251 / 531
第10章 アルトレリアの生活改善編(身分証明を作ろう)
第247話 魔界で過ごす節分
しおりを挟む
今日は二月三日節分。
でも、残念なことに通貨制度開始に、七大国会談に、降雪にとバタバタしていたから、町中に周知する余裕が無かった……
そこで、今年は内々でやろうと思う。
玄関先に柊の葉 (に似た植物)に焼いたイワシに似た魚・イワナシの頭を刺したものを飾った。
しかし、この臭いキツいわ……生臭い……焼いてあるから余計に強烈に……
「何してるんダ、コレ? スンスンスン、良い匂いだナ」
え゛っ!? 良い匂い!? これが!?
私には生臭くて嫌な臭いとしか感じられないけど……
海の生物であるクラーケンの嗅覚には美味しそうな匂いと感じるのか。
でも、こういう臭いってなぜか食卓では大して気にならないのよね~。
「災いをもたらす鬼が嫌がって近寄らなくなるって言い伝えがあるのよ。聞いた話によると、柊の葉の棘で目を突かれたのが恐ろしくて近寄らくなくなり、イワシの臭いが嫌いだから近寄りたくなくなるとか」
ここに刺てあるのはイワナシだけど……
「へぇ~、こんなに良い匂いなのにナ」
とは言え、最近の日本で節分にこれやってる家を見たことがないが……多分臭いがキツめだから、徐々に廃れて行ったんだろうな……
で、手軽にやれる豆まきの文化だけ残ったと。最近のテレビでもやってることは豆まきの話題ばかりで、柊のひの字も見当たらない。
このアルトレリアでも文化として広めようと、今回は自分だけで試しにやってみたけど……これは広がらなくて良いわ。臭い……
「このイワナシ、後で食べて良いカ?」
「まあ良いんじゃない? でも最近魚食べなかったのに?」
「もうお菓子ばっか食べるのもやめル。続くと飽きてきタ。やっぱりバランスが大事だナ……」
「あ、そう」
こうやって子供は成長していくのね。
「カイベル~、大豆は用意できた?」
「はい、芽が出ないよう煎っておきました」
「アルトラ~、この豆はどうするんダ? これも食べて良いカ?」
「まだダメ、家の外と内に撒くのよ」
「撒ク? 何デ?」
「鬼は、大豆が嫌いだから大豆を外に撒いて、鬼が近付かないようにするの。豆には『魔滅』っていう語呂合わせの意味があってね邪気を払うものとされているの。それを鬼にぶつけて邪気を払ったから豆を嫌うんだってさ」
「へぇ~、でも鬼?って実際にいるよナ? それってイジメじゃないカ?」
え……? 実際にいる?
そうか……魔界って人間だけの世界ってわけじゃないから鬼って種族もいるのか!
だとすると、イジメ……種族迫害してることになるのかも……
ツノ生えてるやつならオーガとかは鬼に酷似してるし、考えようによってはツノ生えてる私は鬼なのか?
そういえば日本で言うところの『鬼』って、海外では『悪魔』って訳されるんだっけ。じゃあ半分悪魔のような姿の私はまさに鬼じゃん。
「イジメになる……のかなぁ? じゃあなんて掛け声にしようかな~?」
「掛け声? 何ノ?」
「私の故郷では豆撒く時『鬼は~外、福は~内』って言って撒いてたのよ」
「『福』って何ダ?」
「『幸せ』かな?」
「へぇ~、じゃあ、鬼のところは『悪いヤツ』にしたら良いんじゃないカ?」
日本では、その悪いヤツが鬼なんだけどな……
「『悪いヤツは~外、福は~内』とカ」
「語感悪いなぁ……」
「じゃあアルトラは何が良いんダ!!」
「う~ん……」
そこへカイベルが颯爽と助言を挟む。
「では、『隠』などどうでしょう?」
「なに『おぬ』って? 何かマヌケね。いないものみたい。ここには“居ぬ”みたいな」
「仰る通り、元々は『この世ならざる者』という意味があり、疫病や災いなど人の災害になるもののことを『隠』と呼んでいたそうです。これが転じて『鬼』という呼び名になり、人格化……今で言う擬人化して現在に伝わっています」
「へぇ~、じゃあ魔界に『隠』っていう種族はいないの?」
「いません」
「じゃあ、ここでは『おぬは~外、福は~内』って掛け声でやろうか、これなら迫害にもならないかも」
◇
「じゃあ豆まき始めるけど、用意は良い?」
「おう、いいゾ!」
「「おぬは~外! おぬは~外!」」
二人で豆を掴んで、窓から外へ投げつける。
「次は中ね」
「「福は~内! 福は~内!」」
最近はお菓子も投げるから、創成魔法で作ったお菓子を家の中へ投げた。
家の中に散らばった豆はカイベルがせっせと回収してくれている。
「このお菓子も食べて良いのカ?」
「もちろんよ!」
「豆ももう良いカ?」
「いいよ」
「わ~い、これでまたしばらくお菓子を食べられるナ」
余談だが、この大豆も大豆ではなく、巨大豆という豆らしい。
放っておくと、手のひら大くらいの大きさにまで成長してしまうため、地球の大豆程度に育ったところで収穫されるとか。
そんなでっかい豆食べにくいし、多分臭みとか味の低下とか起こるしね。
◇
「カイベル! 恵方巻は作ってある?」
「はい」
「節分って、やることいっぱいあるんだナ」
「かんぴょう・キュウリ・伊達巻・ウナギ・桜でんぶ・シイタケ煮・カニカマを使いました。かんぴょうはこの世界に存在していませんでしたので、ユウガオに似た植物の『ヨイガオ』を使って作りました」
ああ、この世界『夕方』が存在しないから、『夕顔』って言葉が存在してないのかな?
「ウナギは、またヤマタノオロチの幼体を、桜でんぶ、カニカマも手作りです。タイやタラに近い魚を使って作ってあります」
ああ、ウナギの代用はまた蛇なのね……本物のウナギはいないのかしら?
まあ美味しいから、素材が『蛇』ってところ以外は文句無いんだけど……
「そういえば、キノコ類って見たことないよね?」
「そうですね、乾燥地帯超えた灼熱地帯だったので根付かなかったのでしょう。菌類には湿度が必要ですから」
「このシイタケはどこから持って来たの?」
「厳密にはシイタケに似たものでシイタケではないですね。潤いの木の川の流域に育つようになった場所がありました。潤いの木の水しぶきが良い塩梅に育ちやすい環境を作ったようです。どなたかが見つければ、アルトレリアでも売られる時が来るかもしれませんね」
「毒は?」
「もちろんありません」
「じゃあ頂きましょうか」
「でっかい太巻きだナ……」
「二十センチあります」
私、関西出身じゃないからこんな長い太巻き一気食いしたことないよ……
「じゃあ、いただきマ~……」
「待った!」
「なんダ?」
「恵方巻にはいくつか食べ方の作法があるの」
「アルトラの言うことって、作法があるものばかりだナ」
「まあ、先人の教えだからね。恵方巻の作法は、食べ始めてから食べ終わるまでしゃべらないこと」
「いえ、先人というほど古くはないと思います。『恵方巻』の発祥は一九九八年頃で――」
「え゛っ!? 一九九八年!? つい最近じゃない!」
一九九八年ってことは二十四年前だから……私既に生まれてるわ……
「起源まで考えれば昭和にまで遡るようですが、『恵方巻』という名前になったのは平成になってからのようです。二〇〇〇年代に大手スーパーやコンビニの販売戦略により急速に全国へ広がった風習で、それ以前に『恵方巻』と呼ばれていたという文献は見つかっていません」
「そ、そうなんだ……」
「なぁ~、そろそろ食べて良いカ? 作法はどうするんダ?」
「ああ、はい、え~と、食べ始めてから終わるまでしゃべらないこと。これはしゃべったら福が逃げちゃうからなんだって。あと口を離しちゃいけない。『福を切る』ことになるから縁起が悪いらしい。食べきることができたら願いが叶うって言われてる」
「え~!! 二十センチもあるのに口離しちゃいけないのカ!?」
「では、こちらをお召し上がりください。こんなこともあろうかと半分の長さのものをご用意してあります」
「じゃあ、リディアは半分のにするナ」
「あと、食べる方角にも気を付けないといけない」
「物食べるのに方角があるのカ? アルトラって変なところに住んでたんだナ」
ホントに恵方って誰が考えてるのかしら?
「その年に縁起が良いって言う、『恵方』って方角があるのよ。カイベル、今年の恵方はどっち?」
「はい、『北北西微北』。厳密には三百四十五度の方角です。この場所からなら③の火山のある方向です」 (第30話参照)
北北西だけならまだしも、更に微北!?
細かいっ! そんな細かい方角考えたこともない!
「ってわけで、あっちの方向を見ながら、黙って食べるの」
「じゃあいただきま~ス」
……
…………
………………
大食いには自信あったけど、二十センチの太巻きは大変だ……特に呼吸が不自由なのが苦しい……
……
…………
………………
「ぷはっ! ごちそうさマ。アルトラまだ食ってるのカ? くすぐったらどうなるかナ~」
フッ……私の身体は攻撃を受け付けないからそんなことしても無駄よ。
と思っていたのだけど――
ツン
「ぶぷッ」
脇腹を突つかれた!
なぜかくすぐったい!
「どうダ! くすぐったいだロ? 口離セ!」
その後も脇腹を突つかれまくる。
何で!? 何で無効化が発生しないの!?
悪意が無いから!?
「ぷはぁっ、ああ……口離しちゃったじゃない!」
「アハハハハ」
悪意が無いくすぐり攻撃では、身体に対して害が無いから無効化が発生しないのかしら?
ここに来て初めて知った事実だわ。
口を離してしまったが、残りの恵方巻を頂く。
「余ったもう一本は切り分けてみんなで食べようか」
◇
「御夕飯はいかがいたしましょうか?」
「じゃあ、海鮮の恵方巻でも食べる?」
昼間のリベンジを!
「リディアまだお腹いっぱイ……太巻きかぶりつくのももう来年までいいヤ……お腹いっぱいだシ、口が疲れル……」
「あ、そう……」
残念ながらリベンジは来年に持ち越しとなった。
でも、残念なことに通貨制度開始に、七大国会談に、降雪にとバタバタしていたから、町中に周知する余裕が無かった……
そこで、今年は内々でやろうと思う。
玄関先に柊の葉 (に似た植物)に焼いたイワシに似た魚・イワナシの頭を刺したものを飾った。
しかし、この臭いキツいわ……生臭い……焼いてあるから余計に強烈に……
「何してるんダ、コレ? スンスンスン、良い匂いだナ」
え゛っ!? 良い匂い!? これが!?
私には生臭くて嫌な臭いとしか感じられないけど……
海の生物であるクラーケンの嗅覚には美味しそうな匂いと感じるのか。
でも、こういう臭いってなぜか食卓では大して気にならないのよね~。
「災いをもたらす鬼が嫌がって近寄らなくなるって言い伝えがあるのよ。聞いた話によると、柊の葉の棘で目を突かれたのが恐ろしくて近寄らくなくなり、イワシの臭いが嫌いだから近寄りたくなくなるとか」
ここに刺てあるのはイワナシだけど……
「へぇ~、こんなに良い匂いなのにナ」
とは言え、最近の日本で節分にこれやってる家を見たことがないが……多分臭いがキツめだから、徐々に廃れて行ったんだろうな……
で、手軽にやれる豆まきの文化だけ残ったと。最近のテレビでもやってることは豆まきの話題ばかりで、柊のひの字も見当たらない。
このアルトレリアでも文化として広めようと、今回は自分だけで試しにやってみたけど……これは広がらなくて良いわ。臭い……
「このイワナシ、後で食べて良いカ?」
「まあ良いんじゃない? でも最近魚食べなかったのに?」
「もうお菓子ばっか食べるのもやめル。続くと飽きてきタ。やっぱりバランスが大事だナ……」
「あ、そう」
こうやって子供は成長していくのね。
「カイベル~、大豆は用意できた?」
「はい、芽が出ないよう煎っておきました」
「アルトラ~、この豆はどうするんダ? これも食べて良いカ?」
「まだダメ、家の外と内に撒くのよ」
「撒ク? 何デ?」
「鬼は、大豆が嫌いだから大豆を外に撒いて、鬼が近付かないようにするの。豆には『魔滅』っていう語呂合わせの意味があってね邪気を払うものとされているの。それを鬼にぶつけて邪気を払ったから豆を嫌うんだってさ」
「へぇ~、でも鬼?って実際にいるよナ? それってイジメじゃないカ?」
え……? 実際にいる?
そうか……魔界って人間だけの世界ってわけじゃないから鬼って種族もいるのか!
だとすると、イジメ……種族迫害してることになるのかも……
ツノ生えてるやつならオーガとかは鬼に酷似してるし、考えようによってはツノ生えてる私は鬼なのか?
そういえば日本で言うところの『鬼』って、海外では『悪魔』って訳されるんだっけ。じゃあ半分悪魔のような姿の私はまさに鬼じゃん。
「イジメになる……のかなぁ? じゃあなんて掛け声にしようかな~?」
「掛け声? 何ノ?」
「私の故郷では豆撒く時『鬼は~外、福は~内』って言って撒いてたのよ」
「『福』って何ダ?」
「『幸せ』かな?」
「へぇ~、じゃあ、鬼のところは『悪いヤツ』にしたら良いんじゃないカ?」
日本では、その悪いヤツが鬼なんだけどな……
「『悪いヤツは~外、福は~内』とカ」
「語感悪いなぁ……」
「じゃあアルトラは何が良いんダ!!」
「う~ん……」
そこへカイベルが颯爽と助言を挟む。
「では、『隠』などどうでしょう?」
「なに『おぬ』って? 何かマヌケね。いないものみたい。ここには“居ぬ”みたいな」
「仰る通り、元々は『この世ならざる者』という意味があり、疫病や災いなど人の災害になるもののことを『隠』と呼んでいたそうです。これが転じて『鬼』という呼び名になり、人格化……今で言う擬人化して現在に伝わっています」
「へぇ~、じゃあ魔界に『隠』っていう種族はいないの?」
「いません」
「じゃあ、ここでは『おぬは~外、福は~内』って掛け声でやろうか、これなら迫害にもならないかも」
◇
「じゃあ豆まき始めるけど、用意は良い?」
「おう、いいゾ!」
「「おぬは~外! おぬは~外!」」
二人で豆を掴んで、窓から外へ投げつける。
「次は中ね」
「「福は~内! 福は~内!」」
最近はお菓子も投げるから、創成魔法で作ったお菓子を家の中へ投げた。
家の中に散らばった豆はカイベルがせっせと回収してくれている。
「このお菓子も食べて良いのカ?」
「もちろんよ!」
「豆ももう良いカ?」
「いいよ」
「わ~い、これでまたしばらくお菓子を食べられるナ」
余談だが、この大豆も大豆ではなく、巨大豆という豆らしい。
放っておくと、手のひら大くらいの大きさにまで成長してしまうため、地球の大豆程度に育ったところで収穫されるとか。
そんなでっかい豆食べにくいし、多分臭みとか味の低下とか起こるしね。
◇
「カイベル! 恵方巻は作ってある?」
「はい」
「節分って、やることいっぱいあるんだナ」
「かんぴょう・キュウリ・伊達巻・ウナギ・桜でんぶ・シイタケ煮・カニカマを使いました。かんぴょうはこの世界に存在していませんでしたので、ユウガオに似た植物の『ヨイガオ』を使って作りました」
ああ、この世界『夕方』が存在しないから、『夕顔』って言葉が存在してないのかな?
「ウナギは、またヤマタノオロチの幼体を、桜でんぶ、カニカマも手作りです。タイやタラに近い魚を使って作ってあります」
ああ、ウナギの代用はまた蛇なのね……本物のウナギはいないのかしら?
まあ美味しいから、素材が『蛇』ってところ以外は文句無いんだけど……
「そういえば、キノコ類って見たことないよね?」
「そうですね、乾燥地帯超えた灼熱地帯だったので根付かなかったのでしょう。菌類には湿度が必要ですから」
「このシイタケはどこから持って来たの?」
「厳密にはシイタケに似たものでシイタケではないですね。潤いの木の川の流域に育つようになった場所がありました。潤いの木の水しぶきが良い塩梅に育ちやすい環境を作ったようです。どなたかが見つければ、アルトレリアでも売られる時が来るかもしれませんね」
「毒は?」
「もちろんありません」
「じゃあ頂きましょうか」
「でっかい太巻きだナ……」
「二十センチあります」
私、関西出身じゃないからこんな長い太巻き一気食いしたことないよ……
「じゃあ、いただきマ~……」
「待った!」
「なんダ?」
「恵方巻にはいくつか食べ方の作法があるの」
「アルトラの言うことって、作法があるものばかりだナ」
「まあ、先人の教えだからね。恵方巻の作法は、食べ始めてから食べ終わるまでしゃべらないこと」
「いえ、先人というほど古くはないと思います。『恵方巻』の発祥は一九九八年頃で――」
「え゛っ!? 一九九八年!? つい最近じゃない!」
一九九八年ってことは二十四年前だから……私既に生まれてるわ……
「起源まで考えれば昭和にまで遡るようですが、『恵方巻』という名前になったのは平成になってからのようです。二〇〇〇年代に大手スーパーやコンビニの販売戦略により急速に全国へ広がった風習で、それ以前に『恵方巻』と呼ばれていたという文献は見つかっていません」
「そ、そうなんだ……」
「なぁ~、そろそろ食べて良いカ? 作法はどうするんダ?」
「ああ、はい、え~と、食べ始めてから終わるまでしゃべらないこと。これはしゃべったら福が逃げちゃうからなんだって。あと口を離しちゃいけない。『福を切る』ことになるから縁起が悪いらしい。食べきることができたら願いが叶うって言われてる」
「え~!! 二十センチもあるのに口離しちゃいけないのカ!?」
「では、こちらをお召し上がりください。こんなこともあろうかと半分の長さのものをご用意してあります」
「じゃあ、リディアは半分のにするナ」
「あと、食べる方角にも気を付けないといけない」
「物食べるのに方角があるのカ? アルトラって変なところに住んでたんだナ」
ホントに恵方って誰が考えてるのかしら?
「その年に縁起が良いって言う、『恵方』って方角があるのよ。カイベル、今年の恵方はどっち?」
「はい、『北北西微北』。厳密には三百四十五度の方角です。この場所からなら③の火山のある方向です」 (第30話参照)
北北西だけならまだしも、更に微北!?
細かいっ! そんな細かい方角考えたこともない!
「ってわけで、あっちの方向を見ながら、黙って食べるの」
「じゃあいただきま~ス」
……
…………
………………
大食いには自信あったけど、二十センチの太巻きは大変だ……特に呼吸が不自由なのが苦しい……
……
…………
………………
「ぷはっ! ごちそうさマ。アルトラまだ食ってるのカ? くすぐったらどうなるかナ~」
フッ……私の身体は攻撃を受け付けないからそんなことしても無駄よ。
と思っていたのだけど――
ツン
「ぶぷッ」
脇腹を突つかれた!
なぜかくすぐったい!
「どうダ! くすぐったいだロ? 口離セ!」
その後も脇腹を突つかれまくる。
何で!? 何で無効化が発生しないの!?
悪意が無いから!?
「ぷはぁっ、ああ……口離しちゃったじゃない!」
「アハハハハ」
悪意が無いくすぐり攻撃では、身体に対して害が無いから無効化が発生しないのかしら?
ここに来て初めて知った事実だわ。
口を離してしまったが、残りの恵方巻を頂く。
「余ったもう一本は切り分けてみんなで食べようか」
◇
「御夕飯はいかがいたしましょうか?」
「じゃあ、海鮮の恵方巻でも食べる?」
昼間のリベンジを!
「リディアまだお腹いっぱイ……太巻きかぶりつくのももう来年までいいヤ……お腹いっぱいだシ、口が疲れル……」
「あ、そう……」
残念ながらリベンジは来年に持ち越しとなった。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる