあまり水に関わったことはないからな」
「わたくしもそれほど……」
「水浴びでもしてみますか、フレハル様?」
「水に関わっていないとは言っても、流石に我にもここが水浴びに適してないことくらいはわかるぞ?」
「泥だらけになりそうですしね……」
などという会話が聞こえた。
レイアは漁師 (仮)の運搬のために海へ行っているだけあり、他二人より早く水に慣れたらしい。
「それで、アルトラ、私は一とこに落ち着いて生活したことは無いから田んぼのことをほとんど知らないけど、最初は何をしたら良いんだい?」
クリューは死神という職業柄、こういった体験は初めてらしい。
その質問を聞いていた田んぼ組メンバーが傾聴する。田んぼ組とは言っても彼らにとっても初めてのことだから、右も左も分からないのである。
「田植えには等間隔で苗を植えるのが大事だから、まずは植えるポイントの目安を付けましょうか」
間隔が広いと十分な苗を植えられないし、狭いと太陽の恩恵が十分に受けられずエネルギー不足になるらしい。まあこの稲は今まで太陽が無かったところで育ってたような品種だから太陽については問題無いが、それでも間隔が狭すぎるとエネルギーを取り合ってしまって上手く育たなかったり、除草が大変だったりする、とカイベルから聞いた。
「目安ってどうやって付けるんですか?」
「これを使います!」
ジャーンという効果音が鳴りそうな感じに『六角転がし』を掲げる。
構造が簡単なので、物質魔法で作っておいた。
三十センチ四方の枠が十個、六角だから合計六十個の枠が付いた、転がして苗を植えるための目安を付ける道具。
「それは何ですか?」
「これは『枠転がし』って道具でね、等間隔にマス目を付けられるの。これで田んぼにマス目を引いて、その真ん中に苗を植えます。はい、じゃあ何でも屋の四人、四つ用意してあるからそれぞれお願い」
「力仕事か?」
「う~ん、力仕事ではないけど、重労働には変わりないかな」
「どうやって使うものなのだ?」
「田んぼに入れて転がすだけで良い。それで目安を作れるから。ああ、それと引いたマス目はなるべく踏まないように歩いて。目安が分からなくなったら意味が無いから」
「相分かった」
「「了解」」
「了解しました」
それぞれバラけてもらって、目安を作ってもらった。
◇
マス目が出来たところで、いよいよ田植え。
「じゃあ全員一列になって植えていきましょうか。前に進むと苗を踏んでしまう可能性があるから、後ろへ後ろへ植えていきます」
一列に並び全員で動作を合わせて苗を植えて行く。
「あ、苗は深く植え過ぎないようにしてね。深く植え過ぎると葉が水に潜ってしまって酸欠になって生育不良を起こすらしいから。大体二から三センチくらいの深さに植えて」
◇
みんな一丸となって田植えをしたお蔭で思ったよりも早く終わった。
「大変って聞きましたけど、割と簡単に終わりましたね」
「でもちょっと腰が痛いな」
今日はこれで終わりだけど、彼らはまだ知らない。水田は二十個ほどあるということを……
腰痛は蓄積するはず。
「今回試験的に植えたところは、私が成長促進魔法で早く収穫できるようにします」
「どれくらいかかるのでしょうか?」
それを聞いたニートスが率先して質問する。
お! 田んぼ組に任命しただけあってやる気だねぇ~。
「多分一週間くらいで収穫できると思う」
「お米って成長促進魔法使わなかったら、収穫までに普通どれくらいかかるんですか?」
今度はメイフィーから質問が来る。
「え~と……一ヶ月から一ヶ月半くらいって聞いてるかな」
「それを一週間で!? でも潤いの木とか一瞬でしたよね? 今回も今すぐ収穫できるくらいにはならないんですか? 明日とか」
「木と稲じゃ頑丈さが全然違うからね。一瞬で成長させたら魔力に耐えられないかもしれない」
「試しに一本成長させてみてはどうしょう?」
「………………そうね、じゃあ一本試しにやってみようか」
試しに稲に成長促進魔法をかける。
「「「おお~~ぉぉ……?」」」
最初は物凄く元気に成長したが、後半でしおれてしまった……
「これって……どういうことですか?」
「う~ん……私にも分からないなぁ。多分エネルギーの供給過多とかそんな感じかな? 稲穂を付ける前にしおれちゃったみたいだね。やっぱり毎日少しずつ成長促進していく必要があるかも」
「すぐ収穫できると思ったんですけど……残念です……」
「まあすぐに収穫とは行かないけど、今回のは試験的な収穫なので、なるべく早くしたいなと思う。この試作第一号を収穫して、食べてみて問題無さそうだと思ったら、育てる場所を広げていこうと思う。それで田んぼ組のみなさんには、この一週間水田の管理をお願いします」
「管理というと?」
「雑草が生えて来たり、害虫が涌いたりするので、それらを駆除してください。後半になると鳥とか小動物が稲穂を食べにくるからそれも追い払って。じゃあ、ニートス、先導お願いね」
「お任せください!」
「では今回はこれにて解散とします。皆さん、お疲れ様でした」
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる