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第10章 アルトレリアの生活改善編(身分証明を作ろう)

第244話 生存確認!

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 仕方ないのでエルフィーレのところへ行って、ダウンコートを購入。

「おお! 遂にアルトラ様も厚着するんですね!」
「何その待ってましたみたいなの?」
「だって……見るからに寒そうでしたから……あの白いのが降ってるのに両肩出して背中開いた服って……以前から町中でもアルトラ様が近くを通ると話題になってましたよ、『この寒いのに何であの格好なんだ』と」

 みんなそう思ってたのね……
 これからはもうちょっとTPOをわきまえよう……

「毎度ありがとうございます!」

 買って着てみたは良いものの――

「暑い……」

 これは私の身体には暑い……突然初夏の気温になったようだ。
 あ、そうだ、前開ければ良いんじゃない?


   ◇


 その格好でナナトスに会った。

「どう! ちゃんとコート買って来たよ!」
「………………ダウンコートを前開きで、中は肩出した格好って……変態の格好ッスね……」

 ガーン!!

 氷像で女体女の子作ってる変態に変態って言われた!

「ちゃんと前閉めてくださいッス。寒そうッスよ!」

 そして前を強制的に閉められた……

「あ、ありがとぅ……」
「じゃあ、自分は続きを彫るんで」

 何だか屈辱……
 あ、そうだ、暑さについてはコート内で氷魔法を使って冷やせば良いんだ!


   ◇


 ナナトスと別れ、目的のフレアハルトの家へ歩を進める。
 歩きながら思ったが、そういえば、雪が積もっている割に雪かきしてる亜人ひとを全く見ない。
 この町の人々は雪を見るのが初めてだから、雪かきの概念が無いんだ!
 積もっている雪は、少量だからまだ家が潰れるようなことは無さそうではあるけど……

「……この雪が今日だけで済めば特に注意喚起する必要も無いけど……」

 それよりも早く三人の生存確認を急がないと!


   ◇


 フレアハルトたちが住んでいる借家に来た。

 コンコンコン

「フレハル~居る~?」

 ……
 …………
 ………………

 全く反応が無い。
 まさか……全員家の中で凍死してるとかじゃないよね?
 この家に関しては、防寒対策と暖房設備の設置を念入りにやったはずだから、凍死はまずありえないと思うけど……
 耳を澄ませると声が聞こえる。

「……アリサ~、誰か来た~」
「……レイア、お願いします……」
「……え~、アリサ行ってよ~、寒いよ~」
「……わたくしも寒いのでコタツから出たくありません」
「……ほら、暖炉の近く通るしさ、ね!」
「……たまにはレイアが出てくれれば良いのではないですか?」
「イヤだよ、私だって寒いもん!」
「……では居留守を使いましょう、本日は特に誰かと約束しているわけでもないですから問題無いでしょう」

 一応無事ではいるみたいだ。凍死してなくて安心した。
 フレアハルトの声が聞こえないけど、二階の一人部屋って話だから、二人の会話には参加してないのだろう。
 多分コタツに入ってるとか布団にくるまってじっとしてるとかそんな感じなんじゃないかしら。
 一応ちゃんと無事を確認したいのよね、特に声の聞こえないフレアハルトが無事なのかどうか。
 じゃあ久しぶりにアレやるか。

 スキル『エコーロケーション』会得の副産物で得た、超音波による発声。この町でこれを使えるのは、レッドドラゴン以外では私とリディア、それとトーマス、リナさんの人魚兄妹くらいしかいないから、私だと気付いてくれるはず。

 『(アルトラです。様子を知りたいからドアを開けて)』

 超音波で家の中に向けて話しかけてみた。
 すると――

 ドタバタと急いで走ってくる音が聞こえる。

 ガチャッ!

 慌ただしく出て来たのはアリサ。

「ア、アルトラ様、ごきげんよう……本日は何か御用で……寒いっ!! すみません! 寒いです!! ご容赦ください!」
 バタンッ!

 ドアを開けて即座に閉められた!?

「ちょ、ちょっと! とりあえず家の中に入れるだけ入れて!」
「鍵は開けておいたのでご自由にお入りください!」

 玄関のドアを開けると――
 そこには既にアリサの姿は無し。

「じゃあ、勝手にお邪魔しま~す」

 奥の部屋へ行くとアリサとレイアの二人がコタツに潜ったまま。
 部屋内は結構暑いぞ?
 暖炉に、魔力動力式ホットカーペットに、コタツに、ストーブが複数台。
 今外から来たばかりだからまだそれほど暑くないけど、これ絶対三十六度超えてると思う。部屋の中なのにちょっと蜃気楼のような揺らぎが見える……

「どうぞおくつろぎください」

 おくつろぎくださいって態度じゃないけど……
 家人がコタツに潜ったまま客に「おくつろぎください」って……
 しかもコタツには二人寝転がって入ってるから、私が入るスペースは無いし……
 まあ、二人の無事は確認できたし、あとはフレアハルトの様子を見て引き上げるか。

「すみません、今お茶をお出しします……」

 ……
 …………
 ………………

 と言ったものの、寝転がったままコタツから出ず。

「……アリサ?」
「はい?」
「お茶出してくれるんじゃないの?」
「すみません、セルフでお願いします……」

 いやいやいやいや! 客にセルフでお茶出させるって!
 何このポンコツ化! 普段出来る子なのに……
 レイアに至っては、頭までコタツ布団に入り切ってしまって出て来ない。自身がここに居ないものとして無視を決め込むつもりらしい。
 じゃあ、こっちから声をかけてみるか。

「あの……アリサの無事は確認できたけど、レイア死んでないよね?」
「大丈夫で~す、生きてます~」

 という返事は返って来たものの、相変わらずコタツ布団から顔を出さない。
 『領主が直々に訪問したって言うのに失礼だな!』と普通の領主なら怒るところかもしれないが、彼女らの事情を考えると仕方ないと言わざるを得ない。

「…………ま、まあ良いや、フレアハルトの様子を見させてもらうわ」
「廊下の階段を上がったところの右の部屋にいると思います」

 二階に上がってみたところ、二階にも暖炉。この家変わった構造してるわね。外をちゃんと確認しなかったけど、煙突が二本出てるのかな? (※)
   (※煙突:アルトラがちゃんと確認しなかっただけで実際には各部屋と共用スペースに暖炉があり全部で四本出てます)
 もちろん、さっき下の階にあったホットカーペット、コタツ、ストーブを完備。

 が、見回しても誰もいない。
 置いてあるコタツを見ると、コタツ布団が頭の形に横に盛り上がっている。
 あのでかい身体を丸めて入ってるのか? (※身長:百八十五センチ)
 確かにフレアハルトの身長だとそのまま仰向けに寝るとコタツから出てしまうような気がするけど……これ、後々首とか背中とか痛くなりそうだ……

「フレハル?」

 ……
 …………
 ………………

 呼んでみたところ微動だにせず……
 生きてる……のよね?
 顔見たら凍ってるなんてことは……コタツに入ってるし、ないとは思うけど……

「フレハル!」

 もう一度ちょっと大きい声で呼んでみるものの、全く動かない。
 まさか本当に死んでる?
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