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第8章 通貨制度構築編
第202話 アルトラサンタは大忙し
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サンタクロースに変装して三時間が経過――
「あれ? この家って……」
手にしたマップを見返すと各家に配っている間に、いつの間にか我が家 (地獄の門前広場)へと繋がるゼロ距離ドアを設置した場所の近くに居た。
いつも町を訪れた時に、必然的にここを通過する。
「ここってリーヴァントの家だ! 奥さんがいるって聞いてたけど、子供もいたのね」
家は二階建て。一階にロウソクの明かりが点いている。まだ起きて何かやってるのかな?
まあ『千里眼』で中の様子を見た後、『次元歩行』で二階の子供のところへ移動。
「この子……リディアと一緒に遊んでる三人の男の子の一人ね」
リディアがよく遊ぶ子は五人いる。二人は毎朝ケルベロスをもふもふしに来る、ラナとリアという姉妹。男の子の方は三人いるのは知っていたが、名前やどこの誰かまでは知らなかった。
「リディアがこの町に来てしばらく経つけど、その中の一人がリーヴァントの子だって全く気付かなかったわ……」
あっ! まさか……新しい村の名前投票の時に、子供のような字で『リーヴァント村』と書いたのはこの子か! (第172話参照)
お父さんを尊敬しているのね。
「メリークリスマス♪」
子供部屋から一階に下り、机に向かって何やら作業をしているリーヴァントに声をかける。
「リーヴァント……」
「うわ! あなた誰ですか!?」
後ろから声をかけたら驚かれた。サンタ服に髭で顔を隠している所為か、私だと気付いてないらしい。
まあ今の私の状態はモロに不審者だしな……もしここが日本ならプレゼントを配って回ってるとは言え、不法侵入を繰り返してるから通報されてるところだ。
「しーっ! 私、私」
と言いながら付け髭を取る。
「アルトラ様!? 子供たちにプレゼントと言ってましたが、直接来られるのですか!?」
「まあ、サンタって他人の家に入ってプレゼント置いていくっていう生態だし。ほら白い大きな袋、この中にプレゼントが入ってる」
本物のサンタは、転移魔法使わずに煙突から入るらしいけど……
「な、何でわざわざ声をかけられたのですか?」
「いやぁ、朝突然枕元にプレゼントがあるってビックリするじゃない? だから、一応こんなことやってることの証人になってもらおうかなと思って、保険をかけておこうかとあなただけには声をかけておこうかと思って」
要はフレアハルトの時と同じように、共犯になってもらおうというわけ。
多分この町の住人はまだ不法侵入まで気にする人はいないとは思うけど……日本人の時の小心者的な性から、後で言い訳が立つように保険をかけようとしてしまう。
「突然家の中に居るのでビックリしましたよ!」
「ごめんね、すぐ次の家へ行かなきゃならないから、もう行くね。じゃあおやすみ」
◇
もうすぐ四時間が経つ――
流石に四時間近く魔法を使い通しだと疲れも出てくる。
「あと一軒……やっと終わりか……」
自分で企画したことだけど、来年は本物にお任せしたいわ……
地球のサンタさんが、どうやって沢山のプレゼント配ってるのか知りたいところね。
最後の一軒に入ろうとしたところ、後ろから声がかかった。
「貴様がサンタとかいう者か?」
え? 誰? こんな時間に誰か外にいるなんて……
振り向くとそこには――
「フレハル……?」
しまった! 思わず声が出てしまった!
慌てて口を押えたが、咄嗟に出た声を聞かれてしまった。
「フレハルだと? 貴様、我の知っている者か? 誰だ貴様、サンタクロースとかいう種族ではないのか? 今日来ると言うからわざわざプレゼントとやらを取りに参ったというのに――」
いや、あなたは大人だからあげないってば!
それよりも何でコイツがここにいるの?
この町で魔力感知に最も長けているため、魔力を隠匿していても怪しまれるから一番会いたくなかった。
よく見ると身体に炎が纏わりついてる……何か……身体燃えてない?
「――魔力が全く感じられん異質の者とは、姿を現せ!」
コイツに正体がバレると後々面倒だ。
ここは何とか撒こう!
「あっ! あっちにもサンタがいる!」
「なに!? どこだ? 本当だ!」
え? いるの? 気を逸らすために言っただけなんだけど……
と、思ってそっちを見ると――
少し遠目にサンタが走り去っていくのが見えた。
あ、あれ私の分身体だ……偶然にも向かい側にいるとは……分身体の方ももう配り終える頃ってことなのかな?
でも、上手い具合に隙を作れた。
フレアハルトがあっち向いてる間に、『次元歩行』で脱兎のごとく逃げる。
「あっちにもサンタがおるとはな……しかしこちらの方が近い! おい貴様っ! あっ! いない!? どこへ行った!?」
◇
あぶねー、偶然私の分身体があっち側に居てくれて助かった。気を逸らしてる間に逃げることができた。
何でフレアハルトがあんなところに居たんだろう?
寒いから絶対に遭わないから安心と思っていたのに……一日で最も寒いこの時間に外にいるとは……
お付きの二人がいなかったところを見ると、単独で出て来たか、同行を断られたかのどちらかかな?
サンタについて執着している点は、好意的に見れば余程こういった風習に興味があるのか、もしくは、邪推するならプレゼントが欲しいただの食いしん坊か。
いずれにせよ、遭遇したのが最後の方で良かった。最初の方に遭遇してたら夜通し追いかけられたかもしれない。
最後の一軒にプレゼントを置き、ゲートで我が家へ帰宅した。
翌日、クリスマスの朝――
「アルトラ~、朝起きたら頭の横にプレゼントあっタ! やったやっタ~!!」
リディアが飛び跳ねながら起きて来た。
「そう? きっとリディアが良い子にしてたからサンタさんが来てくれたんだよ」
「嬉しイ! 大事に食べるナ! 今度サンタさんに会った時にはお礼言おウ!」
その日一日は、親子間、兄弟間、友達間で「うちにもサンタが来た!」という話題で持ち切りだった。
◇
そんな中――
「アルトラ! 我のところにはサンタが来ておらんぞ!」
「…………あ~、サンタさんは子供のところにプレゼントを配るって話だったからね。フレハルは残念ながら対象じゃなかったんじゃない? もしくは今年一年悪い子だったから配ってもらえなかったか」
言葉の端にちょっとした悪戯心が出てしまった。ニヒヒ。
「…………無念……昨夜はずっと起きておったのに……」
あなた起きてたどころか、サンタ追いかけようとしてたじゃない……
私も子供の時は「絶対最後まで起きてて、サンタさんに会うんだ!」なんて思ってたことがあった。結局その時はずっと起きてることは叶わず、深夜の時間帯になる前に眠ってしまったけど……それを良い大人がやってるとは……
昨日遭遇したことは知らんフリをしてフレアハルトに話を聞く。
「起きてたって、寒くなかったの?」
「お主が前に我に使った纏わりつく炎を参考に、身体に炎を纏って暖を取った」 (第58話参照)
ああ、だから燃えてたのか。自分の身体に火を付けて暖を取るって、恐ろしい生物だ……地球なら間違いなく焼身自殺……
「それって、周りは大丈夫だったんでしょうね? 家が火事になったりとかしたら大変よ?」
「そこは安心しろ。周りに被害が及ばぬように細心の注意を払った」
自覚してるんなら、まあ安全面には気を付けてくれてるってことか。
「アリサとレイアも一緒に起きてたの?」
「いや、サンタを捕まえに行こうと言ったら、『寒いので遠慮しておきます』、『捕まえたら教えてください~』とコタツに潜られた」
昨日遭ったのはそういうことだったのね。
いつも一緒に居るお付きに断られるなんて……
有事ってわけでもないから、彼女らの中では優先順位が『寒さ>主人』になってるのかもしれないわね。
と言うか、フレアハルトは少年過ぎないか? 男はいくつになっても少年って話があるけど……
ちなみにコタツは、最優先でフレアハルトたちの家に配ってもらったので、彼らが魔力充填式コタツ使用者第一号。寒くなると命の危機があるだろうという私の判断で一人につき一台、優先的に配ってもらった。
「それで、捕まえられた?」
「いや、二人見たが一瞬の隙を突いて逃げられてしまった……一人目は捕まえる寸前まで追い詰めたが、その後に二人目が登場して、そちらに気を取られ、振り返った時には最初に遭遇した者も既にいなかった。恐ろしく速い身のこなしだった……あのサンタとかいう者、只者ではないぞ」
私、追い詰められたっけ?
「それは残念だったね」
「それで……お主はプレゼントを貰ったのか?」
「貰うわけないじゃない、私二十七よ?」
「それは残念だったな」
「そ、そうね……」
いや、そもそも私が配ったものだから、別に残念でも無いんだけど……
まあ、フレアハルトに気付かれずに済んで良かったというところかな……
「あれ? この家って……」
手にしたマップを見返すと各家に配っている間に、いつの間にか我が家 (地獄の門前広場)へと繋がるゼロ距離ドアを設置した場所の近くに居た。
いつも町を訪れた時に、必然的にここを通過する。
「ここってリーヴァントの家だ! 奥さんがいるって聞いてたけど、子供もいたのね」
家は二階建て。一階にロウソクの明かりが点いている。まだ起きて何かやってるのかな?
まあ『千里眼』で中の様子を見た後、『次元歩行』で二階の子供のところへ移動。
「この子……リディアと一緒に遊んでる三人の男の子の一人ね」
リディアがよく遊ぶ子は五人いる。二人は毎朝ケルベロスをもふもふしに来る、ラナとリアという姉妹。男の子の方は三人いるのは知っていたが、名前やどこの誰かまでは知らなかった。
「リディアがこの町に来てしばらく経つけど、その中の一人がリーヴァントの子だって全く気付かなかったわ……」
あっ! まさか……新しい村の名前投票の時に、子供のような字で『リーヴァント村』と書いたのはこの子か! (第172話参照)
お父さんを尊敬しているのね。
「メリークリスマス♪」
子供部屋から一階に下り、机に向かって何やら作業をしているリーヴァントに声をかける。
「リーヴァント……」
「うわ! あなた誰ですか!?」
後ろから声をかけたら驚かれた。サンタ服に髭で顔を隠している所為か、私だと気付いてないらしい。
まあ今の私の状態はモロに不審者だしな……もしここが日本ならプレゼントを配って回ってるとは言え、不法侵入を繰り返してるから通報されてるところだ。
「しーっ! 私、私」
と言いながら付け髭を取る。
「アルトラ様!? 子供たちにプレゼントと言ってましたが、直接来られるのですか!?」
「まあ、サンタって他人の家に入ってプレゼント置いていくっていう生態だし。ほら白い大きな袋、この中にプレゼントが入ってる」
本物のサンタは、転移魔法使わずに煙突から入るらしいけど……
「な、何でわざわざ声をかけられたのですか?」
「いやぁ、朝突然枕元にプレゼントがあるってビックリするじゃない? だから、一応こんなことやってることの証人になってもらおうかなと思って、保険をかけておこうかとあなただけには声をかけておこうかと思って」
要はフレアハルトの時と同じように、共犯になってもらおうというわけ。
多分この町の住人はまだ不法侵入まで気にする人はいないとは思うけど……日本人の時の小心者的な性から、後で言い訳が立つように保険をかけようとしてしまう。
「突然家の中に居るのでビックリしましたよ!」
「ごめんね、すぐ次の家へ行かなきゃならないから、もう行くね。じゃあおやすみ」
◇
もうすぐ四時間が経つ――
流石に四時間近く魔法を使い通しだと疲れも出てくる。
「あと一軒……やっと終わりか……」
自分で企画したことだけど、来年は本物にお任せしたいわ……
地球のサンタさんが、どうやって沢山のプレゼント配ってるのか知りたいところね。
最後の一軒に入ろうとしたところ、後ろから声がかかった。
「貴様がサンタとかいう者か?」
え? 誰? こんな時間に誰か外にいるなんて……
振り向くとそこには――
「フレハル……?」
しまった! 思わず声が出てしまった!
慌てて口を押えたが、咄嗟に出た声を聞かれてしまった。
「フレハルだと? 貴様、我の知っている者か? 誰だ貴様、サンタクロースとかいう種族ではないのか? 今日来ると言うからわざわざプレゼントとやらを取りに参ったというのに――」
いや、あなたは大人だからあげないってば!
それよりも何でコイツがここにいるの?
この町で魔力感知に最も長けているため、魔力を隠匿していても怪しまれるから一番会いたくなかった。
よく見ると身体に炎が纏わりついてる……何か……身体燃えてない?
「――魔力が全く感じられん異質の者とは、姿を現せ!」
コイツに正体がバレると後々面倒だ。
ここは何とか撒こう!
「あっ! あっちにもサンタがいる!」
「なに!? どこだ? 本当だ!」
え? いるの? 気を逸らすために言っただけなんだけど……
と、思ってそっちを見ると――
少し遠目にサンタが走り去っていくのが見えた。
あ、あれ私の分身体だ……偶然にも向かい側にいるとは……分身体の方ももう配り終える頃ってことなのかな?
でも、上手い具合に隙を作れた。
フレアハルトがあっち向いてる間に、『次元歩行』で脱兎のごとく逃げる。
「あっちにもサンタがおるとはな……しかしこちらの方が近い! おい貴様っ! あっ! いない!? どこへ行った!?」
◇
あぶねー、偶然私の分身体があっち側に居てくれて助かった。気を逸らしてる間に逃げることができた。
何でフレアハルトがあんなところに居たんだろう?
寒いから絶対に遭わないから安心と思っていたのに……一日で最も寒いこの時間に外にいるとは……
お付きの二人がいなかったところを見ると、単独で出て来たか、同行を断られたかのどちらかかな?
サンタについて執着している点は、好意的に見れば余程こういった風習に興味があるのか、もしくは、邪推するならプレゼントが欲しいただの食いしん坊か。
いずれにせよ、遭遇したのが最後の方で良かった。最初の方に遭遇してたら夜通し追いかけられたかもしれない。
最後の一軒にプレゼントを置き、ゲートで我が家へ帰宅した。
翌日、クリスマスの朝――
「アルトラ~、朝起きたら頭の横にプレゼントあっタ! やったやっタ~!!」
リディアが飛び跳ねながら起きて来た。
「そう? きっとリディアが良い子にしてたからサンタさんが来てくれたんだよ」
「嬉しイ! 大事に食べるナ! 今度サンタさんに会った時にはお礼言おウ!」
その日一日は、親子間、兄弟間、友達間で「うちにもサンタが来た!」という話題で持ち切りだった。
◇
そんな中――
「アルトラ! 我のところにはサンタが来ておらんぞ!」
「…………あ~、サンタさんは子供のところにプレゼントを配るって話だったからね。フレハルは残念ながら対象じゃなかったんじゃない? もしくは今年一年悪い子だったから配ってもらえなかったか」
言葉の端にちょっとした悪戯心が出てしまった。ニヒヒ。
「…………無念……昨夜はずっと起きておったのに……」
あなた起きてたどころか、サンタ追いかけようとしてたじゃない……
私も子供の時は「絶対最後まで起きてて、サンタさんに会うんだ!」なんて思ってたことがあった。結局その時はずっと起きてることは叶わず、深夜の時間帯になる前に眠ってしまったけど……それを良い大人がやってるとは……
昨日遭遇したことは知らんフリをしてフレアハルトに話を聞く。
「起きてたって、寒くなかったの?」
「お主が前に我に使った纏わりつく炎を参考に、身体に炎を纏って暖を取った」 (第58話参照)
ああ、だから燃えてたのか。自分の身体に火を付けて暖を取るって、恐ろしい生物だ……地球なら間違いなく焼身自殺……
「それって、周りは大丈夫だったんでしょうね? 家が火事になったりとかしたら大変よ?」
「そこは安心しろ。周りに被害が及ばぬように細心の注意を払った」
自覚してるんなら、まあ安全面には気を付けてくれてるってことか。
「アリサとレイアも一緒に起きてたの?」
「いや、サンタを捕まえに行こうと言ったら、『寒いので遠慮しておきます』、『捕まえたら教えてください~』とコタツに潜られた」
昨日遭ったのはそういうことだったのね。
いつも一緒に居るお付きに断られるなんて……
有事ってわけでもないから、彼女らの中では優先順位が『寒さ>主人』になってるのかもしれないわね。
と言うか、フレアハルトは少年過ぎないか? 男はいくつになっても少年って話があるけど……
ちなみにコタツは、最優先でフレアハルトたちの家に配ってもらったので、彼らが魔力充填式コタツ使用者第一号。寒くなると命の危機があるだろうという私の判断で一人につき一台、優先的に配ってもらった。
「それで、捕まえられた?」
「いや、二人見たが一瞬の隙を突いて逃げられてしまった……一人目は捕まえる寸前まで追い詰めたが、その後に二人目が登場して、そちらに気を取られ、振り返った時には最初に遭遇した者も既にいなかった。恐ろしく速い身のこなしだった……あのサンタとかいう者、只者ではないぞ」
私、追い詰められたっけ?
「それは残念だったね」
「それで……お主はプレゼントを貰ったのか?」
「貰うわけないじゃない、私二十七よ?」
「それは残念だったな」
「そ、そうね……」
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