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第10章 アルトレリアの生活改善編(身分証明を作ろう)
第247話 魔界で過ごす節分
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今日は二月三日節分。
でも、残念なことに通貨制度開始に、七大国会談に、降雪にとバタバタしていたから、町中に周知する余裕が無かった……
そこで、今年は内々でやろうと思う。
玄関先に柊の葉 (に似た植物)に焼いたイワシに似た魚・イワナシの頭を刺したものを飾った。
しかし、この臭いキツいわ……生臭い……焼いてあるから余計に強烈に……
「何してるんダ、コレ? スンスンスン、良い匂いだナ」
え゛っ!? 良い匂い!? これが!?
私には生臭くて嫌な臭いとしか感じられないけど……
海の生物であるクラーケンの嗅覚には美味しそうな匂いと感じるのか。
でも、こういう臭いってなぜか食卓では大して気にならないのよね~。
「災いをもたらす鬼が嫌がって近寄らなくなるって言い伝えがあるのよ。聞いた話によると、柊の葉の棘で目を突かれたのが恐ろしくて近寄らくなくなり、イワシの臭いが嫌いだから近寄りたくなくなるとか」
ここに刺てあるのはイワナシだけど……
「へぇ~、こんなに良い匂いなのにナ」
とは言え、最近の日本で節分にこれやってる家を見たことがないが……多分臭いがキツめだから、徐々に廃れて行ったんだろうな……
で、手軽にやれる豆まきの文化だけ残ったと。最近のテレビでもやってることは豆まきの話題ばかりで、柊のひの字も見当たらない。
このアルトレリアでも文化として広めようと、今回は自分だけで試しにやってみたけど……これは広がらなくて良いわ。臭い……
「このイワナシ、後で食べて良いカ?」
「まあ良いんじゃない? でも最近魚食べなかったのに?」
「もうお菓子ばっか食べるのもやめル。続くと飽きてきタ。やっぱりバランスが大事だナ……」
「あ、そう」
こうやって子供は成長していくのね。
「カイベル~、大豆は用意できた?」
「はい、芽が出ないよう煎っておきました」
「アルトラ~、この豆はどうするんダ? これも食べて良いカ?」
「まだダメ、家の外と内に撒くのよ」
「撒ク? 何デ?」
「鬼は、大豆が嫌いだから大豆を外に撒いて、鬼が近付かないようにするの。豆には『魔滅』っていう語呂合わせの意味があってね邪気を払うものとされているの。それを鬼にぶつけて邪気を払ったから豆を嫌うんだってさ」
「へぇ~、でも鬼?って実際にいるよナ? それってイジメじゃないカ?」
え……? 実際にいる?
そうか……魔界って人間だけの世界ってわけじゃないから鬼って種族もいるのか!
だとすると、イジメ……種族迫害してることになるのかも……
ツノ生えてるやつならオーガとかは鬼に酷似してるし、考えようによってはツノ生えてる私は鬼なのか?
そういえば日本で言うところの『鬼』って、海外では『悪魔』って訳されるんだっけ。じゃあ半分悪魔のような姿の私はまさに鬼じゃん。
「イジメになる……のかなぁ? じゃあなんて掛け声にしようかな~?」
「掛け声? 何ノ?」
「私の故郷では豆撒く時『鬼は~外、福は~内』って言って撒いてたのよ」
「『福』って何ダ?」
「『幸せ』かな?」
「へぇ~、じゃあ、鬼のところは『悪いヤツ』にしたら良いんじゃないカ?」
日本では、その悪いヤツが鬼なんだけどな……
「『悪いヤツは~外、福は~内』とカ」
「語感悪いなぁ……」
「じゃあアルトラは何が良いんダ!!」
「う~ん……」
そこへカイベルが颯爽と助言を挟む。
「では、『隠』などどうでしょう?」
「なに『おぬ』って? 何かマヌケね。いないものみたい。ここには“居ぬ”みたいな」
「仰る通り、元々は『この世ならざる者』という意味があり、疫病や災いなど人の災害になるもののことを『隠』と呼んでいたそうです。これが転じて『鬼』という呼び名になり、人格化……今で言う擬人化して現在に伝わっています」
「へぇ~、じゃあ魔界に『隠』っていう種族はいないの?」
「いません」
「じゃあ、ここでは『おぬは~外、福は~内』って掛け声でやろうか、これなら迫害にもならないかも」
◇
「じゃあ豆まき始めるけど、用意は良い?」
「おう、いいゾ!」
「「おぬは~外! おぬは~外!」」
二人で豆を掴んで、窓から外へ投げつける。
「次は中ね」
「「福は~内! 福は~内!」」
最近はお菓子も投げるから、創成魔法で作ったお菓子を家の中へ投げた。
家の中に散らばった豆はカイベルがせっせと回収してくれている。
「このお菓子も食べて良いのカ?」
「もちろんよ!」
「豆ももう良いカ?」
「いいよ」
「わ~い、これでまたしばらくお菓子を食べられるナ」
余談だが、この大豆も大豆ではなく、巨大豆という豆らしい。
放っておくと、手のひら大くらいの大きさにまで成長してしまうため、地球の大豆程度に育ったところで収穫されるとか。
そんなでっかい豆食べにくいし、多分臭みとか味の低下とか起こるしね。
◇
「カイベル! 恵方巻は作ってある?」
「はい」
「節分って、やることいっぱいあるんだナ」
「かんぴょう・キュウリ・伊達巻・ウナギ・桜でんぶ・シイタケ煮・カニカマを使いました。かんぴょうはこの世界に存在していませんでしたので、ユウガオに似た植物の『ヨイガオ』を使って作りました」
ああ、この世界『夕方』が存在しないから、『夕顔』って言葉が存在してないのかな?
「ウナギは、またヤマタノオロチの幼体を、桜でんぶ、カニカマも手作りです。タイやタラに近い魚を使って作ってあります」
ああ、ウナギの代用はまた蛇なのね……本物のウナギはいないのかしら?
まあ美味しいから、素材が『蛇』ってところ以外は文句無いんだけど……
「そういえば、キノコ類って見たことないよね?」
「そうですね、乾燥地帯超えた灼熱地帯だったので根付かなかったのでしょう。菌類には湿度が必要ですから」
「このシイタケはどこから持って来たの?」
「厳密にはシイタケに似たものでシイタケではないですね。潤いの木の川の流域に育つようになった場所がありました。潤いの木の水しぶきが良い塩梅に育ちやすい環境を作ったようです。どなたかが見つければ、アルトレリアでも売られる時が来るかもしれませんね」
「毒は?」
「もちろんありません」
「じゃあ頂きましょうか」
「でっかい太巻きだナ……」
「二十センチあります」
私、関西出身じゃないからこんな長い太巻き一気食いしたことないよ……
「じゃあ、いただきマ~……」
「待った!」
「なんダ?」
「恵方巻にはいくつか食べ方の作法があるの」
「アルトラの言うことって、作法があるものばかりだナ」
「まあ、先人の教えだからね。恵方巻の作法は、食べ始めてから食べ終わるまでしゃべらないこと」
「いえ、先人というほど古くはないと思います。『恵方巻』の発祥は一九九八年頃で――」
「え゛っ!? 一九九八年!? つい最近じゃない!」
一九九八年ってことは二十四年前だから……私既に生まれてるわ……
「起源まで考えれば昭和にまで遡るようですが、『恵方巻』という名前になったのは平成になってからのようです。二〇〇〇年代に大手スーパーやコンビニの販売戦略により急速に全国へ広がった風習で、それ以前に『恵方巻』と呼ばれていたという文献は見つかっていません」
「そ、そうなんだ……」
「なぁ~、そろそろ食べて良いカ? 作法はどうするんダ?」
「ああ、はい、え~と、食べ始めてから終わるまでしゃべらないこと。これはしゃべったら福が逃げちゃうからなんだって。あと口を離しちゃいけない。『福を切る』ことになるから縁起が悪いらしい。食べきることができたら願いが叶うって言われてる」
「え~!! 二十センチもあるのに口離しちゃいけないのカ!?」
「では、こちらをお召し上がりください。こんなこともあろうかと半分の長さのものをご用意してあります」
「じゃあ、リディアは半分のにするナ」
「あと、食べる方角にも気を付けないといけない」
「物食べるのに方角があるのカ? アルトラって変なところに住んでたんだナ」
ホントに恵方って誰が考えてるのかしら?
「その年に縁起が良いって言う、『恵方』って方角があるのよ。カイベル、今年の恵方はどっち?」
「はい、『北北西微北』。厳密には三百四十五度の方角です。この場所からなら③の火山のある方向です」 (第30話参照)
北北西だけならまだしも、更に微北!?
細かいっ! そんな細かい方角考えたこともない!
「ってわけで、あっちの方向を見ながら、黙って食べるの」
「じゃあいただきま~ス」
……
…………
………………
大食いには自信あったけど、二十センチの太巻きは大変だ……特に呼吸が不自由なのが苦しい……
……
…………
………………
「ぷはっ! ごちそうさマ。アルトラまだ食ってるのカ? くすぐったらどうなるかナ~」
フッ……私の身体は攻撃を受け付けないからそんなことしても無駄よ。
と思っていたのだけど――
ツン
「ぶぷッ」
脇腹を突つかれた!
なぜかくすぐったい!
「どうダ! くすぐったいだロ? 口離セ!」
その後も脇腹を突つかれまくる。
何で!? 何で無効化が発生しないの!?
悪意が無いから!?
「ぷはぁっ、ああ……口離しちゃったじゃない!」
「アハハハハ」
悪意が無いくすぐり攻撃では、身体に対して害が無いから無効化が発生しないのかしら?
ここに来て初めて知った事実だわ。
口を離してしまったが、残りの恵方巻を頂く。
「余ったもう一本は切り分けてみんなで食べようか」
◇
「御夕飯はいかがいたしましょうか?」
「じゃあ、海鮮の恵方巻でも食べる?」
昼間のリベンジを!
「リディアまだお腹いっぱイ……太巻きかぶりつくのももう来年までいいヤ……お腹いっぱいだシ、口が疲れル……」
「あ、そう……」
残念ながらリベンジは来年に持ち越しとなった。
でも、残念なことに通貨制度開始に、七大国会談に、降雪にとバタバタしていたから、町中に周知する余裕が無かった……
そこで、今年は内々でやろうと思う。
玄関先に柊の葉 (に似た植物)に焼いたイワシに似た魚・イワナシの頭を刺したものを飾った。
しかし、この臭いキツいわ……生臭い……焼いてあるから余計に強烈に……
「何してるんダ、コレ? スンスンスン、良い匂いだナ」
え゛っ!? 良い匂い!? これが!?
私には生臭くて嫌な臭いとしか感じられないけど……
海の生物であるクラーケンの嗅覚には美味しそうな匂いと感じるのか。
でも、こういう臭いってなぜか食卓では大して気にならないのよね~。
「災いをもたらす鬼が嫌がって近寄らなくなるって言い伝えがあるのよ。聞いた話によると、柊の葉の棘で目を突かれたのが恐ろしくて近寄らくなくなり、イワシの臭いが嫌いだから近寄りたくなくなるとか」
ここに刺てあるのはイワナシだけど……
「へぇ~、こんなに良い匂いなのにナ」
とは言え、最近の日本で節分にこれやってる家を見たことがないが……多分臭いがキツめだから、徐々に廃れて行ったんだろうな……
で、手軽にやれる豆まきの文化だけ残ったと。最近のテレビでもやってることは豆まきの話題ばかりで、柊のひの字も見当たらない。
このアルトレリアでも文化として広めようと、今回は自分だけで試しにやってみたけど……これは広がらなくて良いわ。臭い……
「このイワナシ、後で食べて良いカ?」
「まあ良いんじゃない? でも最近魚食べなかったのに?」
「もうお菓子ばっか食べるのもやめル。続くと飽きてきタ。やっぱりバランスが大事だナ……」
「あ、そう」
こうやって子供は成長していくのね。
「カイベル~、大豆は用意できた?」
「はい、芽が出ないよう煎っておきました」
「アルトラ~、この豆はどうするんダ? これも食べて良いカ?」
「まだダメ、家の外と内に撒くのよ」
「撒ク? 何デ?」
「鬼は、大豆が嫌いだから大豆を外に撒いて、鬼が近付かないようにするの。豆には『魔滅』っていう語呂合わせの意味があってね邪気を払うものとされているの。それを鬼にぶつけて邪気を払ったから豆を嫌うんだってさ」
「へぇ~、でも鬼?って実際にいるよナ? それってイジメじゃないカ?」
え……? 実際にいる?
そうか……魔界って人間だけの世界ってわけじゃないから鬼って種族もいるのか!
だとすると、イジメ……種族迫害してることになるのかも……
ツノ生えてるやつならオーガとかは鬼に酷似してるし、考えようによってはツノ生えてる私は鬼なのか?
そういえば日本で言うところの『鬼』って、海外では『悪魔』って訳されるんだっけ。じゃあ半分悪魔のような姿の私はまさに鬼じゃん。
「イジメになる……のかなぁ? じゃあなんて掛け声にしようかな~?」
「掛け声? 何ノ?」
「私の故郷では豆撒く時『鬼は~外、福は~内』って言って撒いてたのよ」
「『福』って何ダ?」
「『幸せ』かな?」
「へぇ~、じゃあ、鬼のところは『悪いヤツ』にしたら良いんじゃないカ?」
日本では、その悪いヤツが鬼なんだけどな……
「『悪いヤツは~外、福は~内』とカ」
「語感悪いなぁ……」
「じゃあアルトラは何が良いんダ!!」
「う~ん……」
そこへカイベルが颯爽と助言を挟む。
「では、『隠』などどうでしょう?」
「なに『おぬ』って? 何かマヌケね。いないものみたい。ここには“居ぬ”みたいな」
「仰る通り、元々は『この世ならざる者』という意味があり、疫病や災いなど人の災害になるもののことを『隠』と呼んでいたそうです。これが転じて『鬼』という呼び名になり、人格化……今で言う擬人化して現在に伝わっています」
「へぇ~、じゃあ魔界に『隠』っていう種族はいないの?」
「いません」
「じゃあ、ここでは『おぬは~外、福は~内』って掛け声でやろうか、これなら迫害にもならないかも」
◇
「じゃあ豆まき始めるけど、用意は良い?」
「おう、いいゾ!」
「「おぬは~外! おぬは~外!」」
二人で豆を掴んで、窓から外へ投げつける。
「次は中ね」
「「福は~内! 福は~内!」」
最近はお菓子も投げるから、創成魔法で作ったお菓子を家の中へ投げた。
家の中に散らばった豆はカイベルがせっせと回収してくれている。
「このお菓子も食べて良いのカ?」
「もちろんよ!」
「豆ももう良いカ?」
「いいよ」
「わ~い、これでまたしばらくお菓子を食べられるナ」
余談だが、この大豆も大豆ではなく、巨大豆という豆らしい。
放っておくと、手のひら大くらいの大きさにまで成長してしまうため、地球の大豆程度に育ったところで収穫されるとか。
そんなでっかい豆食べにくいし、多分臭みとか味の低下とか起こるしね。
◇
「カイベル! 恵方巻は作ってある?」
「はい」
「節分って、やることいっぱいあるんだナ」
「かんぴょう・キュウリ・伊達巻・ウナギ・桜でんぶ・シイタケ煮・カニカマを使いました。かんぴょうはこの世界に存在していませんでしたので、ユウガオに似た植物の『ヨイガオ』を使って作りました」
ああ、この世界『夕方』が存在しないから、『夕顔』って言葉が存在してないのかな?
「ウナギは、またヤマタノオロチの幼体を、桜でんぶ、カニカマも手作りです。タイやタラに近い魚を使って作ってあります」
ああ、ウナギの代用はまた蛇なのね……本物のウナギはいないのかしら?
まあ美味しいから、素材が『蛇』ってところ以外は文句無いんだけど……
「そういえば、キノコ類って見たことないよね?」
「そうですね、乾燥地帯超えた灼熱地帯だったので根付かなかったのでしょう。菌類には湿度が必要ですから」
「このシイタケはどこから持って来たの?」
「厳密にはシイタケに似たものでシイタケではないですね。潤いの木の川の流域に育つようになった場所がありました。潤いの木の水しぶきが良い塩梅に育ちやすい環境を作ったようです。どなたかが見つければ、アルトレリアでも売られる時が来るかもしれませんね」
「毒は?」
「もちろんありません」
「じゃあ頂きましょうか」
「でっかい太巻きだナ……」
「二十センチあります」
私、関西出身じゃないからこんな長い太巻き一気食いしたことないよ……
「じゃあ、いただきマ~……」
「待った!」
「なんダ?」
「恵方巻にはいくつか食べ方の作法があるの」
「アルトラの言うことって、作法があるものばかりだナ」
「まあ、先人の教えだからね。恵方巻の作法は、食べ始めてから食べ終わるまでしゃべらないこと」
「いえ、先人というほど古くはないと思います。『恵方巻』の発祥は一九九八年頃で――」
「え゛っ!? 一九九八年!? つい最近じゃない!」
一九九八年ってことは二十四年前だから……私既に生まれてるわ……
「起源まで考えれば昭和にまで遡るようですが、『恵方巻』という名前になったのは平成になってからのようです。二〇〇〇年代に大手スーパーやコンビニの販売戦略により急速に全国へ広がった風習で、それ以前に『恵方巻』と呼ばれていたという文献は見つかっていません」
「そ、そうなんだ……」
「なぁ~、そろそろ食べて良いカ? 作法はどうするんダ?」
「ああ、はい、え~と、食べ始めてから終わるまでしゃべらないこと。これはしゃべったら福が逃げちゃうからなんだって。あと口を離しちゃいけない。『福を切る』ことになるから縁起が悪いらしい。食べきることができたら願いが叶うって言われてる」
「え~!! 二十センチもあるのに口離しちゃいけないのカ!?」
「では、こちらをお召し上がりください。こんなこともあろうかと半分の長さのものをご用意してあります」
「じゃあ、リディアは半分のにするナ」
「あと、食べる方角にも気を付けないといけない」
「物食べるのに方角があるのカ? アルトラって変なところに住んでたんだナ」
ホントに恵方って誰が考えてるのかしら?
「その年に縁起が良いって言う、『恵方』って方角があるのよ。カイベル、今年の恵方はどっち?」
「はい、『北北西微北』。厳密には三百四十五度の方角です。この場所からなら③の火山のある方向です」 (第30話参照)
北北西だけならまだしも、更に微北!?
細かいっ! そんな細かい方角考えたこともない!
「ってわけで、あっちの方向を見ながら、黙って食べるの」
「じゃあいただきま~ス」
……
…………
………………
大食いには自信あったけど、二十センチの太巻きは大変だ……特に呼吸が不自由なのが苦しい……
……
…………
………………
「ぷはっ! ごちそうさマ。アルトラまだ食ってるのカ? くすぐったらどうなるかナ~」
フッ……私の身体は攻撃を受け付けないからそんなことしても無駄よ。
と思っていたのだけど――
ツン
「ぶぷッ」
脇腹を突つかれた!
なぜかくすぐったい!
「どうダ! くすぐったいだロ? 口離セ!」
その後も脇腹を突つかれまくる。
何で!? 何で無効化が発生しないの!?
悪意が無いから!?
「ぷはぁっ、ああ……口離しちゃったじゃない!」
「アハハハハ」
悪意が無いくすぐり攻撃では、身体に対して害が無いから無効化が発生しないのかしら?
ここに来て初めて知った事実だわ。
口を離してしまったが、残りの恵方巻を頂く。
「余ったもう一本は切り分けてみんなで食べようか」
◇
「御夕飯はいかがいたしましょうか?」
「じゃあ、海鮮の恵方巻でも食べる?」
昼間のリベンジを!
「リディアまだお腹いっぱイ……太巻きかぶりつくのももう来年までいいヤ……お腹いっぱいだシ、口が疲れル……」
「あ、そう……」
残念ながらリベンジは来年に持ち越しとなった。
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