169 / 533
第7章 川完成編
第168話 遂に川が完成した!(完成式典編)
しおりを挟む
火口周りにいた人たちは、一段下へ移動。
この式典の主なプログラムは、このようになっている。
一.私の完成のスピーチ
二.テープカット
三.開通式
進行役は、受付嬢のマリリアにお願いした。
今水門の役割をしているのは大分頑丈な分厚いただの木の板。
この水の出口、ダムのように水門を建設するかどうか迷ったが、潤いの木が水を出し続けるため、水門を付けると邪魔になるのではないかと判断し、ダム湖のような貯水の役目は持たせていない。要はずっと垂れ流しの状態になる。
枝払いによって湧水量を調節できるようにしたから、全ての枝を払ってしまえば、ほとんど水が出ない状態にできる。
もし今後、この場所に雨季のような状態が来るとするなら水門ではなく枝払いによって対応する。
そういうわけで、現在木の板で塞いでいるだけの状態。係の人が開通式にこの水門を破壊する段取りとなっている。
水門を破壊する係の人は開通の合図まで待機。
「では、準備も整ったようなので、アルトラ様、完成のスピーチをお願いします!」
みんなより一段高い岩の上へ登ってスピーチを始める。
「えー、少々高いところから失礼します。このたび、トロル村への重要な供給路として計画された川ですが、みなさまのご協力の賜物により、ついに川の完成に至ることができ、こうして川完成式典を開く運びとなりました。特に川工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々には特別感謝申し上げ――」
「アルトラ様! アルトラ様!」
「どうしたの? 何か不都合が!?」
水門で待機している二人から声が掛かった。
その声により、場がシンと静まり返ったあとザワザワし出す。
「なんだ? 何が起こったんだ?」
「まさか水路が使えないとかいうことはないよな?」
「水が出てないとか?」
「それはないよ、さっきドバドバ出てるのを見たから」
「じゃあ何でわざわざスピーチを止めてまで話しかけたんだ?」
まだスピーチの途中なのに声を掛けてくるなんて……何か予期せぬ事態が!?
その後に水門の上から発せられた言葉は――
「もう三十分もすれば水が溢れそうです!!」
「もうそんなに!?」
そっか、まだ枝払いしてないから湧水量が凄いのね。
良かった……ここに来てこの川が使えない事態かと……
「えー、状況が変わってしまいましたので足早にスピーチを締めさせていただきたいと思います。工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々、並びに、掘削作業、整地作業、セメント作業、その他それ以外の補助などに尽力してくださった全ての方々に、厚く御礼申し上げます。それでは足早になってしまいましたが、完成のご挨拶とさせていただきます」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「早く次のプログラムへ!」
「は、はい!」
こんなに余裕が無いとは思わなかった。完全にあの木の湧水量を侮っていた……思えばそれが原因の村水没事件だったっけ……
水が溢れ出す前に次のテープカットのプログラムへ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
水門の横前に種族ごとに選ばれた人が整列。
私を中心として横一列に並ぶ。
具体的には左から、カイベル、リディア、リーヴァント、私、ヘパイトスさん、フレアハルト、トーマスの順。
そして、役員が一番端のトーマスとカイベルの外側と私の目の前にポールを一本ずつ、計三本立て、そこへ紅白の花が象られたリボンを渡らせた。
「どうぞ」
整列した全員に白手袋とハサミが手渡された。白手袋は数日前にエルフィーレに頼んで作ってもらった。
使われるハサミは、一つだけだが工房と同時期に既に始動していたリザの鍛冶場製。
まだ作り出して日が浅いということでそれほど上手いとは言えないが、今後発展していってほしいという意味を込めて今回の式典に使用。私が使わせてもらう。
残り六つのハサミは、アクアリヴィアで買って来た工具から農具から専門性の高いハサミだが、まあ文具としてのハサミはまだ役所にある二つしか無いからそこは仕方ない。
ちなみに金属製のポールはリザの夫リランドに、リボンについてはエルフィーレの服飾店の従業員に総出で作ってもらった。
「何かこーゆーのワクワクするナ! なあ、アルトラ~、今から何すれば良いんダ?」
そういえばリディアはリハーサル時にいなかったんだっけ。
「目の前のこの紅白のリボンを持って、合図が出たらリボンを切るのよ」
「これって何の意味があるんダ?」
「完成した新しい施設の門出を祝う目的で行われるのよ。未来の行く末に幸せが訪れますようにって願う儀式なの。ハサミには悪いものを断ち切る、テープカットには道を切り開くというような意味合いがあるんだって」
全部カイベルの受け売り。
「ふぅ~ん、そうなのカ、幸せを祈るんだナ! じゃあ祈りながら切ル」
それを聞いていたフレアハルトがニヤニヤしながら話しかけて来た。
「全部カイベルが言っておったことだな」
よくナナトスとつるんでる所為か、何だかツッコミの仕方が似てきたわね。
でも、私にはそんな揚げ足取りは効かない! 私は聞いたことを糧にするのだ!
ハサミと白手袋が全員に行き渡る。
「はい、それでは皆様リボンを左手にお持ちください」
整列した面々が左手でリボンを持ち、カットの準備をする。
「では、テープカットをお願いします!」
リディア以外の全員がテープを切る。
その後、様子見していたリディアがそれに続いてテープカット。
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「それでは水門を開放してください!」
その言葉と同時に、塞いでいた木製の水門に樹魔術師が亀裂を入れ、ハンマーで打ち壊される。
潤いの木周辺の水路に溢れそうになっていた水が、堰を切って勢いよく流れ出す。
遂に完成した水路へと水が流れ始めた。川の完成だ!
「「「おお~~~!!!」」」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
水はあっという間に周辺の水路を満たし、トロル村へ向けて流れて行く。
「よし、これで数時間後には村に水が供給されるようになるね。あとは状況に合うように枝払いして湧水量を調整する。村まで水が満たされたらとりあえず半分くらいの枝を切ろうか」
これにて簡単ではあるが、川完成式典は幕を閉じた。
潤いの木の管理について。
事前に、水が得意な人魚族のトーマスと、式典で水門に亀裂を入れた樹魔術師・イクジューロというトロルに潤いの木の管理の打診をしており、今後は彼らに管理を任せることとする。
枝払いが大分大変な作業になりそうだから、飛行か浮遊出来る種族が一人欲しいところだけど……それはまた後日どこかしらからスカウトして打診するとしよう。しばらくは彼らに頑張ってもらう。必要があれば私も手伝おう。
それに連れて、トーマスは職場を門衛から潤いの木の管理者へと移ることになった。
川についてこれで完成したと思われるが、私にはまだこの後に一仕事残っている。
一応浄水機能はスライムに担ってもらうことになったけど、問題は彼らが分裂すること。
貯水池が彼らで満たされてしまった場合どうするべきかを考えなければならない。
この式典の主なプログラムは、このようになっている。
一.私の完成のスピーチ
二.テープカット
三.開通式
進行役は、受付嬢のマリリアにお願いした。
今水門の役割をしているのは大分頑丈な分厚いただの木の板。
この水の出口、ダムのように水門を建設するかどうか迷ったが、潤いの木が水を出し続けるため、水門を付けると邪魔になるのではないかと判断し、ダム湖のような貯水の役目は持たせていない。要はずっと垂れ流しの状態になる。
枝払いによって湧水量を調節できるようにしたから、全ての枝を払ってしまえば、ほとんど水が出ない状態にできる。
もし今後、この場所に雨季のような状態が来るとするなら水門ではなく枝払いによって対応する。
そういうわけで、現在木の板で塞いでいるだけの状態。係の人が開通式にこの水門を破壊する段取りとなっている。
水門を破壊する係の人は開通の合図まで待機。
「では、準備も整ったようなので、アルトラ様、完成のスピーチをお願いします!」
みんなより一段高い岩の上へ登ってスピーチを始める。
「えー、少々高いところから失礼します。このたび、トロル村への重要な供給路として計画された川ですが、みなさまのご協力の賜物により、ついに川の完成に至ることができ、こうして川完成式典を開く運びとなりました。特に川工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々には特別感謝申し上げ――」
「アルトラ様! アルトラ様!」
「どうしたの? 何か不都合が!?」
水門で待機している二人から声が掛かった。
その声により、場がシンと静まり返ったあとザワザワし出す。
「なんだ? 何が起こったんだ?」
「まさか水路が使えないとかいうことはないよな?」
「水が出てないとか?」
「それはないよ、さっきドバドバ出てるのを見たから」
「じゃあ何でわざわざスピーチを止めてまで話しかけたんだ?」
まだスピーチの途中なのに声を掛けてくるなんて……何か予期せぬ事態が!?
その後に水門の上から発せられた言葉は――
「もう三十分もすれば水が溢れそうです!!」
「もうそんなに!?」
そっか、まだ枝払いしてないから湧水量が凄いのね。
良かった……ここに来てこの川が使えない事態かと……
「えー、状況が変わってしまいましたので足早にスピーチを締めさせていただきたいと思います。工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々、並びに、掘削作業、整地作業、セメント作業、その他それ以外の補助などに尽力してくださった全ての方々に、厚く御礼申し上げます。それでは足早になってしまいましたが、完成のご挨拶とさせていただきます」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「早く次のプログラムへ!」
「は、はい!」
こんなに余裕が無いとは思わなかった。完全にあの木の湧水量を侮っていた……思えばそれが原因の村水没事件だったっけ……
水が溢れ出す前に次のテープカットのプログラムへ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
水門の横前に種族ごとに選ばれた人が整列。
私を中心として横一列に並ぶ。
具体的には左から、カイベル、リディア、リーヴァント、私、ヘパイトスさん、フレアハルト、トーマスの順。
そして、役員が一番端のトーマスとカイベルの外側と私の目の前にポールを一本ずつ、計三本立て、そこへ紅白の花が象られたリボンを渡らせた。
「どうぞ」
整列した全員に白手袋とハサミが手渡された。白手袋は数日前にエルフィーレに頼んで作ってもらった。
使われるハサミは、一つだけだが工房と同時期に既に始動していたリザの鍛冶場製。
まだ作り出して日が浅いということでそれほど上手いとは言えないが、今後発展していってほしいという意味を込めて今回の式典に使用。私が使わせてもらう。
残り六つのハサミは、アクアリヴィアで買って来た工具から農具から専門性の高いハサミだが、まあ文具としてのハサミはまだ役所にある二つしか無いからそこは仕方ない。
ちなみに金属製のポールはリザの夫リランドに、リボンについてはエルフィーレの服飾店の従業員に総出で作ってもらった。
「何かこーゆーのワクワクするナ! なあ、アルトラ~、今から何すれば良いんダ?」
そういえばリディアはリハーサル時にいなかったんだっけ。
「目の前のこの紅白のリボンを持って、合図が出たらリボンを切るのよ」
「これって何の意味があるんダ?」
「完成した新しい施設の門出を祝う目的で行われるのよ。未来の行く末に幸せが訪れますようにって願う儀式なの。ハサミには悪いものを断ち切る、テープカットには道を切り開くというような意味合いがあるんだって」
全部カイベルの受け売り。
「ふぅ~ん、そうなのカ、幸せを祈るんだナ! じゃあ祈りながら切ル」
それを聞いていたフレアハルトがニヤニヤしながら話しかけて来た。
「全部カイベルが言っておったことだな」
よくナナトスとつるんでる所為か、何だかツッコミの仕方が似てきたわね。
でも、私にはそんな揚げ足取りは効かない! 私は聞いたことを糧にするのだ!
ハサミと白手袋が全員に行き渡る。
「はい、それでは皆様リボンを左手にお持ちください」
整列した面々が左手でリボンを持ち、カットの準備をする。
「では、テープカットをお願いします!」
リディア以外の全員がテープを切る。
その後、様子見していたリディアがそれに続いてテープカット。
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「それでは水門を開放してください!」
その言葉と同時に、塞いでいた木製の水門に樹魔術師が亀裂を入れ、ハンマーで打ち壊される。
潤いの木周辺の水路に溢れそうになっていた水が、堰を切って勢いよく流れ出す。
遂に完成した水路へと水が流れ始めた。川の完成だ!
「「「おお~~~!!!」」」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
水はあっという間に周辺の水路を満たし、トロル村へ向けて流れて行く。
「よし、これで数時間後には村に水が供給されるようになるね。あとは状況に合うように枝払いして湧水量を調整する。村まで水が満たされたらとりあえず半分くらいの枝を切ろうか」
これにて簡単ではあるが、川完成式典は幕を閉じた。
潤いの木の管理について。
事前に、水が得意な人魚族のトーマスと、式典で水門に亀裂を入れた樹魔術師・イクジューロというトロルに潤いの木の管理の打診をしており、今後は彼らに管理を任せることとする。
枝払いが大分大変な作業になりそうだから、飛行か浮遊出来る種族が一人欲しいところだけど……それはまた後日どこかしらからスカウトして打診するとしよう。しばらくは彼らに頑張ってもらう。必要があれば私も手伝おう。
それに連れて、トーマスは職場を門衛から潤いの木の管理者へと移ることになった。
川についてこれで完成したと思われるが、私にはまだこの後に一仕事残っている。
一応浄水機能はスライムに担ってもらうことになったけど、問題は彼らが分裂すること。
貯水池が彼らで満たされてしまった場合どうするべきかを考えなければならない。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる