建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第6章 アルトラの村役所長代理編

第141話 子ゴースト、無事成仏

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 久しぶりに村の門から外へ出る。
「おや、珍しいですね、アルトラ様がここから外へ出られるなんて」
「フレハルさんたちを引き連れて、どこへ行かれるんですか?」
 門衛のマークとトーマスに声をかけられる。
 最近はリッチ騒動が収まって、穏やかなものだ。

「役所に来た依頼で、外に用があるみたいなの」
「『みたい』?」
「行ってみないとわからないことなもので」

 外に出て、2kmほど歩いた。

「あれだな……微弱だが、あそこからさっきのゴーストに似た魔力の波長を感じる」

 そこに着いてみると――
 白い何かの残骸。多分骨ね。
 しかし、何もいるようには見えない。
 子ゴーストほどの未練があるわけではない?

 霊視する魔法なんてできるのかな?
 多分光か闇魔法だろう。
 目に光の魔力を集める。

霊視スピリチュアル・ヴィジョン

 あ、やっぱり何かいる。骨らしきものの近くに二つの黒い影がたたずんでいる。
 ここで二人一緒に亡くなったのかな? 片方が片方を守ったとかそういう感じか。

「フレハル、ここに二人分の魔力がある?」
「よくわかったな、微かだが二人分だ」
 まあ、私にはバッチリ見えてるからね……

 って言うか……見回すと、骨の持ち主らしき人たち以外にもいる。二人どころの話じゃない!
 霊が周囲に大量にいる!
 あ、ダメだこの魔法、霊が見えすぎて怖い。普段見えてないだけで、浮遊霊がこんなにいるのか。
 まるで『見えてる子ちゃん』の視界だ……
 この魔法はこの依頼が終わったら、今後は金輪際こんりんざい使わないようにしよう。怖い……

 うわぁ……何か目的の霊とは別の浮遊霊に見られてるし……
 横に立たれた……ガン見されてる……
 目が合わないようにスルーしよう……

 とは言え、恐らくあの子供ゴーストの両親である彼らを連れて行かないと解決しない気がする。
 あそこの骨ごと持って行けば付いて来てくれるかしら?
 骨らしきものがある部分を土ごと削り取って持って行く。
 他の霊とは目を合わさないように、あくまで「見えてませんよ」というていを装って完全スルーする。

「それどうするんですかぁ?」
「多分これが、さっきの家にいた子の親の骨だと思う」
「え!? これが!? ほとんど残ってないじゃないですか!?」
「数年も経ってるなら、残ってる方が奇跡だと思うよ」
 土を持って行くと、予想通り二つの霊も付いてくる。

 周囲の浮遊霊に気付かれないように小声で話す。
「フレハル、私の後ろに見える?」
「何がだ?」
 存在感が薄いから魔法で霊視力を強化している私以外には見えないのかな。
 と言うことは、この三人にも見えてるさっきのゴーストの子はかなり未練があるってことなのね。

「見えないなら良い」
「何言ってるのだ!? 怖いぞ!!」
「じゃあゲート開きたいから、これちょっとだけ持っててもらえる?」
 骨入り土をフレアハルトに渡し、少しの間持つのを代わってもらう。二つの霊はフレアハルトの後ろに憑いた。フレアハルトコイツには見えてないみたいだから良いけど、見えてたら軽く恐怖よね……
 ゲートを開いて村はずれの空き家付近と繋げる。

 村はずれの空き家に帰って来た。
 フレアハルトから土を受け取り、家の中のゴーストのところへ。

「うおっ!!?」
「うわぁっ!!?」
 骨入り土を持って空き家に入り、子ゴーストと接触した瞬間に、突然二人分の霊が見えるようになったらしく、フレアハルトとレイアが驚いた。
 多分子ゴーストに再会したことで、一時的に未練が大きくなったとかそんな感じなんだろう。

『オォォォォオォォォ!!』
『アアァァアァァアァ!!』
『オドウサン……オガアサン……ヤットカエッテキタ……』

 両親の泣き声が慟哭どうこくに聞こえなくもないけど……どうやら感動しているらしい。
 何年経ってたかわからないけど、ようやく再会できたみたいね。

『アリガトウ……』

 そして昇天していく……ん? 昇天して……いかないの?

『あ、恥ずかしながらあの世へ行く方法がわからないので、送ってもらえますか? 見たことはないですが、その風貌からしてあなた天使様ですよね?』
 父親らしき方が普通に話しかけてきた……
 怨念というか、未練か。未練のオーラみたいなものも消えたから、自我が戻って来たって感じかな。
 この人には隠してる天使の輪が見えてるみたいだ。

「ちゃんと狙ったところへ送れるかわからないけど、それでも良いなら……」
『よろしくお願いします』
昇天魔法リターン・ヘヴン!」
『ありがとうございます……』

 光と共に空へ消えた。
 今思ったけど、空を覆うあの闇はちゃんと通り抜けられるのかしら?
 まあ、成仏したんなら良いか。

「終わったのか?」
「終わりましたか?」
 ちょっと遠くの岩の影まで逃げてたらしいフレアハルトとレイアが声をかけてくる。
 私の前に立っているからこちらからは表情が見えないが、アリサが二人を見て苦笑いしている様が目に浮かぶ。

「終わったみたいだよ。付き添いありがとう。じゃあ私は依頼者へ報告に行くから、帰っても良いよ」

 ここまで一連のことを考えて、ちょっと疑問がある。
 アリサが落ち着き過ぎな気がする。突然見えるようになった霊にフレアハルトとレイアはビックリしてたのに、アリサだけ無反応だった。

「アリサ、もしかして普段から見えてる?」
「……さて、何のことでしょう?」
 ニッコリ笑って否定された。
 ……まあ、見えてるのか見えてないのかわからないけど、別にそれ以上追求しなくても良いか。
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