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第7章 川完成編
第168話 遂に川が完成した!(完成式典編)
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火口周りにいた人たちは、一段下へ移動。
この式典の主なプログラムは、このようになっている。
一.私の完成のスピーチ
二.テープカット
三.開通式
進行役は、受付嬢のマリリアにお願いした。
今水門の役割をしているのは大分頑丈な分厚いただの木の板。
この水の出口、ダムのように水門を建設するかどうか迷ったが、潤いの木が水を出し続けるため、水門を付けると邪魔になるのではないかと判断し、ダム湖のような貯水の役目は持たせていない。要はずっと垂れ流しの状態になる。
枝払いによって湧水量を調節できるようにしたから、全ての枝を払ってしまえば、ほとんど水が出ない状態にできる。
もし今後、この場所に雨季のような状態が来るとするなら水門ではなく枝払いによって対応する。
そういうわけで、現在木の板で塞いでいるだけの状態。係の人が開通式にこの水門を破壊する段取りとなっている。
水門を破壊する係の人は開通の合図まで待機。
「では、準備も整ったようなので、アルトラ様、完成のスピーチをお願いします!」
みんなより一段高い岩の上へ登ってスピーチを始める。
「えー、少々高いところから失礼します。このたび、トロル村への重要な供給路として計画された川ですが、みなさまのご協力の賜物により、ついに川の完成に至ることができ、こうして川完成式典を開く運びとなりました。特に川工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々には特別感謝申し上げ――」
「アルトラ様! アルトラ様!」
「どうしたの? 何か不都合が!?」
水門で待機している二人から声が掛かった。
その声により、場がシンと静まり返ったあとザワザワし出す。
「なんだ? 何が起こったんだ?」
「まさか水路が使えないとかいうことはないよな?」
「水が出てないとか?」
「それはないよ、さっきドバドバ出てるのを見たから」
「じゃあ何でわざわざスピーチを止めてまで話しかけたんだ?」
まだスピーチの途中なのに声を掛けてくるなんて……何か予期せぬ事態が!?
その後に水門の上から発せられた言葉は――
「もう三十分もすれば水が溢れそうです!!」
「もうそんなに!?」
そっか、まだ枝払いしてないから湧水量が凄いのね。
良かった……ここに来てこの川が使えない事態かと……
「えー、状況が変わってしまいましたので足早にスピーチを締めさせていただきたいと思います。工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々、並びに、掘削作業、整地作業、セメント作業、その他それ以外の補助などに尽力してくださった全ての方々に、厚く御礼申し上げます。それでは足早になってしまいましたが、完成のご挨拶とさせていただきます」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「早く次のプログラムへ!」
「は、はい!」
こんなに余裕が無いとは思わなかった。完全にあの木の湧水量を侮っていた……思えばそれが原因の村水没事件だったっけ……
水が溢れ出す前に次のテープカットのプログラムへ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
水門の横前に種族ごとに選ばれた人が整列。
私を中心として横一列に並ぶ。
具体的には左から、カイベル、リディア、リーヴァント、私、ヘパイトスさん、フレアハルト、トーマスの順。
そして、役員が一番端のトーマスとカイベルの外側と私の目の前にポールを一本ずつ、計三本立て、そこへ紅白の花が象られたリボンを渡らせた。
「どうぞ」
整列した全員に白手袋とハサミが手渡された。白手袋は数日前にエルフィーレに頼んで作ってもらった。
使われるハサミは、一つだけだが工房と同時期に既に始動していたリザの鍛冶場製。
まだ作り出して日が浅いということでそれほど上手いとは言えないが、今後発展していってほしいという意味を込めて今回の式典に使用。私が使わせてもらう。
残り六つのハサミは、アクアリヴィアで買って来た工具から農具から専門性の高いハサミだが、まあ文具としてのハサミはまだ役所にある二つしか無いからそこは仕方ない。
ちなみに金属製のポールはリザの夫リランドに、リボンについてはエルフィーレの服飾店の従業員に総出で作ってもらった。
「何かこーゆーのワクワクするナ! なあ、アルトラ~、今から何すれば良いんダ?」
そういえばリディアはリハーサル時にいなかったんだっけ。
「目の前のこの紅白のリボンを持って、合図が出たらリボンを切るのよ」
「これって何の意味があるんダ?」
「完成した新しい施設の門出を祝う目的で行われるのよ。未来の行く末に幸せが訪れますようにって願う儀式なの。ハサミには悪いものを断ち切る、テープカットには道を切り開くというような意味合いがあるんだって」
全部カイベルの受け売り。
「ふぅ~ん、そうなのカ、幸せを祈るんだナ! じゃあ祈りながら切ル」
それを聞いていたフレアハルトがニヤニヤしながら話しかけて来た。
「全部カイベルが言っておったことだな」
よくナナトスとつるんでる所為か、何だかツッコミの仕方が似てきたわね。
でも、私にはそんな揚げ足取りは効かない! 私は聞いたことを糧にするのだ!
ハサミと白手袋が全員に行き渡る。
「はい、それでは皆様リボンを左手にお持ちください」
整列した面々が左手でリボンを持ち、カットの準備をする。
「では、テープカットをお願いします!」
リディア以外の全員がテープを切る。
その後、様子見していたリディアがそれに続いてテープカット。
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「それでは水門を開放してください!」
その言葉と同時に、塞いでいた木製の水門に樹魔術師が亀裂を入れ、ハンマーで打ち壊される。
潤いの木周辺の水路に溢れそうになっていた水が、堰を切って勢いよく流れ出す。
遂に完成した水路へと水が流れ始めた。川の完成だ!
「「「おお~~~!!!」」」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
水はあっという間に周辺の水路を満たし、トロル村へ向けて流れて行く。
「よし、これで数時間後には村に水が供給されるようになるね。あとは状況に合うように枝払いして湧水量を調整する。村まで水が満たされたらとりあえず半分くらいの枝を切ろうか」
これにて簡単ではあるが、川完成式典は幕を閉じた。
潤いの木の管理について。
事前に、水が得意な人魚族のトーマスと、式典で水門に亀裂を入れた樹魔術師・イクジューロというトロルに潤いの木の管理の打診をしており、今後は彼らに管理を任せることとする。
枝払いが大分大変な作業になりそうだから、飛行か浮遊出来る種族が一人欲しいところだけど……それはまた後日どこかしらからスカウトして打診するとしよう。しばらくは彼らに頑張ってもらう。必要があれば私も手伝おう。
それに連れて、トーマスは職場を門衛から潤いの木の管理者へと移ることになった。
川についてこれで完成したと思われるが、私にはまだこの後に一仕事残っている。
一応浄水機能はスライムに担ってもらうことになったけど、問題は彼らが分裂すること。
貯水池が彼らで満たされてしまった場合どうするべきかを考えなければならない。
この式典の主なプログラムは、このようになっている。
一.私の完成のスピーチ
二.テープカット
三.開通式
進行役は、受付嬢のマリリアにお願いした。
今水門の役割をしているのは大分頑丈な分厚いただの木の板。
この水の出口、ダムのように水門を建設するかどうか迷ったが、潤いの木が水を出し続けるため、水門を付けると邪魔になるのではないかと判断し、ダム湖のような貯水の役目は持たせていない。要はずっと垂れ流しの状態になる。
枝払いによって湧水量を調節できるようにしたから、全ての枝を払ってしまえば、ほとんど水が出ない状態にできる。
もし今後、この場所に雨季のような状態が来るとするなら水門ではなく枝払いによって対応する。
そういうわけで、現在木の板で塞いでいるだけの状態。係の人が開通式にこの水門を破壊する段取りとなっている。
水門を破壊する係の人は開通の合図まで待機。
「では、準備も整ったようなので、アルトラ様、完成のスピーチをお願いします!」
みんなより一段高い岩の上へ登ってスピーチを始める。
「えー、少々高いところから失礼します。このたび、トロル村への重要な供給路として計画された川ですが、みなさまのご協力の賜物により、ついに川の完成に至ることができ、こうして川完成式典を開く運びとなりました。特に川工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々には特別感謝申し上げ――」
「アルトラ様! アルトラ様!」
「どうしたの? 何か不都合が!?」
水門で待機している二人から声が掛かった。
その声により、場がシンと静まり返ったあとザワザワし出す。
「なんだ? 何が起こったんだ?」
「まさか水路が使えないとかいうことはないよな?」
「水が出てないとか?」
「それはないよ、さっきドバドバ出てるのを見たから」
「じゃあ何でわざわざスピーチを止めてまで話しかけたんだ?」
まだスピーチの途中なのに声を掛けてくるなんて……何か予期せぬ事態が!?
その後に水門の上から発せられた言葉は――
「もう三十分もすれば水が溢れそうです!!」
「もうそんなに!?」
そっか、まだ枝払いしてないから湧水量が凄いのね。
良かった……ここに来てこの川が使えない事態かと……
「えー、状況が変わってしまいましたので足早にスピーチを締めさせていただきたいと思います。工事の根幹を担っていただいたドワーフの方々、並びに、掘削作業、整地作業、セメント作業、その他それ以外の補助などに尽力してくださった全ての方々に、厚く御礼申し上げます。それでは足早になってしまいましたが、完成のご挨拶とさせていただきます」
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「は、はい!」
こんなに余裕が無いとは思わなかった。完全にあの木の湧水量を侮っていた……思えばそれが原因の村水没事件だったっけ……
水が溢れ出す前に次のテープカットのプログラムへ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
水門の横前に種族ごとに選ばれた人が整列。
私を中心として横一列に並ぶ。
具体的には左から、カイベル、リディア、リーヴァント、私、ヘパイトスさん、フレアハルト、トーマスの順。
そして、役員が一番端のトーマスとカイベルの外側と私の目の前にポールを一本ずつ、計三本立て、そこへ紅白の花が象られたリボンを渡らせた。
「どうぞ」
整列した全員に白手袋とハサミが手渡された。白手袋は数日前にエルフィーレに頼んで作ってもらった。
使われるハサミは、一つだけだが工房と同時期に既に始動していたリザの鍛冶場製。
まだ作り出して日が浅いということでそれほど上手いとは言えないが、今後発展していってほしいという意味を込めて今回の式典に使用。私が使わせてもらう。
残り六つのハサミは、アクアリヴィアで買って来た工具から農具から専門性の高いハサミだが、まあ文具としてのハサミはまだ役所にある二つしか無いからそこは仕方ない。
ちなみに金属製のポールはリザの夫リランドに、リボンについてはエルフィーレの服飾店の従業員に総出で作ってもらった。
「何かこーゆーのワクワクするナ! なあ、アルトラ~、今から何すれば良いんダ?」
そういえばリディアはリハーサル時にいなかったんだっけ。
「目の前のこの紅白のリボンを持って、合図が出たらリボンを切るのよ」
「これって何の意味があるんダ?」
「完成した新しい施設の門出を祝う目的で行われるのよ。未来の行く末に幸せが訪れますようにって願う儀式なの。ハサミには悪いものを断ち切る、テープカットには道を切り開くというような意味合いがあるんだって」
全部カイベルの受け売り。
「ふぅ~ん、そうなのカ、幸せを祈るんだナ! じゃあ祈りながら切ル」
それを聞いていたフレアハルトがニヤニヤしながら話しかけて来た。
「全部カイベルが言っておったことだな」
よくナナトスとつるんでる所為か、何だかツッコミの仕方が似てきたわね。
でも、私にはそんな揚げ足取りは効かない! 私は聞いたことを糧にするのだ!
ハサミと白手袋が全員に行き渡る。
「はい、それでは皆様リボンを左手にお持ちください」
整列した面々が左手でリボンを持ち、カットの準備をする。
「では、テープカットをお願いします!」
リディア以外の全員がテープを切る。
その後、様子見していたリディアがそれに続いてテープカット。
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「それでは水門を開放してください!」
その言葉と同時に、塞いでいた木製の水門に樹魔術師が亀裂を入れ、ハンマーで打ち壊される。
潤いの木周辺の水路に溢れそうになっていた水が、堰を切って勢いよく流れ出す。
遂に完成した水路へと水が流れ始めた。川の完成だ!
「「「おお~~~!!!」」」
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水はあっという間に周辺の水路を満たし、トロル村へ向けて流れて行く。
「よし、これで数時間後には村に水が供給されるようになるね。あとは状況に合うように枝払いして湧水量を調整する。村まで水が満たされたらとりあえず半分くらいの枝を切ろうか」
これにて簡単ではあるが、川完成式典は幕を閉じた。
潤いの木の管理について。
事前に、水が得意な人魚族のトーマスと、式典で水門に亀裂を入れた樹魔術師・イクジューロというトロルに潤いの木の管理の打診をしており、今後は彼らに管理を任せることとする。
枝払いが大分大変な作業になりそうだから、飛行か浮遊出来る種族が一人欲しいところだけど……それはまた後日どこかしらからスカウトして打診するとしよう。しばらくは彼らに頑張ってもらう。必要があれば私も手伝おう。
それに連れて、トーマスは職場を門衛から潤いの木の管理者へと移ることになった。
川についてこれで完成したと思われるが、私にはまだこの後に一仕事残っている。
一応浄水機能はスライムに担ってもらうことになったけど、問題は彼らが分裂すること。
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