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第9章 七大国会談編

第224話 七大国会談開催 その2

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「他は全員魔王?」
「はい」
「名前を教えてもらえる?」
「五番目に入って来た中年ほどの険しい表情をされている方が憤怒の王『サタナエル』、六番目に入って来た若く自信に満ち溢れている方が傲慢の王『ルシファー』、――」

 ああ、表情に大罪の特徴が表れてるわ。
 サタナエルは怒りっぽそうな不満げな顔が染みついてるし、ルシファーは人を見下しているような表情で、いかにも傲慢に見える。

「最後に入って来た老齢の方が怠惰の王『ヴェルフェゴール』です」
「え!? あのおじいさんが今代こんだいの魔王ヴェルフェゴール!? あんなにお年を召されてるのにルシファーより強いの!?」
「はい、彼は昨日眠りから覚めたばかりで、今日が最も力のある状態ですね」

 眠りから目覚めた直後は、ルシファーの力を凌駕して最強って言ってたから、もっと若い人なのかと思ってた……
 三ヶ月も寝てたっていうのに、まだ何か眠そうな顔をしてるわ。まさに怠惰って感じね。

「あれ? でもレヴィの話だと、最近代替わりしたって言ってなかった?」
「はい、先代ヴェルフェゴールは、アルトラ様が魔界に来る少し前に亡くなられて、元々執事であったあの方が継承されました」
「何で? もっと若い人に継承させた方が良かったんじゃないの? 年取ってるってことはまたすぐ代替わりする可能性だってあるんじゃない?」
「そのお考えは……私からは言えないので、ヴェルフェゴール本人と対面することがあれば、その時にお聞きください」
「そんなに特別な事情があるの?」
「私からは言えません」

 カイベルの言葉を制限させるほどって、どんな理由なのかしら?

「今日来てない樹の国の魔王は『マモン』だっけ? その人はヴェルフェゴールよりも年上ってこと?」
「この魔界で年上とか年下とかはあまり意味が無いと思います。百歳ほどで老齢と呼ばれる種族がある一方で、千歳を超えても若さを保っている種族もいますので」

 それもそうか。フレアハルトなんて二十代くらいの見た目なのに二百二十二歳とか言ってたし、アスモなんて少女に見えるけど、少なくとも私より三十以上は年上だしな……

「じゃあ、聞き方を変えるわ、身体の老い具合で照らし合わせると、マモンはヴェルフェゴールより老齢ってこと?」
「いえ、老い具合にそう大した差はないはずです、体調を崩しているだけかと。ただ……かんばしくはないようですが……」

 かんばしくはない? 病気か怪我か分からないけど死が近いってことかしら……?

「ルシファーとサタナエルについて教えてもらえる?」
「火の国、氷の国のこの二ヵ国は、他の五ヵ国とは少々体制が異なり、独裁国家、軍事国家の様相を呈しています。どちらの国も先代は今よりも生活が豊かでしたが、今代に代替わりしてから、国民の日々の生活すら危ぶまれる状態となっています。特に氷の国は、現在では各地でテロ紛いの行為が頻発し、内戦に発展するのも時間の問題ではないかと噂されています」
「へぇ~」
「火の国は、軍事色が強いものとなり、各地で重い税を徴収し、中央の強化を図っているようです。対照的に首都より離れたところになると、貧民や奴隷商などが目立つようになりました」
「中央の強化を図っている理由は何?」
「私には分かりかねますが……もうすぐ冥球と天球が最も近付く時期となります」
「それって……やっぱり噂されていた冥球と天球の戦争ラグナロクを起こそうとしている?」
「可能性の一つと考えています」

 物騒だな……
 この二ヵ国とはあまり関わらない方が良いかもしれない。
 でも冥球と天球の戦争ラグナロクってことになると、この星に住んでる限り他人事というわけにはいかなくなるよね?
 何とか穏便に済む方法はないのかな?

「お付きの護衛の方々の名前もお教えしますか?」
「いや、それはおいおい確認してくから別に良いかな」

 一度に言われても覚えるの大変だし。
 あ、でも――

「レヴィとアスモが連れて来た女性護衛だけ教えてもらえる?」
「レヴィアタン様のお付きが『アニーレット・ウェパル・ドリンカ』。アスモデウス様のお付きが『エリザレア・シトリー・エレクタ』です。人魚に近い姿を持つウェパル族と、人の欲情に訴えかける能力を持つシトリー族……セカンドネームが示すように両者とも魔人です」
「魔人って亜人とは違うものなの?」
「人間界で言うところの『悪魔』と呼ばれる方たちで、ソロモン72柱の悪魔に数えられる方々です」
「ソロモン72柱の悪魔!? すっごい有名なやつじゃない!」
「彼女らのセカンドネームが示す通り、人間界で言うところの固有名と思われているものは、実は種族名で、種族の中から誰かしらが召喚されていたのでしょうね。書物によって悪魔の姿形や特徴が違うのは、全部他人だったからとみて良いでしょう」
「へぇ~、そうなのか」

 確かに本によっては、全然違う姿だし、全然違う能力持ってたりするしな。
 中には男って書かれてるのがある一方で、別の本では女として描かれてることもあるし……あれは全部別個体だったって考えると確かに説明付くわ。

「亜人と魔人はどう違うの?」
「魔力量に到底埋めることができない絶対的な差があります。それに伴い戦闘力も桁違いに高く、太古の魔人なら、仮に人間界に完全な形で顕現した場合、一週間、長くても二週間もあれば一国を焦土に変えるくらいの力があったとされています。魔界では主に魔王周りの護衛など、戦闘が予想される職に就いていることが多いですね」

 恐ぇぇ……災害並みってことか。

「太古の昔は、魔人同士の争いも日常的でしたので、焦土になるところも多かったようですが、数千年前に『七大魔王』という絶対的に力のある者が現れ、多くの魔人がその下に付いたために争いごとも徐々に起こらなくなり、その後争い自体が不毛なことだと認識したのか、破壊活動はほとんど行われることがなくなりました。近年は無闇に力を振るわなくなったためか、魔王同様その力も徐々に弱体化しています。もっとも……地球の人間や亜人に比べれば未だ比較にならない戦闘力であるのは変わりありませんが」
「フレアハルトとどっちが強い?」
「魔人にも個人差がありますが、平均的に見ればフレアハルト様と同等程度と考えてよいかと」

 フレアハルトアイツも相当な強さなわけか。

「ちなみに、アスタロトも魔人の種族名です」
「本名が別にあるってこと?」
「はい、魔王もそうですよ、継承前には別の名前でしたから」

 そういえばレヴィは元々『ビスマ』って名前だって言ってたな。
 カイベルとの会話が一段落。
 フレアハルトが大人しくしているなと思い、周囲を見回すと、黙って席に座っていた。少しの間様子を見てると――

「そこの給仕どの」
「はい? どうかいたしましたか?」
「この果実は貰ってよいのか?」
「はい、どうぞお好きにお召し上がりください」

 静かだなと思ったら、食べ物に目が行ってたか。

「美味しい?」
「うむ、この果実は我が町にはまだ無いな。美味いぞ!」

 それは良かった。

「持って帰って育てるか?」

 見た目がどう見てもバナナなのよね……亜熱帯より大分涼しいアルトレリアの気候で育つかな?

「お主も食ってみたらどうだ?」
「あ、ああ、そうね。後でいただくわ」
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