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第8章 通貨制度構築編
第216話 噴出した問題点 その1
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通貨制度開始初日の夜――
リーヴァントと副リーダー、リナさん、ヤポーニャさんに集まってもらい、今日の報告をしてもらう。
「飲食店の米と小麦が不足してますね」
「私が見回って来たところもそうです!」
「私のところもそうでしたな」
「どこもかしこも米と小麦の不足ですね」
「全体的に米と小麦が不足してるな。アルトラ様、どうにかならんかな?」
う~ん……ここまで不足が顕著に表れるとは……通貨制度開始は、時期尚早だったかな……みんなご飯とパン好きなのね。
「とは言っても、生産するのにもしばらく時間がかかるしね。それに……時期が悪い。今の時期じゃ、少量の生産は出来そうだけど、大量生産は難しいしね」
成長促進魔法を使うにしても、水温が低いから小規模なら可能だけど、町全体の飲食店をカバーする量はちょっと……賄おうとすると多分また寝込む。下手すると死ぬかもしれない。
いっそ米そのものを作り変えてしまって、冬にも育つものにすれば良いかとも考えたが、それをすると味や食感が心配。
なぜなら私は冬に育った米を食べたことがないから、『冬に育つこと』と『冬に育った米がどうなるか』というところのイメージの両立が難しい。いざ育ってみてもあまり美味しくない可能性は十分にある……まあ美味しくなる可能性も十分にあるけど……
あと、もう一つの懸念としては、『冬も育つ』ということは、米を育ててくれる人の休みの期間が全く無くなってしまう可能性がある。しかも水仕事だから、初夏の田植えより何倍も過酷!
そういうところも考えると、現時点で存在しないからと言って、おいそれと「冬に育てられる米に作り変えてしまえば良い!」というわけにはいかないのである。
「あ、じゃあ私がこの寒い期間だけでも賄いましょうか?」
と、手を挙げてくれたのはリナさん。
「賄うって……一体どうするの?」
「輸入します。私の会社、貿易会社もありますので」
……
…………
………………
少しの沈黙。お金持ち規模が大きすぎてみんな考えがまとまらないようだ。
「あれ? どうかしましたか?」
「そ、そんなこと可能なんですか!?」
「大量に!?」
「それは凄い!」
「え、ええ、経営にはあまり口を出さないので、ほぼお飾りではありますけど、一応貿易会社の社長もやってますので」
「じゃあ是非お願いします!」
「これで米と小麦問題も解決ですな!」
どんだけお金持ちなのこの子……
「いやいやいや、ちょっと待って!」
みんなの歓喜に沸いたところへ水を差す。
「それ、代金どうするの?」
「私が持ちます」
「いや、それは何と言うか……助かるんだけどダメでしょ。リナさんの会社に損害しか与えてないじゃない」
「大丈夫です! 私のポケットマネーから出しますから!」
ポケットマネーどんだけ~……?
いや、それでもリナさんの負担になるのは違いない。「ポケットマネーでやってくれるなら、会社に損害が出るわけじゃないし良いかぁ~」とはならない。
少し考え方を戻そう。
私がウォル通貨を作り出す方法としては、アルトレリア産の作物を売って、それを元手に米とか小麦を買うくらいか。うちの作物は結構品質が良い。都会でもそれなりに売れる品質にはなってると思う。米・小麦以外の作物なら、先日のリーヴァントの試算で半年は賄えるくらいの生産が予定されているらしい。つまり少しくらいなら外貨稼ぎに利用できそうだ。
とは言え……公式に外貨を得るのはまだ問題がある気がする。
私は以前、この中立地帯で使われる各国通貨の解釈を――
・特定の国の通貨を他国の通貨へ換金 ⇒ OK?
・特定の国で買った物資を村人に配る ⇒ OK?
・特定の国の通貨を村人に配る ⇒
条件付きでOK?(トロル村でこのお金と物を交換しないこと)
・村人が特定の国へ行ってその国と同じ通貨を使う
(旅行なども含む) ⇒ OK?
・特定の国の通貨をトロル村の通貨として使う ⇒ 絶対にNG
――という風に考えた。 (第161話参照)
この『作物を売って水の国通貨を得る』という構図は、『作物を売る⇒ウォル通貨を得る⇒米・小麦を買う』となるから、一応上の『村人が特定の国へ行ってその国と同じ通貨を使う』に当たると思う。ここで私の考えでは一応『OK?』としている。
が、以上は全部が私の想像上の結論、云わば空論でしかないので、この解釈で本当に各七大国が納得しているかどうかは未だにわからないのだ。
レヴィが七大国会談が近々あるって言うから、出来ることならそこでこの中立地帯の立ち位置と扱いが確定するまでは何とか外貨稼ぎは控えておきたいところ……
「う~ん……う~ん……う~ん……」
ダメだいくら考えても、町全体を賄うための米と小麦が育つまでの期間を埋めるのは難しい。
ハンバームちゃんの話では、残り数日で底を尽くって話だから、他の飲食店はもっと早いかもしれない。
「ごめん、じゃあリナさんお願いできるかな? 輸入に掛かるお金についてはまた後日ってことにしてもらえるとありがたい。何かしらで捻出するから」
「あ、はい、いつでも大丈夫ですよ。それにこのアルトレリア通貨を育てて、他の七大国と取引できるくらいに価値を上げてもらえれば、ここのお金で払ってもらっても良いですし」
「う~ん、それは……一体何十年後になるんだろうね……」
「期待してますね!」
また難しいことをサラリと言ってくれる……
今日始まったばかりの通貨が、七大国に通じるようになるなんてどれほどの期間が必要になるかわからない。
地球の話に置き換えても、昔からずっとある国の通貨ですら突然、大国と渡り合えるほど爆騰 (※)したなんて話は中々聞いたことが無い。
ましてや新興の地域の通貨がそうそう価値が上がるとは思えない。夢のような話だ。
(※爆騰:暴騰より更に爆上げという意味で、『爆騰』と記しました)
「私は以前伝説級のアクセサリ貰ってますし、あれを頂いたというだけでもこの冬のお米と小麦の価値を軽く超えますよ」
ああ、そういえばあのアクアマリンの腕輪、数千万は下らないとか言ってたっけ。 (第89話参照)
あ、ちなみに彼女がこっちへ来た時に壊されてたけど、修復して返した。
「そっか、う~ん……じゃあお願いしても良いかな?」
「はい、お任せください!」
「でもそれだけの量どうやって運ぶの? 空間魔法で運ぶにしても量を考えると中々骨が折れるよ?」
「大丈夫です! スカイドラゴン便がありますので!」
新しい単語出て来た! 何だスカイドラゴン便って?
「スカイドラゴン便って何?」
「ワイバーンやドラゴンフラヤーなど空を飛ぶドラゴンが荷物を運んでくれる運搬サービスです。海ならシードラゴン便がありますよ」
ああ、つまりスカイドラゴン便は空輸で、シードラゴン便は海運ってことか。陸路はもしかしてランドドラゴン便? そんなわけないか、馬の方が早そうだ。
車すらまだ開発されてないから、飛行機は尚更まだ無いってことなのね。でも船はあるっぽいな。
ここでも疑問が出てくる。
果たして、「他国のスカイドラゴン便を使うのは、七大国相手としてはOKなのだろうか?」ということ。
レヴィやアスモが私が地獄の門付近に居を構えたことを知っていたくらいだから、恐らく他国にもここの町が大きくなっていることは伝わっていると思うけど、各国からリアクションが無いから良い状態なのか悪い状態なのか全く判断が付かない。
少々臆病になり過ぎてるだけか? 私が自意識過剰なだけか?
七大国会談までそれほど日にちも無いし、スカイドラゴン便使うことには目をつぶろうか? 流石に七大国会談までの少ない日数で他国から攻撃されるなんてことは無いと思うし。
散々考えに考え抜いた末、今回は使うことに決定。七大国会談がすぐそこということで、そこで私がアルトレリアの立ち位置を明確にしてくれば問題無いだろうという結論に至った。
「じゃあ、スカイドラゴン便でお願い」
「わかりました!」
◇
「みんな他に何かある?」
「スイーツ店でも小麦は不足していますが……それに付け加えて卵と牛乳も」
ああぁぁ……それもあるのか……これらは米や小麦と違って腐るから困る……
「卵と牛乳も輸入リストに追加しておいますか?」
と、リナさんが薦めてくれるものの……
「米と小麦に加え、卵と牛乳までってのは流石に……今後の展望が予測できない……」
「それに、卵と牛乳って腐りますよね? 大量に仕入れても大丈夫なんですか?」
「確かに……」
ただでさえ、リナさんに対して大きく借金をしてしまったようなものなのに、この上更に卵と牛乳となると……
何よりもこの二つは、米・小麦と違って今後の入手のアテが全く無い。ここでお願いしたらずっと輸入に頼ることになってしまう。
「残念だけど、今後はこの二つはしばらく手に入れられないものと考えてください」
「「「「ええぇぇーーーっ!!」」」」
ここにいる少数だけでこの悲痛な叫び。
これが町規模だと考えると……町全体お通夜みたいな雰囲気にならないでしょうね?
私だって卵と牛乳食べたい!
しかし、心を鬼にして言っておかねばならない。
「卵と牛乳は現状、この町で手に入れる方法が無いので、入手方法が確立するまで我慢をお願いします」
「うぅ……そんな……」
「無いものは無いので仕方ないですね……」
みんな「これから卵と牛乳を使った料理は食べられないのかぁ……」と本気で残念がってるのが見て取れる……
私が魔界に来る一年くらい前はもっともっと粗末なもの食べてたのに……
やっぱり生活水準が上がってしまうと、水準を下げるのは容易ではないのかな……?
「しかしスイーツ店の問題はどうするんですか? もう店仕舞いですか?」
卵も牛乳も使わないスイーツは数あるし、しばらくはそれで代用してもらうくらいしかないか。
「そちらは私が対応します。卵も牛乳も使わないレシピでしばらく凌いでもらおうと思います」
後日、卵・牛乳を使わないレシピをカイベルにプリントアウトしてもらって、スイーツ店に対応に行こう。
今後、何とかニワトリみたいなやつと、乳牛みたいなやつを手に入れられたら良いんだけど……
でも、「生物を輸入してほしい」って言うのも現状問題がある気がするし。空想敵国の七大国の縛りがキツイ……
どこからかこの町に迷い込んで来てくれれば問題無く養畜できるのに!
とりあえず、この問題は七大国会談後に棚上げかな。
リーヴァントと副リーダー、リナさん、ヤポーニャさんに集まってもらい、今日の報告をしてもらう。
「飲食店の米と小麦が不足してますね」
「私が見回って来たところもそうです!」
「私のところもそうでしたな」
「どこもかしこも米と小麦の不足ですね」
「全体的に米と小麦が不足してるな。アルトラ様、どうにかならんかな?」
う~ん……ここまで不足が顕著に表れるとは……通貨制度開始は、時期尚早だったかな……みんなご飯とパン好きなのね。
「とは言っても、生産するのにもしばらく時間がかかるしね。それに……時期が悪い。今の時期じゃ、少量の生産は出来そうだけど、大量生産は難しいしね」
成長促進魔法を使うにしても、水温が低いから小規模なら可能だけど、町全体の飲食店をカバーする量はちょっと……賄おうとすると多分また寝込む。下手すると死ぬかもしれない。
いっそ米そのものを作り変えてしまって、冬にも育つものにすれば良いかとも考えたが、それをすると味や食感が心配。
なぜなら私は冬に育った米を食べたことがないから、『冬に育つこと』と『冬に育った米がどうなるか』というところのイメージの両立が難しい。いざ育ってみてもあまり美味しくない可能性は十分にある……まあ美味しくなる可能性も十分にあるけど……
あと、もう一つの懸念としては、『冬も育つ』ということは、米を育ててくれる人の休みの期間が全く無くなってしまう可能性がある。しかも水仕事だから、初夏の田植えより何倍も過酷!
そういうところも考えると、現時点で存在しないからと言って、おいそれと「冬に育てられる米に作り変えてしまえば良い!」というわけにはいかないのである。
「あ、じゃあ私がこの寒い期間だけでも賄いましょうか?」
と、手を挙げてくれたのはリナさん。
「賄うって……一体どうするの?」
「輸入します。私の会社、貿易会社もありますので」
……
…………
………………
少しの沈黙。お金持ち規模が大きすぎてみんな考えがまとまらないようだ。
「あれ? どうかしましたか?」
「そ、そんなこと可能なんですか!?」
「大量に!?」
「それは凄い!」
「え、ええ、経営にはあまり口を出さないので、ほぼお飾りではありますけど、一応貿易会社の社長もやってますので」
「じゃあ是非お願いします!」
「これで米と小麦問題も解決ですな!」
どんだけお金持ちなのこの子……
「いやいやいや、ちょっと待って!」
みんなの歓喜に沸いたところへ水を差す。
「それ、代金どうするの?」
「私が持ちます」
「いや、それは何と言うか……助かるんだけどダメでしょ。リナさんの会社に損害しか与えてないじゃない」
「大丈夫です! 私のポケットマネーから出しますから!」
ポケットマネーどんだけ~……?
いや、それでもリナさんの負担になるのは違いない。「ポケットマネーでやってくれるなら、会社に損害が出るわけじゃないし良いかぁ~」とはならない。
少し考え方を戻そう。
私がウォル通貨を作り出す方法としては、アルトレリア産の作物を売って、それを元手に米とか小麦を買うくらいか。うちの作物は結構品質が良い。都会でもそれなりに売れる品質にはなってると思う。米・小麦以外の作物なら、先日のリーヴァントの試算で半年は賄えるくらいの生産が予定されているらしい。つまり少しくらいなら外貨稼ぎに利用できそうだ。
とは言え……公式に外貨を得るのはまだ問題がある気がする。
私は以前、この中立地帯で使われる各国通貨の解釈を――
・特定の国の通貨を他国の通貨へ換金 ⇒ OK?
・特定の国で買った物資を村人に配る ⇒ OK?
・特定の国の通貨を村人に配る ⇒
条件付きでOK?(トロル村でこのお金と物を交換しないこと)
・村人が特定の国へ行ってその国と同じ通貨を使う
(旅行なども含む) ⇒ OK?
・特定の国の通貨をトロル村の通貨として使う ⇒ 絶対にNG
――という風に考えた。 (第161話参照)
この『作物を売って水の国通貨を得る』という構図は、『作物を売る⇒ウォル通貨を得る⇒米・小麦を買う』となるから、一応上の『村人が特定の国へ行ってその国と同じ通貨を使う』に当たると思う。ここで私の考えでは一応『OK?』としている。
が、以上は全部が私の想像上の結論、云わば空論でしかないので、この解釈で本当に各七大国が納得しているかどうかは未だにわからないのだ。
レヴィが七大国会談が近々あるって言うから、出来ることならそこでこの中立地帯の立ち位置と扱いが確定するまでは何とか外貨稼ぎは控えておきたいところ……
「う~ん……う~ん……う~ん……」
ダメだいくら考えても、町全体を賄うための米と小麦が育つまでの期間を埋めるのは難しい。
ハンバームちゃんの話では、残り数日で底を尽くって話だから、他の飲食店はもっと早いかもしれない。
「ごめん、じゃあリナさんお願いできるかな? 輸入に掛かるお金についてはまた後日ってことにしてもらえるとありがたい。何かしらで捻出するから」
「あ、はい、いつでも大丈夫ですよ。それにこのアルトレリア通貨を育てて、他の七大国と取引できるくらいに価値を上げてもらえれば、ここのお金で払ってもらっても良いですし」
「う~ん、それは……一体何十年後になるんだろうね……」
「期待してますね!」
また難しいことをサラリと言ってくれる……
今日始まったばかりの通貨が、七大国に通じるようになるなんてどれほどの期間が必要になるかわからない。
地球の話に置き換えても、昔からずっとある国の通貨ですら突然、大国と渡り合えるほど爆騰 (※)したなんて話は中々聞いたことが無い。
ましてや新興の地域の通貨がそうそう価値が上がるとは思えない。夢のような話だ。
(※爆騰:暴騰より更に爆上げという意味で、『爆騰』と記しました)
「私は以前伝説級のアクセサリ貰ってますし、あれを頂いたというだけでもこの冬のお米と小麦の価値を軽く超えますよ」
ああ、そういえばあのアクアマリンの腕輪、数千万は下らないとか言ってたっけ。 (第89話参照)
あ、ちなみに彼女がこっちへ来た時に壊されてたけど、修復して返した。
「そっか、う~ん……じゃあお願いしても良いかな?」
「はい、お任せください!」
「でもそれだけの量どうやって運ぶの? 空間魔法で運ぶにしても量を考えると中々骨が折れるよ?」
「大丈夫です! スカイドラゴン便がありますので!」
新しい単語出て来た! 何だスカイドラゴン便って?
「スカイドラゴン便って何?」
「ワイバーンやドラゴンフラヤーなど空を飛ぶドラゴンが荷物を運んでくれる運搬サービスです。海ならシードラゴン便がありますよ」
ああ、つまりスカイドラゴン便は空輸で、シードラゴン便は海運ってことか。陸路はもしかしてランドドラゴン便? そんなわけないか、馬の方が早そうだ。
車すらまだ開発されてないから、飛行機は尚更まだ無いってことなのね。でも船はあるっぽいな。
ここでも疑問が出てくる。
果たして、「他国のスカイドラゴン便を使うのは、七大国相手としてはOKなのだろうか?」ということ。
レヴィやアスモが私が地獄の門付近に居を構えたことを知っていたくらいだから、恐らく他国にもここの町が大きくなっていることは伝わっていると思うけど、各国からリアクションが無いから良い状態なのか悪い状態なのか全く判断が付かない。
少々臆病になり過ぎてるだけか? 私が自意識過剰なだけか?
七大国会談までそれほど日にちも無いし、スカイドラゴン便使うことには目をつぶろうか? 流石に七大国会談までの少ない日数で他国から攻撃されるなんてことは無いと思うし。
散々考えに考え抜いた末、今回は使うことに決定。七大国会談がすぐそこということで、そこで私がアルトレリアの立ち位置を明確にしてくれば問題無いだろうという結論に至った。
「じゃあ、スカイドラゴン便でお願い」
「わかりました!」
◇
「みんな他に何かある?」
「スイーツ店でも小麦は不足していますが……それに付け加えて卵と牛乳も」
ああぁぁ……それもあるのか……これらは米や小麦と違って腐るから困る……
「卵と牛乳も輸入リストに追加しておいますか?」
と、リナさんが薦めてくれるものの……
「米と小麦に加え、卵と牛乳までってのは流石に……今後の展望が予測できない……」
「それに、卵と牛乳って腐りますよね? 大量に仕入れても大丈夫なんですか?」
「確かに……」
ただでさえ、リナさんに対して大きく借金をしてしまったようなものなのに、この上更に卵と牛乳となると……
何よりもこの二つは、米・小麦と違って今後の入手のアテが全く無い。ここでお願いしたらずっと輸入に頼ることになってしまう。
「残念だけど、今後はこの二つはしばらく手に入れられないものと考えてください」
「「「「ええぇぇーーーっ!!」」」」
ここにいる少数だけでこの悲痛な叫び。
これが町規模だと考えると……町全体お通夜みたいな雰囲気にならないでしょうね?
私だって卵と牛乳食べたい!
しかし、心を鬼にして言っておかねばならない。
「卵と牛乳は現状、この町で手に入れる方法が無いので、入手方法が確立するまで我慢をお願いします」
「うぅ……そんな……」
「無いものは無いので仕方ないですね……」
みんな「これから卵と牛乳を使った料理は食べられないのかぁ……」と本気で残念がってるのが見て取れる……
私が魔界に来る一年くらい前はもっともっと粗末なもの食べてたのに……
やっぱり生活水準が上がってしまうと、水準を下げるのは容易ではないのかな……?
「しかしスイーツ店の問題はどうするんですか? もう店仕舞いですか?」
卵も牛乳も使わないスイーツは数あるし、しばらくはそれで代用してもらうくらいしかないか。
「そちらは私が対応します。卵も牛乳も使わないレシピでしばらく凌いでもらおうと思います」
後日、卵・牛乳を使わないレシピをカイベルにプリントアウトしてもらって、スイーツ店に対応に行こう。
今後、何とかニワトリみたいなやつと、乳牛みたいなやつを手に入れられたら良いんだけど……
でも、「生物を輸入してほしい」って言うのも現状問題がある気がするし。空想敵国の七大国の縛りがキツイ……
どこからかこの町に迷い込んで来てくれれば問題無く養畜できるのに!
とりあえず、この問題は七大国会談後に棚上げかな。
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