建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第5章 雷の国エレアースモの異常事態編

第135話 羊型の座布団

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 よし、これで現状この国でやるべきことは全て済ませた。
 あとは……疑似太陽のことだけど、これは多分後日ってことになるだろうね……この騒動でそんな場合じゃないだろうし。
 とりあえず、アスモに治療を終えた報告をして、時間的にも夜の時間帯だし、今日もホテルに泊まらせてもらって明日帰ろう。






「アスモ、治療を終えて来た。病院の場所教えてくれてありがとう」
 胴体切断された人なんか放って帰ったら寝覚めが悪い。

「……お疲れ様……こちらこそありがとう……ベルゼがいなかったら、この国がどうなってたかわからない……」
 偶然にも、雷耐性持ちで、超防御力持ちの私がここを訪れていて良かったってところかな。自画自賛入ってるけど……

「……ごめん、今回は太陽を作ってもらう余裕は無さそう……この件が落ち着いたら、再度ベルゼの家を訪問させてもらう……」
「そうよね……これだけ大規模な騒動があったら……ね……」
「……せっかく来てもらってごめんね……アレ持って来てもらえる……?」
「はい」

 アレ? 一体何を持ってくるんだろう?

 持って来たのは大きめの箱。ファンタジーでよく目にする宝箱だ! どう見ても宝箱を持って来た!
 それを抱え、私の方を向けて蓋を開く。

「……これ前金、二千万エレノルある……」
「にせんまん!!?」
「……少ない……?」
「いや、まだ何もやってないのに……」
「……そう、だから前金。頭金とも言うかも……でも頭金は一千万で、もう一千万は巨大サンダラバード討伐に貢献してくれたお礼……頭金の残りは疑似太陽を作ってもらった後にお渡しする……それに、全然何もやってないことはない……ベルゼがいなければ、この街滅んでたかもしれない……」
「そこまで言われるとちょっと気恥ずかしいね……」
「……でも事実……それぐらい、あの鳥は危ない生物だった……」

 二千万……何もやってないのに二千万……ホントに持って行って良いのかしら?

「あの……ホントに貰って良いの?」
 こんな大金、前世でも持ったことがない!

「……もちろん、これは対価だから……じゃ、まだまだ後処理に追われそうだから、今日はこれで……」
「あの! 私、明日帰ろうと思ってるの!」
「……そう……寂しくなる……でも、会えて良かった。姿が変わってもベルゼはベルゼだった……じゃあ、落ち着いたらまた訪問させてもらう……」
「うん! それじゃ、またね」

 さっぱりした別れだったが、前々世からの友情を感じた。

 なお、二千万エレノルは即座に亜空間収納ポケットに入れた。私しか取り出せないから、正直言って銀行に預けるより安全だと思う。





 ホテルへ帰還。

「あ、やっと帰って来タ!」
「お帰りなさいませ、アルトラ様」
「今日一泊して、明日帰るよ」
「エ……? 観光ハ?」
「行けると思う?」
「…………そうだナ……街中穴だらけだしナ……」
「幸いここはちゃんと泊まれるみたいだから、ゆっくり休ませてもらおう。お風呂行こっか」

 今日もエミリーさんを誘おうと思ったけど、今日はもうすでに部屋を引き払って、空間魔法災害の後処理に駆り出されているようだ。
 緊急事態ゆえに私の案内役は解除ってことかな。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「えっ? お風呂使えないの?」
「はい……昨日の空間魔法災害で湯舟を壊されてしまったらしくて、穴が開いてしまいまして、お湯が貯められなくなってしまいました……修復までに数日を要するそうで……」
 まあ、あの魔法災害直後じゃ仕方ないか……お風呂は今日一日くらい我慢するか……

 帰りに土産物コーナーで、村へのお土産を見繕う。
 今回はアクアリヴィアの時とは違って、お金がある! 貰い立てホヤホヤだけど、私の手には二千万エレノルが!!
 魔界へ来てやっと『自分の』所持金で買い物ができるようになった。

 リディアが、今度は何だかフワフワしたのを持って来た。
 羊?の座布団かしら?

「これ買ってク。アニメ見る時に尻に敷いたらちょうど良さそウ」
 今回の判断基準は、「おいしそう」ではないらしい。
 ちなみに、前回「おいしそう」という判断基準で買ったサメの抱き枕は、寝床で涎だらけになっている。

 私は適当に村の各所へ配るお菓子を購入。
 『雷おこし』……まさに雷の国に相応しい名前よね。
 こっちにはチョコでコーティングされた雷おこし。これって……『サンダーブラック』だ、どう見てもあの美味しいやつ。これ買ってくか。

「三万六千エレノルです」

 ちょっと買い過ぎたかしら? 座布団が三千、各所へのお土産が一つ千ちょっとだとして三十個。まあ良っか。

「カイベルは何か買うものある?」
「いえ、私は特にありません」
「遠慮?」
「いえ、欲しいものがわからないと言いますか……」

 そうか、元々本として作ったから物欲が無いのかな?

「じゃあ、髪飾りとかどう?」
 髪飾りを見繕ってみた。

「よろしいのですか?」
「いらなければ無理にとは言わないけど……」
「いえ、いただきます」
 髪飾りを購入し、カイベルの左側頭部へ付けた。

「ありがとうございます」

 いつも無表情のカイベルが、心なしか嬉しそうに見えた。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 部屋に戻るとリディアにアニメを催促されたから見せるハメに。

「今日は何にするの?」
「じゃあ、昨日見れなかった『ゼンリョクジャー』と『アナモンアドベンチャー』にすル」

 全部日本で日曜日にやってるやつね……何で日曜縛りなのかしら?
 ちなみに、『アナモン』のアナは『アナログ』の略。略さないで書くと『アナログモンスター』。
 「それはもうただのモンスターなのでは?」というツッコミはしてはいけない。

 早速、さっき買った羊の座布団をお尻の下に敷いて見始めた。

 余談だけど、次の日催促されたのは『ドラゴンボーノレ』、『ワンピィス』、『でかまる子ちゃん』、『ホタテさん』だった。
 何で日曜縛りなのよ?






 部屋に戻った後、何で私だけサンダラバードに攻撃を受けたのか、聞いてみたところ、恐らくその理由の答えであろうことを教えてくれた。

「三日前レヴィアタン様が言っていた『周囲を軽度に魅了する』能力があることが関係しているのではないでしょうか?」

 あ、サンダラバードが『軽度に魅了されて』アスモを好きになっているから、アスモを攻撃せず、一緒に付いてきた私の方を攻撃しに来てたってことなのね……
 つまり「大迷惑かけちゃうと思うけど」の意味は、『多分自分のところへは来ず、全部ベルゼの方に行くと思う。迷惑かけちゃうけどごめんね』って意味だったのね……
 …………納得はできたけど、何だか腑に落ちない! まあ……当初の予定通りちゃんと弾除けの役割はこなせたってことかな?

 あと、私が空間の裂け目で切断されなかった理由、あれは私の空間魔法耐性によるものらしい。
 以前ゼロ距離ドアを作るための実験をしていた時に、手を入れた状態で空間の裂け目が閉じると、手が切断されてしまうんじゃと薄ら恐くなって、そうならないための実験をしたことがある。
 この身体は空間耐性がレベル10。あの時に『レベル10の私は空間魔法で切断されるかどうか』疑問に思っていたけど、あれの答えを図らずも知る結果となった。
      (第24~25話参照)
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