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第8章 通貨制度構築編

第186話 フラッシュストーカーの実験

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 夜――

「このポジションに隠れるのも、もはや恒例ね……」

 臭いで確実にバレてるはずなのに、なぜか毎回同じポジションに隠れてしまうのはなぜだろう?
 バレてるなら別に身を屈めなくても良いのに……

「あ、来ましたよ!」

 メイフィーは相変わらず夜目よめが利くからガルムが来たのがすぐにわかるらしい。
 ちなみに、私にはほぼ見えない。よく目を凝らして、微かに何かが動いてるかどうか分かる程度。

「じゃあ、今回も『千里眼リモート・アイ』を使おうか」

 実験結果が見やすいように、ガルムたちがアップで見えるような位置を映す。
 ガルムたちが畑に踏み入ると早速『フラッシュストーカー』が起動。徐々に近寄って行く。
 しかし、私はこの時に気付いてなかった……まさかあんな事態になってしまうとは……!

 『フラッシュストーカー』がガルムの目の前で閃光を放つ!

 パシャッ!

「「「ギャイン!」」」

 複数のガルムが一斉に目つぶし。これで見えなくなるはずだ……
 と簡単に考えていたその一方で――

「キャァアッ!」
「アアァッ! 目がぁぁ!!」

 遠くで観察していたはずの私たち二人もなぜか閃光を喰らってしまった!

「アルトラ様! どうなってるんですか!?」
「わからない! 光で目をやられた!?」

 何で!? 何が起こった!?
 何で不意打ちされた!? 光はどこから!?
 薄っすら目を開けてみるものの、まだ視界全体が緑がかっていてよく見えない。『千里眼リモート・アイ』のモニターを見てみるものの、強い陰性残像が残って肝心な真ん中の部分がほとんど見えない。

「メイフィー! ガルムの動向わかる?」
「まだ目を開けられません……」


   ◇


 ある程度視力が戻って来た頃には、もうガルムは全員退散していた。

「………………」
「………………」
「…………もうガルムいないね……」
「そうですね……」
「これは成功と見て良いのかな? 実験結果はわからなかったけど、一応追い払ったことには違いないし」
「そのようですね……」
「もう一回、明日の夜にでも実験する?」
「多分、大丈夫でしょう。ここにガルムがいないのがその結果ですよ!」
「……じゃあ、結果オーライってことにしよっか」

 何で不意打ちで光を喰らったか、後でよくよく考えてみたところ、ガルム付近に展開していた『千里眼リモート・アイ』のモニターを通して、私たちまで間接的に目くらましを喰らったらしい。
 ガルムたちの様子を近くで見ようと『千里眼リモート・アイ』を使っていたことが裏目に出たようだ。
 まさか作成者の自分が不意打ちで閃光を浴びるとは……
 昼間メイフィーで実験した時はサングラスかけてたけど、夜だから見えにくいと外していたのがあだとなった。
 これからは『千里眼リモート・アイ』も使いどころを考えないといけないな。





 三日後――
 メイフィーが来た。

「まさか……もう?」
「看破されました」
「……どうやって?」
「目撃した人によると、目をつぶりながら作物を探して食べてたらしいです。鼻が利くので」

 あ……そっか、アイツら鼻が利くから目をつぶるだけで、もう対処できてしまうんだ……何で気付かなったんだ私……バカなのか?
 もう魔法では対処し切れないな……ここまで執念深く畑の作物狙ってくるとは……そんな執拗に狙うほど美味しいのかしら?
 私が何か対抗策を考える度に、比例してガルムの頭がどんどん良くなっていく……

 もう基本に立ち返って、柵でも作ろうか。
 でも、柵を作るにも一つ問題がある。
 この土地の生物で最も大きい生物が、人間界の畑荒らすやつの比じゃないということ。
 人間界の、例えばイノシシ程度なら大きくても体高が一メートルを超えることはまず無い。しかしこの土地の巨大豚のピビッグの大きさは、成体になると体高だけで二メートルを超える。そんなのに突進されたら木で出来た柵程度では、数回、十数回も突進されれば壊されてしまう可能性が高い。
 壁を作っても良いけど、同様の理由で何回も体当たりされたら短い期間で壊されそうだ。仮に作るとしても厚さ何メートルもある厚い壁にしなければならない。

 さて、どうするかな……
 ……
 …………
 ………………
 ……………………
 !!?
 思いついてしまった!
 何でこんな簡単なことに今まで気付かなかったのか……

「ねぇメイフィー、今まで作ったゴーレムコレ一進五退装置コレ同時に使ったら良いんじゃない?」
「同時にって………………あっ! 一進五退装置コレを置いて、その周りをゴーレムに守らせるってことですか!?」
「そうそう!」
「確かにそれだったら弱点を補い合えますね!」

 早速二つ同時に使ってみる。
 一進五退装置の周りを守らせるだけなので、ゴーレムの感知範囲を極小にまで狭めた。
 この二つを併用しだすと、ガルムは一切畑に入ることができなくなった。
 畑に入ろうとすると、入った瞬間に後ろに転送されて入れない、かと言って魔道具から爪を抜き取ろうにも、ゴーレムが守っていて近付けないと、二段構えの防御態勢になり、これ以降この鉄壁の守りを突破できる野生の獣は現れなかった。
 これにて、トロルvsガルムの作物争奪戦争は一応の終結に至った。

 ただし……この後に別の問題が起こるが、それはまたの機会に。
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