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第7章 川完成編
第154話 畑が掘り返されて困ってる!
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「新しくできた畑がガルムに掘り返されて困ってるんです!!」
メイフィーに突然、我が家を訪問された……
「あの……私もう役所長代理終わったんだけど……」
「役所にお願いに行ったら、見張り役を手配してくれたんですが、とても手が足りない状態でして……数日で疲弊してきてしまいました。再度リーヴァントさんに相談したら、アルトラ様が担当されたので、直接知恵を借りに行ったらどうかって話になりました!」
リーヴァント……丸投げしおったな……?
ってことは今後メイフィーはずっと私のところに来るのかしら? まさかの役所長代理ボーナス継続?
「一応話を聞こうか……」
「先日開墾してもらった畑を整地して、種を植えて、成長促進魔法をかけて、小さい実を付けるようになったんですけど……」
「うんうん、それで?」
「実を付けるようになった辺りから、土を掘り返して実を食べられてしまう事態が発生してしまって……」
う~ん……人間界でもテレビで割と頻繁に取り上げられてたけど、やっぱりここでもあるのね……
「しばらくは役所から派遣してもらった人たちと協力して交代で、畑に見張りを置いて対処してたんですけど……なにぶん範囲が広いため、こっちを守ってるとあっちが食い荒らされ、あっちを守ってるとこっちが食い荒らされという感じでして……それに、夜の暗い時間帯にやられるので全く手が足りてないのが実情です。作業人数が少ないと昼にも掘り返しに来ますし……」
サッカーコート二面分は、交代交代でも守るのが大変か。
「じゃあ……カカシでも置くか」
「カカシって何ですか?」
「木や藁で作った……まあ木とか藁じゃなくて別のものでも良いんだけど、人の形をした人形よ。それらを畑に立てておくの。動物はそこに人が立ってるんじゃないかと思って近寄ってこなくなる」
「へぇ~、人の形の人形ですか。アルトラ様の故郷の方々って考えてるんですね~」
「そうね、もう試行錯誤の連続よ~。中には電気が流れる金網とか建てる人もいるし」
樹魔法なら人間界のよりずっと人らしい人形が出来るかもしれない。
「じゃあ、私が樹魔法で人形を作るから、これを真似して、そこら中に立てて」
樹魔法で上半身だけの人形を作った。
う~ん……相変わらず魔法で作ったものって、それなりの良い出来なのよね……私が作ったあのフィギュアは何であんなに造形悪かったのかしら……
(答え:ただの不器用)
「下半身はただの棒なんですね。下半身とか腕とかは作らないんですか?」
「脚なんて飾りです! 偉い人もそれをわかっているのです!」
「は、はぁ……でも見栄え悪いですね……」
「これに脚付いてたら持ち運ぶの大変よ? この状態なら棒持ってそのまま持ち運べるけど、これに脚二本あったら、運ぶのも土に埋めるのも大変だし。一本なら突き刺すだけで刺さってくれるから」
「確かにそうですね! このままの造形で作ります!」
「これに服とか麦わら帽子とか着せて、人がいるように偽装しておけば野生の獣は近寄ってこなくなるはずよ」
「なるほど~、やってみます!」
畑組総出でカカシが複数作られ、畑の中や周りに置かれることになった。
数日後――
またメイフィーが困りごとで訪れた。
「カカシ……最初の頃はガルムが近付いて来なくなって良かったんですけど、最近はカカシに近寄っても動かないとわかったのか、掘り起こしが以前と同じくらいになったんですけど、何とかなりませんか?」
う~ん……適応が大分早かったわね……
「とは言っても、私の故郷ではカカシはあんな感じだったしね。あとは鳥除けの『目玉』とか」
「『目玉』って?」
「目玉みたいなものが描かれた風船を吊るしておくのよ。正直何の効果があるのかわからないけど、鳥から見ると見られてるように見えて恐いとか何とか」
「へぇ~……でも今回困ってる相手は鳥じゃないので……」
蛇足だったか!
「頻繁に見回らないといけませんし、あいつら元々は一匹での行動が多かったんですけど、最近になって徒党を組み始めましたし」
「一匹での行動が多かった? なんで?」
「ガルムって共食いするんですよ。大地が冷える前はこの土地に適応出来てるのがガルムしかいなかったので、獲物がおらず、共食いで何とか凌いでいたんです。だからガルム同士でも警戒し合って、一匹でいることが多かったんですよ」
「共食いって……それだと絶滅しない?」
「ところが、繁殖力が凄いので、共食いしたところでそれほど数に影響が無いんです。むしろ一匹が他の糧となることで、種全体としては生存していけるので。種族を絶やさないために今まではそういう手段を取ってたんじゃないかと思います。一匹で行動することが多かったので、私たちも獲物として狩ることができたし、今言ったように集団では襲ってこないので、私たちもこれまで村で生き残ってこれたんです」
「最近は何で徒党を組むようになったの?」
「食料となる生物が増えた影響ですかね? 別のところからも生物が流入してくるようになったので、同族同士で共食いする必要性が無くなったんですかね? 最近ガルムより弱いものだと……二角ウサギとかいますし、あれらを食べてるのではないかと思います。あと私たちが作物育てるようになったので、それを食い荒らしたり……」
なるほど。ここに来た当時は考えもしなかったけど、今考えれば、確かに単一の生物だけしかいないってのも変な話だ。普通なら食物連鎖の関係上、食う者も食われる者も同時に存在してないとおかしいのに。
それは共食いをしながらも、強い繁殖力で繁殖してたからだったのか……
「あと、それに伴ってなのか、最近繁殖力が減退している気がしますね。以前のように沢山の単体のガルムを見ることはなくなりました。ただ……それに反比例して複数頭で行動するのを見るようにはなりましたけど……」
自然に適うように調整しているってとこかな?
う~ん……どうしたら良いだろう? 相手がガルムだって言うなら――
「畑に天敵のケルベロスの糞でも撒いてみる?」
「えぇ……それはちょっと……臭いでこちらの農作業に支障が出そうです」
ケルベロスの糞については、大地が灼熱の時は勝手に焼尽してくれて勝手に消滅。
現在は犬小屋内にバクテリアのトイレを作ってそこで用を足すように躾け、分解している。地獄の門前広場は清潔なのだ!
あとは……あっ!
別に人間界の常識に囚われなくても良いんだ。
だったら――
メイフィーに突然、我が家を訪問された……
「あの……私もう役所長代理終わったんだけど……」
「役所にお願いに行ったら、見張り役を手配してくれたんですが、とても手が足りない状態でして……数日で疲弊してきてしまいました。再度リーヴァントさんに相談したら、アルトラ様が担当されたので、直接知恵を借りに行ったらどうかって話になりました!」
リーヴァント……丸投げしおったな……?
ってことは今後メイフィーはずっと私のところに来るのかしら? まさかの役所長代理ボーナス継続?
「一応話を聞こうか……」
「先日開墾してもらった畑を整地して、種を植えて、成長促進魔法をかけて、小さい実を付けるようになったんですけど……」
「うんうん、それで?」
「実を付けるようになった辺りから、土を掘り返して実を食べられてしまう事態が発生してしまって……」
う~ん……人間界でもテレビで割と頻繁に取り上げられてたけど、やっぱりここでもあるのね……
「しばらくは役所から派遣してもらった人たちと協力して交代で、畑に見張りを置いて対処してたんですけど……なにぶん範囲が広いため、こっちを守ってるとあっちが食い荒らされ、あっちを守ってるとこっちが食い荒らされという感じでして……それに、夜の暗い時間帯にやられるので全く手が足りてないのが実情です。作業人数が少ないと昼にも掘り返しに来ますし……」
サッカーコート二面分は、交代交代でも守るのが大変か。
「じゃあ……カカシでも置くか」
「カカシって何ですか?」
「木や藁で作った……まあ木とか藁じゃなくて別のものでも良いんだけど、人の形をした人形よ。それらを畑に立てておくの。動物はそこに人が立ってるんじゃないかと思って近寄ってこなくなる」
「へぇ~、人の形の人形ですか。アルトラ様の故郷の方々って考えてるんですね~」
「そうね、もう試行錯誤の連続よ~。中には電気が流れる金網とか建てる人もいるし」
樹魔法なら人間界のよりずっと人らしい人形が出来るかもしれない。
「じゃあ、私が樹魔法で人形を作るから、これを真似して、そこら中に立てて」
樹魔法で上半身だけの人形を作った。
う~ん……相変わらず魔法で作ったものって、それなりの良い出来なのよね……私が作ったあのフィギュアは何であんなに造形悪かったのかしら……
(答え:ただの不器用)
「下半身はただの棒なんですね。下半身とか腕とかは作らないんですか?」
「脚なんて飾りです! 偉い人もそれをわかっているのです!」
「は、はぁ……でも見栄え悪いですね……」
「これに脚付いてたら持ち運ぶの大変よ? この状態なら棒持ってそのまま持ち運べるけど、これに脚二本あったら、運ぶのも土に埋めるのも大変だし。一本なら突き刺すだけで刺さってくれるから」
「確かにそうですね! このままの造形で作ります!」
「これに服とか麦わら帽子とか着せて、人がいるように偽装しておけば野生の獣は近寄ってこなくなるはずよ」
「なるほど~、やってみます!」
畑組総出でカカシが複数作られ、畑の中や周りに置かれることになった。
数日後――
またメイフィーが困りごとで訪れた。
「カカシ……最初の頃はガルムが近付いて来なくなって良かったんですけど、最近はカカシに近寄っても動かないとわかったのか、掘り起こしが以前と同じくらいになったんですけど、何とかなりませんか?」
う~ん……適応が大分早かったわね……
「とは言っても、私の故郷ではカカシはあんな感じだったしね。あとは鳥除けの『目玉』とか」
「『目玉』って?」
「目玉みたいなものが描かれた風船を吊るしておくのよ。正直何の効果があるのかわからないけど、鳥から見ると見られてるように見えて恐いとか何とか」
「へぇ~……でも今回困ってる相手は鳥じゃないので……」
蛇足だったか!
「頻繁に見回らないといけませんし、あいつら元々は一匹での行動が多かったんですけど、最近になって徒党を組み始めましたし」
「一匹での行動が多かった? なんで?」
「ガルムって共食いするんですよ。大地が冷える前はこの土地に適応出来てるのがガルムしかいなかったので、獲物がおらず、共食いで何とか凌いでいたんです。だからガルム同士でも警戒し合って、一匹でいることが多かったんですよ」
「共食いって……それだと絶滅しない?」
「ところが、繁殖力が凄いので、共食いしたところでそれほど数に影響が無いんです。むしろ一匹が他の糧となることで、種全体としては生存していけるので。種族を絶やさないために今まではそういう手段を取ってたんじゃないかと思います。一匹で行動することが多かったので、私たちも獲物として狩ることができたし、今言ったように集団では襲ってこないので、私たちもこれまで村で生き残ってこれたんです」
「最近は何で徒党を組むようになったの?」
「食料となる生物が増えた影響ですかね? 別のところからも生物が流入してくるようになったので、同族同士で共食いする必要性が無くなったんですかね? 最近ガルムより弱いものだと……二角ウサギとかいますし、あれらを食べてるのではないかと思います。あと私たちが作物育てるようになったので、それを食い荒らしたり……」
なるほど。ここに来た当時は考えもしなかったけど、今考えれば、確かに単一の生物だけしかいないってのも変な話だ。普通なら食物連鎖の関係上、食う者も食われる者も同時に存在してないとおかしいのに。
それは共食いをしながらも、強い繁殖力で繁殖してたからだったのか……
「あと、それに伴ってなのか、最近繁殖力が減退している気がしますね。以前のように沢山の単体のガルムを見ることはなくなりました。ただ……それに反比例して複数頭で行動するのを見るようにはなりましたけど……」
自然に適うように調整しているってとこかな?
う~ん……どうしたら良いだろう? 相手がガルムだって言うなら――
「畑に天敵のケルベロスの糞でも撒いてみる?」
「えぇ……それはちょっと……臭いでこちらの農作業に支障が出そうです」
ケルベロスの糞については、大地が灼熱の時は勝手に焼尽してくれて勝手に消滅。
現在は犬小屋内にバクテリアのトイレを作ってそこで用を足すように躾け、分解している。地獄の門前広場は清潔なのだ!
あとは……あっ!
別に人間界の常識に囚われなくても良いんだ。
だったら――
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