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第8章 通貨制度構築編
第190話 隣村を求めて……
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「そんなに警戒しなくて良いわ。痛いことは何もしないから。あなた名前は?」
「ジュゼルマリオと申します」
何だかハイセンスな名前ね。トロル村に来た時から思ってたけど、普通の名前も多いものの、リーヴァントを筆頭にこの地の人たちはなぜかオシャレな名前が付いてる者も多い。
「じゃあジュゼルマリオ、あなたたちの村には何人の亜人がいるの?」
「四百人ほどです」
結構多いわね……この村の四割くらいの人数か……
「村の食料事情はどうなってるの?」
「ほとんど食べられてません。日々食いつなぐのがやっとな状況です。餓死する者は数日に一人くらい。栄養状態は悪いと言わざるを得ません」
まあ、そうでしょうね。見るからにガリガリに痩せてるし。元・トロル村に私が来た当初のような体型をしている。
「じゃあ、この村に住んでみない?」
最近気温が低下気味だし、今後更に低くなることがあるなら、彼らの村は全滅してしまうかもしれない。
「本当ですか!? 四百人を!?」
「もちろんこの村で働いてもらうけど。生活は保障できると思う。リーヴァント、現在の食料状況は?」
「町の人数を半年ほど賄えるくらいの食糧の生産が予想されます。また備蓄もそれなりには」
「じゃあ四百人くらいなら増えても大丈夫ってことね?」
「そうですね。もっとも迎え入れると言うのなら、今後の彼らの働き次第ではありますが……」
まあ少しくらい足りなくても、私が成長促進魔法を使えば問題無いでしょう。
「それに、住むところはどうしますか?」
「それも後々は自分たちで作ってもらおうか。しばらくは私が仮設の家を作るよ。土と樹だけの仮設の家だけど新しく作るまで持たせるくらいの強度はあるでしょ。住居は川を挟んだ向こう側の平原にでも住んでもらおうか」
「ただ、そうすると壁もどうにかしないといけませんが……」
ガルム他、野生の獣のことか……確かに家だけ作っても襲撃される可能性は大いにある。
「私が簡易壁を作るから、その内側にちゃんとした壁も彼ら自身に作ってもらおう」
「内側の壁が出来たら、後々簡易壁を消すということですか?」
「そういうこと」
簡易壁でも、無いよりはガルムに食われる可能性もグッと低くなるはず。
とは言え……今通貨と銀行作ってる状況だから、彼らの家の周囲に壁を作るのは時間的にも人手的にも中々難しい。
一人だけこっちから出張させて、壁作りを覚えさせて自分たちで作ってもらうのが最善かな?
「それからあなたたち全員に二つ絶対に守ってもらいたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「人間の亡者含め、知性を持った生物を、今後絶対に食べないこと。もし食べたことが発覚した場合は厳しい罰を与えます。地獄の外にいる亡者を見つけたら地獄の門まで送ってあげてください」
「そんなことで良いのなら……元々あまりに食べる物が無さ過ぎて無差別に食べているところもありますから」
「もう一つは、この村で争いごとを起こさないこと」
「わかりました」
「それじゃあ、それを村の人たちにも周知徹底してください。よし、じゃあ他の村人を迎えに行きましょうか」
…………いや、誰かを伴って行くより、私が村の近くまで飛んで行って、ゲートで戻って来た方が早いかもしれない。
「…………私一人で行ってきますので、どっちの方から来たか教えてもらえますか?」
「一人でですか!? その見た目ですので、襲われると思いますよ? 人間の子供ソックリですから」
襲われても返り討ちにするから問題は無いんだけど……そもそもあまり争いごとを起こしたくはないな。
まあ――
「大丈夫、村付近に行ったら帰ってきますので」
「そうですな、確かにそれなら彼らを連れて行くより遥かに早い。戻ってきてから再び彼らに同行してもらいましょう」
リーヴァントがそれに同意し、ジュゼルマリオがハテナ顔で疑問を口にする。
「一人で村付近に行って帰ってくる? 我々を同行せずに? それは意味があるんですか? わざわざ時間かけて行くのに、なぜ村に入らずに帰ってくるんですか? 二度手間じゃないですか」
ああ……もうゲートを知ってること前提で話を進めてた。
彼らには私のことは何にも分かってないんだっけ。
「私にはこういう能力があって――」
私の目の前と少し離れた場所にゲートを作って、潜り抜ける。
「おぉ!? 一瞬で移動した!? どういうことですか!?」
「ここと遠くを一瞬で繋げられるから、一度私が行って迎えに来るのが早いと思います」
「そんな能力が!? あなたは神様ですか?」
「い、いえ……これくらいの能力なら少数ですけど他にも使える人がいますよ……」
この方々も自分の村の外へ行ったことがほとんど無いから、見るもの見るものが新鮮なんだろう。
「じゃあ、私一人で行ってきますんで、方角を教えてください」
「あ、あっちの方……だと思います。いや……こっち……?」
「え? 自分が来た方角なのに曖昧なの?」
「ええ……まあ、ここまで遠くに来たことがありませんので……はは……」
う、う~ん……ここに来たのはジュゼルマリオだけじゃないし、他の亜人にも聞いてみるか。何せ百人弱で襲撃に来たわけだし。誰か一人くらい確実な方角わかってる人がいるだろ。
◇
で、結局全員に聞いた結果、誰一人として正確な方角がわからないらしい。
頭良くする前のことだからかしら……?
仕方ない、沢山の亜人に聞いて、一番多かった方角へ行ってみよう。
考えておいてなんだけど、何だこの無鉄砲な計画は!
一番多い方角は『西』とのことだった。
「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」
「お気をつけて」
『西』と言われたので、とりあえず西へ西へ飛んでみる。リーヴァントが歩きで一日くらいって言ってたから、飛んで行けば四、五時間もあれば着くでしょ。
◇
と、そんな風に簡単に考えてたけど――
「海に着いた……」
アクアリヴィア以来、久しぶりの海だ。こんなに近くに海があったのか……夏の気候になったら海水浴も良いかもね……
……
…………
………………
どゆこと? 私、集落を見落としたのかしら?
「と、とりあえず端まで来ちゃったからアルトレリアへ帰ろう……」
ゲートで帰還。
「あ、アルトラ様、お帰りなさい、いかがでしたか?」
「あっちには村は無かった……」
「じゃ、じゃああっちでしょうか?」
と指刺したのは『東』。
真逆じゃないの!?
「どうなってるのあなたたちの方向感覚!!」
「す、すみません、なにぶん初めての土地ですので土地勘が……」
言われた通り、今度は『東』へ飛んでみることにする。
◇
五時間くらい飛んだら見えるかと思ったけど、見つけられないから日が落ちるまで探し回ってみたけど……
「見つからないわ……」
彼らの村はホントに存在するのかしら? それすら疑いたくなってくる。
ゲートでアルトレリアへ帰還。
もうなんかゲンナリしてきた……
「ど、どうでしたか?」
ジュゼルマリオに聞かれるも――
「どこにも見当たらない……」
「じゃあ、残るは……」
北は私の生活圏がある地獄の門方向だから、あとは『南』しかない。
既に日が落ちて見えないくらいの暗さになってきている……明日の朝にしたいところだけど……
早く見つけてあげないとレロル村の人たち餓死しちゃわないかしら? ここに来てるのが男ばかりでかなりの労働力がここに居るんじゃないかって感じだし……まあ四百人のうちの百人だから村に男性は残っているだろうけど……それとは別に魔物に食べられたりとかの心配もある。
「はぁ……じゃあまた行ってくるわ……」
もう空は大分暗いため、集落水没の時にやった『疑似太陽より小規模な光源を作る』魔法を使い、私を追跡するよう設定。 (第22話参照)
これで地面を照らしながら村を探すことができる。
今度は『南』へ飛ぶ。
◇
五時間ほど飛ぶも、やっぱり見つからない。
「見つからないじゃないの!! どこから来たのあの人たち!?」
そこからは、それはもう我武者羅に飛び回った。
「ジュゼルマリオと申します」
何だかハイセンスな名前ね。トロル村に来た時から思ってたけど、普通の名前も多いものの、リーヴァントを筆頭にこの地の人たちはなぜかオシャレな名前が付いてる者も多い。
「じゃあジュゼルマリオ、あなたたちの村には何人の亜人がいるの?」
「四百人ほどです」
結構多いわね……この村の四割くらいの人数か……
「村の食料事情はどうなってるの?」
「ほとんど食べられてません。日々食いつなぐのがやっとな状況です。餓死する者は数日に一人くらい。栄養状態は悪いと言わざるを得ません」
まあ、そうでしょうね。見るからにガリガリに痩せてるし。元・トロル村に私が来た当初のような体型をしている。
「じゃあ、この村に住んでみない?」
最近気温が低下気味だし、今後更に低くなることがあるなら、彼らの村は全滅してしまうかもしれない。
「本当ですか!? 四百人を!?」
「もちろんこの村で働いてもらうけど。生活は保障できると思う。リーヴァント、現在の食料状況は?」
「町の人数を半年ほど賄えるくらいの食糧の生産が予想されます。また備蓄もそれなりには」
「じゃあ四百人くらいなら増えても大丈夫ってことね?」
「そうですね。もっとも迎え入れると言うのなら、今後の彼らの働き次第ではありますが……」
まあ少しくらい足りなくても、私が成長促進魔法を使えば問題無いでしょう。
「それに、住むところはどうしますか?」
「それも後々は自分たちで作ってもらおうか。しばらくは私が仮設の家を作るよ。土と樹だけの仮設の家だけど新しく作るまで持たせるくらいの強度はあるでしょ。住居は川を挟んだ向こう側の平原にでも住んでもらおうか」
「ただ、そうすると壁もどうにかしないといけませんが……」
ガルム他、野生の獣のことか……確かに家だけ作っても襲撃される可能性は大いにある。
「私が簡易壁を作るから、その内側にちゃんとした壁も彼ら自身に作ってもらおう」
「内側の壁が出来たら、後々簡易壁を消すということですか?」
「そういうこと」
簡易壁でも、無いよりはガルムに食われる可能性もグッと低くなるはず。
とは言え……今通貨と銀行作ってる状況だから、彼らの家の周囲に壁を作るのは時間的にも人手的にも中々難しい。
一人だけこっちから出張させて、壁作りを覚えさせて自分たちで作ってもらうのが最善かな?
「それからあなたたち全員に二つ絶対に守ってもらいたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「人間の亡者含め、知性を持った生物を、今後絶対に食べないこと。もし食べたことが発覚した場合は厳しい罰を与えます。地獄の外にいる亡者を見つけたら地獄の門まで送ってあげてください」
「そんなことで良いのなら……元々あまりに食べる物が無さ過ぎて無差別に食べているところもありますから」
「もう一つは、この村で争いごとを起こさないこと」
「わかりました」
「それじゃあ、それを村の人たちにも周知徹底してください。よし、じゃあ他の村人を迎えに行きましょうか」
…………いや、誰かを伴って行くより、私が村の近くまで飛んで行って、ゲートで戻って来た方が早いかもしれない。
「…………私一人で行ってきますので、どっちの方から来たか教えてもらえますか?」
「一人でですか!? その見た目ですので、襲われると思いますよ? 人間の子供ソックリですから」
襲われても返り討ちにするから問題は無いんだけど……そもそもあまり争いごとを起こしたくはないな。
まあ――
「大丈夫、村付近に行ったら帰ってきますので」
「そうですな、確かにそれなら彼らを連れて行くより遥かに早い。戻ってきてから再び彼らに同行してもらいましょう」
リーヴァントがそれに同意し、ジュゼルマリオがハテナ顔で疑問を口にする。
「一人で村付近に行って帰ってくる? 我々を同行せずに? それは意味があるんですか? わざわざ時間かけて行くのに、なぜ村に入らずに帰ってくるんですか? 二度手間じゃないですか」
ああ……もうゲートを知ってること前提で話を進めてた。
彼らには私のことは何にも分かってないんだっけ。
「私にはこういう能力があって――」
私の目の前と少し離れた場所にゲートを作って、潜り抜ける。
「おぉ!? 一瞬で移動した!? どういうことですか!?」
「ここと遠くを一瞬で繋げられるから、一度私が行って迎えに来るのが早いと思います」
「そんな能力が!? あなたは神様ですか?」
「い、いえ……これくらいの能力なら少数ですけど他にも使える人がいますよ……」
この方々も自分の村の外へ行ったことがほとんど無いから、見るもの見るものが新鮮なんだろう。
「じゃあ、私一人で行ってきますんで、方角を教えてください」
「あ、あっちの方……だと思います。いや……こっち……?」
「え? 自分が来た方角なのに曖昧なの?」
「ええ……まあ、ここまで遠くに来たことがありませんので……はは……」
う、う~ん……ここに来たのはジュゼルマリオだけじゃないし、他の亜人にも聞いてみるか。何せ百人弱で襲撃に来たわけだし。誰か一人くらい確実な方角わかってる人がいるだろ。
◇
で、結局全員に聞いた結果、誰一人として正確な方角がわからないらしい。
頭良くする前のことだからかしら……?
仕方ない、沢山の亜人に聞いて、一番多かった方角へ行ってみよう。
考えておいてなんだけど、何だこの無鉄砲な計画は!
一番多い方角は『西』とのことだった。
「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」
「お気をつけて」
『西』と言われたので、とりあえず西へ西へ飛んでみる。リーヴァントが歩きで一日くらいって言ってたから、飛んで行けば四、五時間もあれば着くでしょ。
◇
と、そんな風に簡単に考えてたけど――
「海に着いた……」
アクアリヴィア以来、久しぶりの海だ。こんなに近くに海があったのか……夏の気候になったら海水浴も良いかもね……
……
…………
………………
どゆこと? 私、集落を見落としたのかしら?
「と、とりあえず端まで来ちゃったからアルトレリアへ帰ろう……」
ゲートで帰還。
「あ、アルトラ様、お帰りなさい、いかがでしたか?」
「あっちには村は無かった……」
「じゃ、じゃああっちでしょうか?」
と指刺したのは『東』。
真逆じゃないの!?
「どうなってるのあなたたちの方向感覚!!」
「す、すみません、なにぶん初めての土地ですので土地勘が……」
言われた通り、今度は『東』へ飛んでみることにする。
◇
五時間くらい飛んだら見えるかと思ったけど、見つけられないから日が落ちるまで探し回ってみたけど……
「見つからないわ……」
彼らの村はホントに存在するのかしら? それすら疑いたくなってくる。
ゲートでアルトレリアへ帰還。
もうなんかゲンナリしてきた……
「ど、どうでしたか?」
ジュゼルマリオに聞かれるも――
「どこにも見当たらない……」
「じゃあ、残るは……」
北は私の生活圏がある地獄の門方向だから、あとは『南』しかない。
既に日が落ちて見えないくらいの暗さになってきている……明日の朝にしたいところだけど……
早く見つけてあげないとレロル村の人たち餓死しちゃわないかしら? ここに来てるのが男ばかりでかなりの労働力がここに居るんじゃないかって感じだし……まあ四百人のうちの百人だから村に男性は残っているだろうけど……それとは別に魔物に食べられたりとかの心配もある。
「はぁ……じゃあまた行ってくるわ……」
もう空は大分暗いため、集落水没の時にやった『疑似太陽より小規模な光源を作る』魔法を使い、私を追跡するよう設定。 (第22話参照)
これで地面を照らしながら村を探すことができる。
今度は『南』へ飛ぶ。
◇
五時間ほど飛ぶも、やっぱり見つからない。
「見つからないじゃないの!! どこから来たのあの人たち!?」
そこからは、それはもう我武者羅に飛び回った。
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