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第10章 アルトレリアの生活改善編(身分証明を作ろう)
第246話 危機意識が足りない!
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「カイベル、もしかしてこの雪、明日も続いたりする?」
「はい、明後日の昼頃まで続くと思われます」
それはまずい、もう雪降り出して二日目の昼近く。
明後日まで雪が積もり続けたら家が潰れるんじゃない?
「みんなに伝えないとまずいわ……」
まだお昼で良かった……急いで役所へ移動。
◇
「アルトラ様、そんなに急いでどうしたんですか?」
「マリリア、リーヴァントと副リーダーとジュゼルマリオいる?」
「緊急ですか? すぐ集めますね!」
◇
「じゃあ五人とも緊急の用事があるから、町中の大体の人数を集めてもらえる?」
「どうしたのですか?」
「人の生き死にに関わるから、迅速に集めてきてほしい。集まってから伝えるよ」
「はぁ……しかしこの寒い中集まってくれるかどうか……」
「もはや回覧板回してるような時間は無いから、『集まらないと死んじゃうかもしれない』って伝えて何としても集めてきて!」
◇
しばらく経過後――
役所に新しく設えた大講堂に集まった。
「う~、さむさむ……」
「この寒いってのに何の用なんだ?」
「集まらないと死ぬかもしれないんだとさ」
「集まらないと死ぬってどういう状況なんだ?」
「早く終わって帰って、コタツでぬくぬくしたいな」
大分集まったと見て、みんなの前に姿を現す。
「アルトラ様~、何だってこんな一番寒い日に用があったんですか~?」
「こんな寒い日だからこそ呼び付けました」
「どういうことなんですか?」
「今、外を白いものが覆っているのはご存じだと思います」
「昨日から降ってる雪ってやつですか?」
「そうです。あの雪というものは集まると結構重いもので、そのまま放置しておくと家が壊れかねません」
「「「えっ!!?」」」
「重みで壊れる可能性があるので、この会合が終わったら至急屋根へ上って雪下ろしをしてください」
「雪で家が? まさかぁ」
「家なんて、私たちより余程丈夫ですよ? 雪程度で壊れるなんて……ただの冷たい塊じゃないんですか?」
「それにめんどくさいですよ~」
「寒いし……」
不満たらたら……まあ、この寒い日にわざわざ外に出て肉体労働したくないのはわかる。
私は雪国生まれではないから雪下ろしの大変さは分からないが、その様子をテレビで見てただけでも、もうやりたくないと思わせるほど面倒くさく映る。
とは言え、死者が出てからでは遅い。
現状不満しか聞かれず、誰も危機感を持っていない。これは実演した方が良いか。
「じゃあ屋根に雪が積もり過ぎたら、どういう結果になるか見せますので、役所の外を見ていてください」
土魔法と樹魔法でこの町のスタンダードな平屋住宅を作る。
家作ってる間、町民は黙って見ている。
最近ではもうこの程度で驚きもしなくなった……簡易とは言え家一軒建ててるのに慣れって怖いわ……
どっか向いてあくびしてるやつとか、鼻ほじってるやついるし……緊張感がまるで無い……
「こら、そこ! どれくらい危険か伝えるからちゃんと見ててよ!」
「ああ、はいはい」
危機感足りない!
「ハァ……この町ではこんな感じの家が多いですよね。じゃあこれに沢山雪が積もったらどうなるか、よく見ていてください」
氷魔法で雪を降らせる。
「特に何も起こりませんね」
「今降らせたのが、今日降り積もった分と同じくらいです。そしてここからが明日と明後日に降る分」
降らせる量を徐々に多くしていく。
すると――
『ガゴゴゴォォン!』という音を立てて、家の屋根が抜けてしまった。
家からは雪煙が出て、玄関や窓からは雪がはみ出し、まるで内から外へ逃げようとしているように見える。
「「「おぉっ!?」」」
みんな随分と軽く考えていたのか、その場にどよめきが起こった。
「こ、こんなことに!?」
「アルトラ様、ホントにこの町にある家と同じくらいの家なんですか? ちゃんと強度足りてたんですか?」
「驚かせようとしてるんじゃないか?」
実演しても危機意識持たないヤツがいるわね……
「うん、じゃあ信じない人はそのまま何もやらずに埋まったら良いよ。雪に埋まったらさぞ寒いでしょうね。場合によっては潰れちゃうかもねぇ……屋根だって結構重いから外れて落ちてくれば血みどろかもねぇ……」
その一言で多くの町民の表情が青くなり、空気がピリッと張り詰める。
「なぜか家に対して絶対の信頼を置いている者もいるみたいだけど、この町の家の強度はそれほど高くないものの方が多いから、過信しない方が良いですよ。この町で雪下ろししなくて大丈夫な建物は役所くらいのものじゃないかな」
大分おどかしてみたが、さてどうかな?
「ど、どうする?」
「そりゃ、やらないと仕方ないだろ」
「家を失うだけならまだしも、あれだと下手したら死ぬぞ」
流石に危機感感じたみたいだ。
「とにかく! あと一日も降り続けば、最悪こうなります。この雪は明後日まで降る予定ですのでこうなってしまう前に、各家で雪下ろしをお願いします!」
「「「………………」」」
「お願いしますね!」
「「「は、はい!」」」
みんな危機感が足りないので最後の念押しをする。
「それと、ここに居ない人たちにも伝えておいてください」
「あの~、屋根に上らずに火魔法で溶かしたりとかはダメなんですか?」
「余程強い火魔法でないと溶けませんし、溶けたら次は火事になる可能性が出てくるので、やめておいた方が良いと思います。それに生半可な火力だと雪が溶けて氷になるため、より危ない状態になる可能性は否定できないと思います」
「そうですか……火魔法で溶かせれば楽できるかと思ったんですが……」
これは魔法が使える世界であっても中々難しい。
これがもし耐火性の物質で出来た家なら火魔法も有効かもしれないが、残念なことにこの町の家々は、そのほとんどが木と土で出来ている。
「まあ……いくつか方法はありますよ。例えば風と火が使えるなら、屋根を温風の空気で包んで溶かしたり、積もった雪を風で吹き飛ばしたり、物質魔法で銅を扱えるなら銅線を屋根に渡した後に熱を伝えて溶かしたり、火と水を使えるならしばらく熱湯を流し続けて雪を溶かしてしまうのも有効です。創意工夫すれば雪下ろししなくても良い方法ば色々出てきそうです」
まさにこの世界ならではの方法でね。
その後、『雪下ろし』の概念が町中に伝わったのか、この三日間で目にするようになり、何とか死者も出ずに済みそうだ。
「はい、明後日の昼頃まで続くと思われます」
それはまずい、もう雪降り出して二日目の昼近く。
明後日まで雪が積もり続けたら家が潰れるんじゃない?
「みんなに伝えないとまずいわ……」
まだお昼で良かった……急いで役所へ移動。
◇
「アルトラ様、そんなに急いでどうしたんですか?」
「マリリア、リーヴァントと副リーダーとジュゼルマリオいる?」
「緊急ですか? すぐ集めますね!」
◇
「じゃあ五人とも緊急の用事があるから、町中の大体の人数を集めてもらえる?」
「どうしたのですか?」
「人の生き死にに関わるから、迅速に集めてきてほしい。集まってから伝えるよ」
「はぁ……しかしこの寒い中集まってくれるかどうか……」
「もはや回覧板回してるような時間は無いから、『集まらないと死んじゃうかもしれない』って伝えて何としても集めてきて!」
◇
しばらく経過後――
役所に新しく設えた大講堂に集まった。
「う~、さむさむ……」
「この寒いってのに何の用なんだ?」
「集まらないと死ぬかもしれないんだとさ」
「集まらないと死ぬってどういう状況なんだ?」
「早く終わって帰って、コタツでぬくぬくしたいな」
大分集まったと見て、みんなの前に姿を現す。
「アルトラ様~、何だってこんな一番寒い日に用があったんですか~?」
「こんな寒い日だからこそ呼び付けました」
「どういうことなんですか?」
「今、外を白いものが覆っているのはご存じだと思います」
「昨日から降ってる雪ってやつですか?」
「そうです。あの雪というものは集まると結構重いもので、そのまま放置しておくと家が壊れかねません」
「「「えっ!!?」」」
「重みで壊れる可能性があるので、この会合が終わったら至急屋根へ上って雪下ろしをしてください」
「雪で家が? まさかぁ」
「家なんて、私たちより余程丈夫ですよ? 雪程度で壊れるなんて……ただの冷たい塊じゃないんですか?」
「それにめんどくさいですよ~」
「寒いし……」
不満たらたら……まあ、この寒い日にわざわざ外に出て肉体労働したくないのはわかる。
私は雪国生まれではないから雪下ろしの大変さは分からないが、その様子をテレビで見てただけでも、もうやりたくないと思わせるほど面倒くさく映る。
とは言え、死者が出てからでは遅い。
現状不満しか聞かれず、誰も危機感を持っていない。これは実演した方が良いか。
「じゃあ屋根に雪が積もり過ぎたら、どういう結果になるか見せますので、役所の外を見ていてください」
土魔法と樹魔法でこの町のスタンダードな平屋住宅を作る。
家作ってる間、町民は黙って見ている。
最近ではもうこの程度で驚きもしなくなった……簡易とは言え家一軒建ててるのに慣れって怖いわ……
どっか向いてあくびしてるやつとか、鼻ほじってるやついるし……緊張感がまるで無い……
「こら、そこ! どれくらい危険か伝えるからちゃんと見ててよ!」
「ああ、はいはい」
危機感足りない!
「ハァ……この町ではこんな感じの家が多いですよね。じゃあこれに沢山雪が積もったらどうなるか、よく見ていてください」
氷魔法で雪を降らせる。
「特に何も起こりませんね」
「今降らせたのが、今日降り積もった分と同じくらいです。そしてここからが明日と明後日に降る分」
降らせる量を徐々に多くしていく。
すると――
『ガゴゴゴォォン!』という音を立てて、家の屋根が抜けてしまった。
家からは雪煙が出て、玄関や窓からは雪がはみ出し、まるで内から外へ逃げようとしているように見える。
「「「おぉっ!?」」」
みんな随分と軽く考えていたのか、その場にどよめきが起こった。
「こ、こんなことに!?」
「アルトラ様、ホントにこの町にある家と同じくらいの家なんですか? ちゃんと強度足りてたんですか?」
「驚かせようとしてるんじゃないか?」
実演しても危機意識持たないヤツがいるわね……
「うん、じゃあ信じない人はそのまま何もやらずに埋まったら良いよ。雪に埋まったらさぞ寒いでしょうね。場合によっては潰れちゃうかもねぇ……屋根だって結構重いから外れて落ちてくれば血みどろかもねぇ……」
その一言で多くの町民の表情が青くなり、空気がピリッと張り詰める。
「なぜか家に対して絶対の信頼を置いている者もいるみたいだけど、この町の家の強度はそれほど高くないものの方が多いから、過信しない方が良いですよ。この町で雪下ろししなくて大丈夫な建物は役所くらいのものじゃないかな」
大分おどかしてみたが、さてどうかな?
「ど、どうする?」
「そりゃ、やらないと仕方ないだろ」
「家を失うだけならまだしも、あれだと下手したら死ぬぞ」
流石に危機感感じたみたいだ。
「とにかく! あと一日も降り続けば、最悪こうなります。この雪は明後日まで降る予定ですのでこうなってしまう前に、各家で雪下ろしをお願いします!」
「「「………………」」」
「お願いしますね!」
「「「は、はい!」」」
みんな危機感が足りないので最後の念押しをする。
「それと、ここに居ない人たちにも伝えておいてください」
「あの~、屋根に上らずに火魔法で溶かしたりとかはダメなんですか?」
「余程強い火魔法でないと溶けませんし、溶けたら次は火事になる可能性が出てくるので、やめておいた方が良いと思います。それに生半可な火力だと雪が溶けて氷になるため、より危ない状態になる可能性は否定できないと思います」
「そうですか……火魔法で溶かせれば楽できるかと思ったんですが……」
これは魔法が使える世界であっても中々難しい。
これがもし耐火性の物質で出来た家なら火魔法も有効かもしれないが、残念なことにこの町の家々は、そのほとんどが木と土で出来ている。
「まあ……いくつか方法はありますよ。例えば風と火が使えるなら、屋根を温風の空気で包んで溶かしたり、積もった雪を風で吹き飛ばしたり、物質魔法で銅を扱えるなら銅線を屋根に渡した後に熱を伝えて溶かしたり、火と水を使えるならしばらく熱湯を流し続けて雪を溶かしてしまうのも有効です。創意工夫すれば雪下ろししなくても良い方法ば色々出てきそうです」
まさにこの世界ならではの方法でね。
その後、『雪下ろし』の概念が町中に伝わったのか、この三日間で目にするようになり、何とか死者も出ずに済みそうだ。
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