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第11章 雷の国エレアースモ探訪編
第266話 エレアースモ観光プラン
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エミリーさんと共に、前回泊まったところと同じホテルに来た。
前回同様、カウンターにてチェックインの手続きをしてくれる。
「王城より宿泊の予約をしていただいていると思います。エミリーと申します」
「はい、承っております。アルトラ様とエミリー様の二団体様でよろしいですね?」
◇
「アルトラ様、部屋のカードキーです。どうぞ」
「ありがとう! 今日もチェックインしてもらえて助かったよ!」
こういう時に信用のある騎士が付いてくれてると助かる。
私だけでチェックインしようものなら、多分また本人証明が必要だろうし。まあ、今回はきちんと身分証明書を作ってあるから、アクアリヴィアの時のような事態にはならないと思う。
もっとも……正式に国としての体を成したとは言え、まだアルトレリアのことは七大国会談に留まっているようなものだから、「アルトレリア? どこの国ですか?」となる可能性も大分高めだけど。
そういうところを考えると、エミリーさんが手続きしてくれるのは凄くありがたい。
従業員さんが部屋まで案内してくれる。その道中――
「あれ? あんた、半年くらい前にもうちに泊まらなかったかい? この前も確か騎士様の護衛が付いてたような……」
「あ、はい! 今回もお世話になります! あの時壊されたお風呂は直りましたか?」
「ああ! 穴も綺麗さっぱり塞いでくれて、数日後にはお風呂も再開できたよ! それにしても、あんた何だか今日やってたテレビで探してるっていう救国の乙女に似てるね~、まさか本人とか? んなわけないか~、アッハッハ!」
うっ! ここでも『救国の乙女』……これ、この国出るまで続くのかしら?
「ア……アハハ……似てるだけですよ……」
しかし何だか豪快な人だな。前来た時こんなアクの強い人が居たの気付かなかったわ。
旅館の女将さんのような威厳を放っているが、別にそういうわけではなく、普通の従業員らしい。しゃべり方が完全におばちゃんだけど、見た目は二十代にしか見えない。多分長命の種族ね。その口調から考えると顔は広そうだ。
◇
部屋に着いた。
「では、ごゆるりとお過ごしください」
部屋に着いた時の口調は一転してマニュアル対応のように丁寧。女将さん然とした従業員は案内が終わって持ち場へ帰って行った。
「では私は基本的に部屋の外で護衛の任に就きます。部屋の前にいない場合は私の借りた部屋にいますので、何かご入用のことがありましたら声をおかけください」
と言って、私の部屋の前で護衛をしようとするエミリーさん。
「そんなところにいないで、部屋入ったら良いのに。この国ってそんなに物騒でもないんでしょ?」
「ですが、一応護衛としてお付きしているので……」
「それに私って非公式で来てるし、世間一般から見て要人ってわけでもないから、そんなところで騎士の、しかも上位階級である白天使が護衛なんかしてたら『ここに非公式の要人がいますよ』って言ってるようなもんだと思うけど……」
「う……確かにそうですね……」
「明日どこへ観光に行こうかと考えているから、意見してもらえないかしら?」
「う~ん……そうですね……私で良ければ。あ、それじゃあ私観光案内のパンフレット貰って来ます」
「いや、さっきチェックインカウンター通り過ぎる時に一通り貰って来たから大丈夫」
と言うわけで部屋へ入ってもらった。
早速パンフレットを見る。
「えーと、美術館、博物館、科学館、雷雲観光、景観が綺麗なところってのは無いのね」
「景観って何ですか?」
「景観ってのは……見る価値のある景色ってとこかな」
「地球では景色を見て楽しむのですか?」
「そうだね。綺麗な景色を見て心が洗われるとか言うけど」
「冥球では景色を楽しめるところは無いですからね。エレアースモも同様で、今までは太陽が無かったので、景色を見ようとしたところで、真っ暗で何も見えないと言うか……この場所は頻繁に稲光がするので、それに照らされて形くらいは見えますけど……その風景を楽しもうという気にはならないですね」
常に真っ暗だから、風景を見て楽しもうって慣習は無いわけか。
「風景を楽しむと言うなら、その中では雷雲観光が一番近いかもしれませんね」
「これ、目に留まった時に気になったんだけどどんなことやるの?」
「雷雲溜まり近くまで行って、稲光のフラッシュを楽しむという感じです。確かに綺麗ではあるので、今アルトラ様が仰ってたように風景を楽しむということの一つになるんじゃないかと」
日本人が桜を見に行く感覚に近いのかな?
「へ、へぇ~、あ、危なくないの?」
「もちろん危ないですよ! 雷雲溜まりなんてわざわざ行くところじゃないですし! あ、でも今は太陽が出来たので綺麗と思えるかどうかすらわからないですね」
「あ、それなら大丈夫、あの太陽による青空はこの街付近だけだから雷の国首都を離れれば真っ暗よ」
「………………」
「………………」
「……あの……それ、他人に話して大丈夫なことなんですか?」
……
…………
………………
あっ! しまった! これ秘密なんだ! 私と関連付けて考えられたらまずい!
「いいい、今のは聞かなかったことに!」
「あ、大丈夫ですよ。私はアルトラ様のお世話をさせていただく関係上、アスモデウス様からあの太陽がアルトラ様と関係あることを騎士団で唯一知らされていますから」
「そうなの? い、一応言っておくけど他言無用で」
「心得てます。この話題は国家機密に指定されまして、太陽について知ってる者以外のところでしゃべったら、私重罪で投獄されちゃいますから」
そ、そこまで!? アスモが気を利かせてくれてるってことなのかもしれないけど。投獄はちょっとやり過ぎな気も……
「は、話を戻そうか」
う~ん……しかし、雷雲観光はパスかな。そもそも雷恐がるリディアが行きたいって言うとは思えないし。
「リディア、雷、ピカピカ光って綺麗らしいけど、見に行きたい?」
「行きたくなイ! 恐イ!」
やっぱりね。じゃあ他のパンフはどうかな?
「シーブウォッチング、バードウォッチング、サンダーマウンテン登山」
「あ、それらも雷に耐性の無い他国の方は行かない方が無難だと思います」
「何で?」
「全部危険なんですよ。電気を大量に蓄えた生物を見に行くツアーだったり、雷がよく落ちる山へ登ったりと。どこもピカピカ光って綺麗ではあるんですけど……」
ああ、この“シープウォッチング”って以前捕まえた『デンキヒツジ』のことか。確かに全身で帯電してて危険だわ。耐性の無い人が触ったら黒焦げになるかも。でも毛を刈りまくっちゃったけどこの観光は成り立ってるのかしら? (第121話、第198話参照)
じゃあ“バードウォッチング”は多分『サンダラバード』のことね。
サンダーマウンテンって、以前雷平原を歩いた時に遠くに見えてた、一番高い山のことかな? 雨のごとくめちゃくちゃ大量に雷が落ちてたっけ。あんなところ登ってどうするのかしら?
あ、よく見たらパンフレットの表紙にでかでかと『危険な観光地!』って書いてある。
中に「何が起こっても当旅行会社は一切の責任を負いかねます」って書いてあるわ。死んでも自己責任になるように誓約書も書かされるかもしれない。
「よく作ったなこんな危険なパンフレット……」
「それでも行きたいという命知らずな……ゴホン……もとい、奇特な方がいるので、少しばかりの需要はあるのですよ」
「死んだらどうするの?」
「もちろん自己責任です。行く前に死亡保険に入らされます」
それで死んだら元も子もないのに……
でも流石世界でも有数の大きな街。保険制度はきちんとしてるのね。
前回同様、カウンターにてチェックインの手続きをしてくれる。
「王城より宿泊の予約をしていただいていると思います。エミリーと申します」
「はい、承っております。アルトラ様とエミリー様の二団体様でよろしいですね?」
◇
「アルトラ様、部屋のカードキーです。どうぞ」
「ありがとう! 今日もチェックインしてもらえて助かったよ!」
こういう時に信用のある騎士が付いてくれてると助かる。
私だけでチェックインしようものなら、多分また本人証明が必要だろうし。まあ、今回はきちんと身分証明書を作ってあるから、アクアリヴィアの時のような事態にはならないと思う。
もっとも……正式に国としての体を成したとは言え、まだアルトレリアのことは七大国会談に留まっているようなものだから、「アルトレリア? どこの国ですか?」となる可能性も大分高めだけど。
そういうところを考えると、エミリーさんが手続きしてくれるのは凄くありがたい。
従業員さんが部屋まで案内してくれる。その道中――
「あれ? あんた、半年くらい前にもうちに泊まらなかったかい? この前も確か騎士様の護衛が付いてたような……」
「あ、はい! 今回もお世話になります! あの時壊されたお風呂は直りましたか?」
「ああ! 穴も綺麗さっぱり塞いでくれて、数日後にはお風呂も再開できたよ! それにしても、あんた何だか今日やってたテレビで探してるっていう救国の乙女に似てるね~、まさか本人とか? んなわけないか~、アッハッハ!」
うっ! ここでも『救国の乙女』……これ、この国出るまで続くのかしら?
「ア……アハハ……似てるだけですよ……」
しかし何だか豪快な人だな。前来た時こんなアクの強い人が居たの気付かなかったわ。
旅館の女将さんのような威厳を放っているが、別にそういうわけではなく、普通の従業員らしい。しゃべり方が完全におばちゃんだけど、見た目は二十代にしか見えない。多分長命の種族ね。その口調から考えると顔は広そうだ。
◇
部屋に着いた。
「では、ごゆるりとお過ごしください」
部屋に着いた時の口調は一転してマニュアル対応のように丁寧。女将さん然とした従業員は案内が終わって持ち場へ帰って行った。
「では私は基本的に部屋の外で護衛の任に就きます。部屋の前にいない場合は私の借りた部屋にいますので、何かご入用のことがありましたら声をおかけください」
と言って、私の部屋の前で護衛をしようとするエミリーさん。
「そんなところにいないで、部屋入ったら良いのに。この国ってそんなに物騒でもないんでしょ?」
「ですが、一応護衛としてお付きしているので……」
「それに私って非公式で来てるし、世間一般から見て要人ってわけでもないから、そんなところで騎士の、しかも上位階級である白天使が護衛なんかしてたら『ここに非公式の要人がいますよ』って言ってるようなもんだと思うけど……」
「う……確かにそうですね……」
「明日どこへ観光に行こうかと考えているから、意見してもらえないかしら?」
「う~ん……そうですね……私で良ければ。あ、それじゃあ私観光案内のパンフレット貰って来ます」
「いや、さっきチェックインカウンター通り過ぎる時に一通り貰って来たから大丈夫」
と言うわけで部屋へ入ってもらった。
早速パンフレットを見る。
「えーと、美術館、博物館、科学館、雷雲観光、景観が綺麗なところってのは無いのね」
「景観って何ですか?」
「景観ってのは……見る価値のある景色ってとこかな」
「地球では景色を見て楽しむのですか?」
「そうだね。綺麗な景色を見て心が洗われるとか言うけど」
「冥球では景色を楽しめるところは無いですからね。エレアースモも同様で、今までは太陽が無かったので、景色を見ようとしたところで、真っ暗で何も見えないと言うか……この場所は頻繁に稲光がするので、それに照らされて形くらいは見えますけど……その風景を楽しもうという気にはならないですね」
常に真っ暗だから、風景を見て楽しもうって慣習は無いわけか。
「風景を楽しむと言うなら、その中では雷雲観光が一番近いかもしれませんね」
「これ、目に留まった時に気になったんだけどどんなことやるの?」
「雷雲溜まり近くまで行って、稲光のフラッシュを楽しむという感じです。確かに綺麗ではあるので、今アルトラ様が仰ってたように風景を楽しむということの一つになるんじゃないかと」
日本人が桜を見に行く感覚に近いのかな?
「へ、へぇ~、あ、危なくないの?」
「もちろん危ないですよ! 雷雲溜まりなんてわざわざ行くところじゃないですし! あ、でも今は太陽が出来たので綺麗と思えるかどうかすらわからないですね」
「あ、それなら大丈夫、あの太陽による青空はこの街付近だけだから雷の国首都を離れれば真っ暗よ」
「………………」
「………………」
「……あの……それ、他人に話して大丈夫なことなんですか?」
……
…………
………………
あっ! しまった! これ秘密なんだ! 私と関連付けて考えられたらまずい!
「いいい、今のは聞かなかったことに!」
「あ、大丈夫ですよ。私はアルトラ様のお世話をさせていただく関係上、アスモデウス様からあの太陽がアルトラ様と関係あることを騎士団で唯一知らされていますから」
「そうなの? い、一応言っておくけど他言無用で」
「心得てます。この話題は国家機密に指定されまして、太陽について知ってる者以外のところでしゃべったら、私重罪で投獄されちゃいますから」
そ、そこまで!? アスモが気を利かせてくれてるってことなのかもしれないけど。投獄はちょっとやり過ぎな気も……
「は、話を戻そうか」
う~ん……しかし、雷雲観光はパスかな。そもそも雷恐がるリディアが行きたいって言うとは思えないし。
「リディア、雷、ピカピカ光って綺麗らしいけど、見に行きたい?」
「行きたくなイ! 恐イ!」
やっぱりね。じゃあ他のパンフはどうかな?
「シーブウォッチング、バードウォッチング、サンダーマウンテン登山」
「あ、それらも雷に耐性の無い他国の方は行かない方が無難だと思います」
「何で?」
「全部危険なんですよ。電気を大量に蓄えた生物を見に行くツアーだったり、雷がよく落ちる山へ登ったりと。どこもピカピカ光って綺麗ではあるんですけど……」
ああ、この“シープウォッチング”って以前捕まえた『デンキヒツジ』のことか。確かに全身で帯電してて危険だわ。耐性の無い人が触ったら黒焦げになるかも。でも毛を刈りまくっちゃったけどこの観光は成り立ってるのかしら? (第121話、第198話参照)
じゃあ“バードウォッチング”は多分『サンダラバード』のことね。
サンダーマウンテンって、以前雷平原を歩いた時に遠くに見えてた、一番高い山のことかな? 雨のごとくめちゃくちゃ大量に雷が落ちてたっけ。あんなところ登ってどうするのかしら?
あ、よく見たらパンフレットの表紙にでかでかと『危険な観光地!』って書いてある。
中に「何が起こっても当旅行会社は一切の責任を負いかねます」って書いてあるわ。死んでも自己責任になるように誓約書も書かされるかもしれない。
「よく作ったなこんな危険なパンフレット……」
「それでも行きたいという命知らずな……ゴホン……もとい、奇特な方がいるので、少しばかりの需要はあるのですよ」
「死んだらどうするの?」
「もちろん自己責任です。行く前に死亡保険に入らされます」
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