140 / 531
第6章 アルトラの村役所長代理編
第139話 役所長代理、初の依頼
しおりを挟む
副リーダーの通達後、代理業務を行うため役所へ帰還。
リーヴァントがお休み中、私が村役所長代理を務めることになった一日目。
「役所長って普段何やってるの?」
「住民の困りごとの解決ですかね。あとは、村を住み良くすることとか。何も無い時は役所内や役所前を掃除してたりしますよ」
めちゃくちゃ働いてるじゃないのリーヴァント!!
私がのんびりし過ぎていたのかしら?
まあ、私は外交担当だから (自称)
そして、早速困りごとが来た。
「どうされましたか?」
「あれ? アルトラ様? リーヴァントさんは?」
「働きづめだったので、今遅めの夏休みを取ってもらってます」
「夏……? って何ですか?」
あ、ここ四季無かったんだっけ。今九月だったから遅めって意味で夏休みって表現したけど。
「私の故郷で六月から八月くらいを夏って言うので、遅めの夏休みなんです」
「はぁ、そうなんですか」
「それで今日はどんな要件で来られたのですか?」
「はい、最近村はずれの打ち捨てられた家が何かおかしくて、そのことについて相談に来ました」
村はずれ……って言ったら……
「タイレンの家?」
(第16話参照)
「いえ、その逆側の村はずれです。そこはちゃんとタイレンさんが住んでます」
「その家がどうかしたの?」
「口で説明するより、見てもらった方が早いと思います」
というわけでゲートで村はずれへ。
その問題の家を見ると――
オオォォオォォオオオォォオォォォ……
「何アレ……?」
家全体から黒い怨念みたいなものが出てる……
「最近になって、どうやらゴーストが目撃されるようになりまして……この辺りの住民から怖いとの声が……」
この世界ってゴーストいるの!?
魔界とは別に『地獄』って場所があるから、てっきり死者は亡者だけなのかと思ってたけど……
ゴーストも分類すれば亡者に当たりそうだから、私は身体があるからゾンビってところかしら?
後でカイベルに聞いたところ、この世界のゴーストは魔界で死んで未練がある者が、まだあの世に行かずに彷徨っている状態らしい。
閻魔様の審判を受けている者が『亡者』、それ以外は、身体がある者は『屍人・ゾンビ』、骨だけの者が『骸骨・スケルトン』、骨すら無く魂だけになった者が『幽霊・ゴースト』という扱いだとか。
『亡者』は覇気が無く顔色が悪いこと以外は生前とそう変わらない外見なのに対し、『屍人・ゾンビ』は徐々に身体が腐っていくのだという。
その後、肉が全て腐り落ちると『骸骨・スケルトン』になり、更に骨の状態で動けなくなるほど損傷すると『幽霊・ゴースト』に落ち着くらしい。
だたし、未練があれば必ずしも死体が動くわけではなく、どの時点でアンデッド化するかはわからないとのこと。死んで間もなくゾンビになる者もいれば、肉体がまだ存在している間は全く動かず、それが朽ちた後にゴーストになる者もいるらしい。
私は閻魔様の審判を受領済みだから『亡者』に当たる。あと、スキル『疑似生者』の効果で顔色も生者と変わらない。
ちなみに、ミイラは身体があるからゾンビに当たるが、干からびてるかどうかで区別はされるらしい。
「あの家って元々誰の家だったの?」
「さあ? もう大分長いこと空き家だったので、誰が住んでいたかまでは……少し高台に建ってますので、以前の洪水でも倒壊を免れたのだと思います。アルトラ様が来るまで、年月日の概念が無かったので何年経ってるかはわかりませんが、生活している様子が無いので空き家になってから大分年数が経っているのではないかと……」
「何で空き家になったの?」
「それも全くわかりません。誰かに殺されたか……あるいは食料を狩りに行って帰って来なかったのか……村が発展するまでは死ぬことなど日常茶飯事でしたので」
物騒な話になってきたなぁ……
「で、あれをどうしたら良いの?」
「近隣住民が怖がっているので、何とかしてもらえたらと思います」
リーヴァントってこんな除霊まがいなハードな依頼までこなしてるの?
こ、怖いけど、とりあえず中に入ってみないことには何にも始まらない。
「と、とりあえず家に入ってみましょうか」
「え!?」
「え? 入るんですよね?」
「いえ、役所の方にお任せします……」
マジか……!! 丸投げ? まあそのための役所なのか。
でも、日本で役所が除霊やってるって話は聞いたことないけど……
「わ、わかりました、では私が調査しますので、お帰りいただいて結構です」
「よろしくお願いします」
困ったな、村役所長代理の一発目がこんなハードな依頼とは……
誰かに付いて来てもらおう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「で、我々なのか?」
フレアハルトたちを巻き込んだ。
「あなたたちも村の一員になったんだから、手伝ってもらうよ」
「川の整地作業があるのだが……」
「私たち女の子がいないと士気も上がらないんじゃないかなぁ……ね! アリサ!」
「そ、そうですね……ですが――」
「そっちはリーヴァントと一緒にお休み中だから」
と言うか昨日回覧板でお知らせしたはずだけど……
アリサが何か言いかけたな。彼女だけは親方連中が休みなのを知ってるみたいだ。ちゃんと読んでくれてる。
「ド、ドワーフたちが戻って来た時にすぐにコンクリで固められるように整地しておかなければ!」
「私もフレハル様を手伝わないと!」
「三日の休暇を命じたから、帰ってくる前日くらいから作業始めれば良いよ」
「あ、そうだ、村の建築部でヘルプを頼まれていたのであった……」
「そうそう、いきなりお休みしちゃったら建築部のトーリョさんに迷惑が!」
「ホントに~? さっきトーリョのところに行って来たけど、特に何も言ってなかったよ?」
「うっ……お、親方たちには働きづめで休みを命じたのに、我らはこんなところに駆り出されるのか!?」
「そ、そうですよ! 過重労働反対!」
詰問したら逆ギレしてきた……
何だかフレアハルトとレイアがやりたくなさそうで必死だな……
「もしかして……元・王子、怖いの?」
「そそそそ、そんなことはない! 我がこの程度のことで怖いなど、あるわけがなかろう!!」
「よし、じゃあ家の調査に入ろうか」
「……う、うむ……」
リーヴァントがお休み中、私が村役所長代理を務めることになった一日目。
「役所長って普段何やってるの?」
「住民の困りごとの解決ですかね。あとは、村を住み良くすることとか。何も無い時は役所内や役所前を掃除してたりしますよ」
めちゃくちゃ働いてるじゃないのリーヴァント!!
私がのんびりし過ぎていたのかしら?
まあ、私は外交担当だから (自称)
そして、早速困りごとが来た。
「どうされましたか?」
「あれ? アルトラ様? リーヴァントさんは?」
「働きづめだったので、今遅めの夏休みを取ってもらってます」
「夏……? って何ですか?」
あ、ここ四季無かったんだっけ。今九月だったから遅めって意味で夏休みって表現したけど。
「私の故郷で六月から八月くらいを夏って言うので、遅めの夏休みなんです」
「はぁ、そうなんですか」
「それで今日はどんな要件で来られたのですか?」
「はい、最近村はずれの打ち捨てられた家が何かおかしくて、そのことについて相談に来ました」
村はずれ……って言ったら……
「タイレンの家?」
(第16話参照)
「いえ、その逆側の村はずれです。そこはちゃんとタイレンさんが住んでます」
「その家がどうかしたの?」
「口で説明するより、見てもらった方が早いと思います」
というわけでゲートで村はずれへ。
その問題の家を見ると――
オオォォオォォオオオォォオォォォ……
「何アレ……?」
家全体から黒い怨念みたいなものが出てる……
「最近になって、どうやらゴーストが目撃されるようになりまして……この辺りの住民から怖いとの声が……」
この世界ってゴーストいるの!?
魔界とは別に『地獄』って場所があるから、てっきり死者は亡者だけなのかと思ってたけど……
ゴーストも分類すれば亡者に当たりそうだから、私は身体があるからゾンビってところかしら?
後でカイベルに聞いたところ、この世界のゴーストは魔界で死んで未練がある者が、まだあの世に行かずに彷徨っている状態らしい。
閻魔様の審判を受けている者が『亡者』、それ以外は、身体がある者は『屍人・ゾンビ』、骨だけの者が『骸骨・スケルトン』、骨すら無く魂だけになった者が『幽霊・ゴースト』という扱いだとか。
『亡者』は覇気が無く顔色が悪いこと以外は生前とそう変わらない外見なのに対し、『屍人・ゾンビ』は徐々に身体が腐っていくのだという。
その後、肉が全て腐り落ちると『骸骨・スケルトン』になり、更に骨の状態で動けなくなるほど損傷すると『幽霊・ゴースト』に落ち着くらしい。
だたし、未練があれば必ずしも死体が動くわけではなく、どの時点でアンデッド化するかはわからないとのこと。死んで間もなくゾンビになる者もいれば、肉体がまだ存在している間は全く動かず、それが朽ちた後にゴーストになる者もいるらしい。
私は閻魔様の審判を受領済みだから『亡者』に当たる。あと、スキル『疑似生者』の効果で顔色も生者と変わらない。
ちなみに、ミイラは身体があるからゾンビに当たるが、干からびてるかどうかで区別はされるらしい。
「あの家って元々誰の家だったの?」
「さあ? もう大分長いこと空き家だったので、誰が住んでいたかまでは……少し高台に建ってますので、以前の洪水でも倒壊を免れたのだと思います。アルトラ様が来るまで、年月日の概念が無かったので何年経ってるかはわかりませんが、生活している様子が無いので空き家になってから大分年数が経っているのではないかと……」
「何で空き家になったの?」
「それも全くわかりません。誰かに殺されたか……あるいは食料を狩りに行って帰って来なかったのか……村が発展するまでは死ぬことなど日常茶飯事でしたので」
物騒な話になってきたなぁ……
「で、あれをどうしたら良いの?」
「近隣住民が怖がっているので、何とかしてもらえたらと思います」
リーヴァントってこんな除霊まがいなハードな依頼までこなしてるの?
こ、怖いけど、とりあえず中に入ってみないことには何にも始まらない。
「と、とりあえず家に入ってみましょうか」
「え!?」
「え? 入るんですよね?」
「いえ、役所の方にお任せします……」
マジか……!! 丸投げ? まあそのための役所なのか。
でも、日本で役所が除霊やってるって話は聞いたことないけど……
「わ、わかりました、では私が調査しますので、お帰りいただいて結構です」
「よろしくお願いします」
困ったな、村役所長代理の一発目がこんなハードな依頼とは……
誰かに付いて来てもらおう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「で、我々なのか?」
フレアハルトたちを巻き込んだ。
「あなたたちも村の一員になったんだから、手伝ってもらうよ」
「川の整地作業があるのだが……」
「私たち女の子がいないと士気も上がらないんじゃないかなぁ……ね! アリサ!」
「そ、そうですね……ですが――」
「そっちはリーヴァントと一緒にお休み中だから」
と言うか昨日回覧板でお知らせしたはずだけど……
アリサが何か言いかけたな。彼女だけは親方連中が休みなのを知ってるみたいだ。ちゃんと読んでくれてる。
「ド、ドワーフたちが戻って来た時にすぐにコンクリで固められるように整地しておかなければ!」
「私もフレハル様を手伝わないと!」
「三日の休暇を命じたから、帰ってくる前日くらいから作業始めれば良いよ」
「あ、そうだ、村の建築部でヘルプを頼まれていたのであった……」
「そうそう、いきなりお休みしちゃったら建築部のトーリョさんに迷惑が!」
「ホントに~? さっきトーリョのところに行って来たけど、特に何も言ってなかったよ?」
「うっ……お、親方たちには働きづめで休みを命じたのに、我らはこんなところに駆り出されるのか!?」
「そ、そうですよ! 過重労働反対!」
詰問したら逆ギレしてきた……
何だかフレアハルトとレイアがやりたくなさそうで必死だな……
「もしかして……元・王子、怖いの?」
「そそそそ、そんなことはない! 我がこの程度のことで怖いなど、あるわけがなかろう!!」
「よし、じゃあ家の調査に入ろうか」
「……う、うむ……」
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる