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第10章 アルトレリアの生活改善編(身分証明を作ろう)
第252話 その名はフレアハルト
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「アルトラ様、長らく疑問に思ってたのですが、フレハルさんたちはもうそろそろ種族名を明かしたりしないんですか? 身分証明を作るなら良い機会だと思うのですが……」
「前々から思ってましたけど、フレハルさんたち、ただの亜人じゃないですよね。この名簿を見ても私たちトロル族と比べると年齢が突出してますし、実は魔人だったりとか? 二百二十二歳って……」
え!? 二百二十二歳!?
あっ……! そっかカイベルに頼めば完璧だと思ったから確認したはずが見落としてた! 彼らの年齢を誤魔化す指示をしていない!
フレアハルトの名前はフレハルになってるけど、生年月日の欄には『千八百年八月八日』、年齢の欄には『満二百二十二歳』の文字。アリサとレイアも同様に『満二百二十三歳』と『満二百二十一歳』と書かれている。
これはもう誤魔化すのも難しいか……
フレアハルトと顔を見合わせ双方頷く。
「もう誤魔化すことも出来そうもないので、フレハルの正体を明かします。お察しの通りただの亜人ではありません。実を言うとあなたたちトロルの畏怖の対象であったため、恐がらせないようにコミュニケーションがきちんと取れるようになってから明かそうと、正体についてずっと伏せていました。ただ、彼らがここに来た時の都合上、役所長であるリーヴァントだけには既に知らせ、時が来るまで黙っててもらうようお願いしました」
「リーヴァントさんは最初から知ってたのか」
「ええ……まあ」
「畏怖の対象?」
「俺たちが恐ろしいと思っている人物ってことか?」
「う~ん、でもこの町が村だった頃から物凄く貢献してくれてるよね?」
「今更恐ろしい存在って言われても、恐がるところは無いかな~」
町の人たちからの評判は上々ね。これなら明かしても大丈夫かな。
「フレハル、もう明かしてしまうけど良いよね?」
「良いも何も、お主が許可してくれるならいつでも良いぞ!」
「これによっては町に住みづらくなるかもしれないけど……」
「その時には山へ帰るだけだ」
「ではみんな聞いてください! このフレハルの正体は、実は赤龍峰の主、赤竜王フレアハルトなのです!」
シンと静まり返る。
「フレアハルト? まさかぁ~? ご先祖様から伝わってるけど狂暴だったって聞いてるぞ? 一度怒るとこの辺りの大地が焼け野原になるって。フレハルさんの性格とは合わないぞ?」
「あなたそんなことしてたの?」
「いや、我はやったことないぞ。やってたとしたら父上かおじい様か。父上の時代にはもう亜人との関わりは一線を引いていたからそれより前だと思うが……」
ってことは五百年くらい前になるのかな?
元々トロルたちの頭はあまり良い方ではないから、想像力もそれほど豊かではなかったはず。つまり、ご先祖様が実際に体験したことが伝わっている可能性はかなり高い。
「火山の大噴火はフレアハルトが激怒したからという伝説も……」
「そうなの?」
「そんなわけがない。いくら高い魔力を持ってても、火山の噴火までは操れぬよ」
かなり誇張して伝わってる気がするな……
伝承されたことの一部、例えば『恐ろしい』って部分だけが独り歩きしてる可能性もあるわね。
「あと、生贄として若い女を差し出させていたとか」
「あなた、そんなことまでしてたの?」
「我はしておらんよ! そもそも火山内部に住んでれば、食べる必要も無い。おじい様からも生贄として食っていたという話は聞いたことがない。あったとするなら恐らくおじい様よりずっと前の頃だろうな」
火山に住む限り食事の必要が無いってことは、移り住む前のレッドドラゴンたちの頃ってことかな。
「この地でそんなに知れ渡ってる人が、この町で普通に暮らしてるってこと?」
「もしそうだったとしても、フレハルさんの性格が変わるわけではないんでしょ?」
「じゃあ全く問題無いんじゃない?」
暴竜『フレアハルト』って知らせてもこの反応なら大丈夫かな?
しかし、それらを聞いていたフレアハルトが思うところがあるのか、何か行動しだした。
「アリサ、これを持っていてくれ」
「はい」
着ていた服を脱いでアリサに渡した。
何する気だ?
「お主ら、これを見てもそう言えるか?」
フレアハルトが、町民から少し離れたところへ移動し、ドラゴン形態へと姿を変える。
みるみるうちに巨大化するフレアハルトを見て、今まで正体明かされても大丈夫だろうと和気あいあいとしていた場の雰囲気がガラリと変わる。
その巨体に、この場にいる全員が身をすくめ、ピリっとした緊張感に包まれた。
恐怖の表情を隠しきれない者も大勢いる。
ワイバーンを見たことがある町民ですら、身をすくめている。大きさ的にはワイバーンとそれほど変わらないと思うが魔力の圧の桁が違うらしい。
「で、でかい……」
「恐い……」
「こんなに恐ろしい者がこの町にいたなんて……」
これはちょっと雰囲気悪いな……やっぱり正体を明かしたのはまずかったか……
完全に私のミスだ。名簿さえきちんとチェックしていれば……
「やはり……この姿を見せるのは早かったか……アリサ、レイア、仕方ない帰る準備をしよう……我らが居るだけで恐がらせてしまうのでは、ここに住み続けるわけにはいかぬ……」
「「はい……」」
「皆の者、驚かせてすまないな……」
と、その時――
「いや~、カッコイイッスね! こんな巨大で強そうな竜と知り合いなんて、自分は鼻が高いッスよ!」
「ホントですね! こんな竜がこの町を守ってくれてるなら、防衛面でも安泰ですよ!」
ナナトスとカンナーが、フレアハルトを褒めちぎる。
この様子……あ、そうか、この二人はあの時にドラゴン形態を目にしているから、この姿も知っているんだ。 (第61話参照)
「お主ら……」
「自分は全然OKだと思うんスよね。強くて、俺っちたちの味方なんて、最高じゃないッスか!」
「身体が大きいって言うなら、この町にはクラーケンのリディアちゃんだっていますからね」
ナナトスとカンナーのナイスフォローで、再びこの場の雰囲気が一変する。
「そ、そうだよな! ただでかいだけで、中身はフレハルさんじゃないか!」
「今までだってトラブル無かったんだから、今までと変わらない対応で大丈夫よね!」
「むしろ今まで明かせなかったのは辛かったよな、俺たちが恐がるかもしれないと配慮してくれてたんだもんな!」
「俺はこの巨体を顎で使ってたんだな……でもまあ、これからも頑張ってもらうぞ!」
「背中に乗せて空飛んで~」
「う、うむ、わかった、だがまた今度な」
「と言うか……」
((((この巨体を屈服させたって、アルトラ様は何者なの!?))))
フレアハルトは人型に戻った。
と、同時にチラッと町民に目を向けると――
あれ~? 何だかフレアハルトじゃなくて私に視線が集中している気がするんだけど……気のせいかしら?
「ま、まあ、丸く収まったみたいで良かったわ。みんなも、今後もフレハルたちがこの町に住むのは問題無いよね?」
「問題無いです!」
「むしろ心強いわ!」
良かった……きちんと受け入れられたみたいね。
これでもうフレアハルトの正体に対して気を揉むことも無いだろう。
ただ……もしかしたらフレアハルトの仕事を増やしてしまったかもしれないが……あの大きさなら色んな物運べるし。
さて、じゃあ本題の身分証明の話に戻ろうか。
「前々から思ってましたけど、フレハルさんたち、ただの亜人じゃないですよね。この名簿を見ても私たちトロル族と比べると年齢が突出してますし、実は魔人だったりとか? 二百二十二歳って……」
え!? 二百二十二歳!?
あっ……! そっかカイベルに頼めば完璧だと思ったから確認したはずが見落としてた! 彼らの年齢を誤魔化す指示をしていない!
フレアハルトの名前はフレハルになってるけど、生年月日の欄には『千八百年八月八日』、年齢の欄には『満二百二十二歳』の文字。アリサとレイアも同様に『満二百二十三歳』と『満二百二十一歳』と書かれている。
これはもう誤魔化すのも難しいか……
フレアハルトと顔を見合わせ双方頷く。
「もう誤魔化すことも出来そうもないので、フレハルの正体を明かします。お察しの通りただの亜人ではありません。実を言うとあなたたちトロルの畏怖の対象であったため、恐がらせないようにコミュニケーションがきちんと取れるようになってから明かそうと、正体についてずっと伏せていました。ただ、彼らがここに来た時の都合上、役所長であるリーヴァントだけには既に知らせ、時が来るまで黙っててもらうようお願いしました」
「リーヴァントさんは最初から知ってたのか」
「ええ……まあ」
「畏怖の対象?」
「俺たちが恐ろしいと思っている人物ってことか?」
「う~ん、でもこの町が村だった頃から物凄く貢献してくれてるよね?」
「今更恐ろしい存在って言われても、恐がるところは無いかな~」
町の人たちからの評判は上々ね。これなら明かしても大丈夫かな。
「フレハル、もう明かしてしまうけど良いよね?」
「良いも何も、お主が許可してくれるならいつでも良いぞ!」
「これによっては町に住みづらくなるかもしれないけど……」
「その時には山へ帰るだけだ」
「ではみんな聞いてください! このフレハルの正体は、実は赤龍峰の主、赤竜王フレアハルトなのです!」
シンと静まり返る。
「フレアハルト? まさかぁ~? ご先祖様から伝わってるけど狂暴だったって聞いてるぞ? 一度怒るとこの辺りの大地が焼け野原になるって。フレハルさんの性格とは合わないぞ?」
「あなたそんなことしてたの?」
「いや、我はやったことないぞ。やってたとしたら父上かおじい様か。父上の時代にはもう亜人との関わりは一線を引いていたからそれより前だと思うが……」
ってことは五百年くらい前になるのかな?
元々トロルたちの頭はあまり良い方ではないから、想像力もそれほど豊かではなかったはず。つまり、ご先祖様が実際に体験したことが伝わっている可能性はかなり高い。
「火山の大噴火はフレアハルトが激怒したからという伝説も……」
「そうなの?」
「そんなわけがない。いくら高い魔力を持ってても、火山の噴火までは操れぬよ」
かなり誇張して伝わってる気がするな……
伝承されたことの一部、例えば『恐ろしい』って部分だけが独り歩きしてる可能性もあるわね。
「あと、生贄として若い女を差し出させていたとか」
「あなた、そんなことまでしてたの?」
「我はしておらんよ! そもそも火山内部に住んでれば、食べる必要も無い。おじい様からも生贄として食っていたという話は聞いたことがない。あったとするなら恐らくおじい様よりずっと前の頃だろうな」
火山に住む限り食事の必要が無いってことは、移り住む前のレッドドラゴンたちの頃ってことかな。
「この地でそんなに知れ渡ってる人が、この町で普通に暮らしてるってこと?」
「もしそうだったとしても、フレハルさんの性格が変わるわけではないんでしょ?」
「じゃあ全く問題無いんじゃない?」
暴竜『フレアハルト』って知らせてもこの反応なら大丈夫かな?
しかし、それらを聞いていたフレアハルトが思うところがあるのか、何か行動しだした。
「アリサ、これを持っていてくれ」
「はい」
着ていた服を脱いでアリサに渡した。
何する気だ?
「お主ら、これを見てもそう言えるか?」
フレアハルトが、町民から少し離れたところへ移動し、ドラゴン形態へと姿を変える。
みるみるうちに巨大化するフレアハルトを見て、今まで正体明かされても大丈夫だろうと和気あいあいとしていた場の雰囲気がガラリと変わる。
その巨体に、この場にいる全員が身をすくめ、ピリっとした緊張感に包まれた。
恐怖の表情を隠しきれない者も大勢いる。
ワイバーンを見たことがある町民ですら、身をすくめている。大きさ的にはワイバーンとそれほど変わらないと思うが魔力の圧の桁が違うらしい。
「で、でかい……」
「恐い……」
「こんなに恐ろしい者がこの町にいたなんて……」
これはちょっと雰囲気悪いな……やっぱり正体を明かしたのはまずかったか……
完全に私のミスだ。名簿さえきちんとチェックしていれば……
「やはり……この姿を見せるのは早かったか……アリサ、レイア、仕方ない帰る準備をしよう……我らが居るだけで恐がらせてしまうのでは、ここに住み続けるわけにはいかぬ……」
「「はい……」」
「皆の者、驚かせてすまないな……」
と、その時――
「いや~、カッコイイッスね! こんな巨大で強そうな竜と知り合いなんて、自分は鼻が高いッスよ!」
「ホントですね! こんな竜がこの町を守ってくれてるなら、防衛面でも安泰ですよ!」
ナナトスとカンナーが、フレアハルトを褒めちぎる。
この様子……あ、そうか、この二人はあの時にドラゴン形態を目にしているから、この姿も知っているんだ。 (第61話参照)
「お主ら……」
「自分は全然OKだと思うんスよね。強くて、俺っちたちの味方なんて、最高じゃないッスか!」
「身体が大きいって言うなら、この町にはクラーケンのリディアちゃんだっていますからね」
ナナトスとカンナーのナイスフォローで、再びこの場の雰囲気が一変する。
「そ、そうだよな! ただでかいだけで、中身はフレハルさんじゃないか!」
「今までだってトラブル無かったんだから、今までと変わらない対応で大丈夫よね!」
「むしろ今まで明かせなかったのは辛かったよな、俺たちが恐がるかもしれないと配慮してくれてたんだもんな!」
「俺はこの巨体を顎で使ってたんだな……でもまあ、これからも頑張ってもらうぞ!」
「背中に乗せて空飛んで~」
「う、うむ、わかった、だがまた今度な」
「と言うか……」
((((この巨体を屈服させたって、アルトラ様は何者なの!?))))
フレアハルトは人型に戻った。
と、同時にチラッと町民に目を向けると――
あれ~? 何だかフレアハルトじゃなくて私に視線が集中している気がするんだけど……気のせいかしら?
「ま、まあ、丸く収まったみたいで良かったわ。みんなも、今後もフレハルたちがこの町に住むのは問題無いよね?」
「問題無いです!」
「むしろ心強いわ!」
良かった……きちんと受け入れられたみたいね。
これでもうフレアハルトの正体に対して気を揉むことも無いだろう。
ただ……もしかしたらフレアハルトの仕事を増やしてしまったかもしれないが……あの大きさなら色んな物運べるし。
さて、じゃあ本題の身分証明の話に戻ろうか。
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