建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第7章 川完成編

第171話 正式な村の名前を決めるため、投票を行った!

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 川完成から一週間、散歩するたびに、紙を目の前にペンを持って考え込んでいる人をよく見るようになった。
 みんな真剣に考えてるのね。
 私も何か考えなきゃいけないのかな? という気になってくる。
 まあ、私は主催だから、一週間後を楽しみにしながら待とうか。





 そしてあっという間に一週間が経過――
 五ヶ所に設置されていた投票箱が回収された。
 投票箱の中身を確認するため、役所の一部屋に集まる。

 集められたのは、私、トロル村のリーダー・リーヴァント、副リーダー・キャンフィールド、ルーク、イチトス、副リーダーに加え村の女性代表も兼ねたクリスティン、異種族代表レッドドラゴン族のアリサ、人魚マーマン族のトーマス、ドワーフ族のヤポーニャさん。
 この人選はいずれも、『種族の中で常識的』であると判断したため。トーマスは現状村に一人しかいない人魚族マーマンだから自動的に選ばれた。ドワーフは他四人だと考え方に偏りがありそうだからヤポーニャさんを選んだ。

 同じく村に一人しかいないクラーケンのリディアだが、一応声はかけてみたが、彼女は今日も友達のところへ遊びに行っている。大人の集まりに呼ばれるより、同年代の子たちと遊んでいる方が楽しいという理由。この場に集められたところで「つまんなイ……」と言うであろうことが目に浮かぶ。まあ当然と言えば当然か。

 フレアハルトも元・王子であるという立場だったので呼んでいたのだが、何やら緊急で赤龍峰の方に呼ばれているということで、泣く泣くあちらへ行ったとか。出奔という形になっているとは言え、一応認められて家を出てるからか族長さんには頭が上がらないらしい。

「さて、どんなのがあるかな?」

 机の上で各投票箱をひっくり返す。

「結構投票されたね」
「じゃあ、さっそく見てみましょうか」

 投票箱から乱雑に放り出された紙を無作為に一枚手に取って開いてみる。

「『アルトラ村』……」

 ある程度予想はしてたけど、自分の名前が村の名前になっている……

「『アルトラ村』、『アルトラ村』、『アルトラの村』……これめちゃくちゃ多いわね。あ、これだけ『アルトラ町』になってる」
「こっちにもちょっと違うのがありますよ。『アルトラ街』」
「あ、これ王国になってます。『アルトラ王国』」

 数えたところ、百二票あった。そのうち、『アルトラ町』と『アルトラ街』、『アルトラ王国』、『帝都アルトラ』が一票ずつ。
 帝都って、どこのよ?
 あれ? この村の人数……確か千人弱だったと思ったけど……十人に一人が『アルトラ〇〇コレ』を書いたってこと? いや、一人何票も書いてるかもしれないから、必ずしもそうとは言い切れないけど……それにしても多い。
 単純に私が領主だからこその名前か? それとも人気ゆえか? フフッ

「では、それに決定ということで」
「「「異議なし!!」」」
「待て待て待て待て! 早い早い!!」

 リーヴァントが早々に締めようとしたため、慌てて制止する。

「一番多いものにするのではないのですか?」
「確かに私が領主ってことになってるけど、あまりにも直接的過ぎてこれはダメかな……私としても名前そのままなのは何だか恥ずかしい」
「そうですか、分かり易くて良いと思ったのですが……では次を見てみましょう」

「次に多いのが頭に『地獄』って付く名前ですね。『地獄村』――」

 まあ、立地的に地獄の地名は入ってるかなとは思った。

「『地獄の番村ばんそん』」

 地獄の番犬ならぬ番村ばんそんか。

「『地獄に一番近い村』」

 そうだけども……嫌な名前ね……臭い息とか吐くやつが出そう……

「『地獄極楽村』」

 どっち?
 でも温泉とか作ると、この名前は似合いそう。

「『地獄温泉村 (予定)』」

 直前ので温泉とか作ると名前が似合いそうなんて考えたけど、温泉はまだ無い!
 何だよ『予定』って! まだ温泉が出るかどうかすら不透明だし、予定すら無いよ!
 意欲は買うけど……

「『地獄』関連は、『アルトラ村』に次いで六十四票ありました」
「まあ……却下だよね……『地獄』なんて付く村に寄り付きたくないし……」

 もう頭に『地獄』って付くだけで、ラスボスの周辺感漂うわね……じゃあ、領主の私はラスボスか?

「あ、逆のやつが出てきましたよ! 『天国に一番近い村』」

 いや、逆に天国から最も縁遠いんだけど……
 多分、投票したのは『地獄に一番近い村さっきの』と同じ人かな……
 地獄に一番近いから、せめて名前だけでも天国にしたいってことなのかな?

「『ナナトス王国』 もうこれ誰が書いたか丸わかりね……却下と」

 王国でもないし……せめてナナトス村だろと。

「ははは! ナナトスらしいですね」

 笑いごとじゃないぞイチトス? あなたの弟よ?

「『うるおいの村』」

 自然豊かそうで良い名前ね。お肌にも良さそうな名前なんだけど、隣に水の国アクアリヴィアがあるから霞んじゃうね。

「『ふもとの村』」

 どこのだよ!? せめて赤龍峰ふもとの村とかだろ!

「こんなの出てきたよ 『フレアハルト帝国』 これ赤龍峰に棲んでるって伝説がある赤竜王の名前だよね? こっち来てまだそんなに経たないけど、聞き覚えあるよ」
「誰が書いたんでしょう? 赤竜王を崇めてる人? 昔は恐怖の対象で、現在も名前くらいは恐怖の対象としてわずかながら残ってますけど、今はふもとに下りてくることも、姿を見ることもないですよね」

 いや、すでにふもとに下りて来まくりなんだけど……何なら既に村に住んでるんだけど……
 小声でアリサに話しかける。

「あれ書いたのあなた?」
「いえ……わたくしは投票してません」
「だとしたら……」
「多分フレハル様でしょうね……目立ちたがりですので……」

 正体明かせないから、鬱憤うっぷんらしに自分の名前書いて投票したのか……? 『王国』じゃなくて『帝国』にしてるところが何とも言えないわ……

「もしくは、レイアの悪ふざけの可能性もありますけど……」

 そっちの線もあり得るのか……
 ん?

「『悪ふざけ』って……敬意での投稿ではないの?」
「レイアはフレハル様が、アルトラ様にバカにされるのを楽しんでるフシがありますから」

 私、バカにしてたかしら? ちょっと言動に注意しないといけないわね。

「アリサは?」
「わたくしは……フフッ、フレハル様が楽しんでおられるようで満足しておりますよ。あの方が楽しんでるのが最優先ですから」

 側近の鑑だわ!
 でも、お姉さんかお母さんみたいな視点て見てるわけね……

「『どうぶつ王国』」

 動物か……この辺りにいるのはガルム、ピビッグ、二角ウサギ、あとたまに鳥が飛んでくる……
 どうぶつ王国って言うほど動物いねぇし!

「『ガルムの村』」

 その名前だとガルムに乗っ取られてない?

「『わんわん村』」

 確かにケルベロスとかガルムとか犬系のモンスター多いけど……もう何か悪ふざけ入って来た……

「ん? 何これ?」

 投票用紙には見えない八つ折りにされたでかい紙が出てきた。開いて中を見ると――

「でっかい紙に肉球のスタンプ? 朱印? いや、黒い塗料だから黒印か」

 子供が書いたらしき文字。
 きちんと『びこうらん』と、ひらがなと漢字混じりで書かれた備考欄が設けられており、そこに『ケルベロスから』って書いてあるわ。
 多分毎朝ケルベロスと戯れに来るリディアの友達のあの子らラナとリアね。
 これを代弁するなら『肉球村』ってところかしら。
 犬関係が続いている。

「『聖剣の村』 あ、備考欄に但し書きがありますよ。『後々聖剣が発掘される予定』」
「聖剣……聖剣って発掘されるものなのかしら? 誰だこれ書いたの……」
「あ、すみません……」

 トーマス、お前か……

「アルトラ様なら作れるかなと。もしくは、偶然にも聖剣が発掘されたら良いな~……なんて」

 騎士だから聖剣に憧れとかがあるのかしら? 魔界で聖剣か。魔界だから魔剣が良いってわけじゃないのね……
 何か功を挙げたら作ってあげようかしら?
 光属性の剣くらいなら作れそうだけど。

 ここまでイマイチなのとふざけてるのしか無いな……
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