262 / 486
第10章 アルトレリアの生活改善編(身分証明を作ろう)
第258話 死神に憑かれた……
しおりを挟む
で、カイベルによると、次に死神が私のところに来るのは三ヶ月後って聞いたはずだけど……
「…………何であなたが我が家にいるの?」
『あのお菓子美味しかったので……また食べたくなりました』
「ここであげないと、もしかして魂狩られるの?」
『いえ、契約上そんなことはできません。あなたたち魔人や天使も契約を大事にすると思いますが、私たち神の眷属も契約を最も重要としていますので』
「じゃあ、あげる必要も無いよね?」
『わかりました、ではずっとあなたを見続けることにします』
「お好きにどうぞ」
二日後――
と、言ってしまったのを少々後悔していた……あれからずーっと後ろをついて四六時中見られてる……
後ろからも視線を感じるし、時折前に回ってガン見される……私以外には見えてないから他人と話をしている間にすら目線を合わせてくるからキツい……
寝てる時も視線を感じて何度も起きるし……
お風呂とトイレの時は流石に外に居てくれるけど……
私にストレスを与える作戦か! そしてあわよくばお菓子を差し出させるつもりだな!
三日後――
「さて、今日も朝の日課の散歩兼パトロールに行ってくるかな」
死神は追ってくるわね……ずっと追いかける気かしら?
鏡で自分の顔を見たら、少しやつれて見えた。視線攻撃というのは、思った以上に精神を削られるらしい。
本当の意味で『死神に憑かれた』みたいになってしまった……
今日は第二地区へパトロール。
「アルトラ様! こちらへ移住させていただいたお蔭で、随分と健康的な体型になってきましたよ!」
最近レッドトロルの副リーダーに任命したアルベロとフィリオリーナ。
リーダーに任命したジュゼルマリオは、第一地区の役所に常駐ということで、第二地区をまとめる者がいなかったため、副リーダーの役職を作って男女一人ずつをそこに据えた。
近況報告に来てくれたみたいだ。
三ヶ月前、この町を襲撃に来た時の彼らはガリッガリで見ていられないような気の毒な体型だったが、この町に移り住んだことで健康的な体型に変わって来たらしい。
まあ……彼らレッドトロルたちもトロルたちと体質が似ているらしくて、役所に来ているジュゼルマリオの話では数日で健康的な体型にはなってたらしいんだけどね。今まで話す機会も無かっただけで……
アルベローチェと会話している最中、死神がまたもあっち側に回ってガン見してくる……
「ですので、今度は◎△$♪×¥●&%#――」
ああ、話しかけられてるのに、死神が気になり過ぎて、途中から頭に入ってこない……
「アルトラ様?」
「はい!」
「どこかお身体が優れないのでしょうか?」
「いえ、大丈夫です。いや、やっぱりちょっとめまいがしてきたので、失礼しますね。報告については後日もう一度聞きたいと思います」
「は、はぁ、お大事になさってください」
死神に話しかける。
「何で前に回ってガン見するの?」
『プレッシャーかけようと思いまして』
ニヒヒと笑いながら話してくる。
まるでお転婆な少女の屈託のない笑顔だ……
なるほど、そうやって精神的に追い詰めて私にお菓子を差し出させようって魂胆なのね。
その後も、新しい町を見回ろうとする私を視線で邪魔してくる……
五日経ったアルトラ宅の食卓――
「アルトラ~、何か最近ピリピリしてるナ、それに何か疲れてるようナ……何かあったのカ?」
今あなたの隣で、私をガン見している死神の所為よ……
見られるだけでも、こんなにストレス溜まるとは……
お菓子一つあげるだけで邪魔されなくなるなら、それが良いかもしれない……
◇
「ねえ死神さん、ずっと私に張り付いてるけど、他の仕事はしなくても良いの?」
『ご心配には及びません。夜あなたが眠っている間に済ませてますので』
「いつまで張り付いてるの?」
『そうですねぇ……契約が切れるまでですかね。亡者の脱走ってそれほど多いわけではないので、夜だけでも事足りるし日中は暇なんですよ。それにあなたは色んなところに足を運ぶので付いて行くのも楽しいですし』
マジで!?
カイベルの話では三ヶ月ほどの契約なんじゃないかって予想してたから、私は後三ヶ月張り付かれるってことなのか……
でも、『契約が切れる=私を殺せるようになる』ってことだよね?
で、再契約したらまた三ヶ月張り付かれると……これって……私もう彼女から逃れることができないんじゃないの?
それに、彼女は私に付いてるのが『楽しい』って言ってた。ってことは、彼女は私とは対照的に全く疲れを感じていないのかもしれない。
それを聞いたら流石にもう無理だと根負けしてしまった……
だったら――
「ねえ、どうせ張り付いてるならこの町で生活してみない?」
『え……?』
何だ? 鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「ど、どうしたの? 私何か変なこと言ったかしら?」
『いえ、自分を地獄に送ろうとしている相手に対して言うセリフじゃないなと思いまして……そんなこと言われたのも初めてだったので、少々驚いてしまいました』
「でも、今のあなたは私を殺さないのよね?」
『はい、そうですね。あのお菓子だと大体三ヶ月くらいは猶予をあげます』
これはカイベルの言った通りね。
「その間は絶対に私を殺さないの?」
『絶対に殺しません。ただし、“ただ殺さないだけ”です。あなたが誰かに殺されるのを止めたりとかはしません』
「私が消滅するのは、死神側にとって大丈夫なことなの?」
『問題無いですね。“地獄外に存在する脱走亡者”という歪な魂が消えるだけなので、私たちには全く不利益は生じません』
「あっそう」
『しかし……一緒に暮らさないかと誘われたのは興味深いですね。まあ私には肉体が無いのでそれは叶いませんが』
何か今一瞬だけちょっと寂しそうな顔に見えたな。
「神の眷属なら肉体を用意することとか出来ないの?」
『出来ますよ。我々が肉体を得ることを受肉と言います。しかしそれには上の許可が必要なのですが、任務でもないのに『魔界の村で生活してみたいから肉体を貸してください』と言ったところで認められることはないでしょう』
「それって、肉体があれば良いの?」
『死んだ他人の身体に入れということですか?』
「ううん、私が新しく肉体を作れるけど」
そう、『命』を持たない『ただの肉体』だけなら作ることはできる。作ってもただ動かないというだけで。
もっとも……それに入って動かせるかどうかは試してみないとわからないが……
『肉体を作る? そんな神にも等しいことが出来るわけが……』
「うん、まあそう思うよね……私も言われただけじゃ到底信じられないし……まあ命=魂は作れないから神様ではないんだけど。神様の能力の下位互換って感じかな」
『そ、そんなことが出来るんなら、是非とも見てみたいところですね』
「じゃあ、あなたに似せて作ってみるね」
創成魔法で彼女にソックリな肉体を作る。
外側はもちろんのこと、内蔵、血管、脳、神経、全てが機能するように作る。
ちょうど『BLEACHing』っていう死神が活躍する漫画に登場する『義骸』みたいなものだ。
義骸と呼称しても良いんだけど、何だか『骸』に死体のイメージが強い……
人間界には義手義足って言葉がちゃんとあるから、『義体』と呼称することにする。
人の身体を創ったのは初めてだけど、内蔵も血管も脳も神経も自分が全て持っている機能のためなのか、特に問題は無さそうだ。
まあ……細かい部分に不具合があるかもしれないけど、死神の彼女は元々魂だけの存在だから出たり入ったりできるだろうし、不具合がある度にすり合わせていけば良いでしょう。
『!? こ……こんなことが……あなたは存在してて良い生物なのでしょうか? ここで殺しておくべきでは……?』
「ぶ、物騒こと言わないでもらえる? それに私もう死んでるし。契約上、私に手出しできるのは一年後なのよね?」
『そうですが……これは上にお伺いを立てる必要があるようです……』
「あの……黙っててもらうことは?」
『残念ながら、動かないとは言え、生物の肉体を作り出せるような能力は危険過ぎて見過ごすことはできません』
「あ、悪用はしないと誓いますから!」
『それもお伺いを立ててからです。下級の神である私の一存では決められません。これは急を要する問題なので一旦失礼します!』
闇の中に消えてしまった……
この決定如何では、私は処分されることになるのかな……?
この作った身体どうしよう? また戻ってくるかもしれないし、放置しておくと腐っちゃうからとりあえず亜空間収納ポケットにでも入れておくか。
「…………何であなたが我が家にいるの?」
『あのお菓子美味しかったので……また食べたくなりました』
「ここであげないと、もしかして魂狩られるの?」
『いえ、契約上そんなことはできません。あなたたち魔人や天使も契約を大事にすると思いますが、私たち神の眷属も契約を最も重要としていますので』
「じゃあ、あげる必要も無いよね?」
『わかりました、ではずっとあなたを見続けることにします』
「お好きにどうぞ」
二日後――
と、言ってしまったのを少々後悔していた……あれからずーっと後ろをついて四六時中見られてる……
後ろからも視線を感じるし、時折前に回ってガン見される……私以外には見えてないから他人と話をしている間にすら目線を合わせてくるからキツい……
寝てる時も視線を感じて何度も起きるし……
お風呂とトイレの時は流石に外に居てくれるけど……
私にストレスを与える作戦か! そしてあわよくばお菓子を差し出させるつもりだな!
三日後――
「さて、今日も朝の日課の散歩兼パトロールに行ってくるかな」
死神は追ってくるわね……ずっと追いかける気かしら?
鏡で自分の顔を見たら、少しやつれて見えた。視線攻撃というのは、思った以上に精神を削られるらしい。
本当の意味で『死神に憑かれた』みたいになってしまった……
今日は第二地区へパトロール。
「アルトラ様! こちらへ移住させていただいたお蔭で、随分と健康的な体型になってきましたよ!」
最近レッドトロルの副リーダーに任命したアルベロとフィリオリーナ。
リーダーに任命したジュゼルマリオは、第一地区の役所に常駐ということで、第二地区をまとめる者がいなかったため、副リーダーの役職を作って男女一人ずつをそこに据えた。
近況報告に来てくれたみたいだ。
三ヶ月前、この町を襲撃に来た時の彼らはガリッガリで見ていられないような気の毒な体型だったが、この町に移り住んだことで健康的な体型に変わって来たらしい。
まあ……彼らレッドトロルたちもトロルたちと体質が似ているらしくて、役所に来ているジュゼルマリオの話では数日で健康的な体型にはなってたらしいんだけどね。今まで話す機会も無かっただけで……
アルベローチェと会話している最中、死神がまたもあっち側に回ってガン見してくる……
「ですので、今度は◎△$♪×¥●&%#――」
ああ、話しかけられてるのに、死神が気になり過ぎて、途中から頭に入ってこない……
「アルトラ様?」
「はい!」
「どこかお身体が優れないのでしょうか?」
「いえ、大丈夫です。いや、やっぱりちょっとめまいがしてきたので、失礼しますね。報告については後日もう一度聞きたいと思います」
「は、はぁ、お大事になさってください」
死神に話しかける。
「何で前に回ってガン見するの?」
『プレッシャーかけようと思いまして』
ニヒヒと笑いながら話してくる。
まるでお転婆な少女の屈託のない笑顔だ……
なるほど、そうやって精神的に追い詰めて私にお菓子を差し出させようって魂胆なのね。
その後も、新しい町を見回ろうとする私を視線で邪魔してくる……
五日経ったアルトラ宅の食卓――
「アルトラ~、何か最近ピリピリしてるナ、それに何か疲れてるようナ……何かあったのカ?」
今あなたの隣で、私をガン見している死神の所為よ……
見られるだけでも、こんなにストレス溜まるとは……
お菓子一つあげるだけで邪魔されなくなるなら、それが良いかもしれない……
◇
「ねえ死神さん、ずっと私に張り付いてるけど、他の仕事はしなくても良いの?」
『ご心配には及びません。夜あなたが眠っている間に済ませてますので』
「いつまで張り付いてるの?」
『そうですねぇ……契約が切れるまでですかね。亡者の脱走ってそれほど多いわけではないので、夜だけでも事足りるし日中は暇なんですよ。それにあなたは色んなところに足を運ぶので付いて行くのも楽しいですし』
マジで!?
カイベルの話では三ヶ月ほどの契約なんじゃないかって予想してたから、私は後三ヶ月張り付かれるってことなのか……
でも、『契約が切れる=私を殺せるようになる』ってことだよね?
で、再契約したらまた三ヶ月張り付かれると……これって……私もう彼女から逃れることができないんじゃないの?
それに、彼女は私に付いてるのが『楽しい』って言ってた。ってことは、彼女は私とは対照的に全く疲れを感じていないのかもしれない。
それを聞いたら流石にもう無理だと根負けしてしまった……
だったら――
「ねえ、どうせ張り付いてるならこの町で生活してみない?」
『え……?』
何だ? 鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「ど、どうしたの? 私何か変なこと言ったかしら?」
『いえ、自分を地獄に送ろうとしている相手に対して言うセリフじゃないなと思いまして……そんなこと言われたのも初めてだったので、少々驚いてしまいました』
「でも、今のあなたは私を殺さないのよね?」
『はい、そうですね。あのお菓子だと大体三ヶ月くらいは猶予をあげます』
これはカイベルの言った通りね。
「その間は絶対に私を殺さないの?」
『絶対に殺しません。ただし、“ただ殺さないだけ”です。あなたが誰かに殺されるのを止めたりとかはしません』
「私が消滅するのは、死神側にとって大丈夫なことなの?」
『問題無いですね。“地獄外に存在する脱走亡者”という歪な魂が消えるだけなので、私たちには全く不利益は生じません』
「あっそう」
『しかし……一緒に暮らさないかと誘われたのは興味深いですね。まあ私には肉体が無いのでそれは叶いませんが』
何か今一瞬だけちょっと寂しそうな顔に見えたな。
「神の眷属なら肉体を用意することとか出来ないの?」
『出来ますよ。我々が肉体を得ることを受肉と言います。しかしそれには上の許可が必要なのですが、任務でもないのに『魔界の村で生活してみたいから肉体を貸してください』と言ったところで認められることはないでしょう』
「それって、肉体があれば良いの?」
『死んだ他人の身体に入れということですか?』
「ううん、私が新しく肉体を作れるけど」
そう、『命』を持たない『ただの肉体』だけなら作ることはできる。作ってもただ動かないというだけで。
もっとも……それに入って動かせるかどうかは試してみないとわからないが……
『肉体を作る? そんな神にも等しいことが出来るわけが……』
「うん、まあそう思うよね……私も言われただけじゃ到底信じられないし……まあ命=魂は作れないから神様ではないんだけど。神様の能力の下位互換って感じかな」
『そ、そんなことが出来るんなら、是非とも見てみたいところですね』
「じゃあ、あなたに似せて作ってみるね」
創成魔法で彼女にソックリな肉体を作る。
外側はもちろんのこと、内蔵、血管、脳、神経、全てが機能するように作る。
ちょうど『BLEACHing』っていう死神が活躍する漫画に登場する『義骸』みたいなものだ。
義骸と呼称しても良いんだけど、何だか『骸』に死体のイメージが強い……
人間界には義手義足って言葉がちゃんとあるから、『義体』と呼称することにする。
人の身体を創ったのは初めてだけど、内蔵も血管も脳も神経も自分が全て持っている機能のためなのか、特に問題は無さそうだ。
まあ……細かい部分に不具合があるかもしれないけど、死神の彼女は元々魂だけの存在だから出たり入ったりできるだろうし、不具合がある度にすり合わせていけば良いでしょう。
『!? こ……こんなことが……あなたは存在してて良い生物なのでしょうか? ここで殺しておくべきでは……?』
「ぶ、物騒こと言わないでもらえる? それに私もう死んでるし。契約上、私に手出しできるのは一年後なのよね?」
『そうですが……これは上にお伺いを立てる必要があるようです……』
「あの……黙っててもらうことは?」
『残念ながら、動かないとは言え、生物の肉体を作り出せるような能力は危険過ぎて見過ごすことはできません』
「あ、悪用はしないと誓いますから!」
『それもお伺いを立ててからです。下級の神である私の一存では決められません。これは急を要する問題なので一旦失礼します!』
闇の中に消えてしまった……
この決定如何では、私は処分されることになるのかな……?
この作った身体どうしよう? また戻ってくるかもしれないし、放置しておくと腐っちゃうからとりあえず亜空間収納ポケットにでも入れておくか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
63
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる