189 / 531
第8章 通貨制度構築編
第186話 フラッシュストーカーの実験
しおりを挟む
夜――
「このポジションに隠れるのも、もはや恒例ね……」
臭いで確実にバレてるはずなのに、なぜか毎回同じポジションに隠れてしまうのはなぜだろう?
バレてるなら別に身を屈めなくても良いのに……
「あ、来ましたよ!」
メイフィーは相変わらず夜目が利くからガルムが来たのがすぐにわかるらしい。
ちなみに、私にはほぼ見えない。よく目を凝らして、微かに何かが動いてるかどうか分かる程度。
「じゃあ、今回も『千里眼』を使おうか」
実験結果が見やすいように、ガルムたちがアップで見えるような位置を映す。
ガルムたちが畑に踏み入ると早速『フラッシュストーカー』が起動。徐々に近寄って行く。
しかし、私はこの時に気付いてなかった……まさかあんな事態になってしまうとは……!
『フラッシュストーカー』がガルムの目の前で閃光を放つ!
パシャッ!
「「「ギャイン!」」」
複数のガルムが一斉に目つぶし。これで見えなくなるはずだ……
と簡単に考えていたその一方で――
「キャァアッ!」
「アアァッ! 目がぁぁ!!」
遠くで観察していたはずの私たち二人もなぜか閃光を喰らってしまった!
「アルトラ様! どうなってるんですか!?」
「わからない! 光で目をやられた!?」
何で!? 何が起こった!?
何で不意打ちされた!? 光はどこから!?
薄っすら目を開けてみるものの、まだ視界全体が緑がかっていてよく見えない。『千里眼』のモニターを見てみるものの、強い陰性残像が残って肝心な真ん中の部分がほとんど見えない。
「メイフィー! ガルムの動向わかる?」
「まだ目を開けられません……」
◇
ある程度視力が戻って来た頃には、もうガルムは全員退散していた。
「………………」
「………………」
「…………もうガルムいないね……」
「そうですね……」
「これは成功と見て良いのかな? 実験結果はわからなかったけど、一応追い払ったことには違いないし」
「そのようですね……」
「もう一回、明日の夜にでも実験する?」
「多分、大丈夫でしょう。ここにガルムがいないのがその結果ですよ!」
「……じゃあ、結果オーライってことにしよっか」
何で不意打ちで光を喰らったか、後でよくよく考えてみたところ、ガルム付近に展開していた『千里眼』のモニターを通して、私たちまで間接的に目くらましを喰らったらしい。
ガルムたちの様子を近くで見ようと『千里眼』を使っていたことが裏目に出たようだ。
まさか作成者の自分が不意打ちで閃光を浴びるとは……
昼間メイフィーで実験した時はサングラスかけてたけど、夜だから見えにくいと外していたのが仇となった。
これからは『千里眼』も使いどころを考えないといけないな。
三日後――
メイフィーが来た。
「まさか……もう?」
「看破されました」
「……どうやって?」
「目撃した人によると、目をつぶりながら作物を探して食べてたらしいです。鼻が利くので」
あ……そっか、アイツら鼻が利くから目をつぶるだけで、もう対処できてしまうんだ……何で気付かなったんだ私……バカなのか?
もう魔法では対処し切れないな……ここまで執念深く畑の作物狙ってくるとは……そんな執拗に狙うほど美味しいのかしら?
私が何か対抗策を考える度に、比例してガルムの頭がどんどん良くなっていく……
もう基本に立ち返って、柵でも作ろうか。
でも、柵を作るにも一つ問題がある。
この土地の生物で最も大きい生物が、人間界の畑荒らすやつの比じゃないということ。
人間界の、例えばイノシシ程度なら大きくても体高が一メートルを超えることはまず無い。しかしこの土地の巨大豚のピビッグの大きさは、成体になると体高だけで二メートルを超える。そんなのに突進されたら木で出来た柵程度では、数回、十数回も突進されれば壊されてしまう可能性が高い。
壁を作っても良いけど、同様の理由で何回も体当たりされたら短い期間で壊されそうだ。仮に作るとしても厚さ何メートルもある厚い壁にしなければならない。
さて、どうするかな……
……
…………
………………
……………………
!!?
思いついてしまった!
何でこんな簡単なことに今まで気付かなかったのか……
「ねぇメイフィー、今まで作ったゴーレムと一進五退装置同時に使ったら良いんじゃない?」
「同時にって………………あっ! 一進五退装置を置いて、その周りをゴーレムに守らせるってことですか!?」
「そうそう!」
「確かにそれだったら弱点を補い合えますね!」
早速二つ同時に使ってみる。
一進五退装置の周りを守らせるだけなので、ゴーレムの感知範囲を極小にまで狭めた。
この二つを併用しだすと、ガルムは一切畑に入ることができなくなった。
畑に入ろうとすると、入った瞬間に後ろに転送されて入れない、かと言って魔道具から爪を抜き取ろうにも、ゴーレムが守っていて近付けないと、二段構えの防御態勢になり、これ以降この鉄壁の守りを突破できる野生の獣は現れなかった。
これにて、トロルvsガルムの作物争奪戦争は一応の終結に至った。
ただし……この後に別の問題が起こるが、それはまたの機会に。
「このポジションに隠れるのも、もはや恒例ね……」
臭いで確実にバレてるはずなのに、なぜか毎回同じポジションに隠れてしまうのはなぜだろう?
バレてるなら別に身を屈めなくても良いのに……
「あ、来ましたよ!」
メイフィーは相変わらず夜目が利くからガルムが来たのがすぐにわかるらしい。
ちなみに、私にはほぼ見えない。よく目を凝らして、微かに何かが動いてるかどうか分かる程度。
「じゃあ、今回も『千里眼』を使おうか」
実験結果が見やすいように、ガルムたちがアップで見えるような位置を映す。
ガルムたちが畑に踏み入ると早速『フラッシュストーカー』が起動。徐々に近寄って行く。
しかし、私はこの時に気付いてなかった……まさかあんな事態になってしまうとは……!
『フラッシュストーカー』がガルムの目の前で閃光を放つ!
パシャッ!
「「「ギャイン!」」」
複数のガルムが一斉に目つぶし。これで見えなくなるはずだ……
と簡単に考えていたその一方で――
「キャァアッ!」
「アアァッ! 目がぁぁ!!」
遠くで観察していたはずの私たち二人もなぜか閃光を喰らってしまった!
「アルトラ様! どうなってるんですか!?」
「わからない! 光で目をやられた!?」
何で!? 何が起こった!?
何で不意打ちされた!? 光はどこから!?
薄っすら目を開けてみるものの、まだ視界全体が緑がかっていてよく見えない。『千里眼』のモニターを見てみるものの、強い陰性残像が残って肝心な真ん中の部分がほとんど見えない。
「メイフィー! ガルムの動向わかる?」
「まだ目を開けられません……」
◇
ある程度視力が戻って来た頃には、もうガルムは全員退散していた。
「………………」
「………………」
「…………もうガルムいないね……」
「そうですね……」
「これは成功と見て良いのかな? 実験結果はわからなかったけど、一応追い払ったことには違いないし」
「そのようですね……」
「もう一回、明日の夜にでも実験する?」
「多分、大丈夫でしょう。ここにガルムがいないのがその結果ですよ!」
「……じゃあ、結果オーライってことにしよっか」
何で不意打ちで光を喰らったか、後でよくよく考えてみたところ、ガルム付近に展開していた『千里眼』のモニターを通して、私たちまで間接的に目くらましを喰らったらしい。
ガルムたちの様子を近くで見ようと『千里眼』を使っていたことが裏目に出たようだ。
まさか作成者の自分が不意打ちで閃光を浴びるとは……
昼間メイフィーで実験した時はサングラスかけてたけど、夜だから見えにくいと外していたのが仇となった。
これからは『千里眼』も使いどころを考えないといけないな。
三日後――
メイフィーが来た。
「まさか……もう?」
「看破されました」
「……どうやって?」
「目撃した人によると、目をつぶりながら作物を探して食べてたらしいです。鼻が利くので」
あ……そっか、アイツら鼻が利くから目をつぶるだけで、もう対処できてしまうんだ……何で気付かなったんだ私……バカなのか?
もう魔法では対処し切れないな……ここまで執念深く畑の作物狙ってくるとは……そんな執拗に狙うほど美味しいのかしら?
私が何か対抗策を考える度に、比例してガルムの頭がどんどん良くなっていく……
もう基本に立ち返って、柵でも作ろうか。
でも、柵を作るにも一つ問題がある。
この土地の生物で最も大きい生物が、人間界の畑荒らすやつの比じゃないということ。
人間界の、例えばイノシシ程度なら大きくても体高が一メートルを超えることはまず無い。しかしこの土地の巨大豚のピビッグの大きさは、成体になると体高だけで二メートルを超える。そんなのに突進されたら木で出来た柵程度では、数回、十数回も突進されれば壊されてしまう可能性が高い。
壁を作っても良いけど、同様の理由で何回も体当たりされたら短い期間で壊されそうだ。仮に作るとしても厚さ何メートルもある厚い壁にしなければならない。
さて、どうするかな……
……
…………
………………
……………………
!!?
思いついてしまった!
何でこんな簡単なことに今まで気付かなかったのか……
「ねぇメイフィー、今まで作ったゴーレムと一進五退装置同時に使ったら良いんじゃない?」
「同時にって………………あっ! 一進五退装置を置いて、その周りをゴーレムに守らせるってことですか!?」
「そうそう!」
「確かにそれだったら弱点を補い合えますね!」
早速二つ同時に使ってみる。
一進五退装置の周りを守らせるだけなので、ゴーレムの感知範囲を極小にまで狭めた。
この二つを併用しだすと、ガルムは一切畑に入ることができなくなった。
畑に入ろうとすると、入った瞬間に後ろに転送されて入れない、かと言って魔道具から爪を抜き取ろうにも、ゴーレムが守っていて近付けないと、二段構えの防御態勢になり、これ以降この鉄壁の守りを突破できる野生の獣は現れなかった。
これにて、トロルvsガルムの作物争奪戦争は一応の終結に至った。
ただし……この後に別の問題が起こるが、それはまたの機会に。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる