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第9章 七大国会談編
第239話 樹の国の魔王代理襲来!
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コンコンコン
会議室に役所の職員の一人が走り込んできた。
「アルトラ様! 見たことない種族の女性達がアルトラ様への面会を求めております!」
見たことない種族の女性? 私の関わった国なんて水か雷の国くらいだけど……
「どんな見た目なの?」
鱗とか羽とかあれば、その二ヵ国のどちらかで確定なんだけど……
「緑色の髪の毛で、肌はアルトラ様や人魚の方たちに似た色をしています」
私が会ったことがある緑の髪って……一組しか思い当たらない。でも、昨日七大国会談終わって、今日帰って来たばかりだよ? アルトレリアに大使館置くのも半年先のはずなのに……前乗りするにしても早すぎない?
「話しかけられた者の話では、気付いたら突然町の中に居たので驚いたとか」
突然町の中に? 空間転移魔法? いや、あれは空間に揺らぎが発生するから近くに居れば気付かないはずはないし。
それに、あれは一度訪れたことがある場所にしか行けないはずだから、腫れ物扱いの土地として有名だった地獄の門前広場に出現するならまだしも、そこから五十キロ離れている、捨て置かれたこの元トロル村に来ることなど、皆無に近い確率であり得ない……
「と、とりあえず私をご指名なら会ってみます」
◇
「ごきげんよう、アルトラ様。そしてみなさまお初にお目にかかります、わたくし樹の国ユグドマンモンより来ました、魔王代理トライアと申します」
「その妹、次女のトリニアです」
「三女トルテアです」
予想通りの樹の国の魔王代理の方々だった……
「おい……魔王代理だってよ」
「そんな凄い人が何で突然?」
「七大国会談ってのが関係あるのか?」
「あ、あの……今日はどういったご用件で……?」
彼女ら本当にどうやって来たんだ?
「今日はご挨拶に参りました~」
「姉がすみません、早く太陽というものを見てみたいと、昨日帰ってすぐに樹の国を出発したんです」
「これが太陽というものなんですね。私たち植物の精霊には凄く心地よく感じます」
植物の精霊であるせいか、太陽の光を浴びて心なしかちょっと髪のツヤが良くなった気がする。
「ここに来る前に、地獄の門にも行ってきました」
えっ!? 五十キロ離れてるのに!? 一体どういう移動方法を使えばそんな短時間で移動できるんだろう……?
「私の記憶してる限りには、我々では近付くことができず、人伝に聞いた話ではあそこには植物一つ生えていなかったと聞いていました」
「行ってみれば家が建っていて、お花畑が育てられていて、とても良い環境になっていました。素晴らしいです!」
「あ、噂のケルベロスさんにも会ってきましたよ~。あれが伝説に聞く地獄の番犬なのですね~。以前は灼熱の土地だったのでこの度初めて見ましたが、全然門を守ってなくて『番犬』という感じがしませんね~。大きい家 (※)の中にいましたけど、丸まったまま動かないので、触ってみたところ、それでも動かないので、一しきり撫でまわしてからこちらへ来ました。恐ろしいと聞いていましたが随分大人しいのですね~」
(※大きい家:犬小屋のこと)
元から門さえ越えなければ大人しかったけど、最近は誰彼構わず身体を触らせるようになってしまったのね……地獄の番犬がただの犬に成り下がってしまった……私の所為か。
と言うか……最近は番犬やってるより寝てることの方が多い気がする……冬が終わればちゃんとするかしら?
「太陽を確認しがてら、挨拶してすぐ帰る予定でしたが、もう少しここに居てもよろしいでしょうか~?」
本音が漏れてるよトライアさん……メインは私への挨拶じゃなくて、太陽を見ることなのね……
「え、ええ、どうぞ。ちょうどお昼時ですので、よろしければ昼食もご一緒にどうですか?」
「まあ! 良いのですか!」
「お姉様、今日は挨拶だけの約束でしょう?」
「ご馳走になってしまっては迷惑ですよ」
「いえ、こういう機会に親睦を図れるのは良いことだと思います」
「そうですか? ではお言葉に甘えさせていただきます」
太陽の下に居たいってことは、外で食べたいってことよね?
外で食べるとすると、町のみんなからすればドリアード族のことは珍しいだろうから、役所外ではジロジロ見られそうね。
「リーヴァント、役所の屋上って使えるよね?」
「え、ええ、椅子と机を運び込めば可能ですが……」
「綺麗にしてある?」
「一ヶ月ほど前の大晦日で掃除したので、それほど汚れはないと思いますが……」
じゃあ屋上で食べても大丈夫そうか。
「では、トライアさん、トリニアさん、トルテアさん、屋上で昼食と致しましょう」
◇
というわけで、急遽寒空の下、屋上で昼食ということになった。
一時的なものだからと、暖房バリアを周囲に張る。
「まあ! 急に暖かく!」
「寒いかと思い、今だけこの周辺を暖かくしました」
「「お心遣い感謝致します」」
彼女の妹のトリニアさんとトルテアさんが感謝の意を示す。
こう思ったら悪いかもしれないけど、妹たちの方がしっかりしてるのでは?
「今、『妹たちの方がしっかりしてるのでは?』と思われたかもしれませんが――」
心を読まれた!?
「姉はマイペースな言動をしていても、いざという時はきちっとしますので、平時はご容赦いただけると幸いです」
「あ、はい、大丈夫ですよ。私の知り合いそんな感じの方ばかりなので」
此度の昼食は外交に近いのではないかという私の判断で、急遽ハンバームちゃんに専属料理人をやってもらうことに。
……普段食堂で腕を振るう料理人、お客さんが来た時は専属料理人って、これ多分『専属』の使い方間違ってるよね? まあお客さんが来た時に専属に指名されるって意味で専属料理人としておこう。
「あの……ドリアード族の方々は、体質的に食べられないものはございますでしょうか?」
「木の下位精霊は食べること自体できない者が多いですが、わたくしたち高位精霊は、基本的に亜人の方々と同じものを食べられます」
「好き嫌いとかはございますか?」
「極端に辛いものや、苦いものは食べられませんね。それと、極端にしょっぱいものですね。身体に変調をきたしてしまいます。酷いと髪の毛が枯れてしまったり、お肌がひび割れてしまったり。ピリっと辛いとか、少し苦い程度なら問題無いと思います」
「かしこまりました。ではお食事をご用意致しますので、少々お待ちください。失礼します」
ハンバームちゃんは食堂へ昼食を作りに戻った。
「ところで、この冥球には太陽が存在しませんが、ドリアード族の方々でも気持ち良いと感じるのですね」
「はい! 太陽というものを初めて見ましたが、想像以上に気持ちの良いものでした。これはわたくしたちの身体を構成している植物の部分が喜びを感じるのかもしれません。光合成が捗ります」
DNAに刻まれてるとかそんな感じかな?
光合成が捗るって、ここだけ凄く空気が澄みそうなこと言ってるわね。
……
…………
………………
そして、しばらく恍惚とした表情のまま三人とも動かず……
おばあちゃんのような時間が流れる。
「はぁ……トリニア、トルテア、わたくし、ここに住みます。ここに根を下ろしても後悔しません……」
「「ダメですよ」」
「お姉様は魔王代理なのですから」
ここに住みたいというトライアさんに対し、冷静に却下する妹二人。
ボケとツッコミがきちんと分担されている。
会議室に役所の職員の一人が走り込んできた。
「アルトラ様! 見たことない種族の女性達がアルトラ様への面会を求めております!」
見たことない種族の女性? 私の関わった国なんて水か雷の国くらいだけど……
「どんな見た目なの?」
鱗とか羽とかあれば、その二ヵ国のどちらかで確定なんだけど……
「緑色の髪の毛で、肌はアルトラ様や人魚の方たちに似た色をしています」
私が会ったことがある緑の髪って……一組しか思い当たらない。でも、昨日七大国会談終わって、今日帰って来たばかりだよ? アルトレリアに大使館置くのも半年先のはずなのに……前乗りするにしても早すぎない?
「話しかけられた者の話では、気付いたら突然町の中に居たので驚いたとか」
突然町の中に? 空間転移魔法? いや、あれは空間に揺らぎが発生するから近くに居れば気付かないはずはないし。
それに、あれは一度訪れたことがある場所にしか行けないはずだから、腫れ物扱いの土地として有名だった地獄の門前広場に出現するならまだしも、そこから五十キロ離れている、捨て置かれたこの元トロル村に来ることなど、皆無に近い確率であり得ない……
「と、とりあえず私をご指名なら会ってみます」
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「ごきげんよう、アルトラ様。そしてみなさまお初にお目にかかります、わたくし樹の国ユグドマンモンより来ました、魔王代理トライアと申します」
「その妹、次女のトリニアです」
「三女トルテアです」
予想通りの樹の国の魔王代理の方々だった……
「おい……魔王代理だってよ」
「そんな凄い人が何で突然?」
「七大国会談ってのが関係あるのか?」
「あ、あの……今日はどういったご用件で……?」
彼女ら本当にどうやって来たんだ?
「今日はご挨拶に参りました~」
「姉がすみません、早く太陽というものを見てみたいと、昨日帰ってすぐに樹の国を出発したんです」
「これが太陽というものなんですね。私たち植物の精霊には凄く心地よく感じます」
植物の精霊であるせいか、太陽の光を浴びて心なしかちょっと髪のツヤが良くなった気がする。
「ここに来る前に、地獄の門にも行ってきました」
えっ!? 五十キロ離れてるのに!? 一体どういう移動方法を使えばそんな短時間で移動できるんだろう……?
「私の記憶してる限りには、我々では近付くことができず、人伝に聞いた話ではあそこには植物一つ生えていなかったと聞いていました」
「行ってみれば家が建っていて、お花畑が育てられていて、とても良い環境になっていました。素晴らしいです!」
「あ、噂のケルベロスさんにも会ってきましたよ~。あれが伝説に聞く地獄の番犬なのですね~。以前は灼熱の土地だったのでこの度初めて見ましたが、全然門を守ってなくて『番犬』という感じがしませんね~。大きい家 (※)の中にいましたけど、丸まったまま動かないので、触ってみたところ、それでも動かないので、一しきり撫でまわしてからこちらへ来ました。恐ろしいと聞いていましたが随分大人しいのですね~」
(※大きい家:犬小屋のこと)
元から門さえ越えなければ大人しかったけど、最近は誰彼構わず身体を触らせるようになってしまったのね……地獄の番犬がただの犬に成り下がってしまった……私の所為か。
と言うか……最近は番犬やってるより寝てることの方が多い気がする……冬が終わればちゃんとするかしら?
「太陽を確認しがてら、挨拶してすぐ帰る予定でしたが、もう少しここに居てもよろしいでしょうか~?」
本音が漏れてるよトライアさん……メインは私への挨拶じゃなくて、太陽を見ることなのね……
「え、ええ、どうぞ。ちょうどお昼時ですので、よろしければ昼食もご一緒にどうですか?」
「まあ! 良いのですか!」
「お姉様、今日は挨拶だけの約束でしょう?」
「ご馳走になってしまっては迷惑ですよ」
「いえ、こういう機会に親睦を図れるのは良いことだと思います」
「そうですか? ではお言葉に甘えさせていただきます」
太陽の下に居たいってことは、外で食べたいってことよね?
外で食べるとすると、町のみんなからすればドリアード族のことは珍しいだろうから、役所外ではジロジロ見られそうね。
「リーヴァント、役所の屋上って使えるよね?」
「え、ええ、椅子と机を運び込めば可能ですが……」
「綺麗にしてある?」
「一ヶ月ほど前の大晦日で掃除したので、それほど汚れはないと思いますが……」
じゃあ屋上で食べても大丈夫そうか。
「では、トライアさん、トリニアさん、トルテアさん、屋上で昼食と致しましょう」
◇
というわけで、急遽寒空の下、屋上で昼食ということになった。
一時的なものだからと、暖房バリアを周囲に張る。
「まあ! 急に暖かく!」
「寒いかと思い、今だけこの周辺を暖かくしました」
「「お心遣い感謝致します」」
彼女の妹のトリニアさんとトルテアさんが感謝の意を示す。
こう思ったら悪いかもしれないけど、妹たちの方がしっかりしてるのでは?
「今、『妹たちの方がしっかりしてるのでは?』と思われたかもしれませんが――」
心を読まれた!?
「姉はマイペースな言動をしていても、いざという時はきちっとしますので、平時はご容赦いただけると幸いです」
「あ、はい、大丈夫ですよ。私の知り合いそんな感じの方ばかりなので」
此度の昼食は外交に近いのではないかという私の判断で、急遽ハンバームちゃんに専属料理人をやってもらうことに。
……普段食堂で腕を振るう料理人、お客さんが来た時は専属料理人って、これ多分『専属』の使い方間違ってるよね? まあお客さんが来た時に専属に指名されるって意味で専属料理人としておこう。
「あの……ドリアード族の方々は、体質的に食べられないものはございますでしょうか?」
「木の下位精霊は食べること自体できない者が多いですが、わたくしたち高位精霊は、基本的に亜人の方々と同じものを食べられます」
「好き嫌いとかはございますか?」
「極端に辛いものや、苦いものは食べられませんね。それと、極端にしょっぱいものですね。身体に変調をきたしてしまいます。酷いと髪の毛が枯れてしまったり、お肌がひび割れてしまったり。ピリっと辛いとか、少し苦い程度なら問題無いと思います」
「かしこまりました。ではお食事をご用意致しますので、少々お待ちください。失礼します」
ハンバームちゃんは食堂へ昼食を作りに戻った。
「ところで、この冥球には太陽が存在しませんが、ドリアード族の方々でも気持ち良いと感じるのですね」
「はい! 太陽というものを初めて見ましたが、想像以上に気持ちの良いものでした。これはわたくしたちの身体を構成している植物の部分が喜びを感じるのかもしれません。光合成が捗ります」
DNAに刻まれてるとかそんな感じかな?
光合成が捗るって、ここだけ凄く空気が澄みそうなこと言ってるわね。
……
…………
………………
そして、しばらく恍惚とした表情のまま三人とも動かず……
おばあちゃんのような時間が流れる。
「はぁ……トリニア、トルテア、わたくし、ここに住みます。ここに根を下ろしても後悔しません……」
「「ダメですよ」」
「お姉様は魔王代理なのですから」
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