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第6章 アルトラの村役所長代理編

第139話 役所長代理、初の依頼

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 副リーダーの通達後、代理業務を行うため役所へ帰還。
 リーヴァントがお休み中、私が村役所長代理を務めることになった一日目。

「役所長って普段何やってるの?」
「住民の困りごとの解決ですかね。あとは、村を住み良くすることとか。何も無い時は役所内や役所前を掃除してたりしますよ」
 めちゃくちゃ働いてるじゃないのリーヴァント!!
 私がのんびりし過ぎていたのかしら?
 まあ、私は外交担当だから (自称)

 そして、早速困りごとが来た。

「どうされましたか?」
「あれ? アルトラ様? リーヴァントさんは?」
「働きづめだったので、今遅めの夏休みを取ってもらってます」
「夏……? って何ですか?」
 あ、ここ四季無かったんだっけ。今九月だったから遅めって意味で夏休みって表現したけど。

「私の故郷で六月から八月くらいを夏って言うので、遅めの夏休みなんです」
「はぁ、そうなんですか」
「それで今日はどんな要件で来られたのですか?」
「はい、最近村はずれの打ち捨てられた家が何かおかしくて、そのことについて相談に来ました」
 村はずれ……って言ったら……

「タイレンの家?」
      (第16話参照)

「いえ、その逆側の村はずれです。そこはちゃんとタイレンさんが住んでます」
「その家がどうかしたの?」
「口で説明するより、見てもらった方が早いと思います」

 というわけでゲートで村はずれへ。






 その問題の家を見ると――

 オオォォオォォオオオォォオォォォ……

「何アレ……?」
 家全体から黒い怨念みたいなものが出てる……

「最近になって、どうやらゴーストが目撃されるようになりまして……この辺りの住民から怖いとの声が……」
 この世界ってゴーストいるの!?
 魔界とは別に『地獄』って場所があるから、てっきり死者は亡者だけなのかと思ってたけど……
 ゴーストも分類すれば亡者に当たりそうだから、私は身体があるからゾンビってところかしら?

 後でカイベルに聞いたところ、この世界のゴーストは魔界ここで死んで未練がある者が、まだあの世に行かずに彷徨さまよっている状態らしい。
 閻魔様の審判を受けている者が『亡者』、それ以外は、身体がある者は『屍人しびと・ゾンビ』、骨だけの者が『骸骨・スケルトン』、骨すら無く魂だけになった者が『幽霊・ゴースト』という扱いだとか。
 『亡者』は覇気が無く顔色が悪いこと以外は生前とそう変わらない外見なのに対し、『屍人しびと・ゾンビ』は徐々に身体が腐っていくのだという。
 その後、肉が全て腐り落ちると『骸骨・スケルトン』になり、更に骨の状態で動けなくなるほど損傷すると『幽霊・ゴースト』に落ち着くらしい。
 だたし、未練があれば必ずしも死体が動くわけではなく、どの時点でアンデッド化するかはわからないとのこと。死んで間もなくゾンビになる者もいれば、肉体がまだ存在している間は全く動かず、それが朽ちた後にゴーストになる者もいるらしい。

 私は閻魔様の審判を受領済みだから『亡者』に当たる。あと、スキル『疑似生者』の効果で顔色も生者と変わらない。
 ちなみに、ミイラは身体があるからゾンビに当たるが、干からびてるかどうかで区別はされるらしい。

「あの家って元々誰の家だったの?」
「さあ? もう大分長いこと空き家だったので、誰が住んでいたかまでは……少し高台に建ってますので、以前の洪水でも倒壊を免れたのだと思います。アルトラ様が来るまで、年月日の概念が無かったので何年経ってるかはわかりませんが、生活している様子が無いので空き家になってから大分年数が経っているのではないかと……」
「何で空き家になったの?」
「それも全くわかりません。誰かに殺されたか……あるいは食料を狩りに行って帰って来なかったのか……村が発展するまでは死ぬことなど日常茶飯事でしたので」

 物騒な話になってきたなぁ……

「で、あれをどうしたら良いの?」
「近隣住民が怖がっているので、何とかしてもらえたらと思います」
 リーヴァントってこんな除霊まがいなハードな依頼までこなしてるの?
 こ、怖いけど、とりあえず中に入ってみないことには何にも始まらない。

「と、とりあえず家に入ってみましょうか」
「え!?」
「え? 入るんですよね?」
「いえ、役所の方にお任せします……」
 マジか……!! 丸投げ? まあそのための役所なのか。
 でも、日本で役所が除霊やってるって話は聞いたことないけど……

「わ、わかりました、では私が調査しますので、お帰りいただいて結構です」
「よろしくお願いします」

 困ったな、村役所長代理の一発目がこんなハードな依頼とは……
 誰かに付いて来てもらおう。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「で、我々なのか?」
 フレアハルトたちを巻き込んだ。

「あなたたちも村の一員になったんだから、手伝ってもらうよ」
「川の整地作業があるのだが……」
「私たち女の子がいないと士気も上がらないんじゃないかなぁ……ね! アリサ!」
「そ、そうですね……ですが――」
「そっちはリーヴァントと一緒にお休み中だから」
 と言うか昨日回覧板でお知らせしたはずだけど……
 アリサが何か言いかけたな。彼女だけは親方連中が休みなのを知ってるみたいだ。ちゃんと読んでくれてる。

「ド、ドワーフたちが戻って来た時にすぐにコンクリで固められるように整地しておかなければ!」
「私もフレハル様を手伝わないと!」
「三日の休暇を命じたから、帰ってくる前日くらいから作業始めれば良いよ」
「あ、そうだ、村の建築部でヘルプを頼まれていたのであった……」
「そうそう、いきなりお休みしちゃったら建築部のトーリョさんに迷惑が!」
「ホントに~? さっきトーリョのところに行って来たけど、特に何も言ってなかったよ?」
「うっ……お、親方たちには働きづめで休みを命じたのに、我らはこんなところに駆り出されるのか!?」
「そ、そうですよ! 過重労働反対!」

 詰問したら逆ギレしてきた……
 何だかフレアハルトとレイアがやりたくなさそうで必死だな……

「もしかして……元・王子、怖いの?」
「そそそそ、そんなことはない! 我がこの程度のことで怖いなど、あるわけがなかろう!!」
「よし、じゃあ家の調査に入ろうか」
「……う、うむ……」
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