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第6章 アルトラの村役所長代理編

第143話 酒が飲みたい!・畑の手伝いを!

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 役所長代理二日目。

「酒が欲しいんだが?」
「畑を手伝って欲しいんです!」

 役所カウンターへ来たのはヘパイトスさんの弟子、フィンツさん、フロセルさん、ルドルフさん。
 畑組のメイフィーとその他三人の女の子。

「急にどうしたんですか?」
「持参した酒がもう底を尽いたから、酒を買いに行きたい」
「畑をもっと拡張したいです! 村の外に畑を作れるように開墾かいこんしてほしいんです!」
「ちょ、ちょっと待って! 二方向から言わないで!」

 酒とか畑の拡張とか、現状私にしかできない依頼じゃないのか?
 昨日の幽霊騒動で、今私がリーヴァントの代わりをやっているってことが知られてしまったのか?
 川作りが休みだからって酒ばっか飲んでるから、あっという間に底を尽いてしまったんじゃないか?

「旅行に行ったヘパイトスさんはお酒買って来ませんかね?」
「もちろん買ってきてもらうよう頼んだぞ。だが親方が帰ってくるまであと二日もある」
 二日くらい我慢したら良いんじゃない?

「ワシらの予想では二日くらい保つはずだったんだがな……ガッハッハ」
「いや~、親方への愚痴をさかなに酒が進む進む!」
 どんだけ飲んだの!?

「普段は仕事してるから気付かなかったが、仕事休むとここまで酒の減りが早いとはな……」
「二日も酒を我慢したら死んでしまう!」
 いや、むしろ健康になるよ、きっと。

 とは言え、ドワーフのみなさんにはお世話になってるし。
 アクアリヴィアに買いに行くか。

「わかりました、今日アクアリヴィアに買い出しに行きましょう。で、メイフィーの方は?」
「畑の規模をもっと拡張したいです! 以前に役所の掲示板で働き手を募集しましたけど、大分集まってくれたので、この機に拡張したいと考えました。そこで今回都合の良いことに、アルトラ様が役所長代理をやっていると聞いたので!」
「何で私って聞いて都合が良いの? 別にリーヴァントでも良いんじゃないの?」
「アルトラ様なら開墾かいこんが早いと思いまして。土魔法でドーンとか。アルトラ様、あまり家にいないので、お願いに行っても中々捕まりませんし、役所にいる可能性が高いなら、お願いするなら今だな!と思いまして」

 この子の思考は私と似てるかもしれんね……私も川掘削の時ドーンとやりたくてうずうずしてたし。

「人力で広範囲の開墾かいこんは大変なんですよぉ~」
「土魔法使ったら良いんじゃないの?」
「…………アルトラ様の一発が、私たちの何発だと思いますか? 下手したら百発やっても届きませんて!」
 そんなに違うのか……?

「お願いしますアルトラ様~」
「「「お願いします~」」」
 う~ん、まあ私が出来ないことじゃないし手伝いに行くか。役所長代理だし。

「わかったよ、手伝いに行く」
「「「ありがとうございます!!」」」
「それと、成長促進もお願いします! 若芽を大樹に出来るほどの魔力ならあっという間に収穫できますし!」

 う~ん……それはあまりやりたくないんだよなぁ……出来ることなら村民の能力だけで村が回るようにしてほしい。
 とは言え……今は役所長代理だしな。役所長代理ボーナスってことで今回だけやってあげようか。

「わかったよ……役所長代理ボーナスってことで、今回だけ。今回だけだからね!」
「はい!」
「待って、『役所長代理ボーナス』ってことは……今後もしまた代理をすることになったら……ボーナスがあるってことですか!? リーヴァントさんにアルトラ様に代理頼むよう頼んでおこう!」
「残念、今後は副役所長を四人置くから、私が代理をやることは多分もう無いかな」
「えーー!! そんなのあんまりじゃないですか! たまには代理じゃなくてもボーナスやってくださいよ~」
 こういう頼み方には弱いのよねぇ……まあ村が豊かになるに越したことはないよね。

「わかった、魔力を使う以上頻繁に言われたら困るけど、ごくたまにならね」
「ありがとうございます!!」

「ところで、この村では酒は造らんのか?」
「「え?」」
 それは突然の提案だった。そういえばまだ酒を造ったことは無いな。
 ここまで誰も何も言わないから、酒のことなんか頭に無かった。
 アクアリヴィアで買い込んで来た酒が尽きそうだから、打診に来て、ついでに村でも酒を造る提案をしようと思い付いたってところか。

 酒には詳しくないけど、思い付くもので手近なところでは、ビール、日本酒、ワインくらいかな?
 ビールは大麦、日本酒は米、ワインはブドウってことくらいは知ってる。
 第三のビールとか、第四のビールとかは、もう何のことか全くわからない。
 大麦、米はまだ水田が作れないから、この村では現状作ることはできない。これについては川が出来た後でないと物理的に不可能。
 米はあるにはあるが、全部アクアリヴィアで購入してきた輸入品。それに各家に行き渡るほどではないから、酒作りに使うなんてとてもとても……

「作ってみたいのは山々なんですが、水設備が無いとどうにも……」
「ではブドウは無いのか?」
「ブドウ……この間生態調査組の誰かが見つけて来ましたね。紫色で一つが沢山実を付ける果物ですよね?」
「なんじゃ……ではまだ育っておらんのだな?」
「残念ですけど、まだ収穫には至ってないですね……ブドウ、食べたいんですか?」
「いや、そうではないのだが……」

 私には彼らが何を言いたいのかわかる。ブドウが食べたいのではなく、ワインが飲みたいと言っているのだ。
 確かにワインなら水を必要としない。
 ブドウは村の外で育てられてるのを見たことがある。こっちは主食になることは無いし、ワイン用に育ててみるか。

「じゃあ、ブドウ畑を作りましょうか」
「それはありがたい!」
「でも……いくら成長促進魔法を使うと言っても……フィンツさんたちがこの村にいる間に出来るとは限りませんけど……」
「むぅ……そうだな……出来ても飲めんのか……では出来たらアクアリヴィアへ届けてくれれば良い」

 今後ドワーフとは良いお付き合いをしていきたいし、ブドウを育てよう。

「じゃあ、まずはお酒の買い出しに行きましょうか。帰って来たら畑を拡張しに向かうから、先に畑作業しててもらえる?」
「わっかりました~!」
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