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第11章 雷の国エレアースモ探訪編

第277話 エレアースモ国立博物館探訪 その10(リディアが持って来た物は……?)

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「アルトラ~、これにすル!」

 持って来たのは、髑髏の頭頂部に穴が開いてコップになってるものと、手を開いた時の骨格を模した五本指の骨フォーク、チョップの形を模した骨ナイフの三点セット。
 コップは頭蓋骨の後ろ側に骨を模した取っ手が取り付けてあり、ナイフは小指と薬指と中指の下側部分が刃物状に加工してある。そしてちゃんとフォークは右手で、ナイフが左手を模して作られている。かなり凝った意匠。
 でも不気味!!

「な、何でソレにしたの?」
「何か気に入っタ。どの部分もリディアには無いものだシ」

 確かにイカには頭蓋骨も腕の骨も無いが……

「こ、恐いから別のにしない?」

 特に髑髏の頭に穴が開いたコップ。織田信長が浅井長政の頭蓋骨に酒を注いだって話があるらしいけど……事実ならよくこんなことやったものだ。

「え~~、これなら実用的だから文句無いだロ? ちゃんと使うゾ?」

 確かに実用的なものって言ったけど……
 まさかこんなもの持ってくるとは……今までお土産として買ったのは、サメの抱き枕だったり (※)、羊の座布団だったり (※)、可愛げのあるものだったのに、何でここへ来て急に骨なんて気に入っちゃったの!?
   (※サメと羊:第87話、第135話参照)

「取っ手がゴツゴツしてて掴み難くない?」
「そうカ? 指が四本骨と骨の間に収まって掴みやすいゾ? 持ってみロ」

 あ、ホントだ、この骨を模した取っ手結構持ち易い。使う人のことを考えてるわ。
 でも骨の形が凹凸でゴツゴツしてるから、使った後に洗うのが大変そうだ……

「あ、洗いにくそうだけど……?」
「今使ってるコップだっテ、リディアが自分で洗ってるから別にアルトラは関係ないだロ?」

 面倒くさくてもちゃんと洗うってことか。
 う、う~ん……まあ埃被らないものなら別に良いか。
 本物の亜人の頭蓋骨ってわけでもないし。

「…………わかった、リディアが気に入ったならそれで良いよ」

 渋々ながら了承。
 まあ自分で洗うって言質げんちも取れたし、面倒くさくなって洗うのを渋りだしたらこの話を持ち出そう。

「カイベルは何か買う?」
「いえ、特には」
「じゃあ、また私が選んであげる。このイヤーアクセサリとかどう?」

 球状の水晶の中で青白く淡い光を放つ綺麗なアクセサリ。
 光の下位精霊が宿ったもので、常に淡い光を放ち続けるらしい。
 しかし、値段を見て絶句……

「……ご、五万エレノル……?」

 精霊が宿っているためなのか少々お高め。
 さっきリディアが持って来たボーンドラゴンや骸骨食器セットの十五倍以上、キマイラの三十倍以上のお値段……

「まあ、いっか。今手持ちは五千万あるわけだし」

 カイベルには日頃お世話になりっ放しだし、こういう時にお礼しなきゃいつするのか!
 と言うわけで、骸骨食器セットとイヤーアクセサリを購入。その場で着けてあげる。

「ありがとうございます」
「ところでカイベル、お土産買った後になんだけど、精霊を宿したものを販売して良いの? さっき精霊展の説明で悪霊になるかもしれないって書いてあったのに」
「ほとんどは人型や生物の形をした物に宿ったものに当てはまります。特に人型は思念を増幅し易いので悪い思念も増幅し易いのです。稀に意図的に呪いなどの依り代にされた物に宿った精霊が悪霊化するケースがありますが、呪いにも人型を用いられることが多いためそういったものはかなり稀なケースです。精霊が宿っているからと言って道端の石ころまで保護するとなると、草にも木にも水にも大気中にもそこら中に精霊が宿っていますからキリがありません」

 それは確かにキリが無い……

「それに……そもそも下位精霊が見える者があまりいないので、一般の亜人は道端の石に精霊が宿っているなどとは思いません。人型の物は、少ないながらも動き出す物があるため『精霊が入って動かしているのだろう』と認識されているに過ぎません」

 なるほど、確かに下位精霊が宿った石ころなんて今まで見たことがない。それは私がそれを認識できないだけで宿っていないとも限らないのか。
 あれ? でもそれじゃあ――

「ホウキとかチリトリとか雑巾は? あれは人型でもないのに何で保護しているの?」
「あれは保護しているわけではなく、勝手に掃除してくれて便利だから置いているだけですね」
「そうなの? じゃあうちの役所にも一式欲しいわ」
「動く掃除用具を見つけたら持って来たら良いかもしれませんね。持ち主がいないのなら拾ってきても問題無いと思います。もっとも……あれらを使って悪いことをしようとする者がいれば、物に宿った精霊でもその思念に感化されて悪霊化するかもしれませんが……」
「ふーん、そうなのか。じゃあ悪いこと考えなければ心配することはないのね?」
「はい、多くの場合は問題ありません。何にせよ、持ち主の心が邪悪でなければ大丈夫だと思います。それに光の精霊は悪霊化する可能性が極めて低いのでこのアクセサリの精霊が悪霊になる心配はしないでよろしいかと」

 そっか、『光』だものね。

「なるほど~、ってことは闇の精霊は悪霊化する可能性が高いってことなのね?」
「いえ、闇の精霊は悪意に対して強い耐性があるので、光の精霊同様悪霊化する可能性は極めて低いと思います」

 なんでだ? 私の中のゲームやアニメの知識と合わないぞ?

「何でどっちも可能性が低いの? 光と闇は相反するんじゃないの?」

 ゲームなら光は闇が弱点で、闇は光が弱点のはず。

「光は悪意を退け、闇は悪意を同化して吸収してしまうため、どちらも悪意に強い耐性があります。光や闇の精霊を悪霊化させるとなると余程強い悪意が必要なので個人程度の悪意では不可能です。むしろ他の属性の精霊の方が感化されやすいようです」

 う~ん……すんなりと腑に落ちないけど、そういうものなのだろう。この魔界せかいルールに疑問を持っても仕方ないか。
 私の知識も所詮ゲーム内知識ってわけか。

 お土産探しを再開。役所と各主要機関へのお土産を見繕って、ホテルへ帰った。
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