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第9章 七大国会談編

第223話 七大国会談開催 その1

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 そして来たる一月三十日、七大国会談の当日――

 我が家に使者が迎えに来たとの知らせが届いた。

 コンコンコン

 ガチャ

「アルトラ様! 七大国会談のお迎えの方がいらっしゃいました!」
「うん、マリリアありがとう。さあ、カイベル行きましょうか。リディアはリナさんの家でお留守番しててね」
「気を付けて行って来いヨ、アルトラ!」

   ◇

 役所前を訪れると、私担当の空間魔術師が迎えに来てくれていた。

「中立地帯アルトレリア盟主・アルトラ様、わたくし今回貴女様担当の空間魔術師を務めさせていただきますルイス・ウォルタ・ケインと申します」
「あれ? 何だルイスさんじゃない。あなたが私の担当をしてくれるの?」

 この亜人ひとは、レヴィの連れている二人居る空間魔術師のうちの一人。以前レヴィが宮殿を勝手に抜け出して我が家に来た時に丸め込まれた空間魔術師というのがこの亜人ひと。 (第57話参照)
 ちなみに、『ウォルタ』の姓が示す通り、ルイスさんは人魚族マーマンでトーマス、リナさんたちウォルタ兄妹の遠縁に当たるらしい。

「ええ、七大国会談開催時期は、各国の空間魔術師が総動員されるんですよ。何せ世界的に空間魔法を使える者自体が少ないので……」

 全世界的に見て、見習いを含めてさえ五十から六十人程度しかいないらしい。正式な空間魔術師となると、更に少なくなって二十人から三十人いるかどうかってところ。
 世知辛い職業だ……

「レヴィの方は大丈夫なの?」
「ええ、わたくしの上司が送り届けてますので、心配しなくても大丈夫だと思います」
「じゃあ、見知ってはいるけど、一応挨拶を。本日はわざわざお迎えいただき、ありがとうございます。本日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願い致します」
「じゃあみんな行ってくるね」
「「「お気を付けください」」」
「では、案内お願いしますね!」
「承知致しました」

 ルイスさんが使った空間転移魔法をくぐると――

 もうそこは雲の上だった。
 聞いた話では会談場は山の中腹辺りにあるらしい。

「ここが世界の頂か。最近アルトレリアが寒いから、ここは比較的暖かく感じるな」

 世界の頂って割には、寒くない。雪もあると想像していたけど、そんなこともなかった。
 むしろ標高の割には暖かいくらいだ。

「では、わたくしは次がありますので、ここで失礼致します」
「あ、送ってくれてありがとうございました」

 そう言うと、別の仕事をしに空間転移魔法で消えた。

   ◇

 七大国会談開始直前、私たち小国・属国は魔王たちとは別室へと通された。
 その部屋にはテーブルが複数あり、各国の名前が書かれ、テーブルの上にはフルーツの盛り合わせが用意されている。
 私の国の名前は――

 【中立地帯】

 私たちのところだけ国の名前じゃないわ……
 まあ……そうは言っても中立地帯は中立地帯だからしょうがないか。

 七大国会談場を見られるモニターがあり、そのモニターによって中の様子が見られるようになっている。
 そのモニターは最新の水の国の映像技術と雷の国の電波技術の粋を集めて作られているらしい。
 これ以前の七大国会談では、空間魔術師が数人がかりで『千里眼リモート・アイ』のような魔法を維持して映していたとか。
 『千里眼リモート・アイ』ってそんな高度な魔法だったのね……改めてこの自分の身体のスペックの高さを思い知る。

 別室に通された私たちは、のちのち一ヵ国ずつ、七大国の前に出て提議するのだとか。

「こちら、提議する方々の順番になります」

 リストを渡された。
 私達の順番は………………ゲッ、最後だ……やっぱり中立地帯の話題だけあって、重要度が高いと思われてるのかな?
 提議する国の数は……十二国。

 前半は七大国同士の歓談や情報交換の場。アニメで言えばAパート。『会談パート』と言ったところか。
 後半が小国・属国からの提議になるらしい。アニメならCM明けのBパート。『提議パート』かな。


   ◇


 控室のモニターを見ていると、七大国の王が会談の場に続々入室してくる。
 最初に入って来たのは、水の国のレヴィと騎士団長ルーファスさんと女性護衛。次に入って来たのは雷の国のアスモと側近のラッセルさんと女性護衛。四人は大分顔も見知ってきたけど、レヴィ、アスモと一緒に来た女性の護衛は両方とも見たことないわね。

 次からは私が全く見たことがない亜人ひとたち。順に五つの国が入って来た。
 三番めに入って来たのは、装飾に何やら木のような要素が多い緑髪の若い女性とその人によく似た女性が二人。三人とも姉妹かしら?
 四番目の人は、若く細身の眼鏡男性と鳥に似た小さな羽がある女性と男性の二人。
 五番目は、中年くらいの険しい顔をした男性と雪女のような青白い肌の女性と身体中が体毛に覆われた男性の二人。
 六番目は、若く力強く自信に満ちている男性と赤い肌の男性と女性の二人。
 そして最後に入って来たのは、大分お年を召された男性と体格が良く何やら硬そうな身体をした男性二人。

 あれ? 女性魔王は二人だけって聞いてたけど……あの木のような装飾をした女性は魔王ではないのかしら?

「カイベル、アスモたちの後に入って来たあの緑髪の女性って魔王じゃないの?」
「はい、あの方は『トライア』。樹の国の魔王代理で木の精霊ドリアード族ですね。樹の国の魔王は老齢で、あまり遠出することが出来なくなっているので代理を立てたのでしょう。脇に控えてる二人は彼女の妹たちで『トリニア』と『トルテア』です」
「あの人が精霊!? 精霊って初めて見た!」
「木の精霊は、エネルギー体 (※)や非物質を宿主とする他の精霊と違い、『木』という“物質”を宿主とするため、霊感が強くない一般の者でも見られる希有な精霊です。多くの者が初めて見る精霊が木の精霊ではないかと思われます」
   (※エネルギー体:ここでのエネルギー体は炎や光、水など不定形の非物質を指します)
「へぇ~、そうなのか」
「ただ……アルトラ様は既に精霊に出会われてますよ」
「え? いつ!?」
「トリトナ銀行から出張してくださっているシーラ様は水の精霊の一種、ルサールカ族です」
「えっ!? シーラさん精霊なの!? そうだったんだ……」

 綺麗な人だとは思ったけど、普通に亜人だと思ってた……

「あの人たち以外の先頭を歩く人は全員魔王?」
「いえ、あの眼鏡の若い男性は魔王ではありません。あの方は『アスタロト』。風の国の魔王代理で魔人です」

 ああ、レヴィが元々の私の側近って言ってた人か。今王様不在だからいつまで経っても代理なのね。
 あれが魔人か、魔王以外の魔人を初めて見たな。『暴食』の大罪が見つからないからって、別に代理に甘んじてなくても、王様名乗っちゃえば良いと思うんだけど……
 七つの大罪を得た者が次代の『魔王』って土台があるから、簡単に王様を名乗るってわけにはいかないのかしら?
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