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第11章 雷の国エレアースモ探訪編
第280話 リディアの買った食器セット
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「アルトラじゃないか、川沿いにいるなんて珍しいな」
別の方向から声がかかった。
「フィンツさん、今発電施設の構想をしに下見に来たんですよ」
「ああ、そいつらが例の発電施設を作ってくれるやつらか。あれ? お前さん、ローレンスか! 久しぶりだな!」
「フィンツさん、あなたがこんなところにいるとは」
「二人はお知り合いですか?」
二人とも種族がドワーフだし知っててもおかしくないけど……
「コイツは親方に師事していた時の弟弟子だよ。あちこちの国に行って電気系統を整備してるから電気関係でコイツの右に出る者はいないんじゃないかな。しかしお前はドワーフの割には未だに丁寧な話し方をするよな」
「まあ、気が小さいもので……」
二人は久しぶりで意気投合したのか、川沿いのドワーフハウスに入って行った。
「あの~、親方いなくなっちゃいましたけどアルトラさん、俺たちはどこで寝泊まりするんですか?」
七大国会談以降、こんな時も想定して迅速に宿泊施設を作らせておいた。二ヶ月弱の突貫建築だが、ドワーフさんお墨付きなので耐久性は特に問題無いはず。ローレンスさんを除いた三人をそこへ案内した。
後日、フィンツさんも含めて話し合った結果、水力発電で行こうという話に固まった。この町に滞在して大分経つフィンツさん先導でプロジェクトを勧めてくれることに。
完成は半年後くらいを目安とした。
「さて、今後私は特に口出すことは無いかな」
私の仕事は職人を引き込むまで。あとは専門家に任せておいた方が良い。
◇
その日の夕飯時――
「アルトラ! 早速使って良いかナ?」
何を? ああ例の骸骨の食器セットのことか。
「良いよ」
せっかく買ったから早く使いたいのね。
まあ、今使ってるのは特に何の装飾も無いコップとナイフとフォークだし、リディアには無味乾燥に思えるのかもしれない。
私から見れば、アルトレリアが村だった時分……発展してきた初期の頃に作られた思い入れのある食器だけど、今後は茶だんすの肥やしになるのか……発展を見続けた私としてはちょっと複雑だし寂しい……
◇
ご飯食べる時になって気付いた。
博物館ではリディアの熱意に圧されて安易に購入を決めてしまったけど、例の髑髏のコップ……リディアが使う時に顔はずっとこっち見てるのよね……超ガン見されてる……
「……まさか骸骨に見られながら食事するハメになるとは……」
これから毎日あの骸骨に視線を向けられるのか……呪われないでしょうね?
◇
食事後、リディアに使ってみた感想を聞いてみた。
「使い心地はどうだった?」
「骨の関節がデコボコしてル……フォークの指の関節に肉が引っかかル……」
あ、これって買ったことをちょっと後悔してる?
「面白い食感ダ! 肉食べる時骨に突っかかって食い破ってるみたいで楽しイ!」
「ああ、そう。それは買った甲斐があったね!」
後悔してるかと思ったら、むしろ逆だったか。
海の中では食い破って食べたりしてただろうから、リディアにとってはベストマッチする食感だったのかもしれない。
「でも……何かこの骨と骨の間に色々挟まル……洗いにくイ……」
それは面倒でも自分で洗うって言ってたから仕方ない。
「ここの間の汚れが取り難いんだけド、何か細いの無いカ?」
「爪楊枝とか使ったらどう?」
提案してみたところ爪楊枝を使ってガリガリ洗い始めた。
この食器は凹凸がある分、乾くのも大分時間がかかりそうだ。
「ところでカイベル、今さらながら思いついちゃったんだけど、雷の国首都で疑似太陽作成ポイントに向かう時、ゲートで撹乱しながら向かったじゃない?」
「はい」
「わざわざ撹乱しなくても、不可視化と魔力遮断を使って透明状態で現場まで行けば良かったんじゃない?」
身体に当たる光の屈折率を変えて透明に見せる『不可視化』と、常時生物の身体から流れ出る魔力を隠す『魔力遮断』。
この二つの魔法を使えば、仮想敵対者にもまずバレることは無いと思っている。
他人にバレないように隠密行動を取るなら最適な魔法だ。何せ魔力感知に長けたリディアとフレアハルトを欺いた魔法だ。 (第53話、第201~202話参照)
カイベルならこれを提案してもおかしくなかったと思うけど……
「残念ながら……向こうも余程“疑似太陽作成者としての証拠”が欲しかったのか、カメラに補助魔法を解除する高レベルの細工がされていました。もっとも……即席で作られたもののようで、付与されている解除魔法があまりに高度過ぎて短時間しか使用できなかったようですが……」
「私の魔法を解除できるヤツがいるの!?」
「各能力を専門的に伸ばした者なら可能性はゼロではありません。アルトラ様の身体は戦闘分野は全てを高レベルで操れるように出来ていますが、それでも特化した能力というわけではないので、フレアハルト様やリディア様のようにそれ専門に使っている者には時として負けることはあり得ます。ご自身でも体験されているはずですが……?」
「それはそうなんだけど……」
攻撃分野のことだけ考えていた。Lv10の補助魔法を解除する者がいるとは……
今後はより一層火の国の動向には注視する必要があるかもしれない。
別の方向から声がかかった。
「フィンツさん、今発電施設の構想をしに下見に来たんですよ」
「ああ、そいつらが例の発電施設を作ってくれるやつらか。あれ? お前さん、ローレンスか! 久しぶりだな!」
「フィンツさん、あなたがこんなところにいるとは」
「二人はお知り合いですか?」
二人とも種族がドワーフだし知っててもおかしくないけど……
「コイツは親方に師事していた時の弟弟子だよ。あちこちの国に行って電気系統を整備してるから電気関係でコイツの右に出る者はいないんじゃないかな。しかしお前はドワーフの割には未だに丁寧な話し方をするよな」
「まあ、気が小さいもので……」
二人は久しぶりで意気投合したのか、川沿いのドワーフハウスに入って行った。
「あの~、親方いなくなっちゃいましたけどアルトラさん、俺たちはどこで寝泊まりするんですか?」
七大国会談以降、こんな時も想定して迅速に宿泊施設を作らせておいた。二ヶ月弱の突貫建築だが、ドワーフさんお墨付きなので耐久性は特に問題無いはず。ローレンスさんを除いた三人をそこへ案内した。
後日、フィンツさんも含めて話し合った結果、水力発電で行こうという話に固まった。この町に滞在して大分経つフィンツさん先導でプロジェクトを勧めてくれることに。
完成は半年後くらいを目安とした。
「さて、今後私は特に口出すことは無いかな」
私の仕事は職人を引き込むまで。あとは専門家に任せておいた方が良い。
◇
その日の夕飯時――
「アルトラ! 早速使って良いかナ?」
何を? ああ例の骸骨の食器セットのことか。
「良いよ」
せっかく買ったから早く使いたいのね。
まあ、今使ってるのは特に何の装飾も無いコップとナイフとフォークだし、リディアには無味乾燥に思えるのかもしれない。
私から見れば、アルトレリアが村だった時分……発展してきた初期の頃に作られた思い入れのある食器だけど、今後は茶だんすの肥やしになるのか……発展を見続けた私としてはちょっと複雑だし寂しい……
◇
ご飯食べる時になって気付いた。
博物館ではリディアの熱意に圧されて安易に購入を決めてしまったけど、例の髑髏のコップ……リディアが使う時に顔はずっとこっち見てるのよね……超ガン見されてる……
「……まさか骸骨に見られながら食事するハメになるとは……」
これから毎日あの骸骨に視線を向けられるのか……呪われないでしょうね?
◇
食事後、リディアに使ってみた感想を聞いてみた。
「使い心地はどうだった?」
「骨の関節がデコボコしてル……フォークの指の関節に肉が引っかかル……」
あ、これって買ったことをちょっと後悔してる?
「面白い食感ダ! 肉食べる時骨に突っかかって食い破ってるみたいで楽しイ!」
「ああ、そう。それは買った甲斐があったね!」
後悔してるかと思ったら、むしろ逆だったか。
海の中では食い破って食べたりしてただろうから、リディアにとってはベストマッチする食感だったのかもしれない。
「でも……何かこの骨と骨の間に色々挟まル……洗いにくイ……」
それは面倒でも自分で洗うって言ってたから仕方ない。
「ここの間の汚れが取り難いんだけド、何か細いの無いカ?」
「爪楊枝とか使ったらどう?」
提案してみたところ爪楊枝を使ってガリガリ洗い始めた。
この食器は凹凸がある分、乾くのも大分時間がかかりそうだ。
「ところでカイベル、今さらながら思いついちゃったんだけど、雷の国首都で疑似太陽作成ポイントに向かう時、ゲートで撹乱しながら向かったじゃない?」
「はい」
「わざわざ撹乱しなくても、不可視化と魔力遮断を使って透明状態で現場まで行けば良かったんじゃない?」
身体に当たる光の屈折率を変えて透明に見せる『不可視化』と、常時生物の身体から流れ出る魔力を隠す『魔力遮断』。
この二つの魔法を使えば、仮想敵対者にもまずバレることは無いと思っている。
他人にバレないように隠密行動を取るなら最適な魔法だ。何せ魔力感知に長けたリディアとフレアハルトを欺いた魔法だ。 (第53話、第201~202話参照)
カイベルならこれを提案してもおかしくなかったと思うけど……
「残念ながら……向こうも余程“疑似太陽作成者としての証拠”が欲しかったのか、カメラに補助魔法を解除する高レベルの細工がされていました。もっとも……即席で作られたもののようで、付与されている解除魔法があまりに高度過ぎて短時間しか使用できなかったようですが……」
「私の魔法を解除できるヤツがいるの!?」
「各能力を専門的に伸ばした者なら可能性はゼロではありません。アルトラ様の身体は戦闘分野は全てを高レベルで操れるように出来ていますが、それでも特化した能力というわけではないので、フレアハルト様やリディア様のようにそれ専門に使っている者には時として負けることはあり得ます。ご自身でも体験されているはずですが……?」
「それはそうなんだけど……」
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