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第12章 臨時会談編
第285話 田んぼ計画始動
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ついに田植えの時期が来た!
………………嘘である、まだ三月上旬だから田植えの時期はもう少し先。
しかし、このまま手をこまねいていたら、私のリナさんへの借金額が増えてしまうので、時期的には大分早いが田植えを開始したい。
そこで、限定的に温める魔道具を作った! これで田んぼを囲んで、春くらいの暖かい水温にしようと思う。
ちなみに、前回リナさんにお借りした『一千百八万六千ウォル』 (第248話参照)は、アスモから疑似太陽作成の依頼料として貰った五千万エレノルを換金してお返しすることができた。ちょうど良いところにちょうど良いお金が転がり込んで来たもんだ。
そして何日か前から、メイフィー以下農林部の尽力により、せっせと整地していた田んぼの予定地の一つに初めて試験的に水が入れられている。
◇
次の日――
田んぼに水が張られた。
少し経つと、田んぼを住処にする生物が増えるでしょう。
「遂に田んぼに水が入りましたね! でもお米ってこんな寒い時期から作れるものなんですか~?」
「いや、普通はもっと後よ。こんな寒いと植えたところで、すぐ枯れてダメになっちゃうと思う」
「何で今からやるんですか!? 意味ないじゃないですか!」
「そこはちゃんと考えてるから大丈夫だって、そのためにこの魔道具を作ったのよ!」
「おお、新作ですか?」
新作? メイフィーの中ではこの魔道具作りはシリーズ化しているらしい。
「き、期待しても今までみたいな派手なことは無いよ?」
「ゴーレム出たり、空間転移したり、光を発することはないんですか?」
「無いね、見た目では全く分からないからガッカリするかも」
「なんだぁ……残念ですね……」
でも、ガッカリした言葉とは裏腹に、新作にも興味はあるらしい。
「それで、これはどういった魔道具なんですか?」
「田んぼの水を温める魔道具。稲ってある程度の温かさが無いと枯れてしまうらしいから、この初春の気候でも水温を温められるように作ったの。名付けて『お水温めるくん』」
「……アルトラ様って、『〇〇くん』って付けるの好きですよね……」
「え? 変かな?」
「変とまでは行かないですけど……安直と言うか……」
「分かりやすくて良いと思うんだけど……じゃあメイフィーに命名権をあげるから何か考えてよ」
「えっ!? 突然言われても思い浮かばないですね……」
「でしょー? 名前考えるのって結構面倒なのよ」
出来ればカッコイイ名前を付けたいところなんだけど、私のネーミングセンスでは中々……
「まあ、名前のことは後にして、R・G・Bの三人、設置お願いできる? 前に作った『五進一退装置』 (第165話)と同じような設置方法で良いから」
「「「はい!」」」
と言うことで、三人には私がいる場所以外の三方に設置のため走ってもらった。
「設置終わりました」
「OKでーす」
「こっちも大丈夫です!」
「ご苦労様」
「これで水が温かくなるんですか?」
「十分もすれば大分温かくなる予定なんだけど」
◇
「アルトラ様……まだ三分くらいですけど、何かおかしくないですか? 湯気出てきましたけど……」
「まあ昨日までは比較的暖かかったけど、今日はまた冷え込んで気温五度くらいだし、気温が低いから温度差で湯気が発生したってとこじゃない?」
「そうなんですか?」
「灼熱だったこの土地出身のあなたたちは知らないと思うけど、低い温度でも気温差が大きいと湯気が立つのよ。十五度くらい差があれば出てくるんじゃないかな?」
「へぇ~」
よしよし、湯気が出て来てるってことは田んぼの温度は大分温かくなったってことね。
ところで、稲の適正温度ってどれくらいなのかしら? あとでカイベルに聞いておくか。
あと、ここ使うからには田んぼに生えてる余分な植物は取り除いておかないとね。特にあの真ん中辺りに、ここの主のようにそそり立ってる猛々しいぼうぼうの草、アレ邪魔だな。整地してる間に抜いておけば良かった……
でも、とりあえずは魔道具の試運転終わってからか。
◇
数分後――
「アルトラ様……明らかに変ですけど……土が対流して濁ってきてるし、水が泡立ってますよ? 湯気もさっきの比じゃないくらい出てますし……これ沸騰してませんか?」
「いくらなんでも田んぼが沸騰するなんて……」
そんな現象お目にかかったことがない。
一応水温を確かめるため一瞬だけサッと手を水に浸けてみたものの――
「あ、私熱いの分からないんだっけ」
これより熱いものにいくらでも触っているはずなのに、人間の時の先入観で火傷しないように行動してしまう。
「メイフィー、手浸けてみてもらえる?」
「……それで熱湯だったら私、火傷しちゃいますけど?」
「そりゃそうか……」
そして今度は別の方向にちょっと常識がおかしくなっている……ヤバイな……
「そうだ! こんな時にあの魔力動力式の温度計を……!」
ああ……あれ滅多に使わないから私の机の中だ……たまに使うことがあるし後で亜空間収納ポケットの中に入れておくか。
取りに行くのもちょっと面倒ね……
「じゃあ小さい氷の塊を作ってそこにかけてみようか」
と言うわけで、氷魔法で手のひらに乗るくらいの氷塊を作って地面に置いた。
田んぼの水を手で掬って、氷塊にかけたところ――
一瞬で半分くらいまで溶けた!?
「ま、間違いなく沸騰してるわ……」
「アルトラ様……田んぼの中にある雑草が枯れていってますけど……」
田んぼにちらほら生えていた雑草を見ると、どんどん沈んで行ってる。田んぼの主もさっきはあんなに雄々しく猛々しくそそり立ってたのに……
「ま、まあ雑草を取り除こうと思ってたからちょうど良いんじゃない? 結果オーライ結果オーライ、アハハハ……」
思わず乾いた笑いが出る。
「でも何でこんなことに……」
「魔道具の方の不具合なんじゃないですか?」
「そりゃそうなんだけど……」
こんな風に作った覚えはない。
魔道具を確認に行くと――
「あっ……早く温めようと思って全開で使ってたらしい」
「そ……それは注意して使わないと危ないですね……」
田植え前で良かった……もし植えた後だったら稲は全滅していたかもしれない。
後でカイベルに聞いたところ、適正な水温は品種によって十度から十五度くらいらしい。湯気が出て来た時点でもうダメだったわ……
あと、水温だけ温かくてもダメらしく、魔道具の効果範囲内の空間自体が暖かくなるように作り替えた。更にこんな沸騰するほどの温度は要らないから、最高温度は三十度くらいに設定を変えておこう。これで初夏から夏くらいの気温は再現できるはずだ。
沸騰した田んぼは、氷魔法で氷塊を細かくばら撒いて無理矢理冷やした。万が一沸騰した状態で町民が落ちたら火傷だけで済まないかもしれない。
「あ、魔道具の名前思いつきました! 『草枯らし』なんてどうですか?」
「稲育てるとは思えない名前ね……もちろん却下で」
しばらくは『お水温めるくん』で行くことになった。
………………嘘である、まだ三月上旬だから田植えの時期はもう少し先。
しかし、このまま手をこまねいていたら、私のリナさんへの借金額が増えてしまうので、時期的には大分早いが田植えを開始したい。
そこで、限定的に温める魔道具を作った! これで田んぼを囲んで、春くらいの暖かい水温にしようと思う。
ちなみに、前回リナさんにお借りした『一千百八万六千ウォル』 (第248話参照)は、アスモから疑似太陽作成の依頼料として貰った五千万エレノルを換金してお返しすることができた。ちょうど良いところにちょうど良いお金が転がり込んで来たもんだ。
そして何日か前から、メイフィー以下農林部の尽力により、せっせと整地していた田んぼの予定地の一つに初めて試験的に水が入れられている。
◇
次の日――
田んぼに水が張られた。
少し経つと、田んぼを住処にする生物が増えるでしょう。
「遂に田んぼに水が入りましたね! でもお米ってこんな寒い時期から作れるものなんですか~?」
「いや、普通はもっと後よ。こんな寒いと植えたところで、すぐ枯れてダメになっちゃうと思う」
「何で今からやるんですか!? 意味ないじゃないですか!」
「そこはちゃんと考えてるから大丈夫だって、そのためにこの魔道具を作ったのよ!」
「おお、新作ですか?」
新作? メイフィーの中ではこの魔道具作りはシリーズ化しているらしい。
「き、期待しても今までみたいな派手なことは無いよ?」
「ゴーレム出たり、空間転移したり、光を発することはないんですか?」
「無いね、見た目では全く分からないからガッカリするかも」
「なんだぁ……残念ですね……」
でも、ガッカリした言葉とは裏腹に、新作にも興味はあるらしい。
「それで、これはどういった魔道具なんですか?」
「田んぼの水を温める魔道具。稲ってある程度の温かさが無いと枯れてしまうらしいから、この初春の気候でも水温を温められるように作ったの。名付けて『お水温めるくん』」
「……アルトラ様って、『〇〇くん』って付けるの好きですよね……」
「え? 変かな?」
「変とまでは行かないですけど……安直と言うか……」
「分かりやすくて良いと思うんだけど……じゃあメイフィーに命名権をあげるから何か考えてよ」
「えっ!? 突然言われても思い浮かばないですね……」
「でしょー? 名前考えるのって結構面倒なのよ」
出来ればカッコイイ名前を付けたいところなんだけど、私のネーミングセンスでは中々……
「まあ、名前のことは後にして、R・G・Bの三人、設置お願いできる? 前に作った『五進一退装置』 (第165話)と同じような設置方法で良いから」
「「「はい!」」」
と言うことで、三人には私がいる場所以外の三方に設置のため走ってもらった。
「設置終わりました」
「OKでーす」
「こっちも大丈夫です!」
「ご苦労様」
「これで水が温かくなるんですか?」
「十分もすれば大分温かくなる予定なんだけど」
◇
「アルトラ様……まだ三分くらいですけど、何かおかしくないですか? 湯気出てきましたけど……」
「まあ昨日までは比較的暖かかったけど、今日はまた冷え込んで気温五度くらいだし、気温が低いから温度差で湯気が発生したってとこじゃない?」
「そうなんですか?」
「灼熱だったこの土地出身のあなたたちは知らないと思うけど、低い温度でも気温差が大きいと湯気が立つのよ。十五度くらい差があれば出てくるんじゃないかな?」
「へぇ~」
よしよし、湯気が出て来てるってことは田んぼの温度は大分温かくなったってことね。
ところで、稲の適正温度ってどれくらいなのかしら? あとでカイベルに聞いておくか。
あと、ここ使うからには田んぼに生えてる余分な植物は取り除いておかないとね。特にあの真ん中辺りに、ここの主のようにそそり立ってる猛々しいぼうぼうの草、アレ邪魔だな。整地してる間に抜いておけば良かった……
でも、とりあえずは魔道具の試運転終わってからか。
◇
数分後――
「アルトラ様……明らかに変ですけど……土が対流して濁ってきてるし、水が泡立ってますよ? 湯気もさっきの比じゃないくらい出てますし……これ沸騰してませんか?」
「いくらなんでも田んぼが沸騰するなんて……」
そんな現象お目にかかったことがない。
一応水温を確かめるため一瞬だけサッと手を水に浸けてみたものの――
「あ、私熱いの分からないんだっけ」
これより熱いものにいくらでも触っているはずなのに、人間の時の先入観で火傷しないように行動してしまう。
「メイフィー、手浸けてみてもらえる?」
「……それで熱湯だったら私、火傷しちゃいますけど?」
「そりゃそうか……」
そして今度は別の方向にちょっと常識がおかしくなっている……ヤバイな……
「そうだ! こんな時にあの魔力動力式の温度計を……!」
ああ……あれ滅多に使わないから私の机の中だ……たまに使うことがあるし後で亜空間収納ポケットの中に入れておくか。
取りに行くのもちょっと面倒ね……
「じゃあ小さい氷の塊を作ってそこにかけてみようか」
と言うわけで、氷魔法で手のひらに乗るくらいの氷塊を作って地面に置いた。
田んぼの水を手で掬って、氷塊にかけたところ――
一瞬で半分くらいまで溶けた!?
「ま、間違いなく沸騰してるわ……」
「アルトラ様……田んぼの中にある雑草が枯れていってますけど……」
田んぼにちらほら生えていた雑草を見ると、どんどん沈んで行ってる。田んぼの主もさっきはあんなに雄々しく猛々しくそそり立ってたのに……
「ま、まあ雑草を取り除こうと思ってたからちょうど良いんじゃない? 結果オーライ結果オーライ、アハハハ……」
思わず乾いた笑いが出る。
「でも何でこんなことに……」
「魔道具の方の不具合なんじゃないですか?」
「そりゃそうなんだけど……」
こんな風に作った覚えはない。
魔道具を確認に行くと――
「あっ……早く温めようと思って全開で使ってたらしい」
「そ……それは注意して使わないと危ないですね……」
田植え前で良かった……もし植えた後だったら稲は全滅していたかもしれない。
後でカイベルに聞いたところ、適正な水温は品種によって十度から十五度くらいらしい。湯気が出て来た時点でもうダメだったわ……
あと、水温だけ温かくてもダメらしく、魔道具の効果範囲内の空間自体が暖かくなるように作り替えた。更にこんな沸騰するほどの温度は要らないから、最高温度は三十度くらいに設定を変えておこう。これで初夏から夏くらいの気温は再現できるはずだ。
沸騰した田んぼは、氷魔法で氷塊を細かくばら撒いて無理矢理冷やした。万が一沸騰した状態で町民が落ちたら火傷だけで済まないかもしれない。
「あ、魔道具の名前思いつきました! 『草枯らし』なんてどうですか?」
「稲育てるとは思えない名前ね……もちろん却下で」
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